2002年6月30日(日)

エッタ・ジェイムズ「ETTA JAMES ROCKS THE HOUSE」(MCA/Chess CHD-9184)
1.SOMETHING'S GOT A HOLD ON ME
2.BABY WHAT YOU WANT ME TO DO
3.WHAT'D I SAY
4.MONEY(THAT'S WHAT I WANT)
5.SEVEN DAY A FOOL
6.SWEET LITTLE ANGEL
7.OOH POO PAH DOO
8.WOKE UP THIS MORNING
9.AIN'T THAT LOVIN7 YOU BABY
10.ALL I COULD DO IS CRY
11.I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU
エッタ・ジェイムズのライブ盤、1963年リリース。
38年生まれ、当時25才だったエッタは、ブルースのみならず、R&B、ジャズ、ポップスなどなんでもござれのオールラウンド・シンガー。
イタリア系白人と黒人のハイブリッドという、独特の容姿、そしてパンチのきいたヴォーカルで、人気を集めていた。
このライブはC&Wの聖地、ナッシュヴィルのライブハウス「ニュー・エラ・クラブ」に63年9月に出演したときの録音。当然、土地柄で、観客は白人・黒人が入りまじっている。
(1)は彼女自身も曲作りに参加したオリジナル。エッタが開口一番、「ウォーーッ!」と唸るや、場内はもう騒然。エキサイティングなショーの始まりだ。彼女のラフなシャウトが実にカッコいい。
乗りのいい、ビートの利いたナンバーが続く。(2)はおなじみ、ジミー・リードの代表作。原曲のほんわかしたムードとは対照的に、エッタはへヴィなリズムに乗せて、ハードな歌いぶりを見せる。
まるで野獣のごとく吼え、唸りまくる。彼女の、いってみれば「べらんめえ調」の歌に、場内の男どもは圧倒されっぱなし。
続く(3)は、もちろん、レイ・チャールズの大ヒットのカバー。ここでの「コール&レスポンス」のすさまじさは、ご本家をもしのぐものがある。3曲目にして場内ははや、沸騰状態。
(4)は、ジェイニー・ブラッドフォード=ベリー・ゴーディ・ジュニアという、モータウン系ライターが書き、バレット・ストロングが歌ったナンバー。というより、ビートルズのカバー・ヴァージョンで余りにも有名な、あの曲だ。
このエグい歌詞のナンバーを、何のてらいもなく、ド迫力で歌いこなすエッタ。
このストレートさ、ヴァイタリティが、やっぱり彼女の最大の魅力なのではないかなぁ。
(5)は、ビリー・デイヴィス=ベリー・ゴーディ・ジュニアのペンによる、彼女自身の持ち歌。
「一週間、ずっとあんたに首ったけ」というこれまたストレートな内容の、ダンサブルなR&Bナンバー。途中、ホーンライクなアドリブ・スキャットを聴かせるのだが、これが実にいかしている。
自らのヴォーカルを、ひとつの楽器として使いこなしているのだ。
曲調は一転、ギターのデイヴィッド・ウォーカーが、フェンダー・ジャズマスターのソリッドな音でスローブルースを奏で始める。
そう、B・B・キングであまりに有名な(6)である。一般にBBの作品と思われているが、オリジナルはロバート・ナイトホーク。
ここでのギターソロが、トーンといい、フレーズといい、実にいい。そしてもちろん、エッタのタメをきかせたディープな歌も。
(7)はニューオーリンズ出身のシンガー、ジェシー・ヒルの作品。エッタのほかには、アイク&ティナ・ターナーのカバーが有名だが、明らかに、彼らはエッタの影響からこのナンバーを選んだように思われる。
それくらい、ここでのエッタの歌いぶりは、ひたすらファンキーでエキサイティングなのである。
(8)は御大B・B・キングのオリジナル。ここでは、ミディアムそしてアップテンポと、テンポ・チェンジがしきりに行われている。
エッタの粘っこいヴォーカル・テクニックもあいまって、ブルースというよりは、ソウル・ナンバーに生まれかわっているのが、興味深い。
(9)はふたたび、ジミー・リードのナンバー。ステディなビートに乗せて、力強くシャウトを決めてくれるエッタ。
(10)は、デイヴィス=ゴーディほかによる、彼女自身のヒット曲。60年代、チェスに移籍しての初ヒットでもある。
失恋した女性の心を歌った、ワルツ・テンポの典型的ロッカ・バラード。これをエッタはときにはしっとりと、ときにはエモーショナルに歌いあげてくれる。本ステージでは異色の一曲。
最後はやっぱり、ノリノリのナンバーでしめくくり。(11)は説明不要、ウィリー・ディクスン作曲、マディ・ウォーターズが歌って世の多くの女性を興奮させた、あの一曲だ。
この刺激的な歌詞、はじけんばかりの歌いっぷりに、場内の男性ファンは全員、悩殺状態(笑)。
ここまでストレートに、観客を挑発できた女性シンガーなど、前代未聞だったに違いない。
とにかく、全編、パワフル、エネルギッシュ。歌ものライブの名盤、数々あれど、この一枚は出色の出来。
パフォーマーとオーディエンスが、ここまでホットに絡み合ったケースは、そう見当たらない。
この一枚が、アイク&ティナ、ジャニス・ジョプリン、スティーヴ・マリオットといったアーティストたちに与えた影響力には、はかり知れないものがある。
真実のソウル、この一枚を聴いて触れてみて欲しい。
<独断評価>★★★★