2017年12月23日 豊稔池ダム(再)
豊稔池ダム(再)は香川県観音寺市大野原の柞田川上流部にあるマルティプルアーチ式粗石モルタル工ダムです。
柞田川流域の大野原村(現観音寺市大野原町)は古くから『月夜にも焼ける』といわれるほど干ばつ被害に悩まされ、一帯農家にとって安定した灌漑水源確保は永年の悲願となっていました。
1920年(大正9年)、1924年(大正13年)と立て続けて発生した干ばつを契機に貯水池建設機運が一気に高まり、1926年(大正15年)から貯水池建設事業が着手されました。
土木建築の第一人者であった佐野藤次郎指導のもと海外の最新技術であるマルティプルアーチ型式が採用され、組合員総出による延べ15万人の人海戦術により1930年(昭和5年)に貯水池は無事竣工し『豊稔池』と命名されました。
豊稔池ダムは日本初のマルティプルアーチ(多供扶壁式)ダムであり、且つ日本初の農業用コンクリートダムとなっています。
その後1994年(平成6年)にかけて大規模な再開発事業が行われ、従来の灌漑目的に加えて防災機能を備えた農地防災ダムとして生まれ変わりました。
管理は豊稔池土地改良区が行い柞田川流域530ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
戦後、宮城県の大倉ダムがマルティプルアーチダムとして建設されますが、その後の河川構造令改正により同型式のダム建設は築造できなくなり現在日本には同型式のダムは2基しかありません。
1997年(平成9年)に貴重な土木建築としての評価から国の有形文化財に登録され、2006年(平成18年)には重要文化財の指定を受けました。
またAランクの近代土木遺産、ため池百選、日本100ダムにも選ばれています。
ダム周辺は遊水公園として整備されダム下に駐車場があります。
遊水公園入口の案内板。
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公園入口から。
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下流から正対
両端部は重力式、中央部がマルティプルアーチ式になっています。
5連の扶壁が並ぶ様はも中世欧州の城郭のようです。
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中央4列の欠円アーチ部分が越流式になっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/c2/6750f3aebb10b9b22b5204dad05d0228.jpg)
遊水公園の石碑とともに。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/c2/94d64e7deb3673f40eabe5f957cf81fc.jpg)
中央4本の扶壁にはサイフォン式余水吐の放流口があります。
一方左岸(向かって一番右手)の扶壁には上樋(利水放流口)があります。
また写真では分かりづらいですが、アーチ部基部には取水及び土砂吐用の樋管が取り付けられています。
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放流がない時は扶壁直下まで立ち入りが可能。
欠円アーチ部を見上げます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/74/c22b4789e4005e42073a2d7576077f2a.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/17/cc45b1c990dcd470f7a7eca51b1729dc.jpg)
水叩きも重厚な石張り。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/bd/7926904685d925c0743e2dcf18b6c0dc.jpg)
左岸県道9号から。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/34/20920e332fae318b41a07666d68d135a.jpg)
堰堤そのものが巨大なラビリンスのようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/09/82681137ef46ad3a801c0dfdb03ac564.jpg)
今回は石積をじっくり堪能することができました。
サイフォン式余水吐からの放流も迫力満点のようですので、次は是非放流時に訪問してみたいものです。
A
MA
32.3メートル
158.4メートル
1590千㎥/15930千㎥
1930年
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3048 豊稔池ダム(再)(1230)
FA
MA
30.4メートル
128メートル
1643千㎥/1593千㎥
豊稔池土地改良区
1994年 再開発事業竣工