仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

人生の達人3

2011年11月25日 17時44分11秒 | Weblog
暖かな日だった。
太陽が雲の切れ間を大きくした。

ボンボン

ダンボールがなった

「出てこい。怠け者。」
カリさんの声だった。いつもよりはずんだ感じがした。
「出てこいよ。いいもんあるぞ。」
外はまぶしかった。
カリさんはドンペリのビンを持っていた。
「高級品だよ。高級品。」
あまり興味はなかった。
「朝一番で、白い店に言ったんだぞ。どうだ、いいもんあったろ。」
カリさんは嬉しそうにビンからじかに飲んだ。
「お前も飲め。」
手渡された。
飲んだ。
ドンペリではなかった。
いろんな種類の酒の味がした。
むしろ、ウイスキーの味が濃かった。
「命の水」の呪縛から解けるまでの時間を考えると酒も口にすることはできなかった。
そして、その究極のカクテルが身体のすべての部分を侵していった。

極度の禁断症状からなぜ抜け出せたのか。
なぜ、命を落とすこともなく、犯罪に走ることもなく、そこに寝ていられたのか。
意志の力が勝ったのか、強靭な精神を持ち合わせていたのか

いや、すべてがどうでもよかったからだ。

その症状さえも、他人ごとのように感じていた。
苦しさも、むごたらしい嘔吐も、もう一人の自分がいるみたいで、そいつが遠くから見ていた。
だから、受け入れられた。

時間がかかった。

ただ、名古屋の人たちとは違ってここでは、一人でいられた。
グループはあったが、孤立無援の人間も多かった。

うなっても、暴れても、独りにしてくれた。
いや、関心など微塵もなかった。

他人なのだ。それが心地よかった。