ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

王泊ダム

2017-05-17 16:31:43 | 広島県
2017年5月8日 王泊ダム
 
王泊ダムは広島県山県郡安芸太田町と北広島町の境界をなす太田川水系滝山川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1921年(大正10年)に広島電燈と広島呉電気が合併して誕生した広島電気は中国地方最大の電気事業者となり、太田川水系を中心に電源開発を進める中1935年(昭和10年)に建設したのが王泊ダムです。
戦中戦後の日本発送電時代を経て、1951年(昭和26年)の電力分割民営化により中国電力が事業を継承しました。
戦後の電力不足解消を目指し中国電力は新たな電源開発を進め、王泊ダムも滝山川発電所の能力増強目的のために1958年(昭和33年)に嵩上げ再開発が行われました。
王泊ダムで取水された水は導水路で滝山川発電所に送られ最大出力5万1500キロワットの発電を行っています。
また太田川流域で発電に使われた水は最終的に広島市上水道となるため実質的には広島市の上水道水源となっているほか、2005年(平成17年)の台風14号襲来の際には温井ダムと連携して発電専用ダムとしては異例の洪水調節も行いました。
 
王泊ダムはダム右岸を国道186号を通っておりアプローチは簡単です。ただし現在土砂崩れにより王泊ダム以南が不通となっているためダムの見学は上流側からに限られています。
ダム湖上流から
黒いラジアルゲートが3門、その右手に取水設備があります。
 
取水設備の上にはガントリークレーンのようなものが乗っていますが詳細は分かりません。
 
左岸のインクライン。
 
ダムの手前には古い吊橋の遺構があります。
 
ダム湖をまたぐ吊橋の遺構
ダム湖は仙水湖と命名され総貯水容量3110万立米の規模です。
 
ダム右岸を結ぶ橋から国道が通行止めのため、ダム本体に渡ることはできず上流からの見学にとどまりました。復旧のめどは立っていないようですが、いつの日か再訪のチャンスがあれば訪れてみたいと思います。
 
追記
王泊ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに1272万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1960 王泊ダム (0998)
広島県山県郡安芸太田町平見谷
太田川水系滝山川
74メートル
155メートル
中国電力
1935年竣工
1958年嵩上げ再開発
◎治水協定が締結されたダム

温井ダム

2017-05-17 13:56:30 | 広島県
2017年5月8日 温井ダム 
 
太田川は廿日市市の冠山を水源として広島県西部を蛇行しながら貫流し、広島市で瀬戸内科に注ぐ一級河川で、古くから洪水が多発する暴れ川で広島藩の時代からその治水には手を焼いていました。
明治以降広島には陸軍第5師団、呉には海軍呉鎮台が置かれ広島は軍用都市として発展、太田川下流部の治水は重要視されました。1935年(昭和10年)から内務省の直轄事業として太田川放水路の建設が始まり、戦争による中断をはさんで1965年(昭和40年)に完成、広島市を中心とした太田川下流部の安全度は大きく向上しました。
しかし、中上流部の洪水対策は河川改修にとどまるのみで中国電力の王泊ダム・立岩ダム・樽床ダムのいわゆる『太田川3ダム』も発電目的のため抜本的な洪水対策とはなりませんでした。
一方、広島は原爆投下から奇跡的な復興を遂げ自動車、造船など重工業を中心に大きく発展、人口急増もとどまらず平成に入ると広島市の人口はついに100万人を突破しました。1975年(昭和50年)に完成した土師ダムにより江の川水系から太田川への導水が行われていましたが、その効果もかすむほどの急速な水需要増加を受けて新たな水源確保が求められました。
 
そこで建設省は『滝山川総合開発事業』を計画し太田川支流の滝山川に多目的ダムの建設を決定、補償交渉に手間取りつつも1991年(平成3年)に着工、2001年(平成13年)に竣工したのが温井ダムです。
当初重力式コンクリートダムで計画されましたが、地質調査の結果アーチダムでの着工となり、温井ダムの堤高156メートルはアーチダムとしては黒部ダムに次ぐ日本第2位、また新潟県の奥三面ダムとともに現状日本で建設された最後のアーチダムとなっています。
温井ダムは太田川の洪水調節、既得取水権としての農業用水への補給と河川流量の維持、広島水道用水供給事業の水源として離島の江田島市、大崎大島町を含む5市5町村への上水道用水の供給を目的とするほか、中国電力温井発電所で最大出力2300キロワットのダム式発電を行っています。
 
今回は毎年4月から5月にかけて行われる温井ダム水位低下放流に合わせてダムを訪問しました。
右岸の駐車場に車を止めて放流前のダムを見学します。
右岸から。
 
減勢工。
 
左岸から。
 
天端は車両通行可能。
 
上流面
ダム湖(龍姫湖)はダム湖100選に選ばれています
総貯水容量は8200万立米。
 
クレストにはローラーゲートが5門
こちらは一般的なローラーゲートと異なり日本初の越流式ローラーゲートになっています。
写真はオープン状態ですが、ゲートを占める際には下方からゲートが上昇します。
さらにオリフィス、コンジットの予備ゲートが並びます。
 
左岸管理所前に展示された放流管。
 
エレベーターが開放され堤体直下も見学できます
利水次郎君。
 
下流から
堤高日本第2位のアーチは迫力満点
クレストにはローラーゲート5門
常用洪水吐としてホロージェットバルブ2門 ローラーゲート4門を装備しています。
 
 
水位低下放流の様子です
2門のホロージェットバルブから放流されます。
 
ゲート直上から見ると見事な虹がかかります。
 
 
できるならダム下からも放流を見学したかったのですが、15分間の放流ということで今回は虹が見られる天端からのみとなりました。
 
温井ダムの完成により太田川の治水能力は大きく改善しましたが、万全というわけではありません。
それは太田川本流上流部に治水目的のダムがないからです。
本流には戦前に建設された中国電力の立岩ダムがありますが、発電用ダムのため現在の滝山川の温井ダムだけでは太田川の治水は片肺飛行状態と言わざるを得ません。
本線上流部への新規ダム建設や立岩ダムの改修などの観測気球は上がりますが実現するには大きな時間がかかりそうです。
 
追記
温井ダムには4100万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに3921万4000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1991 温井ダム(0997)
広島県山県郡安芸太田町加計
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
太田川水系滝山川
FNWP
156メートル
382メートル
千㎥/千㎥
国交省中国地方整備局
2001年
◎治水協定が締結されたダム

滝本ダム

2017-05-17 13:02:09 | 広島県
2017年5月8日 滝本ダム
 
滝本ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川水系滝山川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化で誕生した中国電力は、戦後の電力不足解消や広島の復興に伴う電力需要の高まりに対応するため積極的な電源開発に乗り出し、太田川流域で新たなダムや発電所の建設を推し進めました。
左支流の滝山川では戦前に建設された王泊ダムが嵩上げされたほか流域で多数のダムや取水堰や発電所が建設されました。
滝本ダムも滝山川に建設されたダムのひとつで、1959年(昭和34年)に竣工し滝本発電所で最大出力20000キロワットのダム式発電を行っています。
また2001年(平成13年)に直上に温井ダムが完成、温井ダムの放流の際の逆調整池としても機能しています。
滝本はダムは堤高14.7メートルのため河川法上のダムとはならず、ダム便覧にも掲載されていませんが、ラジアルゲート4門を装備したその姿は紛いなくダムといえる雄姿です。
 
加計中心街から国道186号を北上して温井ダムへ向かい、『ダム下』への標識に従って旧道に入るとすぐに右手に滝本ダムが見えてきます。
管理橋のないゲートピアは中国電力独特のスタイルです。
 
左岸の排砂ゲートから放流が行われています。
 
多くの中国電力のダム同様天端は立ち入りできます。
 
貯水池のすぐ直上に温井ダムがあります。
 
上流から。
 
滝本ダム
広島県山県郡安芸太田町加計
太田川水系滝山川
14.7メートル
156.4メートル
中国電力
1959年

柴木川ダム

2017-05-17 10:56:48 | 広島県
2017年5月8日 柴木川ダム
 
柴木川ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川水系柴木川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化で誕生した中国電力は、戦後の電力不足解消や広島の復興に伴う電力需要の高まりに対応するため積極的な電源開発に乗り出し、太田川流域で新たなダムや発電所の建設を推し進めました。
太田川左支流の柴木川では源流部に樽床ダムが、板ヶ谷川との合流地点に柴木川ダムがほぼ同時に着工され、樽床ダムに先んじて1954年(昭和29年)に竣工したのが柴木川ダムです。
柴木川第1発電所の逆調整池として機能するほか、ここで取水された水は導水路で柴木川第二発電所に送られ最大出力6600キロワットの発電を行っています。
 
国道191号線を北上すると三段峡橋手前で左手に柴木川ダムが見えてきます。
おなじみ、中国電力特有の管理橋のないゲートピアと前面に張り出したゲート操作室という構図。
 
 
天端は立ち入り可能です。
 
ゲート操作室は横から見ると城郭の鉄砲櫓のよう。
 
ダム湖は総貯水容量23万1000立米
この奥は広島を代表する景勝地三段峡になります。
 
天端から
とにかく水がきれいなんです・・・・ここは。
 
右岸から
対岸に柴木川第二発電所への取水口があります。
 
天端高覧のアーチ状の抜き。
 
左岸上流から すぐ手前が取水口。
 
さらに上流から。
 
追記
柴木川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに21万8000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
3342 柴木川ダム(0996)
広島県山県郡安芸太田町川手
太田川水系柴木川
15.5メートル
104.9メートル
中国電力
1954年
◎治水協定が締結されたダム

鱒溜ダム

2017-05-17 09:59:23 | 広島県
2017年5月8日 鱒溜ダム
 
鱒溜ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川本流、立岩ダムの下流約4キロ地点にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
戦前の中国地方最大の電気事業者だった広島電気によって立岩ダムとほぼ同時に着工され1938年(昭和13年)に竣工しました。
上流の立岩ダムおよび打梨発電所の逆調整池としての役割を持つほか、ここで取水された水は導水路で土居発電所に送られ最大8000キロワットの発電を行います。
一連の発電施設とともに1939年(昭和14年)に日本発送電に現物出資され、戦後1951年(昭和26年)の電力分割民営化により中国電力が事業を継承しています。
 
今回は上流の立岩ダムから県道286号線を北上して鱒溜ダムへと向かいます。
ダムのずいぶん上流に土居発電所への取水口があります。
 
左岸上流から
全面越流式のダムです。
 
 
 
なんだか巨大なクジラが横たわっているかのようです。
 
右岸に排砂ゲートがありここから河川維持放流が行われています。
 
500メートルほど下流に行かないとダムの姿は見えません。
 
ズームアップ、というかトリミング。
継ぎ接ぎのコンクリートがこの川の厳しさを表しているようです。
 
追記
鱒溜ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに21万5000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1395 鱒留ダム(0995)
広島県山県郡安芸太田町吉和郷
太田川水系太田川
19.2メートル
98メートル
中国電力
1938年
◎治水協定が締結されたダム