ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

夏子ダム

2018-01-10 14:57:32 | 徳島県
2017年12月21日 夏子ダム 
 
夏子ダムは徳島県美馬市脇町の吉野川水系曽江谷川上流部にある徳島県農林水産部が管理する灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
吉野川北岸地域は阿讃山脈から吉野川に注ぐ各支流が扇状台地を形成し平野部では軒並み伏流するため、古来より農業用水の確保は困難を極めていました。
さらに戦後、特産の藍が化学染料に押されて衰退し、藍農家の畑作転向が進んだことで農業用水需要が急増し新たな水源確保に迫られることになりました。
そこで徳島県は1979年(昭和54年)に曽江谷川への灌漑用ダム建設事業に着手、1994年(平成6年)に夏子ダムが竣工しました。
夏子ダムは夏子用水を通じて曽江谷川流域の農耕地に灌漑用水の供給を行うほか、2014年(平成16年)には河川維持放流を利用した小水力発電所が増設されました。
夏子ダムとほぼ同時に完成した国営の吉野川北岸農業用水により、吉野川北岸地区の悲願であった安定した用水確保がようやく実現したのです。
 
夏子ダムは国道193号線沿いにあります。
ダム手前の枝道を下るとダム下に出ます。
農業用コンクリートダムらしく洪水吐は自由越流式クレストゲート4門のみ。
 
ダムサイトに上がります。
『うだつの町並み』で有名な脇町らしく、右岸の管理事務所もうだつやなめこ土塀のが施された日本家屋風。
 
上流面
手前は取水設備。
 
天端
ゲート部分だけ前面に張り出しています。
 
右岸のインクラインと艇庫。
 
貯水池は総貯水容量160万立米
ダム湖右岸を国道が通り、湖岸にはパーキングがあります。
 
シュートブロック、バッフルピア、エンドシルと三点セットが並ぶ減勢工。
 
左岸から。
 
右手は2014年に完成した小水力発電所。
 
ダム湖上流のパーキングから。
 
ダム便覧では『なつこ』となっていますが、現地では『なつご』と訛るそうで、職員さんも『なつごダム』と話されていました。
 
追記
夏子ダムは洪水調節機能を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には水位低下運用もしくは事前放流により新たに3万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2136 夏子ダム(1203
徳島県美馬市脇町
吉野川水系曽江谷川
43.8メートル
133.5メートル
1600千㎥/800千㎥
徳島県農林水産部
1994年
◎治水協定が締結されたダム

岩倉池

2018-01-10 13:23:59 | 徳島県
2017年12月21日 岩倉池
 
岩倉池は徳島県美馬市脇町の吉野川水系吉野川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧と現地改修記念碑によれば1932年(昭和7年)に県の事業によって建設され、その後1985年(昭和60年)から吉野川北岸農業用水からの補給が開始され、さらに1994年(平成6年)には県の溜池等整備事業による大規模な改修が行われ現在の姿となりました。
管理は脇町土地改良区が行っています。
 
美馬市中心部の脇町から吉野川左岸の県道12号を西進、脇町別所で県道106号を右折して北上、高速の手前で右手の枝道に入ると岩倉池に到着します。
大きく湾曲した堤体は、堤頂長195メートルにも及びます。
1994年の大規模改修により上流面はコンクリートで護岸されました。
 
天端わきにある1994年(平成6年)の改修記念碑。
 
こちらは1932年(昭和7年)の竣工記念碑。
 
小さな洪水吐。
 
洪水吐導流部。
 
堤体上流面の斜樋。
奥のパイプは吉野川北岸用水からの補給用パイプ。
 
天端はダートの車道。
 
パイプに沿ってダム下への階段が続きます。
吉野川北岸用水からここを揚水して補給されます。
 
階段を下りると取水設備からの水路と洪水吐からの導水路が合流します。
たぶんこの奥に底樋があるんでしょうが無理な立ち入りは自重しました。
 
吉野川北岸用水からの揚水設備
ここから岩倉池に水がポンプアップされ貯留されます。
 
よくある溜池の一つと思っていましたが、吉野川北岸農業用水からの補給を受けており、揚水設備などがあり見所の多い溜池でした。
 
3576 岩倉池(1201)
ため池コード
徳島県美馬市脇町岩倉
吉野川水系井口谷川
18.3メートル
195メートル
101千㎥/101千㎥
脇町土地改良区
1932年