NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#413 RITA COOLIDGE「リタ・クーリッジ」(ポリドール/A&M POCM-2048)

2023-01-04 05:19:00 | Weblog
2023年1月4日(水)



#413 RITA COOLIDGE「リタ・クーリッジ」(ポリドール/A&M POCM-2048)

本日より、連載再開である。今年もよろしくです。

米国のシンガー、リタ・クーリッジのデビュー・アルバム。71年リリース。デイヴィッド・アンダールによるプロデュース。

リタは45年、テネシー州の生まれ。ネイティブ・アメリカンのチェロキー族の血を引いている。

幼少期よりゴスペルに親しみ、歌うようになる。69年、デラニー&ボニーのツアーに参加したことで一躍注目を浴び、さらに翌年、ジョー・コッカーのツアーにも加わってメジャーな存在となる。

そういった名だたるミュージシャンたちとの人脈によって出来上がったのが、このアルバムだ。

バックがとにかく、超豪華である。

まずはキーボードのブッカー・T・ジョーンズ。彼は後にリタの姉、プリシラと結婚して義兄となる人でもある。そしてレオン・ラッセル、スプーナー・オールダム(以前にダン・ペンとのライブ・アルバムを取り上げた人だ)。

ギターはライ・クーダー、クラレンス・ホワイト(バーズ)、マーク・ベノ、ジェリー・マギー、スティーブン・スティルス、ボビー・ウーマックと、実にさまざまなタイプのプレイヤーが集まっている。

ベースにはジョーンズの盟友、ドナルド・ダック・ダン、ドラムスにはジム・ケルトナーなど。

コーラスには、姉プリシラ、グレアム、ナッシュ、そしてハンブル・パイとの共演で知られる黒人女性グループ、ブラックベリーズなど。

もう、このパーソネルだけでこの一枚、買おうかなと思わない?

曲は基本的に他のアーティストのカバーだが、選曲がバラエティに富んでいる。

「愛の神に伝えて」はシンガーソングライター、ドナ・ワイスの作品。「ベテイ・デイビスの瞳」のヒットで知られる人だ。

ゴスペルの雰囲気が濃厚なバラード。ブラックベリーズがリタの熱唱を、盛り立てる。

「友の微笑」はスワンプ・ロックの代表選手、マーク・ベノの作品。ベノはギターでも何曲か弾いている。これは友人のラッセルつながりだろうな。

アコースティック・ギターの響きが美しい、フォーク・バラード。リタの歌声はこの上なく優しい。

「クレイジー・ラヴ」は英国のシンガー、ヴァン・モリスンの作品。R&B色の強いナンバー。

こういうブルーアイドソウルな曲も、リタはお手のものなのだ。

「ハッピー・ソング」はオーティス・レディング、スティーブ・クロッパーの作品。もちろん、ジョーンズつながりの起用である。サザン・ソウルの佳曲。

MG’Sばりのファンキーな演奏をバックに、快唱するリタ。こんなバンドで歌えるなんて、ラッキーの極みだな。

「セブン・ブリッジズ・ロード」はカントリー系のシンガーソングライター、スティーブ・ヤングの作品。彼の代表的ヒットでもある。

ドラマティックなバラード・ナンバー。リタの歌声がなんとも勇ましい。

「悪い星の下に」は、言うまでもなくジョーンズとウィリアム・ベルの作品。スローなブルース・ナンバー。

この曲はアルバート・キングのバージョンが最も知られているが、女性シンガーによるカバーは珍しい気がする。

リタ自身は格別不幸な生い立ちではなさそうだが、その落ち着いた歌声には、不思議と説得力がある。

「あなたなしでは」はマーヴィン・ゲイの65年のヒット。スモーキー・ロビンスン、ピート・ムーア他による作品。モータウン・ソウルの代表的ナンバー。

軽快なビートに乗り、歌いまくるリタがカッコいい。

「マウンテンズ」は再び、マーク・ベノの作品。しみじみとした曲調の、ロック・バラード。

リタの温かみのある歌唱が、実にマッチしている。

「マッド・アイランド」はこれもドナ・ワイスの作品。

カントリー・タッチな中にも、ゴスペルの匂いを感じさせるロック・ナンバー。張りのある歌声が素晴らしい。

ラストの「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」はニール・ヤングの作品。スティルスつながりの選曲。

ゆったりとした、フォーク・バラード。素直な心でひたむきにラヴ・ソングを歌うそのイメージは、のちのちのヒット曲「ウィー・アー・オール・アローン」「あなたしか見えない」でもずっと続いていく。

リタの声って、クセのないスーッとした感じだが、そのおかげでかどんなタイプの曲でも、フォークでも、カントリーでも、ソウルでも、ブルースでもよく合うのだよな。オールラウンドな声と言いますか。

それは、純粋白人でも、黒人でもない、ハイブリッドなリタ、ひとつのレース(人種)に縛られないリタだからこそ可能なことだという気がする。

音楽はミックスされることによって、より高い次元のものになって行く。

そのことを、よく教えてくれる一枚であります。

<独断評価>★★★★