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「鉄鋼スラグ」を使って、海の砂漠化「磯焼け」を防げ!

2010年01月10日 | 環境保護
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 海の砂漠化
 「磯焼け」とはどんな現象だろう?浜でバーベキューをしているわけではない。

「磯焼け」はひと言でいえば「海の砂漠化」のこと。海中に海藻が減少し、海藻を餌とする生物の減少し、生態系全体に波及し、漁獲量も激減する状態を指す。最近では、単に海藻の減少のみを指す。

 この原因は何だろう?

 考えられる原因としては、ウニや小型巻貝類などの植食動物による食害、無節サンゴモの優占、海が荒れたり海底が侵食されたりすることによるもの、漂砂による傷・汚れ、日射量の減少による光合成阻害などがある。

 人間が原因とする説では、船舶の船底塗料・都市や農村から流入する河川などからの環境ホルモンによる汚染、造成などによる土砂の流入、貧栄養化現象に起因する広範囲の海域の環境の変化などがある。さらにこれらの包括的原因として、地球温暖化による海水温の上昇や海流、気候の変化なども指摘されている。

 もうひとつの原因にアイゴの食害があげられている。アイゴは海藻を好んで食べる魚で日本全国の海岸線に生息している。冬になると食欲が落ちていたが、地球温暖化による、海水温の上昇により冬になっても食欲が落ちなくなり、海藻を食べ尽くしているのではないかとも考えられてきた。

 海の砂漠化の原因 
 最近「豊かな森があるところは、海も豊かである」という言葉も、常識的になってきた。豊かな森があるところからは、海の生物に不可欠な種々の栄養素や化学成分が河川を通して海に流れていく、というのがその理由だ。

 河川の水と外洋水が混じり合うところを「沿岸海域」と呼ぶが、ここに河川からフルボ酸鉄、腐植物質、栄養素が供給されることで、沿岸の生物が育つことが分かってきた。

 現在、北海道、東北地方の日本海沿岸では、外洋水に含まれる鉄イオンの濃度とほとんど変わらないところが数多く出てきている。本来なら沿岸水の鉄イオンの濃度が高くなければならないのに、そうではなくなっている。この理由は、河川水の流入がほとんどなくなっているからで、ここでは「海の砂漠化」いわゆる「磯焼け」が起きている。

 鉄鋼スラグで海が再生
 こうした現状に対して、鉄鉱石から鉄を取り出す際に生じる副産物「鉄鋼スラグ」を使い、海洋中に不足していた鉄を補って海藻の成長を促すことに、新日本製鉄や東京大などの研究チームが成功した。

 海藻は二酸化炭素(CO2)も吸収するため、漁業の活性化に加え、地球温暖化防止に役立つ可能性があるという。

 日本各地の海岸では藻場が減少する「磯焼け」が毎年拡大。現在では沿岸約5000キロにわたって発生している。原因としてウニによる食害や海水中の鉄濃度の減少などが指摘されている。

 鉄鋼スラグと腐植土
 研究チームは5年前に鉄鋼スラグを沿岸へ埋めて鉄を人工的に補給する実験に着手した。鉄が海水に溶けやすくなるよう鉄鋼スラグ8トンを腐植土4トンと一緒に混ぜて袋詰めにし、磯焼けが発生している北海道増毛(ましけ)町の日本海沿岸に沈めた。

 その結果、海藻1本当たりの重さは何の対策も取っていない近くの場所に比べて、約8カ月間で8倍に増えたことが分かった。また、埋設場所から算出されるCO2吸収量は海藻1平方メートル当たり年間5.5キロだった。

 日本は京都議定書で年間6%の排出削減を義務付けられている。過去30年間に消失した日本沿岸の藻場のほぼ半分をこの方法で再生すれば、日本の年間排出量(約13億トン)の約0.5%に当たる700万トンを吸収することになるという。

 現在、北海道以外にも三重県や長崎県など十数地点で実験しており、効果の継続期間などを検証していく。(毎日新聞 2010年1月3日)

 鉄鋼スラグとは?
 高炉で製造された溶銑やスクラップから、靱性、加工性のある鋼にするのが製鋼工程であり、この製鋼工程で生成するのが製鋼スラグである。粗鋼1t当たり約110kg 生成する。

 この産業廃棄物を、様々な方面で再利用することが考えられている。今回紹介した海域環境改善用資材以外には、高炉セメント、コンクリート用混和材、道路用路盤材、コンクリート用粗骨材、細骨材、港湾工事用および地盤改良用資材、肥料および土壌改良用資材などがある。

 

参考HP 鉄鋼スラグ協会「鉄鋼スラグとは」・ECO JAPAN「鉄の研究が生物多様性問題を解決」・Wikipedia「磯焼け」 

磯焼けを起こすウニ―生態・利用から藻場回復まで (磯焼け対策シリーズ)
藤田 大介,桑原 久実,町口 裕二
成山堂書店

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