仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その坂を下って2

2010年10月22日 16時14分19秒 | Weblog
 マサルの車が車庫に入った。といってもベンベーではなかった。独立、というのとは違うかもしれないが、もう、カードを使うことはできなかった。金に困らなかったマサルは金がなくなったことで、非常に困るということはなかった。マサルは無頓着だった。欲がなかった。欲しいものが全て簡単に手に入ったマサルは、その頃、物欲的に欲しいと思うものがあまりなかった。煙草を買う。酒を買う。そういった金は、みんなの金で何とかなった。むしろ、マサルは「ベース」の始めた行動が楽しかった。マサルが中心となって、世田谷の市場を開拓した。成城の空き地での直販から、大型団地の理事会との交渉、マンション管理組との関係を作ることなど、事業化していく「ベース」の行動が楽しかった。
 その日も宅配先になったマンションの管理人さんと話が盛り上がった。

車を降りるとハルが跳んできた。
「マサル、マサル、お客だよー。」
「誰。」
「女の人と男の人。」
「だから、誰。」
「あー、名前聞いてなかった。」
「なんだよ。それ。」
「二階で寝てる。」
「何で。」
「女の人が気分が悪くなっちゃって。」
「なんだよー。」

マサルは走るようにしてハルを追いかけた。