仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

テンションがものを言う。Ⅴ

2009年01月13日 15時45分51秒 | Weblog
 マサルはハルの胸の谷間にマイクを当てた。ハルは外部からの刺激にハッとした。トランスの中から意識が戻った。ハルは自分の身体のまわりを見回した。オーバーニーのソックス以外、すべての衣服は床に落ちていた。突然立ち上がり、胸とハル自身を掌で覆った。羞恥の感情がハルをとらえた。マサルはマイクを床にゆっくり置いた。ハルは足の指で衣服をかき集めようとした。下を向いているハルの顎にマサルは手を当てた。目が合うとバスルームの方向に視線を向けた。ハルは、マサルの意図を感じた。走り去るようにハルはバスルームに向かった。後ろから聞こえる音がハルに裸体となった意味を教えていた。バスローブをはおり、ハルが戻った。マサルの視線がマイクを持てというかのように動いた。
 そして、マーとマサルの音が再び、ウネリの応酬に変わった。耳から入る音、いや、身体全体にウネリは押し寄せた。バスローブの帯を解いて、ハルは肌にマイクを押し当てた。右手で胸の谷間にマイクを当て、乳房を左手の掌で押した。
「ザザ、ズーザザ」
可笑しな音がスピーカーから飛び出した。よろけて、マイクが床に落ちた。
「ゴン、ゴゴゴ。」
慌ててマイクを拾った。ハウリングが起きた。
「キーン。キー。」
ハルはマイクを左手で持ち、右手はハル自身に向かった。ウネリが再び、あのフレーズへと変化していった。
「すー、はー。」
ハルの吐息をマイクが拾った。その音はハルを先ほど感じた羞恥心から開放していった。勝手に動く右手の指先。
「アウ、アウ、アーン。スー、ハー。」
リフレインが波のように続いた。
「アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、・・・・」
絶妙のタイミングでハルの声が重なった。単調でありながら、「エロチック」なフレーズは強さを増したかと思うとやわらかになり、激しくなったかと思うと、小さくなった。興奮は徐々に増した。フィルインもなく、アドリブもなく、淡々と繰り返されるリフレイン。
「アーウッ。アーウッ。アーウッ。アーウッ。」
そして。
「アー。」
ハルの声が響いた。ハルの膝が床に落ちた。しばらくの間、ハルの身体はユラユラと揺れていた。マイクをダランと下げていた。再び、マイクを両手で持った。唇にマイクが張り付いた。尻を床に付けた。
「抱いて。」
ヴォイスが響いた。リフレインとヴォイスがリビングを回りだした。波動が彼らの身体を揺さぶった。マサルがマーの前に移動した。視線がマーに向けられた。マーの顔がマサルのほうに移動した。視線がマーのプレイを止めさせた。視線はハルのいる場所へ誘った。マーは最後に、掌でトップシンバルを引っ叩き、ハルの後ろに立った。マサルはそのサスティーンにフレーズの最後の音を重ね、アンプにギターを向け、その音をフィードバックさせた。ハルのヴォイスは続いていた。マサルはマイクのヴォリュームを下げた。そして、ゆっくりとハルの前に立った。