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ここまで来た!再生医療 移植のための出生「救世主兄弟」とは?

2010年03月31日 | 健康
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 臓器移植法の問題点
 3月28日NHKスペシャル「人体製造」は衝撃であった。夢だと思われた“拒否反応”のない「臓器移植」が安全に、必要に応じていつでも可能になったといっても過言ではないからである。

 2009年の「臓器移植法」の改正で「脳死は人の死」とされた。また、臓器提供にはドナーカードによる意思表示が必要であったが、本人の同意がなくても、家族の同意があれば臓器提供できることになった。また、15最未満の子供の臓器提供は禁止されていたが、改正後は年齢制限はなく、生まれて間もない乳幼児も臓器提供が可能になった。

 この改正により臓器移植の可能性が増えて良かったように思える。しかし、「脳死」の判定が医師にまかされることになったが、医師が何をもって脳死とするかはっきりしていないこと、また「脳死」=「人の死」であることは、科学的に証明されていないこと(法律で決められたに過ぎない)、そして、他人の臓器である以上どうしても拒否反応は避けられないということなど問題があった。

 今回のNHKの「人体製造」で紹介された、「臓器移植」ならこれらの問題はすべて解決できると思った。なぜなら、他人の細胞ではなく自分の皮下組織にある幹細胞を使って、必要な場所へ移植したり、ブタに注入して自分の臓器をつくらせることも可能になったからだ。

 救世主兄弟
 そして、もうひとつ衝撃的な臓器移植の方法として紹介されたのが「救世主兄弟」である。

 米国ニュージャージー州ロングアイランドに住む、トレビング夫妻の娘ケイティは生まれつき赤血球がうまくできない遺伝病“ダイアモンドブラックファン貧血”であった。このため、彼女は定期的に輸血を受け続けていた。医師はこのままでは死は免れないとしていた。

 生存のためには白血球の血液型“HLA”の合う幹細胞を移植する必要があった。しかし、同じ血液型を持つ人は数万人に1人。見つけるのは至難なことであった。同じ兄弟であれば1/4の確立で血液型が一致する。しかし、ケイティの兄はあいにく違う血液型である。

 ここで医者は1つの提案をする。もし、HLAの一致する兄弟を出産すれば、その子から骨髄液を採取して、ケイティに移植することができる。トレビング夫妻は喜んで出産を決意した。どうやって1/4の確立でHLAの一致する、兄弟を出産できるのであろうか?

 実は体外受精で受精卵を複数つくり、その中でHLAの合う受精卵を選んで着床させたのだ。受精卵は8細胞期の時1つだけ細胞を取ってHLAを調べた。残った7つの細胞で胎児が育つことは分かっている。23個の受精卵のうち2個のHLAが一致した。 

 こうして兄弟を救う目的で生まれる兄弟を「救世主兄弟」と呼ぶ。ケイティを救うために生まれてきた弟のクリストイファーは1歳の時、骨髄の造血幹細胞を採取され、ケイティに移植された。それから数年後、クリストファーもケイティも健康で、互いによかったと言っている。現在「救世主兄弟」は世界中で200例以上もつくられていて、珍しいことではない。

 救世主兄弟の問題点
 これはこれで“Happy End”ではある。しかし、ことはそれほど単純ではない。これからケイティとクリストファーは生涯、血液だけでなくすべての臓器が互いに移植できる関係にある。そしてそれが、偶然ではなく両親の意志でそうなったことに問題がある。

 大人であれば「臓器移植」の意志があるかないか、本人が決めることができるが、クリストファーに選択の余地はなかった。

 この点について英国議会は4年も議論を続けて結論を出した。「救世主兄弟は血液の病気目的でのみつくってよい、しかし臓器移植の目的でつくってはならない」。米国では自主規制という立場。「まさか臓器目的で兄弟をつくりはしないだろう」というニュアンス。そこには、法律以外の規制である、キリスト教の宗教観が伺える。

 しかし、医師側の立場ではどうだろうか?これまで救世主兄弟を103人つくってきた、米国デトロイトのマーク・フューズ医師はこう語った。「はじめはとんでもないことだと思ったが、医療とはもともと生活をよりよくするためのもの、人の生命を救うためならば抵抗はない」という。それが医師の務めでもある。

 一方、英国では最近になって女性の幹細胞から精子を分化させることに成功した報告があがっている。これは、女性同士の間に子供がつくれることを意味する。

 クローン人間について規制のない中南米の国で、米国から移住したザボス医師はいう「卵子や精子のできない人のためにクローン人間を出生させることに抵抗はない」と...。これらの国々では、いずれ法律による規制や宗教による規制がはたらくことは予想できる。

 価値基準のない不透明な日本
 日本では、こういった議論は未だなされていない。私はこの番組を見てクリストファーに現代の日本が写して見えた。クリストファーが自己の意志で移植したのではないように、戦後の日本は米国を中心とする連合国側によってつくられた憲法により、軍隊を放棄させられる状態が65年も続いた。

 それでいて世界的に見て自衛隊という立派な軍備をもっている。これが本当に自分の意志でつくったのなら立派だが、クリストファーのように選択の余地はなかったようだ。

 クリストファーはいつになれば、自分の意志を示せるのであろうか?クリストファーは一生、意志を示してはいけないのだろうか?それは人と呼べるのであろうか?

 それと同じように、米軍の基地問題にしても、自分の意志を示せない日本は独立した国と言えるのだろうか?私には同じ問題に思える。

 「憲法を改正し、自分の国は自分で守るから米軍はいらない」といえばそれですむのに、今の民主党政権は国内の意見をまとめられず、赤子のようにいやだからいやだと“駄々”を捏ねている。そう思うのは私だけであろうか?

 

参考HP NHKスペシャル「人体製造」 

脳死・臓器移植の本当の話 (PHP新書)
小松 美彦
PHP研究所

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臆病国家日本が、世界の救世主になる日
ベンジャミン フルフォード,浅井 隆
あうん

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ここまで来た!再生医療「幹細胞」でブタに人の臓器をつくらせる?

2010年03月30日 | 健康
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 ブタに人の臓器をつくらせる
 衝撃的だった28日のNHKスペシャル「人体製造」。次に紹介する再生技術はブタに人の臓器をつくらせる医療技術だ。「ブタが人の臓器を?」そんなことができるのかと思うが、技術的に可能なのだという。そのしくみを研究しているのは自治医科大学の小林英司教授。

 ブタの胎児にでき始めた肝臓を破壊する。この胎児にヒトの幹細胞を注入するとなんと、ヒトの幹細胞が肝臓の細胞に変わって、ブタの中にヒトの肝臓をつくる。ブタは成長が早く、臓器の大きさもヒトと同じくらい。ブタにつくってもらった人の肝臓を、臓器移植して本人に戻すことができるという。

 動物実験では成功
 すでに、この技術、マウス、ネコなどの動物実験では成功している。2009年11月、さまざまな臓器になるネコの「間葉系幹細胞」を、ブタの腎臓の基となる細胞「腎臓原基」に注入し、ブタの体内でネコの腎臓組織を再生することに、自治医科大や東京慈恵会医科大などの研究チームが成功した。

 尿の生成も確認した。ネコの代わりに人の細胞を使えば、病気の腎臓に置き換える人工臓器作りに役立つ可能性がある。

 間葉系幹細胞は、骨髄などに含まれ、血管や筋肉などになる。この細胞は人にも存在する。実験では、腎臓原基(約1ミリ)を、妊娠中期のブタの胎児から取り出し、ネコの間葉系幹細胞を注入し、ブタの体内にもどした。

 すると、4週間後に腎臓原基が8~10ミリに成長し、血管が通ってネコの腎臓ができた。そして、 血液をろ過する糸球体や尿細管も形成され、尿がたまったことが確認できた。 (毎日新聞 2009.11.22)

 倫理的な問題
 さて、食糧にするわけでもないのに動物の命を、人の延命のために利用して良いのかという問題がある。これについて小林英司教授は「現在、貧困国では先進国の人のために、自分の臓器の一部を売買する問題が起きている、もはや躊躇している時間はない」という。

 さらに「日本での臓器移植の実施件数は極めて少ない。人工的に臓器を作り出し、難病で苦しむ患者の治療につなげたい」と話す。

 すでに自分の骨髄から幹細胞を取り出し、液体窒素で保存する「幹細胞バンク」ビジネスがスタートしている。お値段は50年間の幹細胞保存で180万円。この幹細胞から自分の人体のパーツをブタにつくらせて、何度でも交換できる。そんな時代がすぐそこまで来ている。

 再生医療とは?
 再生医療とは、胎児期にしか形成されない人体の組織が欠損した場合にその機能を回復させる医学分野である。

 再生医学を行う手法として、クローン作製、臓器培養、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞、造血幹細胞)の利用、自己組織誘導の研究などがある。将来的には遺伝子操作をした豚などの体内で人間の臓器を養殖するという手法も考えられている。

 実例としては、熱傷の植皮のため、皮膚の表皮細胞を培養したい時、あらかじめ制癌剤を投与し増殖をストップさせたNIH3T3細胞を土台にすると、線維芽細胞による表皮細胞の駆逐を抑え、表皮細胞のみを増殖させることができる。

 これまでの再生医療
 この方法を用いてMIT(マサチューセッツ工科大学)のグリーン博士らは切手サイズの組織を3000倍に増殖させることに成功している。しかし、現状の皮膚培養では毛穴や汗腺の再生が不十分であり、より完全な皮膚の再生を目指して、研究がすすめられている。実用化が進んでいるのは皮膚培養だが、軟骨・関節の培養の研究も推し進められている。

 また、犬、豚などを使った実験で、あごの骨の細胞から完全な歯を再生することが確認されている(歯胚再生)。上田実らにより名古屋大学付属病院で実際に再生歯科外来が設けられている。埼玉医科大学総合医療センター心臓血管外科が、虚血性心筋症の男性患者の心臓組織に、本人の骨髄細胞を移植する再生医療に成功している。

 目の角膜を患った患者への治療としてドナーからの提供による角膜移植が行われているが、ドナー提供者が少ないこと、拒絶反応があることなどから、自己細胞を使った再生角膜による治療が試みられている。片目を患っている場合、もう一方の目の角膜の一部を採取して培養し移植する方法や、両目を患っている場合には口腔粘膜(幹細胞が多く含まれている)より採取した細胞を培養して移植する方法など、研究が進められている。

 国内では東北大学の西田幸二らと東京女子医科大学の岡野光夫・大和雅之らのグループや、慶應義塾大学の坪田一男らのグループ、京都府立医科大学の木下茂らのグループが有名である。

 最近骨髄中に間葉系幹細胞と呼ばれる接着性の細胞が存在しており、シャーレ上で特殊な培養を行うと骨芽細胞・脂肪細胞・軟骨細胞に分化誘導できることが報告された。また、骨髄以外にも様々な組織から体性幹細胞を得る研究が行われている。(出典:Wikipedia)

 

参考HP NHKスペシャル「人体製造」 ・Wikipedia「再生医療」

サクッとわかる!再生医療の仕組みと未来
才園 哲人
かんき出版

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再生医療へ進む最先端の幹細胞研究―注目のiPS・ES・間葉系幹細胞などの分化・誘導の基礎と、各種疾患への臨床応用 (実験医学増刊 Vol. 26-5)

羊土社

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ここまで来た!再生医療「細胞外マトリックス」と「幹細胞」利用

2010年03月29日 | テクノロジー
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 妖精の粉
 「指がはえてきた!」3月28日午後9時からのNHKスペシャル「人体製造」は衝撃的で面白かった。ラジコン飛行機のプロペラで切れてしまった、指の先端に“妖精の粉”をふりかけたところ、1ヶ月で指が再生したのだ。

 “妖精の粉”がよく使われるのは、イラクで負傷したアメリカ軍。ハリス軍曹は爆発により、全身を負傷し3本の指を根元から失った。そこに“妖精の粉”をふりかけたところ、50日で1cm傷口が盛り上がり再生した。同じくヘルナンデス伍長は70%太腿の筋肉を失った。そこに“妖精の粉”をふりかけたところ、10%回復、動物実験では30%回復しているという。

 妖精の粉の正体は?実はブタの膀胱から細胞を取り除いてつくった「細胞外マトリックス」であった。再生のしくみはわかっていないが、細胞外マトリックスに含まれる物質が、骨髄の中の幹細胞を呼び寄せ、血管、骨、筋肉が再生していると考えられている。


 
 細胞外マトリックス
 細胞外マトリックス(Extracellular Matrix)とは生物において、細胞の外に存在する超分子構造体である。通常ECMと略され細胞外基質、細胞間マトリックスともいう。

 多細胞生物(動物、植物)の場合、細胞外の空間を充填する物質であると同時に骨格的役割、細胞接着における足場の役割、細胞増殖因子などの保持・提供する役割などを担う。植物における代表的な細胞外マトリックス成分は、セルロースである。

 ヒトを含めた脊椎動物に顕著な成分は、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチンやラミニンといった糖タンパク質(一部は細胞接着分子)である。

 細胞外マトリックスを操作することで組織や細胞を制御し再生医療などに利用する方法をマトリックス工学という。また個々の細胞外マトリックス成分やその複合体は細胞培養などに用いられ、既に医療応用も盛んである。

 特にブタの膀胱から抽出した細胞外マトリックスはアメリカ合衆国において実用化が進められており、ヒトにおいても事故で切断した指先を再生することに成功している。

 「幹細胞」利用整形
 最近の研究で、幹細胞が腹部の皮下組織にあることが発見されている。番組ではこの皮下組織の幹細胞を使った事例を紹介している。

 北九州の北村薫医師は、この細胞を使って乳ガンの切除などで凹んだ女性の胸部を再生することに成功している。自分の細胞を使ってへこみが治った女性は「これで友達と温泉に行ける」と喜んでいた。だが、臨床試験段階で副作用を探っている段階だ。

 この結果に目をつけたのがロンドンの美容整形のアーメル・カーン医師。副作用の可能性があっても自分の細胞ならば安全だ。保険適用外で契約書にサインをした人を相手に整形手術を行っている。

 ミュージカルスターを目指す、若い女性の胸部をふくらませることや、頬のこけた貧相な顔立ちの女性がふっくら豊かになった。これからは美しい女性がどんどん増えることになりそうだ。

 幹細胞利用「再生治療」
 幹細胞については、白血球などの血液の病気治療に骨髄幹細胞やさい帯血幹細胞などが使われている。

 2007年11月のNHKの番組「眠れる再生力を呼びさませ」では、骨髄幹細胞を使って脳梗塞や心筋梗塞の治療に効果をあげている札幌医科大学附属病院の事例を紹介している。

 その再生治療に使われるのは、患者本人の骨の中にある骨髄の細胞である。骨髄の幹細胞と呼ばれる細胞を体内から取り出し培養、患者の血管に注入すると、傷ついた脳の神経が再生するという。番組では、この臨床試験に挑んだ脳梗塞患者を8ヶ月に渡って取材。左半身に運動マヒを抱えた患者が、今までの治療では考えられない回復を続けている様子を描く。

 また、自らの骨髄の細胞を使った再生治療は、心臓でも行われている。ドイツでは心筋梗塞患者が骨髄の細胞で治療を行った。その結果傷ついた心筋細胞が復活し、スポーツが出来るまでになった。

 

参考HP NHKスペシャル「人体製造」・Wikipedia「細胞外マトリックス」・アイラブサイエンス「再生力を呼び覚ませ! 

医療再生は可能か (ちくま新書)
川渕 孝一
筑摩書房

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エスカルコ゛・サイエンス 再生医療のしくみ (エスカルゴ・サイエンス)
八代 嘉美,中内 啓光
日本実業出版社

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造血幹細胞を探せ!「骨髄バンク」「さい帯血バンク」とは何か?

2010年03月28日 | 健康
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 骨髄の造血幹細胞
 白血病などの血液の病気を治療するためには、造血幹細胞の移植が有効である。造血幹細胞は、あらゆる血球系細胞(赤血球、白血球、リンパ球、血小板のもとになる巨核球など)に分化できる幹細胞であり、骨髄に多く見られるのがわかっている。

 通常は骨髄バンクに登録してある人から、血液型の合う人を見つけ出し、その人の腸骨から骨髄液をもらって、必要な患者に静脈輸血することで、移植は完了する。骨髄バンクはいつでも患者に骨髄液を提供できるように、1991年(平成3年)12月に設立された。

 骨髄バンクには名前さえ登録してあればよく、事前に血液を採取・保存する必要はない。血液型が一致して、候補になることも数年に1度あるかないか。問題は、骨髄液を採血するのに痛みを伴い、4日ほど入院するなど提供者への負担が大きいことだった。

 さい帯にも造血幹細胞
 ところが造血幹細胞は骨髄だけでなく、分娩時に採取される赤ちゃんのへその緒や胎盤に残った血液・さい帯血の中にも多く含まれていることがわかり、これをとっておき冷凍保存すれば、赤ちゃんの血液型に一致するから本人のためにもなる。

 1995年に神奈川に最初のバンクが設立され、1999年(平成11年)8月には日本さい帯血バンクネットワークが発足、公的なバンク事業が始まった。同ネットワークによると、23日現在、全国で3万2783人分が保存されており、必要に応じて医療機関への供給などを行っている。

 さい帯血バンクの経営危機!
 白血病患者への移植治療などに用いられる、さい帯血を管理する「日本さい帯血バンクネットワーク」加盟のNPO法人「宮城さい帯血バンク」(理事長・里見進東北大病院院長)が経営危機に陥っていることが23日、分かった。同日の臨時総会で、11年度以降は事業継続が困難として、事業譲渡も含めて検討する方針を会員に示した。全国11カ所にある公的さい帯血バンクの経営危機が明らかになるのは初めて。

 東北大内に事務局を置く「宮城さい帯血バンク」は2000年に業務を開始。今年2月末までに計94本のさい帯血を骨髄性白血病患者らに供給した。現在は1028本のさい帯血を冷凍保存している。

 同バンクによると、運営には職員4人の人件費に加え、感染症などの各種検査費用を合わせた年間約3000万円が必要。一方、収入の大半を占める国からの補助金は、さい帯血の採取数などに応じて定額を各バンクに配分する仕組みで、同バンクに対する2008年度の支給額は1600万円、2009年度は2268万円だった。

 さい帯血の供給1件につき約17万円支払われる診療報酬も、2009年度は約200万円にとどまった。会費やチャリティーコンサートの開催で資金繰りに努めているのが現状で、年間約1000万円の赤字が続いているという。

 補助金頼みも限界
 公的なさい帯血バンクは、収入源の大部分を国の補助金に頼るなど、宮城に限らず厳しい運営を続けている。

 全国のバンクのさい帯血保存状況を一元管理する日本さい帯血バンクネットワーク(東京都港区)によると、移植のための患者負担はなく、補助金のほか、移植手術による診療報酬の一部や寄付金などでまかなっているのが現状という。一方で累積移植症例数は、1997年に初移植後、2003年に1000例を超し、今年2月末現在には計6103例と増加傾向にある。

 同ネットワークの野村正満監事は「白血病など重い血液病患者への移植など社会のニーズは高いが、どのバンクも大きな赤字を抱えており、いつ事業を断念してもおかしくない危機的状況。このままでは、移植を受ける患者に費用負担を求めざるを得なくなってくる」と話す。(毎日新聞 ‎2010年3月23日)‎

 骨髄バンクとは何か?
 骨髄バンク(Marrow Donor Program)とは、白血病などの血液疾患の治療として造血幹細胞移植(特に「骨髄移植」)が必要な患者のために、血縁関係のない健康な人(非血縁者)から提供される「骨髄液」を患者に斡旋する仕組み及びその業務を担う公的機関のことをいう。

 骨髄には、あらゆる血球系細胞(赤血球、白血球、リンパ球、血小板のもとになる巨核球など)に分化できる造血幹細胞が存在する。マウスにおいては一個の造血幹細胞を移植することによって、すべての造血系細胞を再構成させることができることが証明されており、ヒトにおいても骨髄移植は白血病など造血系の疾患の根治的治療として有効である場合がある。

 造血機能を営んでいる骨髄は赤色を呈するため赤色骨髄(あるいは赤色髄)、造血機能を失い脂肪化している骨髄は黄色を呈するために黄色骨髄(あるいは黄色髄)と呼ばれる。 造血を行う赤色骨髄は幼児期は全身の骨に存在するが、加齢と共に四肢の骨の造血機能は失われ、黄色骨髄に置き換わる。

 25歳を過ぎた成人では体躯の骨にほとんどの赤色骨髄が存在する。特に腸骨と胸骨に大量の赤色骨髄が存在する。骨髄細胞は血液の再生だけでなく、脳や心臓の細胞にも分化することがわかっていて、その再生治療にも使われるようになった。(参考:2007.11.05 NHKスペシャル「眠れる再生力を呼びさませ ~脳梗塞(こうそく)・心筋梗塞(こうそく)治療への挑戦~」)

 さい帯血バンクとは何か?
 さい帯血バンク(Cord Blood Bank)とは、白血病などの血液疾患の治療として造血幹細胞移植(特に「臍帯血移植」)が必要な患者のために、産婦から提供される臍帯血を患者に斡旋する仕組み及びその業務を担う公的機関のこと。

 日本においては「日本さい帯血バンクネットワーク」がバンク全体の連絡調整を担い、臍帯血の検査・保存、患者や提供者への対応などの実務は独立組織である各地の臍帯血バンク(2004年現在11団体)によって行われている。

 母親と胎児を結ぶさい帯と、胎盤の中に含まれる血液をさい帯血といいます。さい帯は出産後は不要となりますが、その血液中には骨髄と同様の、血液細胞を作り出すもとである「造血幹細胞」がたくさん含まれています。

 さい帯血の中には、赤血球、白血球、血小板などをつくりだす細胞(造血幹細胞)がたくさん含まれています。そのため、骨髄と同じように移植し、治療に役立てることができます。白血病など重い血液の病気や遺伝病など、現在は骨髄移植により治癒可能な病気の治療に用いられている。

 さい帯血バンクと骨髄バンクはどのように違うのだろうか?さい帯血バンクも骨髄バンクも、移植を必要とする患者さんのためにあり、共同で助け合いながら行うものです。しかし、その方法は随分異なる。

 さい帯血バンクには採取設備と、検査、保存・管理設備まで必要とし、かなり費用がかかる。これに対し、骨髄バンクはドナー登録さえしていればよく、患者が必要になったとき、骨髄を採取・即輸血するだけでよいので、保存・管理に予算を必要としない。 

参考HP 骨髄バンク http://www.jmdp.or.jp/・さい帯血バンクhttps://www.j-cord.gr.jp/ 

体に聞く骨髄移植
籏谷 一紀
文芸社

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未来へのおくりもの さい帯血のすべて

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ロシア 約4万年前 未知の人類発見!「デニソワ人」とは何か?

2010年03月27日 | 古生物
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 ラミダス猿人
 昨年、話題になった科学ニュースの中に「ラミダス猿人の復元」がある。「ラミダス猿人は」東京大総合研究博物館の諏訪元教授らの研究グループが、約440万年前の人類、アルディピテクス・ラミダス(ラミダス猿人)の化石から全身像を復元することに成功し、生活の様子が明確になった。この人類は二足歩行をしていたらしい。

 化石は、「アルディピテクス・ラミダス」という種類の人類で「アルディ」と名づけられた。身長1メートル20の女性で、全身骨格としては最古。サイエンス誌は「化石が発見されたのは1994年だが、47人の研究者が10年以上かけて詳細に分析した」とねばり強い研究を評価した。しかし「アルディ」は猿人、人類の遠い祖先にあたる。

 人類の起源
 人類の祖先として、時代によって猿人、とか旧人、原人、新人とか言った言葉をよく聞くが、人類というとどの時代のものを言うのだろうか?

「ラミダス猿人は」東京大総合研究博物館の諏訪元教授らの研究グループが、約440万年前の人類、アルディピテクス・ラミダス(ラミダス猿人)の化石から全身像を復元することに成功したもので、二足歩行をしていた人類としては世界最古のものとして注目されている。

 人類とは生物の中で直立二足歩行が可能な存在。人類の進化は、アウストラロピテクスとよばれる猿人に始まった。彼らは400万~500万年前に現われ、150万年目には姿を消してしまった。アウストラロピテクスは、直立2足歩行をするようになった初めての生物であった。

 160万~150万年前には、脳が大きくなり、歯が小型になったホモ・エレクトゥスが現われた。原人ともいわれる。ホモ・エレクトゥスも、はじめはそれまでのヒトの祖先と同じくアフリカの東部と南部だけで生活をしていたが、100万年前くらいからユーラシア大陸へと移動していった。

 30万~20万年前に、ホモ・エレクトゥスはホモ・サピエンスへと進化した。旧人である。ホモ・サピエンスは“知性あるヒト”という意味で、彼らは当時のきびしい氷河期の中でも効率よく食料を獲得することができた。また人類史上初めて死者に花を添えるなどして弔う習慣ができた。ホモ・サピエンスが現代人類の直接の祖先である。

 未知の人類「デニソワ人」
 約4万年前にロシア南部で未知の人類が暮らしていた可能性の高いことが、独マックスプランク研究所などの分析で分かった。発見された地名からデニソワ人と命名された。約104万年前に現生人類やネアンデルタール人と共通の祖先から枝分かれし、独自に進化したらしい。3月25日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 研究チームは、ロシア南部のアルタイ山脈にあるデニソワ洞穴で見つかった指の骨片を分析した。細胞内の小器官「ミトコンドリア」からDNAを取り出し、塩基配列を特定、現生人類やネアンデルタール人、チンパンジーなどと比較した。その結果、骨片は約104万年前に現生人類やネアンデルタール人と共通の祖先から枝分かれした新しい人類のものと結論づけた。骨片が出土した地層の年代が4万8000~3万年前だったことから、4万年前まで存在していたことも判明した。

 人類の起源はアフリカと考えられている。約190万年前、猿人から進化した原人がアジアへ移動。原人は、約47万年前にネアンデルタール人の祖先と現生人類の祖先にそれぞれ進化したとされている。チームは「未知の人類はユーラシア大陸で、他の人類の祖先と近接して共存していたようだ」としている。(毎日新聞 2010年03月26日)

 さまざまな人類の祖先たち
 ホモ・ローデシエンシス:ホモ・ローデシエンシスは30万から12.5万年前に生きていた。アルカイック・ホモ・サピエンスやホモ・サピエンス・ローデシエンシスのような呼称も提案されたが、多くの研究者はローデシア人がホモ・ハイデルベルゲンシスの仲間に含まれると考えている。
 
 2006年2月におそらくホモ・エレクトゥスとホモ・サピエンスの中間か、その近くの行き止まりにいた種のものと思われる頭骨の上部がエチオピアのGawisから発見された。このGawis頭骨は50万から25万年前のものと推測されている。大まかな概要だけは知られているが、発掘チームは査読付き論文として発表していない。頭骨の特徴は彼らが中間種であるか、ボド・マンの女性のものであるかを示している。
 
 ホモ・ネアンデルターレンシス:ネアンデルタール人は25万から3万年程前まで生きていた。ネアンデルタール人が独立した種ホモ・ネアンデルターレンシスか、ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスとしてホモ・サピエンスの中に含まれるべきかは議論が継続中であり結論は出ていない。ミトコンドリアDNAの配列の証拠は大規模な遺伝子流動がネアンデルタール人と人類の間で起こらなかったことを示す。従って、それに基づけば二つの種は66万年ほど前に祖先を共有した異なる種である。

 1997年にペンシルベニア州立大学人類学の准教授マーク・ストーンキングはこう述べた:「これらの(ネアンデルタール人の骨から抽出されたミトコンドリアDNAに基づく)結果はネアンデルタール人がミトコンドリアDNAを現代人に与えなかったことを示している。......ネアンデルタール人は我々の祖先ではない」。ネアンデルタール人のDNAの配列研究もこの結果を支持した。多地域進化説の支持者は最近の非アフリカ人の核DNAが100万年前まで遡る可能性を示す研究を指摘する。しかしこの研究の信頼性は疑われている。

 ホモ・サピエンス:現生人類のホモ・サピエンス(サピエンスは賢い、知的を意味する)は25万年前から現在まで生きている。40万年前から25万年前の中期更新世の第二間氷期までの間に、彼らには頭骨の拡張と石器技術の精巧さが発達する傾向が見られ、ホモ・エレクトゥスからホモ・サピエンスへの移行の証拠を残した。

 直接の証拠は、ホモ・エレクトゥスがアフリカから他の地域へ移住し、その間にアフリカで種分化が起き(アフリカのどこで起きたかについてはほとんど証拠がない)エレクトゥスからホモ・サピエンスが分かれたことを示唆する。

 それから、アフリカとアジア、ヨーロッパでエレクトゥスがホモ・サピエンスに入れ替わった。このホモ・サピエンスの移動と誕生のシナリオは単一起源説(アフリカ単一起源説)と呼ばれる。

 ホモ・サピエンス・イダルトゥはエチオピアから発見されており、16万年前頃生きていたと考えられる。それは亜種として扱われてはいるが、解剖学的には現代人であり、知られているなかでもっとも古い現代人である。

 ホモ・フローレシエンシス:ホモ・フローレシエンシスはおよそ10万から1.2万年前に生きていた。彼らはその小ささ(おそらく島嶼化による)から「ホビット」とあだ名を付けられている。ホモ・フローレシエンシスはその大きさと年齢から、実際に最近まで生きていた現生人類と共通しない特徴を持つホモ属の興味深い例と考えられている。

 すなわち、いつの時点かで現代人と祖先を共有するが、現代人の系統とは分かれて独自の進化の過程をたどった。主要な発見は、30歳程度の女性と思われる骨格である。2003年に発見され、1.8万年前のものと見積もられた。ホモ・フローレシエンシスの生きている女性は身長1メートル、脳容量は380cm3でチンパンジー並みに小さく、現代人女性の1400cm3の三分の一程度であると推測されている。

 しかしホモ・フローレシエンシスが本当に別の種であるかは未だ議論が続いている。 一部の科学者は小人症を患ったホモ・サピエンスであると考えている。この仮説はフローレス島に住む現代人が小柄であるために、ある程度説得力がある。小柄さと小人症によって本当にホビットのような人が生まれた可能性はある。別種説への他の主要な反論は、現生人類と関連した道具類とともに発見されたという点である。

 

参考HP Wikipedia「人類の進化」・アイラブサイエンス「ラミダス猿人 

人類進化の700万年 (講談社現代新書)
三井 誠
講談社

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人類の足跡10万年全史
スティーヴン オッペンハイマー
草思社

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宇宙の謎を地球で再現!J-PARC世界最強度のミュオン発生

2010年03月26日 | 物理
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 映画「2012」
 映画「2012」を見た。マヤ暦による2012年終末説を題材につくられた映画。地球滅亡を目の前になすすべもない人々が、巨大な自然災害から必死に逃げまどう姿を描く。人類の大半が本当に命を落とす大災害の凄まじい描写をはじめ、従来のディザスター映画が描かなかった部分に踏み込んだ力作だ。CGを使った、通常では考えられない自然災害の迫力ある描写が見事であった。

 さて、自然災害がどうして起きるのか、その科学的根拠に興味がわいた。ドロドロした意味不明の古代の予言が出てくるのかと思ったが、スッキリした最新科学を根拠にしているところに、好感が持てた。

 この作品では2012年に予想されている、太陽活動の極大期を災害の原因とした。現在は太陽黒点の極小期にあたっているが、これから太陽黒点が増え、2年後に急激に活動することを想定している。

 さらに2012年、観測史上最大の太陽活動が起き、大量の太陽ニュートリノが地球を襲う。その結果、ニュートリノがまるで電子レンジのように、地球のコアを過熱させる。やがてその熱で緩んだ地殻が一気に崩壊をはじめ、わずか3日で地表のすべてが海中に没するという設定である。

 電子レンジの原理
 電子レンジは携帯電話にも使われる、マイクロ波(極超短波)という電磁波を食品に当てて加熱する調理器具である。その波長は1cm~100cmと大きい。電子レンジは「電子」を使っているわけではない。

 大きさ約1.0×10-16 cm、9.1093826×10−31kgである「電子」よりも、はるかに小さく、軽いニュートリノ(電子の約1/25000)が、電子レンジの代わりになるとは考えにくい。通常は大部分のニュートリノは地球を通り抜けている。

 ということで、実際には起こりそうもないと思えるも現象であるが、科学的には興味深い。宇宙には大量の素粒子が飛び交っていて、素粒子が集まったり分かれたりして不思議な現象が起きているからだ。

 宇宙の常識と日常の常識
 例えば陽子はアップクォーク2個と、ダウンクォーク1個が結合して作られている。これらばらばらのクォークは軽いが、結合して陽子などの「ハドロン」になると、なぜか重さ(質量)が100倍くらいになっている。1+1+1=100!? なぜそうなるのか、よく解っていない。

 また、陽子(p)-陽子(p)-中性子(n)から構成されている原子核に、K中間子を埋め込むと、その直径が縮むのではないかと予想されている。この時にはたらく「強い相互作用」で、原子核の密度がグンと上がり、地球上では無いような高い密度の物質が作り出せる。それが宇宙にたくさん発見されている、中性子星やブラックホールなどだ。

 このように宇宙という現実の中では、日常という常識は当てはまらない、不思議な現実がたくさん起きている。そういう意味では、たかだか数千年の歴史で起こらなかったことが、地球上で初めて起きても何ら不思議ではない。

 J-PARC世界最強度のミュオン発生
 茨城県東海村にある、大強度陽子加速器施設(J-PARC)が世界最強度の「パルスミュオン」発生に成功した。 J-PARCは、文字通り「陽子」を光速近くまで加速させる装置である。これをグラファイト(炭素)の標的にぶつけることで他の様々な粒子を発生させることができる。

 これらの様々な粒子として知られているものに、クオークやレプトンがある。今回、大量発生させた「ミュオン(μ粒子)」はレプトンのなかま。ミュオンを0.04秒間隔で周期的に発生させたので「パルスミュオン」と呼んだ。これまで最高だった英国のミュオン実験施設で得られた1パルス当たり約3万個を上回る18万個のパルスミュオンが発生していたことを確認した。

 ミュオンは、湯川秀樹博士が存在を予言したパイ中間子が崩壊してできる寿命の短い不安定な素粒子。J-PARC では光速近くまで加速した陽子ビームをグラファイト(黒鉛)の標的に照射してパイ中間子をつくり出し、さらにそのパイ中間子からミュオンを発生することができる。

 今後、強力なミュオンビームを利用し、物理学の基礎的研究のほか磁性材料、超電導材料、燃料電池材料などさまざまな応用分野、産業の発展につながる物質・生命科学研究の成果が期待されている。(サイエンスポータルnews 2010年3月16日)

 クオークやレプトン
 クオークやレプトンは原子をつくっている素粒子。ラザフォードらが原子の研究をしているうちに、原子は最少の粒子ではなく、原子の中に原子核という別の粒子が存在することを発見した。さらに、放射線の発見によって、原子核も崩壊し、中性子や陽子などの粒子に分かれる核分裂反応が発見され、さらに、陽子や中性子もクオークやレプトンなどの粒子が結びついてできていることが、発見されていくことになった。

 現在知られているクオークは アップ、ダウン、チャーム、ストレンジ(サイドウェイ)、トップ(トゥルース)、ボトム(ビューティ)の6種類。現在までに知られているレプトンは、電荷を持つ電子・ミュー粒子・タウ粒子、そして電荷を持たないニュートリノである電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの6種類。

 陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個、中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個が「強い相互作用」で結びついていることが分かっている。

 宇宙は素粒子実験室
 これらのクオーク・レプトンなどの素粒子が私たちの日常に何の関係があるの?と思う人もいるかもしれない。たまたま地球上のこの空間では、素粒子が目に見えて反応することが少ないので、考えずにすむだけであって、宇宙空間に出たとたん、飛び交う素粒子の嵐に身を置くことになる。

 また、初期の宇宙は、クォークなどがまるでスープのような状態で自由に飛び回っていたが、ビックバンから約1万分の1秒後に、クォークは陽子や中性子という粒子の中に閉じこめられた。今の世界にいる私たちは、自由に飛び回るクォークを見ることはできない。

 その後、陽子などが集まって原子核を作り、原子が生まれ、さらに星が、そして地球が作られてきた。宇宙の始まりから現在までの長い間には、まだ解明されていない謎がたくさんある。私たちをつくる素粒子は原子ではなく、クオークやレプトンである。私たちのルーツを探る旅は、まだ始まったばかりである。

 

参考HP Wikipedia「レプトン・クオーク」「ミュオン」・J-PARC「原子核素粒子研究」  

ビックリするほど素粒子がわかる本 クォークはどうして姿を見せないのか? ニュートリノはなぜ地球を突き抜けるのか? (サイエンス・アイ新書)
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素粒子とは何か―クォークから超ひも理論まで (ニュートンムック Newton別冊)

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知らされない実の父親!非配偶者間人工授精「AID」とは何か?

2010年03月25日 | ライフサイエンス
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 AIDとAIDSの違い
 AIDとは何だろう?AIDSである後天性免疫不全症候群とまぎらわしい。AIDとは非配偶者間人工授精のこと。

 海外では精子の仲介をするビジネスが盛んである。そういった企業や医療機関を介在しない非配偶者間人工授精も、珍しくなくなってきた。例えばアメリカでは、家庭で容易に精子の採取が出来るキットや、家庭で女性一人で人工授精できる専用のキットが17ドル程度で販売されている。またインターネットでリストから希望する男性の精子を注文することが出来る企業のサイトも存在し、凍結された精子を自宅で受け取り、自宅で人工授精をすることも出来る。

 日本でも主に男性側に原因があり、妊娠できない夫婦のために1948年からはじめられたもので、第三者の精子を使う受精方法である。反対や倫理的問題はあったものの、その後数十年の間は特に何の規制もなく、技術は行われ続けてきた。精子提供者は匿名で、提供者に関する情報はその精子を使って子どもを得た夫婦にもまったく伝えらなかった。

 もちろん提供者自身にも、自分の精子が誰に提供されたのか、子どもが生まれたのかという情報は与えられなかった。AIDに関しては、提供者、医師そして夫婦がその事実をふせ続けることで、表立って問題が起こることはこれまでなかった。AIDは60年以上にわたり実施され続け、現在でも年間120~200名前後の子どもたちが生まれており、推計ですでに1万人以上の子どもが誕生している。

 「人生が虚構のようだ」
 もし、自分が両親の実の子でなかったら...誰でも一度は考えたことがあるかもしれない。AIDの子として出生した2人の女性が、成人してその事実を偶然知ってしまった。

 23歳で事実を知ったという30歳の女性は「人生が虚構のように感じ、大学をやめたり親と一時絶交状態になった」と話した。

 結婚後の32歳で知らされ、現在大学生と高校生の子供がいるという女性は「両親や親せきに見た目が似ていない、居心地の悪さを感じながら育ってきた。自分は子供を産んでよかったのか、と思った」と語った。

 そのうえで2人は「育ててくれた両親は好きだが、自分のルーツを知りたいのは当然の気持ち。提供者が分からないと意図しない近親婚や、遺伝的な病気の治療が遅れる可能性もある」などと、出自を知る権利を強調した。

 専門家の立場から慶応大医学部の渡辺久子専任講師(小児精神科)は「社会の中で相談できる場所などの支援機能が必要だ」と指摘、不妊治療の問題を社会全体で考えるべきだと訴えた。(毎日新聞 2010年3月21日)

 日本におけるAIDのはじまり…
 1948年、慶應義塾大学病院にて初めて実施され、翌1949年に女の子が誕生した。AIDは男性側に原因があり、妊娠できない夫婦のためにはじめられたもので、第三者の精子を使うことへの反対や倫理的問題はあったものの、その後数十年の間は特に何の規制もなく、技術は行われ続けてきた。

 精子提供者は匿名で、提供者に関する情報はその精子を使って子どもを得た夫婦にもまったく伝えられなかった。もちろん提供者自身にも、自分の精子が誰に提供されたのか、子どもが生まれたのかという情報は与えらなかった。AIDに関しては、提供者、医師そして夫婦がその事実をふせ続けることで、表立って問題が起こることはなかった。

 商業目的の精子バンクの誕生…
 1996年、インターネット上で精子提供者を募集するという、国内初の民間精子バンクが誕生した。このバンクの特徴は、提供者は匿名ではなく、利用者が希望すれば面接のうえ、提供者を選べるという点であった。

 商業目的の精子売買という新たな問題が提起され、これに対し、日本産科婦人科学会は、1997年5月にはじめて、「非配偶者間人工授精と精子提供に関する見解(会告)」という形で、それまで行われ続けてきたAIDの技術を追認し、一方で実施する施設に一定の規制をする会告を発表した。

 日本産科婦人科学会の見解
 この見解にはAIDを実施する際の夫婦の条件や、選択時の同意書の作成と保管、それら夫婦及び生まれてくる子どもへのプライバシーに配慮すること、精子提供者の条件、また提供者のプライバシーの保護と記録の保存、営利目的の精子売買の禁止、AIDを実施する医療施設の学会への登録等が示されていた。

 しかし、これはあくまで学会の「見解」であり、学会に所属している医師に呼びかけられたものでしかなかった。そのため、これに違反したときの罰則もなければ拘束力もなく、実際には実施施設後とのやり方に任されているのが現状と言える。

 議論のはじまり…
 1999年から旧厚生省にて生殖補助医療技術に関する専門委員会の話し合いが始められた。(この議論がはじまった背景には、学会の会告に反し、実妹からの卵子提供による体外受精や、実父の精子を使っての人工授精などを行う医師が出てきたことがあった。)
 2000年12月には「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」が出された。それを受け、さらに厚生労働省では2001年から生殖補助医療部会を設け、医師のほか小児精神科や法律、福祉、倫理等の専門家により、そのあり方が話し合われることになった。
 2000年の報告書では、提供者の情報は、「提供者が特定できないものについて」「提供した人がその子に開示することを了承した範囲内で」というように、出自を知る権利に一定の制限が設けられていた。
 ところが2003年4月に提出された、生殖補助医療部会の最終報告書では、第三者からの精子・卵子・胚の提供を認める一方、代理出産や営利目的の精子売買は禁止とし、また生まれた子どもの「出自を知る権利」を認めた。15歳以上になった子どもが希望すれば、提供者の情報を個人が特定できる範囲まで認めるという。

 法案化に向けて…
 2003年に提出された報告書をの内容をもとに、法案を国会に提出する、はずだったが、2004年、2005年の通常国会への提出も見送られ、2006年10月現在、法案化への動きはまったく止まってしまっている。

 法的親子関係について
 法的な親子関係についての議論は、2001年から法務省に生殖補助医療関連親子法制部会を設け、親と子の関係、提供者と子の関係、子どもの出自を知る権利や近親婚の可能性などについての問題の話し合いが行われ始めていたが、上記の法案化の問題などがほとんど棚上げ状態になっていることもあり、議論はとまってしまっている。

 現在の実施の状況
 AIDは60年以上にわたり実施され続け、現在でも年間120~200名前後の子どもたちが生まれ、推計ですでに1万人以上の子どもが誕生しているといわれている。

 AIDは60年以上の歴史があるにもかかわらず、提供者は完全に匿名であり、親もその事実を子どもはおろか周囲にさえ決して告げることはなかった。

 そのため、そもそも自分がそのような方法で生まれたと子どもだと、その事実を知る人はほとんどいなかった。現在、AIDの抱える問題について声をあげはじめている人たちも偶然にして自分の出生を知った例が多い。

 AID実施後のその家族や子どもへの追跡調査もほとんど行われておらず、すべてが水面下で行われてきたため、この技術に関して大きな問題は起こっていないと言われてきた。

 それでも最近は、親や提供者に対する調査がいくつか行われ始めたようだ。(HP「AIDについて考える」より)

 人工授精とは?
 人工授精とは、生殖医療技術の一つで、人為的に精液を生殖器に注入することによって、妊娠を実現することを目的とした技術のことである。

 精子の運動性や数に問題があり妊娠に困難がある場合、性交障害(インポテンツ)がある場合、女性生殖器の狭窄などによって精子の通過性に問題がある場合などに行われる。

 手法として、精子を注射器のような器具を用いて子宮内に注入することによって行われる。かつては採取した精液をそのまま注入していたが、現在では精液を遠心分離などによって精製し、活性の高い精子を選別するなどして効率向上と副作用(精液中に存在するプロスタグランジンの影響などによる発熱等)の低減を図っている。

 精子の提供者について配偶者間人工授精(AIH:Artificial Insemination by Husband)と非配偶者間人工授精(AID:Artificial Insemination by Donor)に区別される。(出典:Wikipedia)

 

参考HP AIDについて考える「日本におけるAIDの歴史」・Wikipedia「人工授精」 

不妊の救世主「顕微授精」最新情報 (小学館文庫)
田中 温
小学館

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生殖医療と生命倫理-不妊の悩み、科学者たちの提言- (学術会議叢書 (1))
金岡 祐一,吉川 弘之,吉田 修,青野 敏博,中谷 瑾子,水野 紀子,米本 昌平,加藤 尚武,柘植 あづみ,市野川 容孝,岩志 和一郎,森 崇英,矢内原 巧,入谷 明
日本学術協力財団

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地球温暖化!南極で巨大氷山衝突・分離 影響は未知数

2010年03月24日 | 地球温暖化
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 巨大氷山2つが衝突
 地球温暖化のためか、南極の巨大な氷床が分離し、2つの巨大氷山となって大海を漂い始めた。大きさは埼玉県ぐらいのものと千葉県の半分ぐらいのものだという。

 氷山の一角という言葉がある通り、見えている部分でそのくらいであるから、見えない部分は10倍ある。さしずめ関東平野ぐらいだろうか?そんな巨大の氷が環境にどんな影響を与えるか専門家は様々な警告を発している。

 南極の巨大氷山が半島状の氷河をもぎ取り、新たな巨大氷山をつくった様子を、米航空宇宙局(NASA)の地球観測衛星アクアが撮影した。氷山の面積を日本に当てはめると、埼玉県が房総半島とぶつかり、千葉県の半分がもぎ取られたのと同じくらいになる。新たな氷山は、重量が7千億~8千億トンで、豪州の方向にゆっくり動き始めた。

 埼玉県ほどの氷山B-09Bは、1987年に南極大陸から離れ、周辺を漂っていた。その後、2月7日にメルツ氷河に接近、根元にひびをつくった。そして、ひびが広がって氷河がちぎれ、長さ78キロ、幅39キロの氷山になった。

 メルツ氷河はペンギンの繁殖地。ペンギンを乗せたまま漂流したとみられ、専門家は生態系への影響が出るとみている。(asahi.com 2010年3月19日)

 そもそも氷山とは何か?
 氷山が見られる海域は限られており、南半球では南氷洋、北半球ではグリーンランド東岸とその周辺の島々から流出したものが北大西洋高緯度に広がる。北太平洋やベーリング海などでは氷山は見られない。

 南極地域と北極地域では氷山の成因が異なる。南氷洋では、南極大陸から押し出された棚氷により形成されるため、上面の平らな台状を呈し、巨大なものが多い。北大西洋では氷河が海に流れ込んでできるので、とがった山型の形状のものが多い。

 氷山の形成に関する説明は、1760年にロシア人のミハイル・ロモノーソフによって初めて発表された。

 20世紀になると氷山の研究や監視のため幾つかの機関が設立された。タイタニックの事件を教訓にして1914年に設立されたInternational Ice Patrolは、北大西洋の氷山を監視している。

 北大西洋に存在する氷山の平均的な一生は、およそ3,000年前に雪として降り、万年雪となって堆積して50年後には氷河となり、数千年かけて移動し、最後に氷河から分離して氷山として海に浮かぶことになる。同海域の氷山は、氷山になってから平均で3年経過したものである。

 海洋循環への影響 
 上の図はベルトコンベアのように地球規模で流れる、海洋大循環の図である。南極大陸沖合の冷たい深海流もこの循環に組み込まれており、栄養豊富な海洋深層水を表層まで押し上げて世界中に運んでいる。

 オーストラリアにあるタスマニア大学の外郭団体「南極気候学・生態システム学共同研究センター(ACECRC)」の研究者は、問題になっている2つの巨大な氷山について次のように述べた。「流れ着いた先で海洋循環や海氷・深層水の形成に影響を与える危険がある」。

 衝突現場のメルツ氷河は南極大陸の東端付近に位置し、傍らを冷たく塩分濃度の高い深層海流が通っている。巨大な氷山の影響で海流の動力源である高密度の海水の形成が減速すれば、深層海流に変化が生じるかもしれない。深く沈み込んだ高密度の海水は深海生物に酸素を供給する役割も果たすため、一部の海域に酸欠の“不毛地帯”ができるのではないかと懸念する科学者もいる。(National Geographic News March 2, 2010)

  海洋微生物やペンギンへの影響
 衝突によって生まれた氷山の南極海漂流について、NASAのゴダード宇宙飛行センターで海氷研究を行っているクレア・パーキンソン氏は次のように話している。「海洋循環が今回の氷山のような漂流物によって阻まれると、その海域の全生物も影響を免れ得ない」。

 同氏は海洋の変化がエサとなる微生物の減少につながることもあると述べ、海洋生態系の食物連鎖全体に予測不能な影響を及ぼしかねないと指摘している。画像のコウテイペンギンも例外ではない。ドキュメンタリー映画『皇帝ペンギン』で描かれたコウテイペンギンたちも、この海域に生息しているのだ。

 例えば、北方向へ広がった海氷が開放水域を覆うと、植物プランクトンの光合成に必要な太陽光が遮断され、食物連鎖の上位にまで悪影響をもたらすことになるという。

 また、今回の巨大な氷山が障害物となる可能性もある。「海洋を移動中にペンギンの通り道を突然ふさいでしまうこともあり得る」と同氏は話している。(National Geographic News March 2, 2010) 

 

タイタニックは沈められた
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集英社

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氷山の一角【PP-30600】[ポスター]

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核燃料サイクル・プルサーマル計画に残された課題は何か?

2010年03月23日 | エネルギー
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 原発増設・核燃料サイクル計画反対?
 日本共産党の志位和夫委員長は3月21日、福井市で記者会見し、政府・経済産業省がすすめている原発大増設計画、核燃料サイクル政策を中止し、自然エネルギーの本格的利用への政策転換をおこなうことを、強く求めた。

 原発は技術的に未確立で安全性が確保されておらず、放射能汚染という深刻な環境破壊をもたらす。放射性廃棄物の処理・処分方法も未確立であり、わが国が有数の地震国であることにてらしても、原発大増設の計画は無謀で危険極まりないものである。また稼働率の引き上げは、原発の定期検査間隔を大幅に延長し、老朽化した原発を酷使し、事故につながる危険なものである。

 一方で、政府は、すでに破たんが明瞭となった核燃料サイクル政策に固執している。高速増殖原型炉「もんじゅ」の運転再開を強行しようとし、2015年度までにプルサーマル運転を、16~18基の原発で実施する計画をすすめ、すでに一部の原発ではプルサーマル運転が開始されている。

 欧米各国では、技術的困難、危険性から、高速増殖炉開発を中止している。日本も、この危険な計画から撤退すべきである。危険なプルサーマル計画はすみやかに中止すべきである。(2010年3月22日 赤旗)

 確立していない自然エネルギー利用技術
 政府がすすめようとしている、原発増設・核燃料サイクル政策。志位氏がいうように、たしかに危険なことはわかる。自然エネルギーの本格的利用も大賛成である。しかし、自然エネルギー利用の技術確立までの間、すでに発電量の30%をになっている原子力発電を利用することはよいことだと思う。

 太陽光発電のエネルギー効率は10%程度。風力発電で20%、原子力も実は30%程度、火力が一番よく50%以上だという。原子力はCO2を出さないので注目されている。あまり知られていないが、太陽電池をつくるのに大量のCO2を放出している問題もある。

 もし、技術確立をいうならば、自然エネルギーの技術確立こそ一番遅れている。太陽電池が一番期待されているが、もう少し効率を上げてからでないと本格利用にはならない。風力発電は風がなくても強すぎても使えないなど、天候に左右されるのが問題だ。
 
 確立していない高速増殖炉
 志位氏は核燃料サイクル政策は破綻していると書いてあるが、私はまだそうは思わない。現に「プルサーマル」は、現在イギリスとフランスで行われているし、これまでのところ重大な事故は報告されていない。

 だが、MOX燃料を高速中性子で燃やす「高速増殖炉」については、計画は確かに遅れている。世界的に見ても取り組んでいる国は少なく、アメリカ、フランス、イギリスなど計画を中止した国も多い。我が国の「もんじゅ」もストップしたままである。

 高速増殖炉は技術的に金属ナトリウムの管理方法が難しく、社会的にも核兵器に利用できる、プルトニウムを燃料とすることから危険性も高い。

 しかし、科学技術を発展させ、命をかけても人類に貢献したいという人にとっては、捨てがたい魅力がある。私もその一人である。

 稼働しない核燃料再処理工場
 使用済み核燃料を再処理してMOX燃料に加工する作業は、現在イギリスとフランスの会社にまかせている。2015年以降は国内で行う予定だが、青森県六ケ所村に建設中(2010年10月完成予定)の再処理工場が動き出す見通しが立っていない。

 再処理工場とは、使用済み核燃料からウランとプルトニウム、高レベル放射性廃棄物を取り出す重要な施設。ところが、使用済み核燃料を溶かす炉がこわれたり、放射性廃液が建物内にもれ出たりとトラブル続きだ。運営する日本原燃は2009年8月、14回目の完成延期を発表した。

 地元の反対も強く、本格的な実施の見通しはたっていない。さらに、MOX 燃料を燃やしたとしても、その燃料を再処理する施設も、現在その計画すら存在しない。
 
 日本にないMOX燃料工場
 青森県六ケ所村では、再処理工場で取り出されたウランとプルトニウムをMOX燃料に加工する工場の建設がまもなく始まる(2015年6月完成予定)。本来なら2007年に着工するはずだったが、国の耐震指針が変わったため、安全審査が長引いた。

 プルサーマル専用の大間原発を「Jパワー」が青森県大間に建設を始めた。大間原発はMOX燃料を100%使用する世界初の原発。2014年11月に営業運転を開始する予定だ。
 
 高レベル放射性廃棄物最終処分場が決まらない
 最終処分場とは、再処理工場から出た核のごみ「高レベル放射性廃棄物」を最終的に地中に埋める施設。ガラスと溶かしてステンレス容器に入れるが、放射能がウラン鉱石と同じレベルまで減るのに数万年かかるという。

 この最終処分場建設を引き受ける市町村がない。建設が決まれば国などから巨額のお金が入るため、財政難に苦しむいくつかの市町村で誘致の動きが出たが、住民の反対で実現しなかった。2007年に高知県東洋町がいったん応募したが、推進派の町長は選挙で落選。応募を受けて調査が始まったところはない。

 プルサーマルは4カ国で先行 アメリカは見直し
 プルサーマルは1963年にベルギーで始まり、海外ではフランス、ドイツ、アメリカ、インドなど9カ国で導入された。日本でもMOX燃料は試験的に使われ、2007年までに世界57基の原発でMOX燃料の集合体6018体が使用された。

 商業用にプルサーマル発電を行っているのは、フランス、ドイツ、ベルギー、スイスの4カ国。中でも圧倒的に多いのがフランスとドイツで、2007年までにフランスは3割以上の原発でプルサーマルを導入し、MOX燃料2894体を使っている。ドイツは2220体。今までのところトラブルは報告されていない。

  脱・核燃料サイクルめざすアメリカ
 オバマ大統領 アメリカは2009年4月、オバマ政権が核燃料サイクルの見直しを表明。使用済み核燃料の再処理施設やプルトニウムを燃やす高速増殖炉の計画を取りやめた。プルサーマルも商業使用は行っていない。理由は、核がテロなどに悪用される不安がぬぐえないため。計画推進にばく大なお金もかかり、景気対策を優先するオバマ政権は「現実的でない」と判断した。(毎日新聞 「核燃料サイクル・見えない先行き」)

 

参考HP Wikipedia「プルサーマル」「高速増殖炉」・毎日新聞ニュースがわかる「核燃料サイクル・見えない先行き」 

核燃料サイクルの闇―イギリス・セラフィールドからの報告
秋元 健治
現代書館

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核燃料サイクル20年の真実―六ケ所村再処理工場始動へ (電気新聞ブックス)
塚原 晶大
日本電気協会新聞部

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広がる「プルサーマル計画」国内第2号!伊方原発3号機が起動

2010年03月22日 | エネルギー
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 プルサーマルとは何か?
 政府の温暖化対策の支援を受け、原子力発電計画がすすめられている。原子力発電所を増やすのは、狭い日本では難しい。同時に発電効率を上げる努力も必要だ。その一つの技術がプルサーマル計画だ。

 原子力発電所で使い終わった核燃料からプルトニウムという物質を取り出し、ウランと混ぜて、再び原発の燃料として使うことさ。この燃料はMOX燃料という。

  本来、原子力発電の燃料はウラン。その燃えかすには、燃え残りのウランと、ウランが中性子を吸収してできたプルトニウムと、放射性物質が含まれている。

  プルトニウムは原子爆弾などの核兵器をつくれる、とても危険な物質。プルサーマルとは、余ったプルトニウムをうまく燃やしてエネルギー源に活用しようという一石二鳥をねらった計画である。 

 プルサーマル発電第2号起動
 今回、国内2例目のプルサーマル発電に向け、四国電力は 3月1日午後、伊方原発3号機(愛媛県伊方町、加圧水型、出力89万キロワット)の原子炉を起動させた。2日朝、核分裂の状態が一定となる「臨界」を迎え、4日に発電を、30日に営業運転を始める。起動は2月下旬の予定だったが、同機で昨年11月に起きた微量の放射能漏れの原因究明のため約1週間遅れた。

 今年1月に定期検査で運転を停止し、2月9~12日にMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料16体を取り付けていた。

 プルサーマル発電は、使用済みウラン燃料からプルトニウムを抽出して製造するMOX燃料を通常の軽水炉で燃やす発電方式。同じMOX燃料を使う高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が1995年のナトリウム漏れ事故で長期停止中のため、プルトニウム利用の“つなぎ役”から当面の“本命”に浮上した。

 1997年に推進が閣議了解され、電気事業連合会も10年度までに全国16~18基の原発で実施する計画を立てた。しかし、東京、関西電力でMOX燃料の検査データ改ざんなどが発覚して計画が中断。大きなトラブルのない後発の九州電力が玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で昨年11月、全国初のプルサーマル発電を始め、同様に地元との関係が良好な四電が続くことになった。

 全国的には当初計画通りに進んでおらず、電事連は昨年、16~18基の原発への導入目標時期を5年間先送りしている。(毎日新聞 2010年3月1日)

 第1号は九州電力玄海原発
 原子力発電所で燃やした核燃料を再処理してもう一度原発で使う、日本初のプルサーマル発電が2009年11月9日、佐賀県玄海町の九州電力玄海原発で始まった。国は核燃料をリサイクルして使う計画(核燃料サイクル)を進めており、プルサーマルはその一つ。しかし、核燃料サイクルはトラブル続きで、国民の不信は根強い。

 プルサーマルとは、熱中性子(thermal neutron)によりプルトニウムを核分裂反応させて発電を行う原子炉のことを指す。なおプルサーマルとはプルトニウムのプルとサーマルリアクター(軽水炉)のサーマルを繋げた和製英語(plutonium thermal use)である。

 通常の軽水炉との違い
 通常、軽水炉ではウラン235とウラン238を混合したウラン燃料(二酸化ウラン)を核分裂させることで熱エネルギーを生み出すが、ウラン238が中性子を吸収することによりプルトニウム239が生成され、そのプルトニウム239自体も核分裂する。

 その結果、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均約30%となる(プルサーマル発電を行わない場合でも、運転中の軽水炉の中にはプルトニウムが存在し、ウラン同様に発電に利用されていることに注意)。

 それに対しプルサーマルではMOX燃料と呼ばれるウラン238とプルトニウムの混合酸化物(Mixed Oxide)を燃料として使用する。プルサーマルで使われるMOX燃料はプルトニウムの富化度(含有量)が4~9%であり、MOX燃料を1/3程度使用する場合、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均50%強となる。

 なお高速増殖炉でもMOX燃料が使用されるが、プルトニウムの富化度は20%前後である。日本においてもプルサーマルの開始に向けて国による安全審査や地元の事前了解が進んでいたが、住民投票による反対(新潟県)などにより、計画は遅れていた。他の反対の事例としては、佐藤栄佐久福島県知事(当時)が、発電所から距離のある地域を含めた県全体の観点や自身の戦略等から、地元の意向を別に強く反対してきた、といったことがある。

 今後のプルサーマル発電
 2006年3月に九州電力の玄海原子力発電所3号機で実施したいとの電力会社からの申し入れに、古川康佐賀県知事は事前了解を出した。また2008年1月には福井県の西川一誠知事が高浜原子力発電所の3、4号機で2010年までにプルサーマル発電を実施する計画に事前了解を、静岡県の石川嘉延知事が浜岡原子力発電所でのプルサーマル発電に事前了解を出すなど、地元の同意も背景に、プルサーマル発電計画は着実に実施されている。

 現在までに合意が成立しているプルサーマル発電計画
九州電力(株) 玄海原発3号機 2009年11月9日起動
四国電力(株) 伊方原子力発電所3号機 2010年3月1日起動
中部電力(株) 浜岡原子力発電所4号機 2010年度から導入予定
関西電力(株) 高浜原子力発電所3号機および4号機 2010年度から導入予定
中国電力(株) 島根原子力発電所2号機
北海道電力(株) 泊原子力発電所3号機

 現在計画中のプルサーマル発電計画
 東北電力(株) 女川原子力発電所3号機 2015年度までに導入を目指している。
 プルサーマル計画の進捗状況は、核燃料の検査データ不正や原発事故により、当初の計画が10年以上遅れている。

 

 参考HP Wikipedia「プルサーマル」「MOX」  

プルトニウム
ジェレミー バーンシュタイン
産業図書

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プルトニウム発電の恐怖―プルサーマルの危険なウソ
小林 圭二,西尾 漠
創史社

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世界的に見直される「原子力発電」 技術は高いが土地がない日本

2010年03月21日 | エネルギー
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 温暖化対策で見直される原子力
 現在、地球温暖化対策として、原子力発電が見直されている。政府の「地球温暖化対策基本法案(温室効果ガス25%削減)」でも原子力発電を推進。3月19日、自民党から衆院に提出された「低炭素社会づくり推進基本法案(温室効果ガス15%削減)」の中でも原子力発電所の利用率向上と新設・増設の促進を明記している。

 原子力発電の利点として、発電時に地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しないことや、酸性雨や光化学スモッグなど大気汚染の原因とされる窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を排出しないことがあげられる。

 また、中東に大きく依存するガス、石油と違い、ウラン供給国は政情の安定した国が多く、燃料を安定供給できることなどがある。発電コストに占める燃料費の割合が他の発電方法に比べ極めて低いため、コストパフォーマンスに優れている特性があり、雇用を生み出す産業になりうる利点もある。

 しかし、問題の方も大きい。原子力発電所の稼動中に発生する放射線や高熱への対処が難しい。重大事故が発生すると周辺環境に多大な被害を与え、その影響は地球規模に及ぶ。

 特に国土が狭い日本において、一旦チェルノブイリ級の事故が発生した場合、放射性物質による国土の汚染は日本国内の非常に広範囲に及ぶ。また、放射性物質であり生物化学的な毒性もある放射性廃棄物が発生する。 これらの問題のため、ドイツ、スペインなどのように原子力廃絶を目指している国もある。

 そもそも原子力とは?
 原子力とは、原子核反応により得られるエネルギー(核エネルギー)のことである。原子核反応には核分裂反応と核融合反応の二種類の反応があるが、現在原子力エネルギーとして実用化されているのは核分裂反応のみであり、そのため、単に「原子力発電」と言う場合には核分裂反応のエネルギーを用いた発電方法を指す。

 具体的には、ウラン鉱にふくまれるウランの放射性同位体であるウラン235は、容易に核分裂反応を起こすため、原子力発電に用いられている。しかし、この中にはウラン235が0.7%程度しか含まれていないため、原子炉で核燃料として利用するには、ウラン濃縮工程とよばれるウラン235の濃縮作業が必要となる。

 この濃縮ウラン235に中性子を当てると、核分裂反応が起きる。一度核分裂が始まると、その原子は中性子を放出。放出された中性子がまた別の原子に捕捉され、さらにまたその原子が分裂を起こし、そしてそこからまた中性子が放出され…、という連鎖反応が起きる。こうした連鎖反応により核分裂反応が持続している状態を臨界と呼ぶ。

 この時の温度は太陽の温度に匹敵する。原子炉において初めて臨界が達成された時を初臨界といい、これはその原子炉が実際に稼働した最初の時とされる。

 温室ガス25%減:原発稼働率88%必要 国環研試算
 民主党の言うように、国内対策だけで2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する場合、原子力発電所の稼働率88%達成が必要だとする試算を、国立環境研究所がまとめた。3月19日に開かれた環境省の地球温暖化対策中長期行程表の検討会で報告した。

 試算では、2020年時点の産業部門の生産量を粗鋼1億1966万トン(2005年1億1272万トン)、セメント6699万トン(同7393万トン)などと仮定。25%減達成に必要な設備導入量は、家庭用太陽光パネルの設置世帯数が990万世帯(同26万世帯)、工場など大型施設の太陽光発電導入量は2560万キロワット(同30万キロワット)とした。

 原発稼働率は、2025年時点で88%とした。新潟県中越沖地震後の柏崎刈羽原発の長期停止の影響で、2008年度は60%にとどまっている。

 温室効果ガス25%減実現の追加投資額(省エネ型でない機器と比べて余分にかかる費用)は、11~20年で年平均10兆円必要と試算。燃料費などが節約でき、10年間で投資額の約半分は回収できるとした。(毎日新聞 2010年3月19日)

 温暖化対策:原発20年間にさらに20基必要 エネ庁試算
 また、温室効果ガス25%削減するためには、原子力発電所の現在の新設計画(14基)がすべて実現しても、2030年以降の20年間にさらに20基の新設が必要という試算を資源エネルギー庁がまとめた。既存原発の寿命による廃炉の目減り分を埋め合わせるためで、現在よりハイペースな「年平均1基の新設」を実現しなければならない困難な状況が浮かび上がった。

 3月5日に開かれた総合資源エネルギー調査会原子力部会で報告された。同庁によると、現在国内で稼働中の原発は54基、総出力は約4900万キロワット。国は温室効果ガス削減対策の一つとして原発を位置付けており、20年までに温室効果ガス25%減(1990年比)という方針の実現には8基の新設が必須となる。30年までにはさらに6基の新設を計画している。

 これらが完成した場合の総出力は約6800万キロワット。この出力を維持するには、既存原発の寿命を現在の40年から60年に延長しても30~50年の20年間に150万キロワットの大型原発20基が必要だと分かった。

 既存原発には増設の余地は乏しく、新たな立地選定が課題となる。一方、寿命を40年のままとすると30年時点で3000万キロワット、寿命50年でも1500万キロワット分が不足する計算になるという。

 試算は、人口減少や家庭の電化、電気自動車の普及など今後の電力需要の見通しや、再生可能エネルギーの拡大などは考慮していない。一方、中部電力浜岡原発 1、2号機(計138万キロワット)のように寿命前にコスト判断で廃炉が決まるケースもあり得るなど、流動的な面もある。

 部会では「稼働率向上や点検間隔の延長など(発電量を増やす)目先の政策だけしか論議されていない。新設を継続するために国が何をするかの政策がない」などの厳しい意見が相次いだ。(毎日新聞 2010年3月5日)‎

 日本の原発3社、海外へ 温暖化、追い風
 狭い国土、地震の多い地形にある日本で、原子力発電所を増やすのは至難なことだが、それだけに防災設備や効率性能は高く、海外には評価されている。これを産業として海外に輸出しようという動きが高まっている。

 地球温暖化防止の議論が活発化する中、発電時に温室効果ガスを排出しない原子力発電が世界的に見直されている。導入機運の高まりに着目した東芝と三菱重工業、日立製作所の日本メーカー 3社は、海外での原発事業をめぐり激しい受注合戦を展開中だ。経済産業省も「原発は新たな輸出産業になる」(幹部)と日本企業支援に乗り出している。

 「2015年までに全世界で39基の原発受注を見込む」。2006年2月に約6400億円(当時の為替レート換算)で米原子力大手ウェスチングハウス(WH)を買収した東芝の佐々木則夫社長は、原発事業の将来性をアピールする。WH買収当時は市場関係者から「高値づかみ」と言われた。しかし、米政府が原発建設費の8割を保証し、中東や中国などでも原発建設の動きが広がる中で、東芝・WH連合は米国と中国から計12基の原発受注に成功した。

 新興国での受注獲得には「プラント建設だけでなく、燃料供給から使用済み核燃料の再処理まで一貫サービス体制が必要」(東芝幹部)と見て、2007年8月にはカザフスタンの国営会社からウラン鉱山の権益を獲得した。

 WH買収合戦で東芝に敗れた三菱重工は2006年10月、仏原子力大手、アレバと提携した。仏政府の持ち株が9割を超すアレバは、2030年までに世界で新設される原発約300基の3分の1以上の受注を目指している。

 アレバ・三菱重工連合は外資主導の連合だったが、アレバが6月末に事業拡大のための増資計画を発表。三菱重工は増資の有力な引受先に浮上している。三菱重工はアレバなどとともに今年4月、総合原子燃料会社「三菱原子燃料」も設立し、「成長分野の燃料事業にも本格的に踏み出す」(三菱重工幹部)構えだ。

 一方、日立製作所は米総合電機大手ゼネラル・エレクトリック(GE)と組む。2007年には合弁会社を設立し、世界トップ水準の発電力を誇る中国電力島根 3号機タイプによる原子力プラントの輸出を目指す。アラブ首長国連邦(UAE)初の原発建設をめぐり、アレバなどと激しい受注競争を繰り広げている。

 官民協調 輸出促進、政府も支援
 原発の建設・運転で実績を積み重ねてきたのが日本の強みだ。米スリーマイル島原発事故(1979年)や旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)などの影響により、海外では原発建設にブレーキがかかっていた。経産省は「日本の原子力関連産業は高付加価値の輸出産業になり得る」として、海外展開を支援する考えだ。

 ただ、新興国市場で日本勢が受注するうえで弱点もあった。新興国側は燃料から発電所の建設、使用済み燃料の再処理まで総合的に請け負ってくれる相手を求めているが、それに応える体制が整っていなかったのだ。各分野では高い技術やノウハウがあっても、一体となって売り込みをかける戦略が欠けていた。

 また、日本企業が原発関連の資機材や技術を外国に提供するには、核兵器に使われないことを保証するために、輸出相手国との2国間原子力協定の締結が必要だ。海外への原発の売り込みには「国の関与が不可欠」(東芝)との認識が高まり、経産省などは6月、業界団体と「国際原子力協力協議会」を設立。輸出相手国のインフラ整備や人材育成なども含めた幅広い分野に官民協調で取り組む。

 さらに、今年度、原子力資機材メーカー向けの補助制度を新設。8月には原子炉の安全弁や炉心冷却システム用ポンプなどを製造する下請けメーカーへの研究開発支援を決め、素材・部品産業も含めた原発ビジネス全体の国際競争力向上を目指すという。(毎日新聞 2009年10月14日) 

 

プルサーマルの科学―21世紀のエネルギー技術を見通す (朝日選書)
桜井 淳
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原子力発電がよくわかる本
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驚異!ボノボやゴリラがサルを食べる?そして、人も人を食べる?

2010年03月20日 | 動物
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 ボノボとマウンテンゴリラ
 ボノボはチンパンジーのなかまで、絶滅危惧種に指定されている。生存数はコンゴ民主共和国に1万頭以下。知性はチンパンジーよりも高いと考えられているが、雑食性で他種のサルをを食べることは知られていた。

 今回、草食のゴリラもサルを食べるかもしれないという研究結果が発表された。ゴリラの排泄物から、サルのDNAと、森林に生息する小型レイヨウの一種、ダイカーのDNAが見つかったからだ。

 アフリカのガボンにあるロアンゴ国立公園に生息する野生のマウンテンゴリラはもっぱら植物や果実を主食とし、たまに口にするとしても昆虫ぐらいだと考えられてきた。

 ただ、残った植物の種などをあさっていたサルやダイカーのDNAである可能性もある。「サルやダイカーが、ゴリラの排泄物をなめたり、においをかいだり、尿をかけただけかもしれない」と研究者のシューベルト氏は付け加える。真相は不明だ。

 ゴリラがサルを食べる、証拠発見か?
 ベジタリアンでもハンバーガーの魅力に抵抗できない時があるが、草食のゴリラも近縁種への強烈な食欲に屈する場合があるかもしれないという研究が発表された。

 従来、飼育下で肉を食べることがあっても、野生のゴリラはもっぱら植物や果実を主食とし、たまに口にするとしても昆虫ぐらいだと考えられてきた。

しかし、アフリカのガボンにあるロアンゴ国立公園に生息する野生のマウンテンゴリラの排泄物から、サルのDNAと、森林に生息する小型レイヨウの一種、ダイカーのDNAが見つかった。

 今回の発見により、腐肉をあさったり狩りを行うなどして、密かに肉食生活を送っている可能性が浮上してきた。

 研究チームの一員で、ドイツのライプチヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所の霊長類学者グリット・シューベルト氏は次のように話す。「驚くべき発見だが、もっと常識的な説明もできる。ゴリラを肉食動物として再分類する前に、あらゆる可能性を考察する必要があるだろう」。

 排泄物に残ったサルDNAの正体は?
 例えば、ゴリラはアリを食べるが、アリはサルなど哺乳類の死骸や骨をあさることがある。そのようなアリを食べれば、アリの消化管に残っていた哺乳類DNAが取り込まれて排泄される可能性がある。

 また、ゴリラの排泄物に残った植物の種などをあさっていたサルやダイカーのDNAである可能性もある。「サルやダイカーが、ゴリラの排泄物をなめたり、においをかいだり、尿をかけただけかもしれない」とシューベルト氏は付け加える。「ゴリラの排泄後に、哺乳類のDNAが加わる可能性はいくらでもある。肉食の野生ゴリラなんて、私にはどうも合点がいかない」。

 ゴリラが肉食だとしても、“肉を食べる初の大型類人猿”というわけではない。チンパンジーやその類縁にあたるボノボは、サルを含めほかの哺乳類を狩って、その肉を食べることが知られている。

 研究チームの一員で同じくマックス・プランク進化人類学研究所の遺伝学者ミヒャエル・ホフライター氏は、「たいていの場合、草食動物は肉の消化に困ることはない。逆だとそうはいかないが」とコメントした。

 今回の研究成果はオンラインジャーナル「PLoS ONE」に2月25日付で掲載されている。 (出典:National Geographic News March 8, 2010)

 人が人を食べる?
 このニュースを見て、人も人を食べることがあるのを思い出した。Wikipediaによるとカニバリズム( Cannibalism)は、人間が人間の肉を食べる行動、あるいは宗教儀礼としてのそのような習慣をいう。中世ヨーロッパではキリスト教以前の風習として、死者の血肉が強壮剤や媚薬になると信じられており、その一環としてカニバリズムを行ったこともある。

 社会的行為ではなく純粋な人肉嗜好の場合もある。緊急事態下での人肉嗜食や、特殊な心理状態での殺人に時折見られる人肉捕食等である。

 1846年アメリカ合衆国での開拓者ドナー隊のトラッキー湖畔における遭難事故は、遭難の発覚までに既に隊の中で死亡者を食べるという緊急避難措置が行われていた。近年の事件としては、1972年のウルグアイ空軍機571便遭難事故がある。遭難した乗客は、死亡した乗客の死体の肉を食べることで、救助されるまでの72日間を生き延びた。

 また殺人事件でカニバリズムを行った極端な例も存在する。たとえば、連続殺人者であるアルバート・フィッシュ、エド・ゲイン、ジェフリー・ダーマー、フリッツ・ハールマン、アンドレイ・チカチーロなど。1981年には、佐川 一政の「パリ人肉事件」も起きている。(Wikipedia「カニバリズム」)

 精神異常かそれとも?
 こうした殺人事件や過去の風習については、これまで一種の精神異常として片づけられてきたが、最近は異なった見方も出てきている。それは、我々人類が地球上で生まれた1つの種ではなく、宇宙からやってきた多様多種の集まりであるという考え方である。

 これは科学的に証明されているわけではないが、宇宙人の中には「レプタリアン」という好戦的な食人種もいる。その子孫が我々の中にいると考えると、納得できる人もいるのではないだろうか。「レプタリアン」は科学・知性の面では現地球人より数千年進んでいる。しかし、愛と調和、秩序といった面では現地球人より劣っている。

 いずれにしても、現地球文明において「カニバリズム」は許される問題ではないし、精神状態が闘争的・破壊的になっていたり、不調和になっている面があるのは間違いがない。(参考:宇宙の法

 

「宇宙の法」入門
大川 隆法
幸福の科学出版

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カニバリズムの系譜―なぜ、ヒトはヒトを喰うのか。
池田 智子
メタブレーン

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アジア・アフリカの食糧確保!ワシントン条約マグロ禁輸案否決!

2010年03月19日 | 環境問題
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 予想外の大差
 「意見が出尽くしたのなら、直ちに採決すべきだ」。カタール・ドーハで18日午後(日本時間同日夜)に開かれた第1委員会。各国の意見表明が一巡したところで、マグロの蓄養が盛んなリビア代表が即時採決を求める動議を提出した。スーダンも同調し、採決の結果、賛成が72票と反対の53票を上回った。

 リビア動議の採択後、EU案、モナコ案が採決され、いずれも否決。モナコ案の投票総数は118で、反対した68カ国にはアフリカ諸国が目立った。一方、賛成票はEU加盟国数を下回り、棄権30カ国の多くが欧州諸国であることをうかがわせた。米国の多数派工作が成功し、アフリカ諸国などが賛成に回っていれば、禁輸が採択されかねない「薄氷の勝利」だった。

 採決の動議を提出したリビアなどに加え、同じアジアのマグロ漁業国である中国や韓国の存在も大きかった。特に中国は原油や鉱物など資源確保のため、アフリカを徹底支援。赤松農相は16日の会見で「中国も他の国に働きかけてくれた」と述べた。(毎日新聞 2010年3月20日)

 環境問題と食糧問題
 このニュースを聞いて、国1票制でよかったと思った。欧米各国による植民地時代に比べ、アフリカやアジアの国々の権限が認められている。また、同じアジアでマグロを食糧とする、中国や韓国のがんばりも見逃せない。日本の窮地は救われた。
 
 ワシントン締約国会議の開幕を前に、日本のイルカ漁を批判した米映画「ザ・コーヴ」が米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞。赤松広隆農相は、ワシントン条約で日本の食文化に深くかかわる魚類が多く取りざたされていることと、米映画界の動きを同一線上にとらえ、不快感を示した。

 また、シーシェパード(SS)による南極海における、日本の調査捕鯨船妨害工作の問題もあった。今回の結果についてシー・シェパード(SS)のスポークスマンは19日、ワシントン条約締約国会議の第1委員会で大西洋・地中海産クロマグロの国際取引禁止案が否決されたことについて、「強欲が勝利した」と批判、クロマグロを絶滅から救う唯一の道は漁獲の全面禁止だと主張した。

 クジラであろうと、マグロであろうと何でもかんでも反対という感じだ。世界的に行き過ぎた環境保護の雰囲気の中で開催された、ワシントン条約締約国会議。ただ環境を保護すればよいわけではない、日本など漁業国の食糧を確保する問題だけに、もし負けていたら大変な問題であった。

 つい最近、米国で環境保護のためにトウモロコシをバイオ燃料に使用すると決定したために、トウモロコシをふくめた穀物が高騰し、世界的な食糧不足をまねいた。環境保護と食糧の問題はこれからも慎重に議論せねばならない。

 欧米各国の反応(2010.3.19)
 「マグロに痛手。戦い続ける」と米国 クロマグロ禁輸案否決
  ワシントン条約締約国会議の委員会で大西洋・地中海クロマグロの国際取引を全面禁止する提案が否決されたことについて米内務省は18日、大西洋クロマグロにとって痛手だとする声明を発表した。

 声明で、ストリックランド米交渉団代表は「今日の投票は、大西洋クロマグロにとって痛手だったが、われわれは持続可能な形で漁獲が管理されるよう戦い続ける」と強調。

 米海洋大気局(NOAA)のルブチェンコ局長は、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が昨年決めた、漁獲枠を約4割削減する保護措置について「これだけでは不十分」と指摘、「ICCATのメンバーとともに種を保存するために作業を続ける」とした。(共同)

 「非常に落胆した」とEU クロマグロ禁輸案否決
  欧州連合(EU)の欧州委員会は18日、ドーハで開催中のワシントン条約締約国会議の第1委員会が、大西洋・地中海クロマグロの国際取引を全面禁止する提案を否決したことを受けて「非常に落胆した」との声明を発表、保護のために何の行動も起こさなければ「大西洋クロマグロが消滅する深刻な危険がある」と警告した。

 欧州委は「大西洋クロマグロの個体数の回復には厳しい措置が必要と確信している」と強調、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)に対し「クロマグロが持続的に回復するよう責任を果たすことを期待する」と呼び掛けた。(共同)

 モナコ元首が遺憾の意 クロマグロ取引禁止否決
  大西洋・地中海クロマグロの国際取引禁止を提案したモナコの元首、アルベール2世公は18日、声明を発表し、ワシントン条約締約国会議の委員会で提案が否決されたことについて遺憾の意を表明した。

 声明でアルベール公は、地中海のクロマグロが絶滅する恐れについて「米国、欧州とは考えを分かち合えた」と表明。環境保護はモナコの政策の主軸であることを強調した上で「締約国会議での議論を通じて、クロマグロの種の保全が緊急の課題であるとの理解が国際社会に広がることを望む」と述べた。(共同)

 

食糧がなくなる!本当に危ない環境問題 地球温暖化よりもっと深刻な現実
武田 邦彦
朝日新聞出版

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地球環境ガバナンスとレジームの発展プロセス―ワシントン条約とNGO・国家 (21世紀国際政治学術叢書)
阪口 功
国際書院

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うつの改善などに効果!青魚に多い「ω-3脂肪酸」とは何か? 

2010年03月18日 | 化学
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 魚に多い「ω3系脂肪酸」
 食物に含まれる脂肪の種類が精神面の健康に影響するという研究報告が国内外で積み重ねられてきた。

 とくに注目されているのはサバなど青魚に多い「ω(オメガ)3系脂肪酸」。うつの改善や攻撃性の低減などに効果があるという報告が相次いでいる。効果がなかったとする報告もあり、科学的な検証はまだ途上だが、うつ病患者が国内で100万人を超える中、食事の見直しが心の健康対策に役立つかも知れない。

 代表的なω3系脂肪酸はサンマ、イワシ、ブリなど魚に多く含まれるEPA、DHAと、シソ油などに多いα(アルファ)リノレン酸。中性脂肪を減らし、動脈硬化を防ぐ効果がわかっている。

 

 うつの改善に効果
 精神面への影響の研究は1990年代後半から始まった。魚をよく食べる人は自殺企図が少ない(日本、フィンランド、米国)といった疫学調査のほか、被験者にω3系の油と偽薬(植物油など)を無作為に割り当て、どちらかわからない形で服用してもらって効果の有無を見る実験的な研究も各国で行われてきた。

 その結果、攻撃性や衝動性が減る(日本)、うつが改善する(米国、英国、台湾)といった報告がなされ、産後うつや認知症の予防効果を示唆する研究もある。

 一般の植物油に多いリノール酸など「ω6系脂肪酸」との相対的な量に着目し、うつの高齢者は血液中のω3系の比率が低いとした調査(オランダ)もある。
 
 ただ、関連や効果が見られなかったとの報告も複数ある。各種の研究を分析した米国の昨年の論文は「うつ病の治療手段になる可能性があるが、大規模な試験が求められる」としている。 (2010年3月15日 読売新聞)

 ω-3脂肪酸とは?
 ω-3脂肪酸は、n-3脂肪酸ともいい、不飽和脂肪酸の分類の一つで、一般にω-3位に炭素-炭素二重結合を持つものを指す。

 栄養学的に必須なω-3脂肪酸は、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。ヒトは、ω-3脂肪酸をデノボ合成することはできないが、18炭素ω-3脂肪酸のα-リノレン酸から20-, 22-炭素の不飽和ω-3脂肪酸を形成することができる。

 これらの変換は、リノール酸から誘導される必須なω-6脂肪酸と共に競争的に起こる。ω-3脂肪酸のα-リノレン酸とω-6脂肪酸のリノール酸はどちらも食物から摂取しなければならない必須な栄養素である。

 体内で起こるα-リノレン酸からの長いω-3脂肪酸の合成はω-6類似体によって競争的に抑制される。したがって、ω-3脂肪酸が食物から直接得られたとき、またはω-6類似体の量がω-3の量を大きく上回らないとき、組織内での長鎖ω-3脂肪酸の蓄積は効率的である。

 EPA・DHA
 エイコサペンタエン酸(Eicosapentaenoic acid、EPA)またはイコサペンタエン酸(Icosapentaenoic acid)は、ω3 脂肪酸の一つ。ごく稀にチムノドン酸(Timnodonic acid)とも呼ばれる。EPAは、5つのシス-二重結合をもつ20炭素のカルボン酸である。

 EPAは、プロスタグランジン、トロンボキサン-3、ロイコトリエン-5(すべてエイコサノイド)の前駆体である多価不飽和脂肪酸の1つである。 ヒトでは、体内で合成できないα-リノレン酸から体内でEPAを合成できるため、広義では必須脂肪酸となる。健康目的でDHAとともにサプリメントに用いられている。

 ドコサヘキサエン酸( -さん、Docosahexaenoic acid、略称 DHA )は、不飽和脂肪酸のひとつ。6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸 (22:6) の総称であるが、通常は生体にとって重要な 4, 7, 10, 13, 16, 19 位に全てシス型の二重結合をもつ、ω-3脂肪酸に分類される化合物を指す。

 

参考HP Wikipedia「ω-3脂肪酸」「EPA」「DHA」  

AA,EPA,DHA―高度不飽和脂肪酸

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太陽の両極に強磁場・黒点の「たね」発見!黒点減少の謎にせまる

2010年03月17日 | 宇宙
科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる!
 太陽の極に強い磁場
 国立天文台を含む日米欧国際研究チームは、太陽観測衛星「ひので」に搭載された可視光・磁場望遠鏡により、これまで困難であった太陽極域の磁場の観測を行い、太陽の極域には、黒点並みの1000ガウスを超える強い磁場が存在することを発見した。

 この成果は、「ひので」衛星によって鮮明な太陽極域の画像を取得することに、世界で初めて成功した結果もたらされたもの。観測の結果、今回発見された磁場は、斑点状の形状をしており、太陽の極域全域に存在する。これらの斑点状磁場は、大きさと寿命が黒点に比べて非常に小さいという特徴がある。

  太陽観測衛星「ひので」
 「ひので」衛星による観測結果が明らかになる前は、太陽極域には広がった弱い磁場しか存在しないと考えられていた。つまり、今回の研究成果は、これまでの太陽極域に対する認識に変更を迫る極めて重要な結果である。

 太陽の極域の観測は、今後の太陽活動を予測する上でも極めて重要である。太陽活動は予想以上に静穏な状態を続けており、研究チームは、「ひので」衛星による太陽極域の精密観測を重点項目として継続している。研究チームは、今後の「ひので」衛星による継続的な観測により、太陽フレアや地磁気擾乱などを引き起こす黒点の形成や、太陽風を高速に加速するメカニズムなどを解明したいと考えている。

 さらに、「ひので」衛星の観測データに基づいた研究から、太陽活動周期や太陽の地球環境への影響の理解が進むと期待している。

 黒点の「たね」になる磁場 
 太陽の南極と北極に黒点並みに強い磁場が斑点状に散らばっていることを、国立天文台などが太陽観測衛星「ひので」を使って発見した。黒点のもとになる「たね」と考えられるという。国立天文台の常田佐久教授(太陽物理学)は「極域の磁場は将来の黒点数の重要な指標。地球の気候変動を予測する材料にもなるかもしれない」と話している。
 
 国立天文台野辺山太陽電波観測所(長野県南牧村)の下条圭美助教(同)らは、ひのでで極域付近の磁場を観測。両極に黒点とほぼ同じ1000ガウス程度の磁場が数十個点在することが分かった。直径約4000キロと黒点の10分の1以下、平均寿命は約10時間で、黒点(数日から数カ月)より短かった。

 太陽黒点11年周期に関係
 極域付近の磁場は、太陽の自転や対流によって内部で増幅され、約11年後に赤道付近の表面で一部が飛び出すと黒点になる。従来考えられていた極域の磁場は黒点のたねとなるには弱すぎたが、今回の磁場は十分な強度を持つという。
 
 黒点の数は11年周期で増減し、現在は数が減る「極小期」。2007年以降はほとんど現れず、黒点がまったくない日は通常の極小期より多いうえ、周期も延びている。過去には数百年から1000年の間隔で、50~100年にわたり黒点がない時期があり、その多くは地球の寒冷期と一致する。(毎日新聞 2010年3月9日)

 「ひので」とは何か?
 「ひので(SOLAR-B)」は、世界で初めて、太陽磁場の最小構成要素である磁気チューブを空間的に分解して、磁場ベクトルを3次元的に測定する。これにより、コロナ加熱、フレア、コロナの質量放出など、太陽大気中で発生する磁気エネルギーの変動現象を捉え、太陽の外層大気であるコロナの成因、および光球での磁場構造の変動とコロナでのダイナミックな現象の関係を調べる。

 1.太陽磁場の生成と消滅
 宇宙には磁場が満ちている。磁場は宇宙のあらゆるスケールの現象の形を決めるのに重要な役割を果たしている。また、磁場は星内部のダイナモ現象により休みなく作られており、星風により宇宙空間へ吹き出されている。太陽は詳細な観測ができる唯一の恒星であり、11年周期で磁場が変動している。これにより、磁場の生成・消滅が詳しく調べられる。「ひので(SOLAR-B)」は、この太陽磁場の生成・消滅のメカニズムを探る。

 2.太陽の総放射量の変動
 最近20年間程の衛星からの太陽観測により、太陽の総放射量は一定ではなく、磁場の活動周期と同調して変動することがわかっている。また、その変動は非常に小さく、著しい気候変動を引き起こすのに必要な変動量 と比べ3桁以上も不足している。「ひので(SOLAR-B)」では世界で初めて、太陽磁場の変動のメカニズムと総放射量 の変動の相関を、高分解能、広い観測波長、長時間連続観測で調べる。

 3.紫外線・X線の生成
 紫外線やX線、高エネルギー粒子を使って観測すると、太陽は非常に強い放射源であり、その放射量は激しく変動している。この変動は地球の環境に多大な影響を及ぼす。これらの放射は、太陽の彩層やコロナでの磁気エネルギーの解放により引き起こされているが、詳細はわかっていない。「ひので(SOLAR-B)」により高空間分解能かつ高スペクトル分解能のデータが取得でき、磁気エネルギー解放のメカニズムである磁気リコネクションや波動エネルギーの散逸現象を研究する。

 4.太陽大気の爆発および膨張
 100万度のコロナは絶えず外へ向かって膨張し、超音速の風となって宇宙空間を吹ぬける。この風は地球磁気圏を擾乱し、地球上層大気のエネルギーを増加させている。さらに、広い範囲にわたってコロナの物質が爆発的に噴出されると、地球では磁気嵐が発生する。「ひので(SOLAR-B)」は太陽大気中の磁場分布や電流分布、速度分布の精密な観測を行い、太陽での爆発の原因を明らかにする。

 

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