ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

立岩ダム

2017-05-16 20:19:28 | 広島県
2017年5月8日 立岩ダム
 
立岩ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川本流最上流部にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
広島県では広島電燈と広島呉電気が激しい電源開発競争を繰り広げていましたが、1921年(大正10年)に両者が合併し広島電気が誕生、中国地方最大の電気事業者となりました。
広島電気は太田川水系を中心に電源開発を進め1935年(昭和10年)の王泊ダムに次いで1939年(昭和14年)に竣工したのが立岩ダムです。堤高67.4メートルは戦前では7番目の高さを誇る巨大ダムで、打梨発電所で2万3600キロワット、さらに逆調整池の鱒溜ダムを経由して土居発電所で8000キロワット、計3万キロワット強の電力を生み出しその大半は呉の海軍工廠へと送られました。
しかし竣工直後に日本発送電が誕生し、立岩ダムおよび関連の発電設備はすべて接収されました。
戦後1951年(昭和26年)の電力分割民営化により中国電力が事業を継承して現在に至りますが、立岩ダムは滝山川の王泊ダム、戦後建設された柴木川の樽床ダムとともに『太田川3ダム』と呼ばれ広島の復興の下支えとなりました。
立岩ダムは戦前の巨大ダムということでその技術的価値からBランクの近代土木遺産に選定されています。
 
今回は廿日市市吉和から県道286号線を北上して立岩ダムに至りました。
ダム左岸の県道から俯瞰。
 
同じく天端を俯瞰
右岸に打梨発電所への取水口があります。
 
下流面。
 
ゲートの塗装工事が行われていますが天端への立ち入りは問題ありません。
左岸の照明は竣工当時のものでしょうか?
 
ずらっと並ぶ巻き上げ機。
 
フェンスの隙間から見た導流面。
 
ダム湖(竜神湖)は総貯水容量1720万立米。
 
右岸の取水口。
 
下流面。
 
上流から何とかゲートを撮影。
ゲート扶壁の並びが高暮ダムに似てるような・・・・。
 
塗装工事中のため落ち着いて見学できなかったうえに、下流からダムを正対することができません。
戦前を代表するダムのひとつでありながら、正面を見れないのが全国的な知名度が今一つ低い理由かもしれません。
 
追記
立岩ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに858万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1936 立岩ダム (0994)
広島県山県郡安芸太田町打梨
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
太田川水系太田川
67.4メートル
179メートル
㎥/㎥
中国電力(株)
1939年
◎治水協定が締結されたダム

飯ノ山ダム

2017-05-16 18:27:27 | 広島県
2017年5月8日 飯ノ山ダム
 
飯ノ山ダムは広島県廿日市市飯山の小瀬川源流部にある発電用アースダムです。
1932年(昭和7年)に広島に本拠を置いた広島電気によって建設され、日本発送電を経て1951年(昭和26年)の電力分割民営化の結果中国電力が事業継承しました。
飯ノ山ダムで水量調整された水は下流の栗栖川発電所取水堰で取水され導水路で栗栖川発電所に送られ最大出力2500キロワットの発電を行っています。
飯ノ山ダムは珍しい中央鉄筋コンクリート遮水壁式、つまりコンクリートコアのアースダムとなっています。
飯ノ山ダム以外では栃木県の東京電力の逆川ダムがコンクリートコアのアースダムとして知られています。
 
今回は国道186号線を北上し飯ノ山ダムに至りました。
MRC乗馬クラブの入口に入り、そのまま乗馬クラブの脇を抜けてダートの道を進むと飯ノ山ダム右岸に到着します。
洪水吐と上流面、左岸に斜樋が見えます。
 
洪水吐と飯ノ山貯水池
ずいぶん水位が低下しています。
 
右岸から上流面。
 
天端は立ち入り禁止。
 
洪水吐導流部。
 
 
下流面。
 
下流から。
 
堤体基礎部分は石積みになっています。
堤体直下に放流設備があり放流が行われています。
飯ノ山ダムから導水路で直接発電所に送水するわけではなく、水量調節して小瀬川に流下させ、下流の取水堰から発電所に導水路で水が送られます。
 
ダムの説明板
 
小瀬川の源流にある貯水池ということで高原感たっぷりですが、立ち入り禁止のため観光開発などの気配はありません。
 
追記
飯ノ山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに39万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1932 飯ノ山ダム (0993)
広島県廿日市市飯山
小瀬川水系小瀬川
18.5メートル
78.5メートル
中国電力
1932年
◎治水協定が締結されたダム

小瀬川ダム

2017-05-16 16:24:39 | 広島県
2017年5月8日 小瀬川ダム 
 
小瀬川ダムは広島・山口県境を形成する小瀬川中流域にある広島県と山口県が共同管理する多目的重力式コンクリートダムです。
江戸時代の広島藩・長州藩の時代から小瀬川の水をめぐる両者の争いは絶えず、それは維新後、広島県と山口県になってからも変わりはありませんでした。
しかし終戦直後に立て続けに襲来した台風による甚大な被害や、戦後急速に工業化が進んだ沿岸部の水需要の増大を受けて両県は1957年(昭和32年)にようやく『小瀬川総合開発事業』を策定、対立するダム建設地点や利水配分を建設省に一任する形で1964年(昭和39年)に完成したのが小瀬川ダムです。
 
小瀬川ダムは小瀬川の洪水調節、安定した河川流量と既得取水権への補給、広島・山口両県への工業用水の供給を目的とするほか、1989年(平成元年)には山口県企業局小瀬川発電所が増設され河川維持放流を利用して最大630キロワットの小水力発電を行っています。
小瀬川ダムは複数の都道府県が共同で管理を行う唯一のダムとなっており、広島県側にある管理事務所に両県の職員が駐在しています。
 
小瀬川ダムの完成後も小瀬川の洪水調整は万全ではなく、さらに水需要も一段と増加したため、1989年(平成元年)に小瀬川下流に建設省直轄の弥栄ダムが完成し、小瀬川の治水・利水は盤石のものとなりました。
 
国道186号線を北上すると小瀬川ダム左岸に到着します。
管理事務所でカードをもらった後ダムを見学します。
左岸から上流面 対岸にインクラインが見えます。
 
下流面。
 
左岸のこの建物は?
 
右岸のハウエルバンガーバルブ。
 
減勢工
右手は小水力発電の小瀬川発電所。
 
ダム湖は真珠湖 総貯水容量1140万立米。
 
天端は車両通行可能
対岸に見えるのが管理事務所 広島側にありますが広島・山口両県の職員が管理を行います。
 
下流からの展望スポットを探しましたが見当たりません。
ゲートの扶壁前面に階段が見えます。
 
何とかゲートが見える場所を見つけましたがこれが精いっぱい
青いラジアルゲートがさわやか。
 
弥栄ダムのように天端に県境を示す標識はありませんが、親柱に両県を示す銘板が埋め込まれています。
左岸は広島県。
 
右岸は山口県。
 
追記
小瀬川ダムには840万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに57万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2071 小瀬川ダム(0992)
左岸 広島県廿日市市浅原
右岸 山口県岩国市美和町釜ヶ原
小瀬川水系小瀬川
FIP
49メートル
158メートル
広島県・山口県
1964年
◎治水協定が締結されたダム

渡之瀬ダム

2017-05-16 15:02:36 | 広島県
2017年5月8日 渡之瀬ダム
 
渡之瀬ダムは広島県廿日市市大野の小瀬川水系玖島川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化で誕生した電力各社は戦後の電力不足を解消するために積極的に電源開発を推し進めます。
中国電力も例外ではなく太田川や高梁川水系を中心に新たなダムや発電所の建設を推し進めました。
1956年(昭和31年)に完成した渡之瀬ダムもそんなダムのひとつで、ここで取水された水は約6キロの導水路で大竹市にある玖波発電所に送られ最大出力2万キロワットの発電を行っています。
 
今回は大竹インターから県道42号を北上、渡之瀬貯水池湖岸で国道289号に入り上流から渡之瀬ダムに至りました。
ダムサイトの駐車スペースに車を止めてダムを見学します。
まずは下流から
目につくのは中国電力独特の管理橋のないゲートピアと前面に張り出したゲート操作室。
二級ダムではじめてこのタイプを見たときは『なんじゃこりゃ?』と思いましたが、さすがにもう慣れてきました。
 
クレストには2門のローラーゲート
3本のゲートピアはカブトムシのようです。
 
右岸から上流面
ゲート手前の建屋の向こう側に取水口があるようです。
 
 
 
インクラインはなく、右岸に浮き桟橋に降りる階段が見えます・・・
??桟橋が見当たりません 笑
 
ダム湖は渡之瀬貯水池と呼ばれているようです。
浮き島が点在する貯水池は見た目さほど大きくなさそうですが、実は1042万4000立米もあります。
 
ダムの案内板。
 
追記
渡之瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに950万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1957 渡之瀬ダム(0991)
広島県廿日市市大野
小瀬川水系玖島川
34.5メートル
125.6メートル
中国電力
1956年
◎治水協定が締結されたダム

沓ヶ原ダム

2017-05-16 12:31:11 | 広島県
2017年5月7日 沓ヶ原ダム
 
沓ヶ原ダムは広島県三次市君田町の江の川水系神野瀬川にある発電用重力式コンクリートダムで、日本発送電により1941年(昭和16年)に建設されました。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化により上流の高暮ダムともども中国電力が継承して現在に至っています。
高暮ダムや神野瀬発電所の逆調整池となっているほか、ここで取水された水は導水路で下流の君田発電所に送られ最大出力9620キロワットの発電を行っています。
 
松江自動車道口和インターから県道39号を西進、『道の駅フォレスト君田』で分岐を右折して神野瀬川沿いに県道457号を北上すると沓ヶ原ダムに到着します。
まるで表札のようなダムの銘板。
 
天端は立ち入り制限がありません。対岸で山道につながっていることから地元住民が山に立ち入る際の入口になっているようです。
 
ゲートピアを挟んで管理橋の左右両岸はトラス橋になっています。
 
ゲートピアとゲート操作室。
 
左岸の君田発電所への取水口。
 
ダム湖 総貯水容量は75万立米。
 
下流面
左岸から河川維持放流が行われています。
 
堤体直下から
中国電力ではおなじみのゲートピアの上に管理橋がなく、扶壁前面にゲート操作室が乗っかった構造
4門のローラーゲートを挟んで左右両岸は自由越流面になっています。
 
河川維持放流
もともとは排砂ゲートだったところを河川維持用に使っているようです。
 
ダムの案内図
どこの発電ダムでもこういうの置いてくれるわかりやすいんだけど・・・。
 
追記
沓ヶ原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに38万6000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1940 沓ヶ原ダム (0990)
広島県三次市君田町櫃田
江の川水系神野瀬川
19.5メートル
106.2メートル
中国電力
1941年
◎治水協定が締結されたダム

扇谷池

2017-05-16 09:38:00 | 広島県
2017年5月7日 扇谷池
 
扇谷池は広島県庄原市川北町にある灌漑用アースダムで、国兼池などとともに1953年(昭和28年)に農林省の事業で整備されました。
 
庄原市街から国道432号線を北上し、川北小学校前を右折、さらに突当たりを左折すると小さな橋の手前に分岐が現れます。
ここに車を置いて害獣防止柵を抜けると扇谷池の堤体直下に到着します。
 
扇谷池最大の特徴は堤体と洪水吐が離れている点です。
地図の赤線が堤体、黒丸が洪水吐となります。
 
一番上の写真の位置から先に進むと墓地に出ます。
墓地を回り込むと堤体の右岸側(北側)に洪水吐が現れます。
 
コンクリート製の立派な洪水吐は、これだけみると独立したコンクリートダムのようです。
 
越流面と減勢工。
 
洪水吐から堤体のほうに(南向きに)進むと斜樋があります。
ちょうど田植え時期ということでバルブが開かれています。
 
斜樋の先に堤体があります。
ここだけ見たら普通の溜池の堤です。
 
上流面はコンクリートで補強されています。
 
総貯水容量は29万5000立米と普通の溜池サイズ。
 
天端から
一番上の写真は下のカーブした道路から撮影しました。
 
当初池への入口が分からず地元の農家の方に道を尋ねると、案の定訝しがられましたが、溜池の調査をしていますというと親切に教えていただけました。
溜池の調査というフレーズはどこでも効果覿面です。
 
1952 扇谷池(0988)
広島県庄原市川北町
江の川水系川北川
17.5メートル
85メートル
管理者未確認
1953年