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空気より軽い航空機「フェニックス」、試験飛行に成功!

2019年08月31日 | サイエンスジャーナル

「空気より軽い」航空機が登場

「超長時間耐久性自律型航空機」というと、長時間飛び続ける飛行機のことだが、そんな夢の飛行機が実現されようとしている。

 ボーイングの先進的な太陽電池と軽量材料で構築された「Odysseus(オデュッセウス)」と呼ばれる飛行機は、クリーン・エネルギーだけで無期限に飛行することができると報告した。2019年には完成予定だ。

 今回新たに、気球と飛行機の2つの状態を切り替えることで推進力を生み出し、無限に空中にとどまる「空気より軽い」航空機「フェニックス」がこのほど、初の試験飛行に成功した。

続きはこちら → http://sciencejournal.livedoor.biz/ 

参考 高高度飛行: http://www2m.biglobe.ne.jp/~ynabe/mach/highalt.htm

CNNnews: https://www.cnn.co.jp/fringe/35136428.html

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微生物で「CO2」からエタノール、次世代エネルギー「H2」をつくる!

2019年08月31日 | サイエンスジャーナル

 CO2からエタノールを製造する技術、東大発ベンチャーが特許を取得

 世の中にはまだまだ知られていない微生物が存在する。例えば、CO2を吸収する微生物や、H2を生成する微生物だ。

 知っての通りCO2は地球温暖化の原因となる。H2は次世代に期待されているエネルギー源である。そんなに都合のよい微生物が存在するのだろうか?しかし、CO2を吸収するのは植物が光合成で行っていることであるし、光合成を行う微生物もたくさん存在する。水素生産菌も決して特殊な菌ではなく、土壌やシロアリなどの体内にもいる普通に存在している。嫌気性の細菌だ。

 私たちは、こうした細菌をもっと知り有効に活用していきたい。2019年5月30日、東大発ベンチャーのCO2資源化研究所は、ポリエチレンの原料となるエタノールを、CO2から製造する手法の特許を取得した。

 研究所では、近年、注目されている「水に溶けにくい無機質ガスを栄養に増殖する細菌」の中でも「CO2を栄養源として増殖する水素酸化細菌(UCDI水素菌)」とバイオ技術の組み合わせによる産業活用を進めており、すでにバイオジェット燃料の原料となるイソブタノールの製造に関する特許については2018年12月に取得済みで、今回の特許取得はそれに続くものとなる。

 CO2から石油を合成する細菌

 現代文明は石油の上に成り立っているといってよい。この石油というしろものは、生物が関与してできたものでありながら、現在の生態系には組み込まれていない。そのため文明が発達すればするほど、海洋汚染や二酸化炭素の増加による温暖化を引き起こし、生態系のバランスを崩すものと考えられてきた。

 しかし、人類が放出した二酸化炭素を逆に石油に変え、生態系のバランスを取り戻す微生物が、静岡の油田のまっ黒なタールの中にいた。それが、大阪大学が発見した、廃液処理などに活躍しているシュードモナス属の細菌の仲間である。

 油田に注目したのは、海洋汚染のなかでも近年クローズアップされてきた、タールボールの処理のためである。海に流出した石油は、物理的に取り除くか、界面活性剤で分散させて微生物で分解するしかない。 界面活性剤とからんだ石油は、しばらくするとダンゴ状 (タールボール) になって、酸素のない深い海の底に沈んでしまう。

 酸素があるなら石油を分解できる細菌の存在は、30年以上前に知られていた。もし、無酸素で石油を消化する細菌がいれば、海底のタールボールを分解することが可能になるだろう。

 静岡の油田は、つねに石油が土壌中にわいているが、そばの小川には油が浮いてこない。ということは、土壌のどこかに酸素なしで石油を分解する細菌が含まれているのではなかろうか。

 油田から採取したサンプルを石油培地に加え、無酸素ガス (CO2、H2、N2の混合気体) を吹き込んでみた。2週間ほどで、この培地で安定して生育する細菌が1株得られた。 シュードモナス属の新種と判断され、シュードモナス・アナエロオレオフィラHD-1株 (無酸素条件で石油を好むの意) と命名した。 その後、この細菌の生育には二酸化炭素が不可欠であることがわかり、石油以外に二酸化酸素も炭素源として利用している可能性が出てきた。

 そこで先の培地から石油を抜き、二酸化炭素と水素を主体とした無酸素ガスを吹き込んで生育させた。すると乾燥菌体から石油成分が抽出され、石油を合成する能力もあることがわかったのである。

 この細菌は、エネルギー源としての石油が豊富にあるときはそれを取り込み、石油がない環境では二酸化炭素を還元し、石油を合成してため込む。今後、遺伝子解析を進め、遺伝子操作で石油生産能力の高い新種ができれば、と考えている。

 酸素も光も必要とせず、二酸化炭素と水素を利用する生物が、進化のなかでどのような位置づけになるのか興味深い。だがそれ以上に、これからの人類にとっても、環境問題にとどまらない大きな可能性を秘めている。

 地球上でこそHD-1の性質は奇妙にうつるが、それは地球の大気には生物が40億年かかって蓄えた酸素が20.9%もあるからである。宇宙では二酸化炭素や水素のほうが一般的なのだ。

 火星の大気は95.3%が二酸化炭素であるのに対し、酸素はわずか0.3%。木星は水素が89%で、酸素はほとんどない。人類が宇宙に進出する上で、この細菌は重要なパートナーとなる資質をもっている。 (いまなか・ただゆき/大阪大学工学部応用生物工学科教授)

 水素細菌

 水素細菌(Hydrogen-oxidizing bacteria)とは、遊離の水素を酸化し、その反応によって生じるエネルギーを利用して、炭酸同化を行う化学合成細菌の総称である。水素を生成する微生物(水素生産菌)と区別して水素酸化細菌、あるいはドイツ語で酸水素ガスを意味するKnallgasにちなんでKnallgas bacteriaとも呼ばれる。

 土壌や海洋などの自然環境中に存在する。Alcaligenes属やPseudomonas属、Bacillus属、あるいは好熱性のHydrogenobacter属など、多様な分類群に属する細菌が含まれる。

 環境問題の根本的解決には、化石燃料から太陽などの 再生可能でクリーンなエネルギーへの移行が必要である。太陽エネルギーはエネルギー密度が低く使い難い ことが欠点であった。光合成細菌を用いた水素生産は、 太陽光を利用可能なこと、基質に未利用資源である有 機性廃水やバイオマスなどを利用可能なことから、環境浄化とクリーンエネルギー生産を同時に行うシステ ムの構築が可能である。

 バイオテクノロジーを用いた 水素生産技術は、炭酸ガスの排出を低減させるために も有用であり、この種の水素生産技術の開発が求めら れている。

 水素生産菌

 水素生産菌は決して特殊な菌ではなく、普遍的に存在していると考えられる。土壌やシロアリなどの体内にいる。嫌気性の細菌とされる。

 単体の菌株の分離には閉鎖された環境下で培養して純粋な培養になるまで継代を繰り返す。純粋な培養になった菌株からDNAを抽出して、ヒドロゲナーゼを作る遺伝子の有無を調べる。

 近年では遺伝子組み換えにより、適した形質を発現させる。しかし、遺伝子組換え体は20リットル以内に制限されている。一方、突然変異体であればこのような培養容量の制限は無い。

 発酵条件で鍵となるのはメタン生成菌など、他菌種の活動を抑え、水素生産菌に適したpH値、温度等の培養条件を維持することにある。

 一般的に下水消化汚泥を水素発酵の種菌として用いる場合には生成した水素は速やかに水素資化性のメタン生成菌によって消費されることから水素回収は困難であるといわれ、このような水素資化菌の活動を抑制する方法として熱処理や酸処理などの改質法による水素資化性メタン生成菌の死滅が有効であるとの知見があるが、未改質の下水消化汚泥を用いて水素発酵を行っても発酵槽内のpH値を制御することによりメタン発酵反応を抑制することで水素生成汚泥として利用できるとの知見もある。

 メタン生成菌の増殖に適するpH6.8∼7.5よりも低い4.0∼6.8が水素生産菌の活動には望ましいとされる。温度条件は他の菌種が活動しにくい50℃でも活動が確認される。

参考 マイナビニュース: https://news.mynavi.jp/article/20190530-833820/


アンモニアを「エネルギーキャリア」に!NH3から手軽に電気を取り出す手法を開発!

2019年08月30日 | サイエンスジャーナル

 資源小国日本の次世代エネルギー源

 資源小国の日本として、エネルギーの多様化による安定供給と同時に大幅な温暖化対策として低炭素化を進めていく必要がある中で、燃料電池として利用されている、水素エネルギーの役割に対する期待が高まってきている。

 水素の利点は、電気を使って水から取り出すことができるのはもちろん、石油や天然ガスなどの化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど、さまざまな資源からつくることができる。また、製鉄所や化学工場などでも、プロセスの中で副次的に水素が発生する。燃やしても水ができるだけで環境に優しい...などがある。

 しかし、水素の本格的な利用に向けてはまだまだ技術的、コスト的なハードルは高く、現在国が主導して、産官学が連携したオールジャパン体制で、水素利用、水素関連産業の分野で世界をリードし、日本のエネルギー環境問題に大きく貢献することができるように研究が続けられている。

 課題となるのは、水素エネルギーの安全な貯蔵・運搬である。「エネルギーキャリア」とは、気体のままでは貯蔵や長距離の 輸送の効率が低い水素を、液体にしたり水素化合物にして効率的に貯蔵・運搬する方法であり、このエネルギーキャリアとして3つのキャリア(液化水素、有機ハイドライド、アンモニア)による輸送、貯蔵そして水素の利用が考えられている。

 今回、東京大学(東大)および東邦大学の研究チームは、ルテニウム錯体を触媒として、酸化剤と塩基を組み合わせた反応系を用いることで、室温でアンモニアから窒素分子と電子とプロトンを同時に得ることが可能な手法が開発された。

 アンモニアから手軽に電気を取り出す手法を開発

 再生可能エネルギーの活用が世界的に期待されているが、得られたエネルギーをどのように貯蔵、運搬するか、といった課題があり、低圧で液化できる取り扱いの容易さ、高いエネルギー密度、利用した際に二酸化炭素を排出しないという特徴を持つアンモニアを水素のキャリア(エネルギーキャリア)として活用できないかという研究開発が進められている。今回の成果もその1つで、アンモニアに蓄えられた化学エネルギーを取り出すプロセスの開発を目的に行われた。

 今回の研究にあたって研究グループは光合成の反応を踏まえ、その中から、光合成を進行させる物質としてルテニウム錯体が報告されていることに着目し、光合成のモデル反応系を用いて、水の代わりにアンモニアを用いた場合は、どのような反応になるのかについての実験を行った。

 実験系としては、アンモニアを窒素分子と電子とプロトンに分離させるために、電子受容体として酸化剤、プロトン受容体として塩基を、触媒としてルテニウム錯体をそれぞれ採用。それらを有機溶媒(アセトニトリル)にいれ、室温(25℃)での反応を観察した結果、アンモニアから窒素ガスが発生したことを確認したという。また、反応は-40℃ても反応を確認。反応条件下では、触媒あたり12当量、酸化剤あたり収率80%という結果を得たとする。

 また、電気化学的酸化反応条件下においてもアンモニアの触媒的な酸化反応が進行することも判明。応答電流を測定する手法であるサイクリックボルタンメトリー条件下にて触媒電流が観測され、1秒間に触媒1分子当たり2.8分子の窒素分子が発生する反応であることが確認できたほか、アンモニウム塩の代わりにアンモニアを直接用いた反応系においても同様の触媒反応が進行することを確認したという。

 アンモニアを使った燃料電池・コジェネレーション

 研究グループによると、今回の成果は、アンモニアが窒素分子と電子とプロトンへと変換することが可能であることを示すもので、アンモニアから室温で直接エネルギーを簡単に取り出す反応という新たなプロセスであり、アンモニアを用いた燃料電池に応用できる可能性が示されたと説明している。

 すでに研究グループは2019年4月に窒素と水からアンモニアを合成する手法を発表しているが、今回の成果は、その逆となるもので、これらを組み合わせることで、窒素と水でアンモニアを合成し、それを貯蔵タンクなどに保管し、必要なときにアンモニアから電気エネルギーとして取り出す、というコジェネレーション的(エネルギー効率を高める方法)な使い方の実現が期待できるようになる。

 しかし、その実現のためには、アンモニアの腐食性が水素よりも高いことから、アノード側の電極などが腐食してしまうなどの課題があり、反応性の制御を厳密に行う技術の開発などが必要になるとしており、引き続き、研究を継続していくとしている。

 注目されるエネルギーキャリア

 アンモニア(NH3)が水素エネルギーの貯蔵、輸送媒体(エネルギーキャリア)として世界で注目され始めている。内閣府が2014年度に創設した日本の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)にり産学官の力を結集して、「エネルギーキャリア」の開発に取り組んでいる。アンモニアはそのうちの1つである。

 日本は現在、その一次エネルギー供給の93%を化石燃料に依存している。一次エネルギーの中で、CO2を排出しないエネルギーは原子力と再生可能エネルギー(再エネ)だが、原子力は、今後原子力発電所(原発)の新設と建て替えが行われない場合には、2050年には発電能力が、最大でも現在の約60%(全原発が60年稼働の場合)から、最小の場合には10%(同40年)の能力にまで減少する。

 そこで2050年に向けてCO2排出の80%削減(閣議決定)を図っていくためには、再エネの大量導入が必須となる。しかし国内の再エネ資源には、量的にも質的にも限りがあるため、海外から再エネを大量に導入する必要がある。この大量輸送、貯蔵手段としてエネルギーキャリアが重要となるのだ。

 エネルギーキャリアとして液化水素、メチルシクロヘキサン(MCH)及びNH3を対象に研究を進め、数々の重要な成果を挙げつつあるが、本稿では、(水素エネルギー協会)編集部からのご要請に従い、主としてNH3に係る具体的な研究成果を記しながら、そのエネルギーキャリアとしての可能性についてご紹介したい。

 エネルギーキャリアとしてのNH3 -その概要-

 NH3は水素密度の大きな物質である。液化NH3の体積当たりの水素密度は、先に掲げた3つのエネルギーキャリアの中で最も大きい。

 そしてNH3は、常圧下で -33℃、または、常温で8.5気圧といったマイルドな条件で液化する。このNH3の液化条件は、LPGの液化条件とほぼ同じであり、NH3はLPGと同様のインフラ、技術で輸送、貯蔵することが可能である。実際、世界でNH3は、年間約1.8億トンが製造され、約1,800万トンが国際的に流通している。つまり、水素をエネルギーとして利用する際の大きな技術的課題の一つ、水素エネルギーの大量輸送、貯蔵に係る問題はNH3には存在しない。

 さらに後述するように、SIP「エネルギーキャリア」における研究開発によってNH3が直接、発電や工業炉向けの燃料として利用できる可能性が見えてきた。NH3が直接、燃料として使えれば、水素を取り出すために必要となる相当量のエネルギーと熱源が不要となるので、エネルギーキャリアとしてのNH3の大きな優位性となる。

 加えて経済性に関する調査により、NH3をキャリアとして水素エネルギーを導入した場合のCO2排出削減コストが、他の削減手段に比してかなり安価となる可能性も見えてきた。

 NH3の物性に由来する懸念事項は、その臭気と急性毒性であるが、米国EPAが5年間かけて実施した最新の毒性評価の結果によると、NH3には直接吸入や直接接触した場合の急性毒性はあるものの、発がん性等の深刻な毒性は認められていない。

 なお、NH3は空気中や水中で急速に分解するので、通常は人が直接吸入や直接接触する可能性は小さい。他方、NH3は着火温度が高く(651℃)、また爆発限界も小さい物質であるため、米国では可燃性、爆発性のある物質としては区分されていない。実際、NH3は一定の管理の下で、世界で最も多量に使用されている化学物質の一つである。

 こうしたこともあって、SIP「エネルギーキャリア」におけるNH3関連の研究開発には、発電タービン・ボイラー等の発電機器メーカーに加えて、電力・ガス会社などのエネルギーユーザー企業が、次々と参加し始めている。また、CO2フリーNH3供給チェーンの上流を構成する可能性のある海外企業からは、供給チェーン構築に向けた協力プロジェクトの実施提案等もなされ始めている。

 以下に、NH3のエネルギーキャリア利用に向けた研究開発の進展と今後の計画等を具体的に紹介していこう。

 発電、工業炉用燃料としてのNH3の可能性

 (1) 発電用ガスタービン

 NH3の直接燃焼による発電実証試験は、出力50kWのマイクロガスタービン発電機を用いて(国研)産業技術総合研究所(AIST)の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)で行われた。灯油とNH3の混焼、メタン(CH4)とNH3の混焼、加えてNH3専焼等の試験が行われたが、いずれも所定の出力で安定的に発電することに成功した。先にも記したようにNH3は着火温度が高く火炎速度も遅いこと、分子中に窒素原子(N)を含むことから、燃焼の安定性とNH3の燃焼によるNOX(Fuel NOX) の発生が懸念されたが、安定な燃焼が維持可能であり、NOXの発生も十分に抑制できることが明らかとなった。

 NOXの発生が抑制可能となるのは、燃焼気体中に存在するNH3の還元作用であることも解明された。NH3は燃料としてもNOXの還元剤としても働くのである。NH3が還元剤として火力発電所やディーゼル・トラック排ガスの脱硝装置に吹き込まれていることを考えれば、このことは不思議なことではない。

 この成果をもとに現在、発電タービンメーカーが2017年度中に2MWのNH3/CH4の混焼(熱量ベースでNH320%混焼)発電タービンを開発し、2018年度に実証運転試験を行うことを目標に取組みを進めている。

 (2) 微粉炭発電ボイラー

 CO2フリー燃料としてのNH3の可能性が見えてきたことによって、電力会社主導による新たな取り組みも始まった。NH3を微粉炭発電ボイラー用燃料として用いる試みである。これが出来れば、発電コストが安価な既存の石炭火力発電所の有力なCO2排出削減手段となる。

 こうしたねらいでまず、(一財)電力中央研究所においてシングルバーナー微粉炭ボイラー実験炉(760kW)を用いたNH3の20%混焼実験が行われた。その結果、NH3の注入条件の調整により、NOXの排出を石炭専焼時と同レベルで抑えながら、CO2の排出を20%削減できることが確認された。この成果を受け、電力会社とボイラーメーカーが協力して、電力会社が実際に商用発電で使用している微粉炭発電ボイラーで、2017年夏にNH3混焼実証実験を行うほか、既存石炭火力発電所の大型微粉炭発電ボイラーでNH3混焼を行うための改造試設計を行う予定である。

 (3) NH3燃料電池

 分散電源におけるNH3の燃料利用でも成果が上がっている。固体酸化物形燃料電池(SOFC)の燃料としてNH3を用いた場合、純水素と同等レベルの発電特性(255Wの直流発電で効率53%)が得られることが確認されている。NH3は常圧、500℃以上の環境下では分解して水素と窒素(N2)に分解するので、動作温度が700~1,000℃のSOFCではNH3を直接、供給することで水素に代えることができるという着想が実証されたことになる。今後は、燃料電池システム機器メーカーが1kW程度のSOFCシステムを実際に製作し、実証試験を行う予定である。NH3は輸送、貯蔵が容易なので、NH3の利用によって、分散型発電のメリットがより生かせることになろう。

(4) 工業炉におけるNH3利用

 燃料としてNH3を利用する研究は、工業炉分野でも進められている。この分野での課題は、NOXの発生の抑制に加えて、火炎からの輻射伝熱を強化することであった。分子中に炭素(C)を含まないNH3の燃焼では、ススの燃焼による輻射伝熱効果が得られないからである。

 これまでに10kWモデル燃焼炉を用いた研究でNH3専焼、CH4-NH330%混焼の両ケースにおいて、酸素富化燃焼による火炎輻射の強化と火炎温度を均一化するための多段燃焼の組み合わせにより、これらの課題の克服に成功した。今後は、工業炉の実用規模である100kWスケールのモデル燃焼炉を用いた実証を行う予定である。

 このほか、セメントキルン、鋼板の圧延工程で用いられる脱脂炉でもCH4-NH3混焼利用研究を行っている。

 水素ST向けエネルギーキャリアとしてのNH3

 水素ステーション(ST)向けには、高圧水素、液化水素による供給チェーンが既に実用化されている。さらに物性的には、NH3とMCHをエネルギーキャリアとして用いる場合には、脱水素反応により水素をとりだす際に所要の熱源とエネルギーが必要になるというハンデがある。

 それにもかかわらず、MCH、NH3ともに体積水素密度が大きく、輸送、貯蔵が容易なことから、今後の燃料電池自動車(FCV)の普及動向で変化するSTの立地数、場所、水素の必要輸送量、輸送距離、さらには水素供給ソース次第では、MCH、NH3もコスト的に見てこの分野のエネルギーキャリアの選択肢の一つになり得ると考えられている。

 こうしたことから、SIP「エネルギーキャリア」では、水素ST向けのエネルギーキャリアとしてMCH、NH3の利用に係る技術課題の解決にも取り組んでいる。

 このうち「NH3水素ST基盤技術開発」では、550℃以下でNH3を化学平衡濃度まで分解できる新触媒、水素中に残存するNH3の除去材料、FCV燃料の純度基準を満たす水素精製技術が開発された。なお、この技術の社会実装においては、NH3の急性毒性や臭気に配慮して、一般の人々がアクセスできないサテライト基地のような場所でのNH3から水素への変換を考える必要があると考えており、今後はこういったことを念頭において実証研究等を進める方針である。

参考 マイナビニュース: https://news.mynavi.jp/article/20190726-865790/ 


発電効率が1番いい自然エネルギーはなに?

2019年08月28日 | サイエンスジャーナル

 エネルギーとエネルギー資源

 エネルギーという言葉には2つの意味が含まれる。一つは仕事をする能力のこと。もう一つはエネルギーをつくり出す資源のことである。

 仕事をする能力の方は、まず物体は高さによって位置エネルギーをもつ。運動する物体がもつ運動エネルギーはさらに回転エネルギー、振動エネルギーなどに分類される。これらを力学的エネルギーと総称する。

 熱はエネルギーの一種であって、熱エネルギーと呼ばれるが、その実体は物質を構成する微粒子の力学的エネルギーの総和である。電磁現象には電磁エネルギー、光には光エネルギー、化学物質には化学エネルギー、原子核現象では核エネルギーなどが考えられる。

 あらゆる物理変化,化学変化において,これらのエネルギーの総和が保存されることを広義のエネルギー保存則という。

 一方、エネルギーの発生源として、自然界に存在するエネルギー資源のことをエネルギーと呼ぶこともある。

 例えば太陽光は太陽光発電や太陽熱湯沸器に利用されている。また流水の運動エネルギーを水車や水力発電に利用したり、風の運動エネルギーを利用する風力発電などの例は、自然界にあるエネルギー源をそのまま利用したもので、自然エネルギーとか再生可能エネルギーなどと呼ばれている。

 最近では、石油危機などをきっかけに海洋の海流、潮汐などの利用、また地熱の利用なども盛んに研究され、一部は試験操業の段階に入ったものもある。

 一方、石炭、石油、天然ガスなどの類は、燃焼させることによってエネルギーを出すいわば間接的なエネルギー資源であり、化石燃料とも呼ばれている。物質としてのエネルギー資源といえる。

 発電効率が1番いい自然エネルギーはなに?

 一般的に電気エネルギーの変換効率は、入力したエネルギーに対して、どれだけの電力が発生したかという効率である。たとえば太陽電池の場合、太陽光のエネルギーは1kW/m2なので、1m2のパネルで200W発電すれば効率は20%ということになる。

 また、タービンを回して発電する装置の場合、タービンを回す機械的な効率と回転運動から電気エネルギーに変換させる電気的な効率を掛ける。特に自然エネルギーで問題となるのは設備利用率で、補助金と同様コストの回収に直接影響を与える。

 太陽光発電の発電効率

 一般的な太陽電池のエネルギー変換効率は、シリコン系単結晶タイプの20%が最高である。しかし化合物系のセルを多接合したものは38%のものも開発されている。ただし製作コストが高額なため現在は、人工衛星にしか使用されていない。

 この発電は、天候や時間に左右され、日本の設備利用率は12%程。県別で高いのは山梨県や長野県などの盆地で、低いのは青森県や秋田県の豪雪地帯である。またこの変換効率は、気温が高いと落ちるという特性もある。

 風力発電の発電効率

 風力発電は風速が3~5m/s以上になると発電を開始し、定格風速の8~16m/sで定格出力の発電を行う。この発電のエネルギー変換効率は、機械効率(約95%)と発電機の効率(約90%)を加味しても20~40%あり、自然エネルギーの中では比較的効率の良い発電である。

 ただし大型の風車を設置するので、自然の景観がそこなわれ、近隣住民に対して騒音や電波障害などの環境問題に発展する恐れがある。

 木質バイオマス発電の発電効率

 木質バイオマス発電は、化石火力に比較して燃焼温度が低いため発電効率は20%程度である。この発電は他の自然エネルギーと違い燃料にコストが掛かる。したがって排熱の利用が重要で、コージェネなどを行ってエネルギー効率を上げることが重要である。

 地熱発電の発電効率

 地熱発電は、地下のマグマで温められた蒸気を利用して発電を行う。自然の蒸気を利用するため蒸気の温度が比較的低く、このため発電効率も10%~20%である。しかし発電の原料となる蒸気は安定して供給されるため、設備利用率は約80%と高くなっている。

 既存の温泉施設で需要が増えてきたバイナリー発電だが、温水の熱量は小さく、また熱媒に熱交換をするため発電効率は5%前後である。

 水力発電の発電効率

 水力発電は水の落差を利用して発電するシステムである。この発電は、水の位置エネルギーを全て利用でき、エネルギーの損失となるのは水車の機械損失と発電機の損失だけ。このため総合的な発電効率は約80%と自然エネルギーの中では最も高い数値となっている。

 しかし、水を貯めるダムは、山奥など自然豊かな場所に建設されるため、環境破壊の原因になる。また長期間雨が降らないと、水の供給が不足して発電をストップしてしまう危険性がある。

参考 Loopclub:https://looop.club/editorials/detail/90?popin_recommend_link