2023年1月18日(水)
#427 BON JOVI「CRUSH」(ユニバーサル ミュージック/Mercury PHCW-1100)
米国のロック・バンド、ボン・ジョヴィの7枚目のアルバム。2000年リリース。ルーク・エビン、ジョン・ボン・ジョヴィ、リッチー・サンボラによるプロデュース。
約5年ぶりにリリースした本盤は、売れまくったアルバムだ。全米でこそ9位だが、全英1位、そして日本でもオリコン2位、なんとトリプル・プラチナに輝いている。
ボン・ジョヴィは84年にデビューしてその年に初来日、2年後にサード・アルバム「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」、シングル「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」で世界的にブレイクした。日本ではデビュー当初から人気があり、彼らの日本びいきの理由となっている。
そんな彼らもデビューして15年も過ぎると、見てくれや若さだけでは勝負出来なくなってくる。サウンドも陳腐化する。
そこで一旦活動を休止して、ジョンのソロ・アルバムを出したのちに、充電完了ということで本盤を世に問うた。
そして、見事に再ブレイクに成功したというわけだ。
オープニングの「イッツ・マイ・ライフ」はシングルでもヒットした。「リヴィン〜」にも似た哀愁味のある、いかにも彼ららしいロック・ナンバー。派手なコーラスが、やはりボン・ジョヴィには欠かせません。
「セイ・イット・イズント・ソー」は同じくシングル曲。ゆったりしたテンポのロック・バラード。どことなくビートルズ的なメロディとアレンジがポイント。
次もまたまたシングル。「サンキュー」はピアノをフィーチャーしたドラマチックなバラード。日本のTVドラマにも使われていたから、覚えている人も多いだろう。ストリングスのアレンジも美しい。
つまり、いきなりのヒット・シングル3連発という、すげー曲配置。聴きどころを全て冒頭にまとめちゃってる。DJ向けの配慮か?!
もう、ここで聴くのを終わりにしてもいいぐらいだが(笑)、それじゃあんまりなので続けます。
「トゥー・ストーリー・タウン」はミディアム・テンポのバラード。ギター・サウンドが、いかにも抜かりのない作りです。
「Next 100 Years」は、ポジティブなメッセージを持つロック・ナンバー。なんとこれは日本のアーティスト、J-FRIENDS(ジャニーズの連合ユニット)のために提供した曲なのだ(オリコン1位)。
両者を聴き比べてみると面白いのだが、ジョンが歌うと骨太のロックに聴こえる一方、ジャニが歌うとどうしてもフツーのポップ・ソングに聴こえてしまう。これは仕方ないか。
でも、ボン・ジョヴィの曲って、大勢で歌いたくなるような何かを持っているね。それは強く感じた。「イッツ・マイ・ライフ」を大勢のアマチュアがトリビュートしたビデオ、なんてのもあったし。
つまり「みんなの愛唱歌」なんよ、彼らの曲は。特別に歌が上手いヤツ、特別に声が高いヤツの独占物じゃないから、多くの人々に愛されるのだよ。
「ジャスト・オールダー」はアップ・テンポのロックンロール。高揚感のあるナンバーだ。
ハードなサウンドの中にもフォーキーなテイストもある。要するにまんまアメリカン。
「ミステリー・トレイン」は、アコギもまじえたフォーク・ロックなナンバー。終盤のリッチーのスライド・ギターがいい音を出している。
「セイヴ・ザ・ワールド」は、ストリングスも加えたスケールの大きいバラード。ハード・ロックをベースにして、ワンステージ上の大人向けロックをこの曲で完成させたといえる。
「キャプテン・クラッシュ&ザ・ビューティー」は、ギラギラのギター・サウンドが若々しい。ボン・ジョヴィ本来の魅力を発揮したロック・ナンバー。
「シーズ・ア・ミステリー」は、静かなフォーク・バラード。しみじみとした情感が伝わってくる。
「アイ・ゴット・ザ・ガール」はオルガン・サウンドが重厚なハード・ロック。静と動のメリハリが利いたナンバー。コーラスはさすがの迫力だ。
「ワン・ワイルド・ナイト」は米国盤ではラスト。ゲスト・コーラスを多数加え、圧倒的な熱量で送るヘビー級のロック。このコテコテ具合が、ボン・ジョヴィですねん。
「リヴィング・ラヴィン・ユー」は、エアロスミスあたりにもつながるサウンド。決してブリティッシュではなく、アメリカンなハード・ロック。
日本盤のラストは「ニューロティカ」。ひたすらパワーで迫る、押し相撲のようなロックンロール。どこか懐かしささえ漂う、伝統芸的サウンドだ。
以上、ボーナス・トラックも含めると14曲。特に目新しいサウンド、新奇なものはない。どれも一塁打、平和(ピンフ)みたいな、ソツのない作りである。
売れるかどうかでいうと、間違いなく売れるだろうな、と思う。
しかし、筆者のハートにグッと来たかというと、さほどでもない。「フンフン、こんなもんねー」という、いささか冷たい感想しか湧いてこないのだ。
これはボン・ジョヴィの音がありきたりでつまらない、ということではない。
要は、筆者にとってボン・ジョヴィが、思春期を共に過ごした友ではないということに帰結するんだろうな。
筆者が彼らの音楽を聴き始めたのは、週刊誌記者としてロックをレビューするようになってからで、いわば業界側の人間としてしか、彼らを見れていなかった。
そこにはZEPやCCRに対するような一目惚れとか、熱狂みたいな感情は微塵もなかったから、時代を経ての彼らの素晴らしいサウンドも、通りいっぺんのものにしか思えないのだ。
ロックとは青春の音楽なのだ、とつくづく思う。
誤解を恐れずにいえば、若くて、愚かで、未熟な者どもにしか、その良さを感じとれないのだ。
筆者が10年、いや5年だけ生まれるのが遅ければ、ボン・ジョヴィは永遠のロック・アイドルになっていたような気がする。
<独断評価>★★★☆
米国のロック・バンド、ボン・ジョヴィの7枚目のアルバム。2000年リリース。ルーク・エビン、ジョン・ボン・ジョヴィ、リッチー・サンボラによるプロデュース。
約5年ぶりにリリースした本盤は、売れまくったアルバムだ。全米でこそ9位だが、全英1位、そして日本でもオリコン2位、なんとトリプル・プラチナに輝いている。
ボン・ジョヴィは84年にデビューしてその年に初来日、2年後にサード・アルバム「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」、シングル「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」で世界的にブレイクした。日本ではデビュー当初から人気があり、彼らの日本びいきの理由となっている。
そんな彼らもデビューして15年も過ぎると、見てくれや若さだけでは勝負出来なくなってくる。サウンドも陳腐化する。
そこで一旦活動を休止して、ジョンのソロ・アルバムを出したのちに、充電完了ということで本盤を世に問うた。
そして、見事に再ブレイクに成功したというわけだ。
オープニングの「イッツ・マイ・ライフ」はシングルでもヒットした。「リヴィン〜」にも似た哀愁味のある、いかにも彼ららしいロック・ナンバー。派手なコーラスが、やはりボン・ジョヴィには欠かせません。
「セイ・イット・イズント・ソー」は同じくシングル曲。ゆったりしたテンポのロック・バラード。どことなくビートルズ的なメロディとアレンジがポイント。
次もまたまたシングル。「サンキュー」はピアノをフィーチャーしたドラマチックなバラード。日本のTVドラマにも使われていたから、覚えている人も多いだろう。ストリングスのアレンジも美しい。
つまり、いきなりのヒット・シングル3連発という、すげー曲配置。聴きどころを全て冒頭にまとめちゃってる。DJ向けの配慮か?!
もう、ここで聴くのを終わりにしてもいいぐらいだが(笑)、それじゃあんまりなので続けます。
「トゥー・ストーリー・タウン」はミディアム・テンポのバラード。ギター・サウンドが、いかにも抜かりのない作りです。
「Next 100 Years」は、ポジティブなメッセージを持つロック・ナンバー。なんとこれは日本のアーティスト、J-FRIENDS(ジャニーズの連合ユニット)のために提供した曲なのだ(オリコン1位)。
両者を聴き比べてみると面白いのだが、ジョンが歌うと骨太のロックに聴こえる一方、ジャニが歌うとどうしてもフツーのポップ・ソングに聴こえてしまう。これは仕方ないか。
でも、ボン・ジョヴィの曲って、大勢で歌いたくなるような何かを持っているね。それは強く感じた。「イッツ・マイ・ライフ」を大勢のアマチュアがトリビュートしたビデオ、なんてのもあったし。
つまり「みんなの愛唱歌」なんよ、彼らの曲は。特別に歌が上手いヤツ、特別に声が高いヤツの独占物じゃないから、多くの人々に愛されるのだよ。
「ジャスト・オールダー」はアップ・テンポのロックンロール。高揚感のあるナンバーだ。
ハードなサウンドの中にもフォーキーなテイストもある。要するにまんまアメリカン。
「ミステリー・トレイン」は、アコギもまじえたフォーク・ロックなナンバー。終盤のリッチーのスライド・ギターがいい音を出している。
「セイヴ・ザ・ワールド」は、ストリングスも加えたスケールの大きいバラード。ハード・ロックをベースにして、ワンステージ上の大人向けロックをこの曲で完成させたといえる。
「キャプテン・クラッシュ&ザ・ビューティー」は、ギラギラのギター・サウンドが若々しい。ボン・ジョヴィ本来の魅力を発揮したロック・ナンバー。
「シーズ・ア・ミステリー」は、静かなフォーク・バラード。しみじみとした情感が伝わってくる。
「アイ・ゴット・ザ・ガール」はオルガン・サウンドが重厚なハード・ロック。静と動のメリハリが利いたナンバー。コーラスはさすがの迫力だ。
「ワン・ワイルド・ナイト」は米国盤ではラスト。ゲスト・コーラスを多数加え、圧倒的な熱量で送るヘビー級のロック。このコテコテ具合が、ボン・ジョヴィですねん。
「リヴィング・ラヴィン・ユー」は、エアロスミスあたりにもつながるサウンド。決してブリティッシュではなく、アメリカンなハード・ロック。
日本盤のラストは「ニューロティカ」。ひたすらパワーで迫る、押し相撲のようなロックンロール。どこか懐かしささえ漂う、伝統芸的サウンドだ。
以上、ボーナス・トラックも含めると14曲。特に目新しいサウンド、新奇なものはない。どれも一塁打、平和(ピンフ)みたいな、ソツのない作りである。
売れるかどうかでいうと、間違いなく売れるだろうな、と思う。
しかし、筆者のハートにグッと来たかというと、さほどでもない。「フンフン、こんなもんねー」という、いささか冷たい感想しか湧いてこないのだ。
これはボン・ジョヴィの音がありきたりでつまらない、ということではない。
要は、筆者にとってボン・ジョヴィが、思春期を共に過ごした友ではないということに帰結するんだろうな。
筆者が彼らの音楽を聴き始めたのは、週刊誌記者としてロックをレビューするようになってからで、いわば業界側の人間としてしか、彼らを見れていなかった。
そこにはZEPやCCRに対するような一目惚れとか、熱狂みたいな感情は微塵もなかったから、時代を経ての彼らの素晴らしいサウンドも、通りいっぺんのものにしか思えないのだ。
ロックとは青春の音楽なのだ、とつくづく思う。
誤解を恐れずにいえば、若くて、愚かで、未熟な者どもにしか、その良さを感じとれないのだ。
筆者が10年、いや5年だけ生まれるのが遅ければ、ボン・ジョヴィは永遠のロック・アイドルになっていたような気がする。
<独断評価>★★★☆