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夏時間はいいことずくめ? 欧米の大部分で夏時間が終わるころ、毎年決まって大西洋の両側から不満の声が沸き上がる。「なぜ時計の針を元に戻すのか?」。夏時間の通年化を支持する人々はエネルギーの節約をうたい文句にしてきた。ところが最近、観光産業の起爆剤という新たな材料が浮上した。夕方の明るい時間が増えれば、公園などに人々が足を運ぶ可能性が高まるという主張だ。
ツーリズム・アライアンスで方針決定の責任者を務めるカート・ジャンソン氏は、「簡単に言えば、観光産業にとっての端境期、春と秋が長くなる」と説明する。「夕方の明るい時間、人々は出歩き、アトラクションはまだ営業している。有効利用できる時間が増えるのは明白だ」。ツーリズム・アライアンスはイギリスで展開されている夏時間のキャンペーン(Campaign for Daylight Saving)で中心的な役割を果たす組織だ。
ジャンソン氏は1つの調査結果を引き合いに出す。それによれば、夏時間を恒久的に維持すると、イギリスの観光産業は年間約56億ドルの収入増を見込めるという。
アメリカ、シアトルにあるワシントン大学の環境経済学者ヘンドリック・ウルフ氏も、理にかなっていると考える。夏時間の間は、テレビ視聴などの体を動かさない気晴らしに使う時間が減り、屋外で活動的に過ごす時間が増えると統計が示しているためだ。
「ただし、勝者がいれば、その一方で敗者も生まれるはずだ」とウルフ氏は言い添える。「1年通してとなると、映画をはじめとする屋内での娯楽は不利になるかもしれない。一方、ゴルフコースなどの屋外の娯楽施設は恩恵を受けるだろう」。
サマータイム制度とは何か?
サマータイムとは、簡単にいうと日の長い夏の間だけ、時計を1時間早く進める制度のことである。 福田元首相は、2008年7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)で、温暖化対策の一つとして、サマータイム制度の2010年導入を訴えた。
麻生太郎内閣は2009年6月28日の日韓首脳会議後、日韓同時にサマータイムを導入すれば経済効果が高いと認識を示していた。 2009年9月9日に鳩山由紀夫内閣との日韓首脳会議で日韓同時導入を韓国が提案する方向で検討していると発表した。
何の目的でこんなことをするのであろうか?そのねらいは省エネルギー効果だ。夜は標準時よりも早く寝ることになるため、照明や冷房に使用する電力を節約できる。環境省は、二酸化炭素の排出量を年間120万トン程度、削減できると見込んでいる。
現在、欧州や北米、南米など世界70か国以上で導入されているが、その目的も省エネルギー効果である。経済協力開発機構(OECD)加盟30か国で見ても導入してない国の方が少ない。日本と韓国、アイスランドぐらいである。
日本でも戦後の1948〜51年の4年間、サマータイムが導入されたことがある。昭和23(1948)年4月28日、GHK(連合国軍総司令部)の意向によって、サマータイム法が公布され、5月の第1土曜から9月の第2土曜まで、時計を1時間進ませる夏時間が導入された。このときは、寝不足や通勤ラッシュの激化、働く時間が長くなったという指摘もあり、国民の評判はよくなかった。このため、昭和27年に廃止されている。
アジアでサマータイムを導入している国はない。韓国は1987年、ソウルオリンピックを契機に欧米と歩調を合わせようと導入したが、1989年に廃止した。中国も1989〜1992年に導入した。国土が東西に広いにもかかわらず標準時間が統一されているため、地域によってはサマータイム導入で「朝なのに真っ暗」といった不都合が生じ、廃止された。
世界がサマータイムを導入する理由
サマータイムは1916年にイギリスやスウェーデンなど欧州の6か国で始まった。当時は第1次世界大戦の最中で、戦争に必要な燃料を少しでも多く確保するため、夜の照明に使う燃料を減らそうとした。
導入済みの国で指摘されている効果としては、「省エネルギー」(アイルランド、米国など)、「労働生産性の向上」(イラン、スロベニア)などがある。ほかに「交通事故・犯罪の防止・減少」(カナダ、チリなど)を挙げる国もある。
また、「他国の制度と調和することで、経済的な結びつきが強まる」(ウクライナ、ルーマニアなど)との声も根強い。欧州で、日本と同程度の緯度に位置する国々にも導入事例が多いのは、経済活動の際に利便性が高いとの理由が大きいようだ。
北海道ではサマータイムを実験的に取り入れている所もある。その結果、働く時間が長くなったという意見がある。日本全体では2007年以降、景気低迷の長期化でエネルギー消費量が減っているために、「省エネ」の効果が出にくくなっているとの理由から、導入の時期については未定である。
省エネルギーは幻想?
シアトルにあるワシントン大学の環境経済学者ヘンドリック・ウルフ氏は自身の研究で、夏時間と省エネは結びつかないと示唆する多数の証拠を挙げている。むしろエネルギー消費量を増やしているかもしれない地域さえあるという。
ウルフ氏はオーストラリアの電力に関する共同研究で、2000年のシドニー五輪の時期を対象にエネルギーの使用量を比較した。当時、一部の地域では五輪に合わせて夏時間を延長していた。
研究の結果、「われわれは省エネルギーの仮説を否定した」とウルフ氏は言い切る。同氏によれば、夕方が明るくなって電力の使用量は減ったが、その分、朝が暗くなって電力需要が増え、減少した分が帳消しになったという。
省エネについての結論はまだ出ていない。少なくとも一部の地域では、夏時間がエネルギーの節約につながるという研究結果も出ている。
健康を促進?
夏時間の通年化が一部の支持を得ている理由は、エネルギーの節約と観光業の活性化だけではない。健康上の利点を指摘する者もいる。人々が活発に動き回る時期が増えると予想されるためだ。
一方、反対派には農業従事者が含まれる。動物や植物にとって時刻の変更は何も関係がない。農作業の多くは太陽の動きに合わせて行われており、早朝の貴重な作業時間が失われてしまう。
健康上の利点についても評価は容易ではない。ドイツにあるルートビヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンで時間生物学の研究をするティル・ローネバーグ(Till Roenneberg)氏は、24時間周期の体内時計は明暗によって設定されており、明るい時間を朝から夕方に移動させても適応できないという研究結果が出ていると話す。同氏によれば、夕方に明るい時間が増えると疲れがたまったり、病気にかかりやすくなったりするだけだという。
夏時間の賛成派も反対派も、ある点では意見が一致している。年に2度時計を動かすという現在のやり方は不便で、かなり不自然な調整を強いられるということだ。(Brian Handwerk for National Geographic News November 7, 2011)
参考HP Wikipedia サマータイム National Geographic news 夏時間はいいことずくめ?
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