品質のよいわさびづくりのためには、
その基礎となるよいわさび田がなくてはなりません。
収穫などの仕事が少なく、川の水を多少にごらせても下流に
影響がない冬が、工事の時期になります。
わさび田は、山奥の原野に水を引いて石垣を組み、
石や小石、砂を入れて造り上げていきます。
山奥で機械が入らないため、材料は全てその場で調達しなければなりません。
原野をつるはしで掘り起こし、大きな岩がでてくると
ダイナマイトや 唯一の機械であるエンジン付き削岩機で砕き、石垣を組みます。
次に土砂を”石み”に入れて水の中で洗い出し、
小石と砂に分けます。
そしてわさび田の一番底に大きな石を並べ、上に行くにしたがって
小さな石を積み重ねていき、最後に砂をのせます。
同時に水平を上手く出して防水をし、微妙な勾配をつけて全体に水がまわるようにします。
わさび田は表面に水が流れているように見えますが、
実際は目に見えない下層まで水が浸透するようになっています。
そうした仕組みによってにごり水もわさび田を流れる中で濾過されて、
次の段へは澄んだ水が流れていきます。
また砂から小石の域まで伸びたわさびの毛細根に水中に溶け込んだ養分や
酸素を行き渡らせることがで きるのです。
こういった微妙なつくりは、わさびをつくっている人だからこそできることではないかと思います。
わが家のわさび田は今から約40年前、
おじいが仲間と共に苦労して造り上げたものです。
一日中、日の当たらない極寒の山奥での工事は、時間も手間もかかる重労働です。
削岩機を持つだけでふらつき、夕方になると
足腰も立たないくらい疲れ果ててしまう若造の自分に反して、
孫もいるほどのおじいたちが筋骨隆々の体つきで、黙々と仕事をこなしていました。
そして体をあたためるため10時に焼酎をちびり。
昼休みにも弁当箱の蓋を杯にしてちびり。
夕方は日暮れ前に早終いしてから、焚き火をおこしてまたちびり。
そしていい具合にできあがった頃に、ほろ酔い気分で山を下りていきます。
その一番後ろについて下りながら、おじいたちの背中が大きく見えた日のことが
昨日のことのように思い出されます。
父ちゃん
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