仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

テンションがものを言う。Ⅳ

2009年01月08日 17時54分47秒 | Weblog
 ハルの細い指が動いた。ほとんどトランス状態に入っているハル。指先が自分のそれとは思えなかった。指先は音の進入経路を探すかのように勝手に動いた。頭をかきむしり、耳を押さえ、顔面を這って、首筋、乳房、腹、下腹部へと流れていった。ハル自身を通り過ぎ、太腿から足先へ、そして、再び、ハル自身に向かった。立ったまま、指に先導され、ハルの身体は折れ曲がり、指がハル自身に向かうと膝を落とした。
 マサルも、マーもハルの変化に気付いていなかった。二人は激しい音の応酬の中で、言葉のいらない会話を交わしていた。会話はやがて、抱擁になり、愛撫に変わり、セクスへと発展していった。そんな中から、マサルのフレーズが生まれた。それに呼応して、マーのドラミングもゆっくりと挿入が始まったかのように変化した。二人とも勃起していた。今まで一度も目を合わせなかったマサルがマーを見た。同時に、マーもマサルを見た。エクスタシーを彼らは同時に感じた。そして、微笑んだ。言葉のいらない信頼感が二人にはできていた。そしてまた、同時にハルを見た。二人は同時に驚いた。
 ハルもこの渦の中で同じものを感じていると思った。ハルの指は自身に触れようとしているところだった。マサルは、左手だけでフレーズを崩さないようにフレットを叩きながら、ミキサーのマイクのボリュームを上げた。マーの音は既にマサルの次を知っているかのようにフレーズを補った。