仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

人生の達人2

2011年11月16日 14時32分33秒 | Weblog
ボンボン

ダンボールを叩く音がした。
カリさんが鋏を持ってきた。
「なんでも落ちてんだよなあ。ここら辺にはよ。」
中央公園の水道で頭を洗って、カリさんが髪を切ってくれた。
短くなった顔を見てカリさんが言った。
「おめえ、まだ、若えんじゃねえか。でてけよ。こんなとこ。」
「はあ、」
「いっそ、保健所に捕まって、施設へいけよ。何とかなったやつもいるってきいたぜ。」
「はあ、」
「元気ねえなあ。おめえは。」
頭が寒くなった。
「これ巻いとけ。」
カリさんがタオルを投げてくれた。
無造作に頭に巻いた。
「こうやんだよ。」
そういうとカリさんは手際よくタオルを巻き、まるで、ターバンのようになった。
「そうしてな。帽子を今度拾ってきてやるから。」
「はい。」
「なんかないのかよお。」
「あっ、ありがとうございました。」
「はは、抜けてるよ。おまえは。」

ボーン

ダンボールが鳴った。
驚いて外に出ると、ダンボールの上に毛糸の帽子がのっていた。
カリさんの姿は見えなかった。