2023年1月26日(木)
#435 GRANT GREEN「グリーン・ストリート」(東芝EMI/Blue Note TOCJ-6492)
米国のジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンのセカンド・リーダー・アルバム。61年リリース。アルフレッド・ライオンによるプロデュース。
グリーンは35年セントルイス生まれ。79年に43歳の若さで亡くなるまで、30枚以上のアルバムを残している。
70年代はファンク・ジャズの方向性を強め、伝統的なジャズのファン以外からも支持されたアーティストだ。
彼の、ごく初期の清新な演奏を聴いてみよう。
61年ごろは、まだバップのスタイルに忠実に従って弾いているのがよく分かる。
オープニングの「No.1 グリーン・ストリート」は彼のオリジナル。アップ・テンポのブルーズィなナンバー。
基本はシングル・トーンで、一音一音をきちんと弾くタイプのギター。
当時すでにジャズ・ギターの世界では大家然としていたウェス・モンゴメリーがコード、オクターブ奏法をフルに駆使していたのと合わせて考えると、いかにも昔ながらのスタイルに見える。
だが、そこはやはり、他者のスタイルや流行には安易に飛びつかない、アーティストとしての意地なんだろうな。かたくなまでに、シングルトーンへのこだわりを見せている。
バック・ミュージシャンはベースのベン・タッカーと、ドラムスのデイヴ・ベイリー。
このふたりの安定したビートに乗って、スウィングしまくるグリーン。このリズム感が見事。
ソロでは同じフレーズを執拗に繰り返すことで、グルーヴを高めるのが、彼によく見られるパターン。
このグリーン・スタイルが顕著に現れるのが、「No.1 グリーン・ストリート」だ。いわば、彼の名刺代わりの一曲。
次の「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」はセロニアス・モンクの作品。ゆったりとしたテンポのバラード。
モダン・ジャズにおける、スタンダード中のスタンダードだ。
幾多のミュージシャンがレコーディングして来た名曲を、グリーンは原曲のメロディをしっかりと生かしつつ、徐々に自分の世界へとリスナーを導いていく。
グリーンは、同じジャズ・ギタリストのケニー・バレル(彼もシングル・トーン系だ)ほどブルース臭は濃厚ではないが、ほどよくブルースを匂わせるフレージングがいい。
この「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」のソロ(特に4〜5分台)は、この曲を弾こうと考えるギタリストにとっては、格好のお手本となるのではないかな。
そのくらい、練り込まれたフレーズの連続、連続なのである。
「グランツ・ディメンションズ」は再びグリーンのオリジナル。チャーリー・パーカー直系のビ・バップ色の強い、アップ・テンポのナンバー。
複雑なフレーズの組み合わせにより、息もつかせぬ展開を見せていく。
どこまでが譜面に書かれたコンポジションなのか、アドリブ・ソロなのか。リスナーには判然としないが、とにかくスリリングだ。
中盤はタッカーのベース・ソロに続き、ギターとドラムスのソロ交換へ。そしてテーマへと戻って終わる。
グリーンの演奏力だけでなく、作・編曲能力の高さもフルに発揮された一曲である。
「グリーン・ウィズ・エンヴィ」も、グリーンのオリジナル。憂いに満ちたメロディのテーマから始まる、スウィング・ナンバー。
ここでもグリーンは、尽きることのないフレーズを矢継ぎ早に繰り出していく。同フレーズのリピートも時折り挟みつつ、リズム・セクションをぐいぐいと引っ張っていく。
ベース・ソロの後、ドラムスとのソロ交換、そして再びギター・ソロと続く。
10分近くに及ぶ長尺だが、演奏密度の高さが、まるでそのことを感じさせない。
そしてベース・ソロ中の、グリーンのバッキングがなかなかイカしている。コード・プレイも決して悪く無いのだ。
ラストの「アローン・トゥゲザー」はミュージカル・ナンバーのカバー。アーサー・シュワルツとハワード・ディーツのコンビにより32年に書かれている。
哀感溢れるメロディで知られるこのスタンダード・ナンバーを、グリーンをはミディアム・テンポのスウィングとしてアレンジしている。
テーマ、そしてギター・ソロ、ベース・ソロを挟みつつ、最後はフェイド・アウトで終わっている。
グリーンのリーダー・アルバム、しかもシンプルなトリオ編成ということもあって、全編で彼がソロを弾きまくっており、ジャズ・ギター・ファンにとっては大満足の一枚だろう。
ジャズにおいてギターという楽器のポジションは、なかなかに微妙なものがある。
その音の細さ、アクのなさもあり、編成が大人数になればなるほど、他の楽器に押されて存在が霞んで行きがちである。
だから、ギターの持つ独特の味わいを消さないためには、他のメロディをひく楽器(ホーンやピアノ)とは出来るだけ絡まないのが、一番賢い策と言えるだろう。
ギター・トリオこそが、ジャズ・ギターにとってベストなバンド・スタイルなのだ。
グラント・グリーンはそのことをよく知っていて、彼の演奏が最も輝けるように自分をプロデュースしている。
ジャズのメインストリームにはなれないものの、ギター・サウンドを愛好するジャズ・ファンにとっての理想の音を提供する姿勢。まさにプロフェッショナルだと思う。
<独断評価>★★★★
米国のジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンのセカンド・リーダー・アルバム。61年リリース。アルフレッド・ライオンによるプロデュース。
グリーンは35年セントルイス生まれ。79年に43歳の若さで亡くなるまで、30枚以上のアルバムを残している。
70年代はファンク・ジャズの方向性を強め、伝統的なジャズのファン以外からも支持されたアーティストだ。
彼の、ごく初期の清新な演奏を聴いてみよう。
61年ごろは、まだバップのスタイルに忠実に従って弾いているのがよく分かる。
オープニングの「No.1 グリーン・ストリート」は彼のオリジナル。アップ・テンポのブルーズィなナンバー。
基本はシングル・トーンで、一音一音をきちんと弾くタイプのギター。
当時すでにジャズ・ギターの世界では大家然としていたウェス・モンゴメリーがコード、オクターブ奏法をフルに駆使していたのと合わせて考えると、いかにも昔ながらのスタイルに見える。
だが、そこはやはり、他者のスタイルや流行には安易に飛びつかない、アーティストとしての意地なんだろうな。かたくなまでに、シングルトーンへのこだわりを見せている。
バック・ミュージシャンはベースのベン・タッカーと、ドラムスのデイヴ・ベイリー。
このふたりの安定したビートに乗って、スウィングしまくるグリーン。このリズム感が見事。
ソロでは同じフレーズを執拗に繰り返すことで、グルーヴを高めるのが、彼によく見られるパターン。
このグリーン・スタイルが顕著に現れるのが、「No.1 グリーン・ストリート」だ。いわば、彼の名刺代わりの一曲。
次の「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」はセロニアス・モンクの作品。ゆったりとしたテンポのバラード。
モダン・ジャズにおける、スタンダード中のスタンダードだ。
幾多のミュージシャンがレコーディングして来た名曲を、グリーンは原曲のメロディをしっかりと生かしつつ、徐々に自分の世界へとリスナーを導いていく。
グリーンは、同じジャズ・ギタリストのケニー・バレル(彼もシングル・トーン系だ)ほどブルース臭は濃厚ではないが、ほどよくブルースを匂わせるフレージングがいい。
この「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」のソロ(特に4〜5分台)は、この曲を弾こうと考えるギタリストにとっては、格好のお手本となるのではないかな。
そのくらい、練り込まれたフレーズの連続、連続なのである。
「グランツ・ディメンションズ」は再びグリーンのオリジナル。チャーリー・パーカー直系のビ・バップ色の強い、アップ・テンポのナンバー。
複雑なフレーズの組み合わせにより、息もつかせぬ展開を見せていく。
どこまでが譜面に書かれたコンポジションなのか、アドリブ・ソロなのか。リスナーには判然としないが、とにかくスリリングだ。
中盤はタッカーのベース・ソロに続き、ギターとドラムスのソロ交換へ。そしてテーマへと戻って終わる。
グリーンの演奏力だけでなく、作・編曲能力の高さもフルに発揮された一曲である。
「グリーン・ウィズ・エンヴィ」も、グリーンのオリジナル。憂いに満ちたメロディのテーマから始まる、スウィング・ナンバー。
ここでもグリーンは、尽きることのないフレーズを矢継ぎ早に繰り出していく。同フレーズのリピートも時折り挟みつつ、リズム・セクションをぐいぐいと引っ張っていく。
ベース・ソロの後、ドラムスとのソロ交換、そして再びギター・ソロと続く。
10分近くに及ぶ長尺だが、演奏密度の高さが、まるでそのことを感じさせない。
そしてベース・ソロ中の、グリーンのバッキングがなかなかイカしている。コード・プレイも決して悪く無いのだ。
ラストの「アローン・トゥゲザー」はミュージカル・ナンバーのカバー。アーサー・シュワルツとハワード・ディーツのコンビにより32年に書かれている。
哀感溢れるメロディで知られるこのスタンダード・ナンバーを、グリーンをはミディアム・テンポのスウィングとしてアレンジしている。
テーマ、そしてギター・ソロ、ベース・ソロを挟みつつ、最後はフェイド・アウトで終わっている。
グリーンのリーダー・アルバム、しかもシンプルなトリオ編成ということもあって、全編で彼がソロを弾きまくっており、ジャズ・ギター・ファンにとっては大満足の一枚だろう。
ジャズにおいてギターという楽器のポジションは、なかなかに微妙なものがある。
その音の細さ、アクのなさもあり、編成が大人数になればなるほど、他の楽器に押されて存在が霞んで行きがちである。
だから、ギターの持つ独特の味わいを消さないためには、他のメロディをひく楽器(ホーンやピアノ)とは出来るだけ絡まないのが、一番賢い策と言えるだろう。
ギター・トリオこそが、ジャズ・ギターにとってベストなバンド・スタイルなのだ。
グラント・グリーンはそのことをよく知っていて、彼の演奏が最も輝けるように自分をプロデュースしている。
ジャズのメインストリームにはなれないものの、ギター・サウンドを愛好するジャズ・ファンにとっての理想の音を提供する姿勢。まさにプロフェッショナルだと思う。
<独断評価>★★★★