2002年12月7日(土)
フレディ・キング「FREDDIE KING(1934-1976)」(Polydor 831 817-2)
(1)PAC IT UP (2)SHAKE YOUR BOOTIE (3)TAIN'T NOBODY'S BUSINESS IF I DO (4)WOMAN ACROSS THE RIVER (5)SWEET HOME CHICAGO (6)SUGAR SWEET (7)TV MAMA (8)GAMBLING WOMAN BLUES (9)FARTHER ON UP THE ROAD
フレディ・キング、RSO時代のコンピ盤。77年、彼が亡くなった翌年にリリースされた追悼盤でもある。
レオン・ラッセル率いるシェルター・レーベルのもとを辞したフレディは74年、RSOへと移籍する。2年後に急逝、そこが結局、彼の終の住処(ついのすみか)となってしまった。
この一枚は移籍第一弾のアルバム、「Burglar」以降のレコーディングから、未発表音源も含めて9曲がセレクトされている。
(1)は、「Burglar」のトップに収録のナンバー。tRICK bAGもレパートリーにしている。恋人との破局を迎え、「じゃ、オレが出て行くわ」と、荷物一式をまとめて家を出て行く男の歌。
タイトでファンキーなビートに乗せて、おなじみのテンションの高いヴォーカル、すすり泣くようなシャープなギター・プレイを聴かせてくれる。ブルースというよりは、ファンクな一曲。
(2)は、これまたファンキー路線なオリジナル・ナンバー。アルバム未発表。
声を張り上げず、抑え目のヴォーカルがどことなく、先輩のアルバート・キングに似ている。クレジットにはないのだが、女性シンガーとの軽妙かつ色っぽい掛け合いも、また聴きもの。
(3)は未発表のライヴ音源から。ここでは一転、昔ながらのR&B調で。もちろん、ベッシー・スミスがオリジナルの、ブルース・クラシック中のクラシックだ。
どちらかといえばミディアム・テンポで演奏されることの多いこのナンバーを、思い入れたっぷりにスローでキメている。
歌もギターも、実に見事な「タメ」だ。ギターのソリッドな音色が実にイカしている。
(4)もライヴ録音。(3)(4)の2曲はともに75年、テキサス州ダラスで収録されている。
こちらは、シェルター時代の73年リリースされたアルバム「WOMAN ACROSS THE RIVER」のタイトル・チューンの再演。
ミディアム・スローのファンク・ブルース。頻繁なテンポ・チェンジが特色だ。
フレディの売り、ハードなシャウトも、泣きのギターも全開、コテコテな一曲なり。
(5)は74年録音。ごぞんじロバート・ジョンスンの代表曲。その後、ライヴでもしばしばプレイしていたようなので、フレディお気に入りの一曲なのだろう。バンド・サウンド、ややアップ・テンポで演奏。
ここでのギター・ソロは、非常にキャッチーにまとまったものなので、なにかブルース・ギターをコピーしてみようかという方には、格好のネタかも知れない。
(6)は、フレディを師と仰ぐ、エリック・クラプトンのバンドを迎えての74年のレコーディング。(アルバム「Burglar」収録。)
これまたファンク・ブルース路線の一曲。クラプトンの歯切れのいいリズム・ギターに乗せて(なんという贅沢!)、思い切りスクウィーズするフレディ。
もちろん、クラプトン、ジョージ・テリーも、ソロをとる。それぞれの個性が出ていて、なかなか面白い。
(7)もまた、74年、マイアミにての録音。クラプトン・バンドとの共演。アルバム未収録。
当時、レーベルが同じということもあって、彼らは非常に親しい付き合いをしていたようだ。ちょうど、クラプトンがアルバム「461オーシャン・ブールヴァード」を発表したころだ。
こちらはオーソドックスなミディアム・テンポのシャッフル。フレディのオリジナル。
クラプトンは「マザーレス・チルドレン」「アイ・キャント・ホールド・アウト」等でもそうだったが、そのころスライド・ギターに凝っていて、ここでもその達者なプレイを聴くことが出来る。
もち、フレディのめいっぱいスクウィーズの効いたギターもいい。エンディングは「HIDE AWAY」風フレーズでキメてくれます。
(8)もまた、クラプトン・バンドとの共演。フレディ自作の、9分近いスロー・ブルース。74年録音。
曲想としては、B・B・キング、そしてオーティス・ラッシュで有名な「GAMBLER'S BLUES」あたりの影響が強そうな一曲。
冒頭で延々と展開される、フレディの345と、クラプトンのストラトの絡みが実にスリリングだ。
それぞれの音色の微妙な違いを、聴きとってみてほしい。
後半もエンドレスで展開する、泣きのギター・ソロには、ただただ、涙、涙である。
以前、クラプトンの「BLUES」をレビューしたときに、スロー・ブルースの垂れ流しは感心しない、みたいなことを書いたのだが、フレディ・キングくらいの腕前のひとになると、けっこうそれも許せてしまう気がする(笑)。
やはり、借り物ではない、自らの身体がブルースと化したひとの演奏は、いくら延々とソロを聴かされても「冗長」と感じないから、まことに不思議ではある。
ラストの(9)は、クラプトン・バンドのステージにゲストで出演したときの、ライヴ録音。
76年11月15日、ダラスにての収録だから、彼が同年12月28日に亡くなる直前のパフォーマンスといえる。そういう意味でも、実に貴重なテイクだ。
曲はクラプトンが好んで演奏し、いまやおなじみとなった感のある、ボビー・ブルー・ブランドの代表曲。
リード・ヴォーカルはクラプトン。フレディはクラプトンのギター・ソロを引き継いで登場、張りとツヤのある345の音色で、われわれを魅了してくれる。
中間部の、リズム抜きでの「カラミ」も、なんともカッコよろしいし、後半ソロでのハジケぶりもナイス。
最高のライヴ・パフォーマンス、これは必聴でっせ。
というわけで、アルバムからの編集盤というよりは、未発表テイク中心なのだが、いずれも名演ぞろい。晩年とはいえ全然枯れちゃいないフレディの、ハイ・テンションなヴォーカルとギターがフルに楽しめる。
クラプトン・バンドのサポートもあって、かなりロック寄りなサウンドに仕上がっています。ロック・ファンにも超おススメ。
やっぱ、フレキンは28年後の今も、聴くものを必ずや熱くさせまっせ!
<独断評価>★★★★☆