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低水温でトラフグがオス化?猛毒の卵巣を珍味の白子に変えた!

2010年02月08日 | テクノロジー

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 トラフグの卵巣の猛毒は?
 トラフグ は、フグの一種。食用として取引されるフグの中では最も高級とされる。他のフグ類同様、フグ毒(テトロドトキシンという神経毒)を含むため、調理には免許が必要とされる。特に毒性が強いのが肝臓と卵巣である。

 石川県では、この猛毒の卵巣を塩漬けにしたうえ、糠に漬け込んで毒を抜いて珍味「河豚の卵巣の糠漬け」として食用に供しているそうだ。

 しかし、オスの精巣は白子といって高級食材とされる。フグではメスよりオスの方が価値が高い。高級食材として珍重される精巣(白子)が採れるオスの割合を高くすることで、より市場価値の高いトラフグ養殖が可能になる。

 そんな夢の技術を近畿大学水産研究所の研究者たちが開発した。稚魚を冷たい海水で養殖するだけで8割以上を雄にするという。

 この技術で雄性化したトラフグから採れる白子を盛り込んだトラフグセット商品を富山県の漁業協同組合と共同で開発し、フグ鍋のシーズンが始まる11月ごろ全国向けに発売する予定だ。

 トラフグのオス化に成功
 トラフグ雄性化に成功したのは、クロマグロの養殖でも知られる澤田好史教授らの研究チーム。高い価格で売れる白子が採れるオスを増やすことでトラフグ養殖の付加価値を高める研究に、10年以上前から取り組んでいる。トラフグはふ化後2-6カ月の間に性別が確定するが、稚魚のふ化後15-79日の期間を含む65-105日間、12-17℃の海水温で飼育すると80%以上が雄になることを突き止めた。

 澤田教授らは、近畿大学水産研究所の富山実験場で研究を進めているが、12-17℃の海水温条件を確保するため富山湾の水深100メートルからくみ上げた海水を利用することでコストを抑えることにも成功した。

 今後は、低水温飼育中に通常の10%程度に遅くなってしまう成長速度を速める工夫に加え、水温の低い海水を使用するとなぜ雄性化が促進されるのかの解明を目指し、雄性化の割合を100%に高める方法も開発したい、と澤田教授らは言っている。(サイエンスポータル 2010年1月13日)
  
 安定した雄性化の飼育条件
 トラフグはふ化後2~6カ月の間に性別が確定し、通常、雌雄の割合はほぼ1対1。具体的にどうすればオスが多くなるのであろうか?

 これまでの研究で判明した、80%以上の確率で雄性化を実現するための主な条件は、(1)水温12℃~17℃の海水を、(2)稚魚のふ化後15日から79日を含む期間で、(3)65日から105日間にわたり、飼育に使用するというもの。

 富山実験場では、この低い水温の海水に水深100メートルから汲み上げた海水を使用することで、海水を冷却するなどのコストを抑えることに成功している。

 ただし、水温の低い海水を使用することで稚魚の成育速度が遅くなる課題があり、エサの与え方や飼育方法に工夫を加えたものの、結果として、低水温飼育期間中は通常の10%程度の生育速度にとどまっている。

 今後、水温の低い海水を使用するとなぜ雄性化が促進されるのかの生理学的な解明を目指し、遺伝子研究を含めて研究を進め、オスの割合をさらに100%に高める方法を開発する予定である。また、低水温飼育下での飼育期間の短縮と、形態異常(奇形)発症の軽減も図っていく。

 安心・安全と高付加価値
 この技術の特徴のひとつは、ホルモン剤など、魚体への残留が懸念される薬剤を使用しないこと、自然界への逃亡を厳密に防ぐことが必要な多倍体などを用いないことなど、安心・安全な方法であることである。

 さらに、産業的応用の面では、この技術で雄性化させたトラフグの生産・加工・販売のモデル構築を行う。雄性化割合を飛躍的に高めることで生産コスト減となる白子を活用した付加価値の高いトラフグ関連商品を、富山県の地域ブランドとして育てていく方針。


参考HP 近畿大学「トラフグの稚魚80%をオス化する養殖技術確立」 

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