2023年3月4日(土)
#472 JIMMY REED「THE NEW JIMMY REED ALBUM」(Charly SNAX630CD)
米国のブルースマン、ジミー・リードのオリジナル・アルバム。67年リリース。アル・スミスによるプロデュース。
ジミー・リードは25年、ミシシッピ州生まれ。40年頃、シカゴに移住。ジョン・ブリムのバック・ミュージシャンとなり、同じバンドでドラマーだったアルバート・キングの伝手で53年、ヴィージェイ・レーベルよりレコード・デビュー。
55年「You Don’t Have to Go」をR&Bチャートで5位とヒットさせ、脱力系の味のあるボーカルとハープで人気ブルースマンとなったリードは、以後10枚ものアルバムをヴィージェイよりリリースした。
今回取り上げるのは、66年にヴィージェイが倒産したことにより、翌年ABCパラマウント下のブルースウェイ・レーベルに移籍して初のアルバム。つまり心機一転、リスタートの一枚である。
「Big Boss Man」はリードの61年のヒットの再録音。シンガー兼プロデューサー、ルーサー・ディクスンと、当盤のプロデューサーでもあるアル・スミスの共作だ。
エルヴィス・プレスリーのカバーでも有名となったこの曲を、ギターのレフティ・ベイツ、ベースのジミー・グレシャム、ドラムスのアル・ダンカンをバックに演奏している。
オリジナル版ではギターにもうひとり、リー・ベイカー、バック・ボーカルにママ・リードことリードの妻メアリーが参加していたが、今回はなし。そのへん、いささか物足りないかな。
ツービートの軽快なリズムでギターを弾き、ハープを吹きながら歌うリード。典型的なリード・スタイルだ。
「I Wanna Know」は女性シンガー、ジョニー・メイ・スミスの作品。シングル・カットもされている。
彼女はシンガー、ジョニー・メイ・ダンスンとして活躍。リードのバック・ドラマーとして50〜60年代活動していたジミ・プライムタイム・スミスの母親にあたる。ジミとの共演が、この選曲につながったんだろうな。
ミディアム・テンポのシャッフルで、快調に歌う。リードのお得意とするタイプのひとつですなぁ。
ひとの作品とはいえ、節回しは完全にいつものリード節で、彼のオリジナルと言われてもまるで違和感がない。
間奏、そしてエンディングでは彼のハープ・ソロが楽しめる。
「Got Nowhere to Go」はリードとアル・スミスの共作。タイトルはリードの盟友、エディ・テイラーの曲「Bad Boy」の歌詞を連想させるね。他には「Rolling Stone」とか、根無草なイメージの歌詞が盛り込まれている。
ミディアム・スローのシャッフル。リードの代表的なヒット曲「Baby What You Want Me to Do」と同タイプの一曲。シングルともなっている。
ここでも間奏では、リードの手だれのハープ・ソロが聴ける。
ブルース・セッションで一度やってみたいナンバーといえる。
「Two Ways to Skin a Cat」はアル・スミスの作品。猫の皮を剥ぐとか今どきなら動物虐待と言われかねないヤバめのタイトルだが、もちろん、何らかの隠喩なのだろう。
速めのツービートで、テンションの高いボーカルを聴かせるリード。聴くものもノリノリになる一曲だ。
「Heartaches and Trouble」はリードのオリジナル。これもミディアム・スローのシャッフル。
新たに書かれたナンバーとはいえ、他の曲と同じようなパターンが繰り返されており、正直そろそろ飽きてくる。
CDで一枚を通して聴くのはちょっと辛いものがあるので、アナログLPを聴くときのように、A面部分だけを聴いて小休止。そしてB面部分を聴く。こういう聴き方を皆さまにもオススメしたい。
アナログA面相当分のラストは「Baby What You Want Me to Do」。これは60年の大ヒットの再録音だ。リードのオリジナル。
「リードといえばこの曲!」といえるくらいの、名刺がわりのナンバー。
オリジナル・レコーディングよりギターの数も少なく、バックボーカルもないので、音がスカスカなのがどうしても気になる。
どうせ再録音するのなら、別の楽器を加えるとか、もう少しアイデアが欲しかった。
それでも、この曲は良曲であることには変わりないけどね。メロディのキャッチーさは、彼のあまたの曲の中でもピカイチだからだ。
「Honey I’ll Make Two」はミディアム・テンポのシャッフル。これもジョニー・メイ・スミスの作品。
CDで続けて聴くと、歌詞こそ違うものの、ひとつ前の「Baby What You Want Me to Do」とほとんど同じ曲に聴こえてしまう。
本音をいうと、超ワンパターンなのは否めないなぁ。
「You Don’t Have to Go」はすでにふれたように、リードの最初のヒット・ナンバーの再録音。これもまた、リードの代表的なオリジナル作品である。
ハープソロによるイントロから始まり、ゆったりとしたテンポで歌われる佳曲。
別れようとする恋人を引き止める歌詞、そしてメロディがいいので、アレンジがワンパターンでも、これはまだ聴ける。
「Don’t Play Cheap」はアル・スミスの作品。
またしてもミディアム・スロー曲が続く。金太郎飴感、ハンパない(笑)。熱烈なリード・ファンでないと、これ以上聴き続けるのは無理かもしれない。
「Two Sides to Every Story」はこれもアル・スミスの作品。ミディアム・スローのシャッフル。
ここまでワンパターンが続くと、ダメ押しという感じです。曲の区別がつきません。
「I’m Just Trying to Cop a Plea」はリードの妻、メアリー・リー・リードの作品。
リードは45年に兵役が終わり、一時期ミシシッピに戻ったが、その時にメアリーと結婚している。
初期のリードのレコーディングでは、たいていメアリーがコーラスでバックアップしていたそうである。夫唱婦随のお手本ですな。
そんな妻メアリーが作った歌を収録することで、長年の内助の功に報いているということか。
タイトル中の「Cop a Plea」とは犯罪者が刑を軽くしてもらうために自白する、という意味のスラングだそうだ。背景にいろいろ社会問題というか、深い意味を含んでいそうな歌である。
リズムはやはり、ミディアム・スロー。ドラミングやギター・バッキングに工夫はあるものの、基本的なサウンドは変わらず。
ラストの「Two Heads Better Than One」はアル・スミスの作品。
スロー・シャッフルのブルース。テンポを少しだけ下げることでわずかな変化をつけているが、全体の印象に大きな違いはない。
以上、12曲。3曲は過去の代表曲の再録音。残る9曲のうち、プロデューサー提供の曲が4曲、他のひとの曲が3曲、リードの新たなオリジナル(共作含む)は2曲。
2曲、シングル・カットはされたものの、ほとんどヒットしていない。
「ニュー・ジミー・リード・アルバム」と名乗る以上、リード本人の新作をもっと入れて欲しかったな、本音を言うと。
そして、デビューして15年近く経つのに、曲調やアレンジが昔ながらのパターンのままで、まるきり新味に欠けるのも事実だ。
筆者はブルース、そしてジミー・リードの作品をこよなく愛する者であるが、それでもさすがに、この一枚を
通して聴くのはちょっとしんどかった。
リズムもアレンジも、2つ、3つぐらいのパターンしかなく、メロディもかなり定型化しているリードにおいては、10何曲もアルバムで聴かせるよりは、数は少なくても粒揃いの魅力的なシングル曲で勝負すべきなのだろう。
ジミー・リードの曲は、アルバムではなく必ずシングル単位で聴くべし。今回は、こういう結論に達したのであった。
<独断評価>★★★
米国のブルースマン、ジミー・リードのオリジナル・アルバム。67年リリース。アル・スミスによるプロデュース。
ジミー・リードは25年、ミシシッピ州生まれ。40年頃、シカゴに移住。ジョン・ブリムのバック・ミュージシャンとなり、同じバンドでドラマーだったアルバート・キングの伝手で53年、ヴィージェイ・レーベルよりレコード・デビュー。
55年「You Don’t Have to Go」をR&Bチャートで5位とヒットさせ、脱力系の味のあるボーカルとハープで人気ブルースマンとなったリードは、以後10枚ものアルバムをヴィージェイよりリリースした。
今回取り上げるのは、66年にヴィージェイが倒産したことにより、翌年ABCパラマウント下のブルースウェイ・レーベルに移籍して初のアルバム。つまり心機一転、リスタートの一枚である。
「Big Boss Man」はリードの61年のヒットの再録音。シンガー兼プロデューサー、ルーサー・ディクスンと、当盤のプロデューサーでもあるアル・スミスの共作だ。
エルヴィス・プレスリーのカバーでも有名となったこの曲を、ギターのレフティ・ベイツ、ベースのジミー・グレシャム、ドラムスのアル・ダンカンをバックに演奏している。
オリジナル版ではギターにもうひとり、リー・ベイカー、バック・ボーカルにママ・リードことリードの妻メアリーが参加していたが、今回はなし。そのへん、いささか物足りないかな。
ツービートの軽快なリズムでギターを弾き、ハープを吹きながら歌うリード。典型的なリード・スタイルだ。
「I Wanna Know」は女性シンガー、ジョニー・メイ・スミスの作品。シングル・カットもされている。
彼女はシンガー、ジョニー・メイ・ダンスンとして活躍。リードのバック・ドラマーとして50〜60年代活動していたジミ・プライムタイム・スミスの母親にあたる。ジミとの共演が、この選曲につながったんだろうな。
ミディアム・テンポのシャッフルで、快調に歌う。リードのお得意とするタイプのひとつですなぁ。
ひとの作品とはいえ、節回しは完全にいつものリード節で、彼のオリジナルと言われてもまるで違和感がない。
間奏、そしてエンディングでは彼のハープ・ソロが楽しめる。
「Got Nowhere to Go」はリードとアル・スミスの共作。タイトルはリードの盟友、エディ・テイラーの曲「Bad Boy」の歌詞を連想させるね。他には「Rolling Stone」とか、根無草なイメージの歌詞が盛り込まれている。
ミディアム・スローのシャッフル。リードの代表的なヒット曲「Baby What You Want Me to Do」と同タイプの一曲。シングルともなっている。
ここでも間奏では、リードの手だれのハープ・ソロが聴ける。
ブルース・セッションで一度やってみたいナンバーといえる。
「Two Ways to Skin a Cat」はアル・スミスの作品。猫の皮を剥ぐとか今どきなら動物虐待と言われかねないヤバめのタイトルだが、もちろん、何らかの隠喩なのだろう。
速めのツービートで、テンションの高いボーカルを聴かせるリード。聴くものもノリノリになる一曲だ。
「Heartaches and Trouble」はリードのオリジナル。これもミディアム・スローのシャッフル。
新たに書かれたナンバーとはいえ、他の曲と同じようなパターンが繰り返されており、正直そろそろ飽きてくる。
CDで一枚を通して聴くのはちょっと辛いものがあるので、アナログLPを聴くときのように、A面部分だけを聴いて小休止。そしてB面部分を聴く。こういう聴き方を皆さまにもオススメしたい。
アナログA面相当分のラストは「Baby What You Want Me to Do」。これは60年の大ヒットの再録音だ。リードのオリジナル。
「リードといえばこの曲!」といえるくらいの、名刺がわりのナンバー。
オリジナル・レコーディングよりギターの数も少なく、バックボーカルもないので、音がスカスカなのがどうしても気になる。
どうせ再録音するのなら、別の楽器を加えるとか、もう少しアイデアが欲しかった。
それでも、この曲は良曲であることには変わりないけどね。メロディのキャッチーさは、彼のあまたの曲の中でもピカイチだからだ。
「Honey I’ll Make Two」はミディアム・テンポのシャッフル。これもジョニー・メイ・スミスの作品。
CDで続けて聴くと、歌詞こそ違うものの、ひとつ前の「Baby What You Want Me to Do」とほとんど同じ曲に聴こえてしまう。
本音をいうと、超ワンパターンなのは否めないなぁ。
「You Don’t Have to Go」はすでにふれたように、リードの最初のヒット・ナンバーの再録音。これもまた、リードの代表的なオリジナル作品である。
ハープソロによるイントロから始まり、ゆったりとしたテンポで歌われる佳曲。
別れようとする恋人を引き止める歌詞、そしてメロディがいいので、アレンジがワンパターンでも、これはまだ聴ける。
「Don’t Play Cheap」はアル・スミスの作品。
またしてもミディアム・スロー曲が続く。金太郎飴感、ハンパない(笑)。熱烈なリード・ファンでないと、これ以上聴き続けるのは無理かもしれない。
「Two Sides to Every Story」はこれもアル・スミスの作品。ミディアム・スローのシャッフル。
ここまでワンパターンが続くと、ダメ押しという感じです。曲の区別がつきません。
「I’m Just Trying to Cop a Plea」はリードの妻、メアリー・リー・リードの作品。
リードは45年に兵役が終わり、一時期ミシシッピに戻ったが、その時にメアリーと結婚している。
初期のリードのレコーディングでは、たいていメアリーがコーラスでバックアップしていたそうである。夫唱婦随のお手本ですな。
そんな妻メアリーが作った歌を収録することで、長年の内助の功に報いているということか。
タイトル中の「Cop a Plea」とは犯罪者が刑を軽くしてもらうために自白する、という意味のスラングだそうだ。背景にいろいろ社会問題というか、深い意味を含んでいそうな歌である。
リズムはやはり、ミディアム・スロー。ドラミングやギター・バッキングに工夫はあるものの、基本的なサウンドは変わらず。
ラストの「Two Heads Better Than One」はアル・スミスの作品。
スロー・シャッフルのブルース。テンポを少しだけ下げることでわずかな変化をつけているが、全体の印象に大きな違いはない。
以上、12曲。3曲は過去の代表曲の再録音。残る9曲のうち、プロデューサー提供の曲が4曲、他のひとの曲が3曲、リードの新たなオリジナル(共作含む)は2曲。
2曲、シングル・カットはされたものの、ほとんどヒットしていない。
「ニュー・ジミー・リード・アルバム」と名乗る以上、リード本人の新作をもっと入れて欲しかったな、本音を言うと。
そして、デビューして15年近く経つのに、曲調やアレンジが昔ながらのパターンのままで、まるきり新味に欠けるのも事実だ。
筆者はブルース、そしてジミー・リードの作品をこよなく愛する者であるが、それでもさすがに、この一枚を
通して聴くのはちょっとしんどかった。
リズムもアレンジも、2つ、3つぐらいのパターンしかなく、メロディもかなり定型化しているリードにおいては、10何曲もアルバムで聴かせるよりは、数は少なくても粒揃いの魅力的なシングル曲で勝負すべきなのだろう。
ジミー・リードの曲は、アルバムではなく必ずシングル単位で聴くべし。今回は、こういう結論に達したのであった。
<独断評価>★★★