2023年3月29日(水)
#497 FOURPLAY「HEARTFELT」(BMG Music/Bluebird 09026-63916-2)
米国のフュージョン・バンド、フォープレイの7枚目のスタジオ・アルバム。2002年リリース。彼ら自身、ハービー・メイソン・ジュニア(1曲のみ)によるプロデュース。
フォープレイは90年結成の、4人編成バンド。
メンバーはキーボードのボブ・ジェームス、ベースのネイザン・イースト、ドラムスのハービー・メイソン、そしてギターが当初はリー・リトナーであったが、97年にラリー・カールトンに交代している。
本盤は、カールトン加入後としては4枚目にあたるアルバムだ。
オープニングの「Galaxia」はメンバー4人の作品。
ジェームスのピアノがテーマを奏で、他の3人がそれにつき従う。
この曲でイーストはベースをつま弾きながら、たくみなスキャット・ボーカルを聴かせる。
さすが、エリック・クラプトンのバンドでコーラスも担当しているだけあって、歌の方もなかなかイケる口である。
静かなムードの中に、躍動感を感じさせるナンバーである。
バックのシンセ・サウンドは、ケン・フリーマンのプログラミングによるものだ。
「That’s the Time」はメイソンの作品。
心がはずむようなファンク・ビートを叩き出すメイソンに、明るく軽いトーンの、エレクトリック・ピアノとギターが絡む。
例えるならば日曜日の午前中のような、安らぎに満ちたサウンドを持つナンバーだ。
「Break I Out」はメンバー4人の作品。アクセントの効いたエイトビート・ナンバー。
ギターとピアノがテーマを紡ぎ出す。「ゆらぎ」を感じさせるメロディ・ラインがいい。
カールトンは前半でオクターブ奏法でジェントルな雰囲気を出したかと思えば、後半はワウ・ペダルでファンキーなプレイを聴かせたりもする。
「Rollin’」はカールトンの作品。
ゆったりとしたラテン風味のファンク・ナンバー。
ピアノとギターでテーマを弾いたのち、カールトンは抑えめのソリッドなトーンでソロをとっていく。
ダンスにも、ぴったりな曲だな。
似たような雰囲気のインストが続いて、聴く方も少しダレてきた頃合いに、ちょっとした気分転換をってことか、1曲ボーカル・チューンが入る。
「Let’s Make Love」はR&Bシンガー、ベイビーフェイスとイーストの作品。プロデュースはメイソンの息子、ハービー・メイソン・ジュニア。
ジュニアがベイビーフェイスの担当プロデューサーをつとめていたことから実現した、異次元のコラボレーションだ。
ベイビーフェイスのセクシーなファルセット・ボイスにからむバックボーカルは、ルドン・ビショップ。
そしてベースでサポートする、もうひとりの作曲者イースト。
彼らシンガーたちの歌心が、この佳曲を生んだと言える。
この上なくスウィートな歌と極上のサウンド。まさしく、世界一ゴージャスなコラボであるな。
「Heartfelt」はジェームスの作品。
ピアノとアコースティック・ギターが奏でる、静謐な世界。
終盤にいたるまで、4人の情感に満ちた細やかな演奏が続いていく。
タイトル通り、心に沁みわたる曲だ。
「Tally Ho!」はジェームスとメイソンの作品。
リズミックなファンク・ジャズ・ナンバー。「Birdland」にちょい似たテーマがキャッチーで覚えやすい。
ピアノ・ソロに続いては、ギター・ソロ。ともにいい感じだ。正調ジャズの趣きがある演奏だ。
もち、リズム隊のふたりのフォロー体制も万全で、メロディ楽器とのインタープレイも鮮やかだ。
「Cafe l’Amour」はメンバー4人の作品。
彼らの高度な演奏技術が最大限に発揮された、メロウなファンク・ナンバー。
カールトンがスピーディにテーマを弾き、ジェームスの奔放なシンセ・ソロへ繋げる。
後半のカールトンの、ファンキーなソロも出色だ。
一方、リズム・セクションのふたりの、怒涛のグルーヴもまた聴きどころである。
「Ju-Ju」はメイソンの作品。
R&Bテイストの強いメロディ・ラインを持つナンバー。シンセも、いかにもホーンライクな使い方をしている。この曲のみ、プログラミングはクリスチャン・セイラー。
そういう曲調ゆえにか、カールトンのギターもハイテンションで、ブルース全開である。やっぱこれですよ、カールトンは!
カールトンのブルース・ギター・プレイを好む者としては、ようやく出てきたフレーズに感涙にむせんでいる。
「Goin’ Back Home」はカールトンとイーストの作品。
カールトンのアコースティック・ギターとジェームスのエレクトリック・ピアノが生み出す、リラックスした雰囲気がナイスなマイナー・バラード。
一部コーラスに歌詞がついているが、歌いやすそうなメロディなので、全部に歌詞をつけてボーカル・チューンにしてもイケそうである。
この曲でもカールトンのプレイはブルース色が強く、後半のジェームスのピアノ・ソロが普通にジャズィなのとは好対照で面白い。
それぞれの音楽的バックグラウンドの違いってことなんだろうな。
「Karma」はメンバー4人の作品。
リズミカルなファンク・ナンバー。テーマをピアノとエレクトリック・ギターで弾いた後は、アコギに持ち替えたカールトンがソロ。
ピアノ・ソロが引き継ぎ、再びテーマへ。
後半、イーストがお得意のスキャット&ベースでノリまくる。これがなんとも圧巻である。
「Making Up」はイーストの作品。
スロー・テンポのバラード。カールトンがメロディを弾き、時折りジェームスがピアノでフォローする。
ボーカル・チューンとして書かれた曲だと言われてもまったく違和感がないくらい、スムーズで歌心にあふれたメロディと曲構成。
ネイザン・イーストのコンポーザーぶり、お見事である。
この一枚、商業的に特別売れたアルバムではないし、他のアルバムより飛び抜けた名曲が収録されているわけでもないが、筆者的にはけっこう好きである。
フォープレイの各メンバーが、自らの持つ演奏力、作曲力、アレンジ力を生かして、やりたいことをやっている、そんな印象がある。
つまり、自らを楽しませている。
音楽って、それでもう十分なんじゃないの、そういう気がします。
<独断評価>★★★☆
米国のフュージョン・バンド、フォープレイの7枚目のスタジオ・アルバム。2002年リリース。彼ら自身、ハービー・メイソン・ジュニア(1曲のみ)によるプロデュース。
フォープレイは90年結成の、4人編成バンド。
メンバーはキーボードのボブ・ジェームス、ベースのネイザン・イースト、ドラムスのハービー・メイソン、そしてギターが当初はリー・リトナーであったが、97年にラリー・カールトンに交代している。
本盤は、カールトン加入後としては4枚目にあたるアルバムだ。
オープニングの「Galaxia」はメンバー4人の作品。
ジェームスのピアノがテーマを奏で、他の3人がそれにつき従う。
この曲でイーストはベースをつま弾きながら、たくみなスキャット・ボーカルを聴かせる。
さすが、エリック・クラプトンのバンドでコーラスも担当しているだけあって、歌の方もなかなかイケる口である。
静かなムードの中に、躍動感を感じさせるナンバーである。
バックのシンセ・サウンドは、ケン・フリーマンのプログラミングによるものだ。
「That’s the Time」はメイソンの作品。
心がはずむようなファンク・ビートを叩き出すメイソンに、明るく軽いトーンの、エレクトリック・ピアノとギターが絡む。
例えるならば日曜日の午前中のような、安らぎに満ちたサウンドを持つナンバーだ。
「Break I Out」はメンバー4人の作品。アクセントの効いたエイトビート・ナンバー。
ギターとピアノがテーマを紡ぎ出す。「ゆらぎ」を感じさせるメロディ・ラインがいい。
カールトンは前半でオクターブ奏法でジェントルな雰囲気を出したかと思えば、後半はワウ・ペダルでファンキーなプレイを聴かせたりもする。
「Rollin’」はカールトンの作品。
ゆったりとしたラテン風味のファンク・ナンバー。
ピアノとギターでテーマを弾いたのち、カールトンは抑えめのソリッドなトーンでソロをとっていく。
ダンスにも、ぴったりな曲だな。
似たような雰囲気のインストが続いて、聴く方も少しダレてきた頃合いに、ちょっとした気分転換をってことか、1曲ボーカル・チューンが入る。
「Let’s Make Love」はR&Bシンガー、ベイビーフェイスとイーストの作品。プロデュースはメイソンの息子、ハービー・メイソン・ジュニア。
ジュニアがベイビーフェイスの担当プロデューサーをつとめていたことから実現した、異次元のコラボレーションだ。
ベイビーフェイスのセクシーなファルセット・ボイスにからむバックボーカルは、ルドン・ビショップ。
そしてベースでサポートする、もうひとりの作曲者イースト。
彼らシンガーたちの歌心が、この佳曲を生んだと言える。
この上なくスウィートな歌と極上のサウンド。まさしく、世界一ゴージャスなコラボであるな。
「Heartfelt」はジェームスの作品。
ピアノとアコースティック・ギターが奏でる、静謐な世界。
終盤にいたるまで、4人の情感に満ちた細やかな演奏が続いていく。
タイトル通り、心に沁みわたる曲だ。
「Tally Ho!」はジェームスとメイソンの作品。
リズミックなファンク・ジャズ・ナンバー。「Birdland」にちょい似たテーマがキャッチーで覚えやすい。
ピアノ・ソロに続いては、ギター・ソロ。ともにいい感じだ。正調ジャズの趣きがある演奏だ。
もち、リズム隊のふたりのフォロー体制も万全で、メロディ楽器とのインタープレイも鮮やかだ。
「Cafe l’Amour」はメンバー4人の作品。
彼らの高度な演奏技術が最大限に発揮された、メロウなファンク・ナンバー。
カールトンがスピーディにテーマを弾き、ジェームスの奔放なシンセ・ソロへ繋げる。
後半のカールトンの、ファンキーなソロも出色だ。
一方、リズム・セクションのふたりの、怒涛のグルーヴもまた聴きどころである。
「Ju-Ju」はメイソンの作品。
R&Bテイストの強いメロディ・ラインを持つナンバー。シンセも、いかにもホーンライクな使い方をしている。この曲のみ、プログラミングはクリスチャン・セイラー。
そういう曲調ゆえにか、カールトンのギターもハイテンションで、ブルース全開である。やっぱこれですよ、カールトンは!
カールトンのブルース・ギター・プレイを好む者としては、ようやく出てきたフレーズに感涙にむせんでいる。
「Goin’ Back Home」はカールトンとイーストの作品。
カールトンのアコースティック・ギターとジェームスのエレクトリック・ピアノが生み出す、リラックスした雰囲気がナイスなマイナー・バラード。
一部コーラスに歌詞がついているが、歌いやすそうなメロディなので、全部に歌詞をつけてボーカル・チューンにしてもイケそうである。
この曲でもカールトンのプレイはブルース色が強く、後半のジェームスのピアノ・ソロが普通にジャズィなのとは好対照で面白い。
それぞれの音楽的バックグラウンドの違いってことなんだろうな。
「Karma」はメンバー4人の作品。
リズミカルなファンク・ナンバー。テーマをピアノとエレクトリック・ギターで弾いた後は、アコギに持ち替えたカールトンがソロ。
ピアノ・ソロが引き継ぎ、再びテーマへ。
後半、イーストがお得意のスキャット&ベースでノリまくる。これがなんとも圧巻である。
「Making Up」はイーストの作品。
スロー・テンポのバラード。カールトンがメロディを弾き、時折りジェームスがピアノでフォローする。
ボーカル・チューンとして書かれた曲だと言われてもまったく違和感がないくらい、スムーズで歌心にあふれたメロディと曲構成。
ネイザン・イーストのコンポーザーぶり、お見事である。
この一枚、商業的に特別売れたアルバムではないし、他のアルバムより飛び抜けた名曲が収録されているわけでもないが、筆者的にはけっこう好きである。
フォープレイの各メンバーが、自らの持つ演奏力、作曲力、アレンジ力を生かして、やりたいことをやっている、そんな印象がある。
つまり、自らを楽しませている。
音楽って、それでもう十分なんじゃないの、そういう気がします。
<独断評価>★★★☆