ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

門入ダム

2018-01-12 17:16:58 | 香川県
2017年12月22日 門入ダム
 
門入ダムは香川県さぬき市寒川町石田東の津田川水系栴檀川上流部にある香川土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
津田川水系では1963年(昭和38年)に本流に治水目的の大川ダムが完成しますが、最大支流の栴檀川は手つかずだったため抜本的な治水対策には至りませんでした。
さらに人口増加や生活様式の変化などから水需要がひっ迫し、新たな水源確保が迫られました。
そこで香川県は栴檀川への多目的ダム建設事業に着手し1998年(平成10年)に竣工したのが門入ダムです。 
門入ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、栴檀川および津田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と門入池受益農地を含む既得取水権としての灌漑用水への補給、さぬき市への上水道用水の供給を目的としており、既存の灌漑用溜池である門入池を取り込む形で建設されました。
 
また門入ダム建設に合わせて当時の寒川町によりダム周辺の環境整備が行われ、ダム湖一帯は『門入の郷』公園として周辺住民の憩いの場となっています。
門入ダム自身も左岸フーチング階段が開放される一方、管理事務所1階に資料コーナーを設けるなど開かれたダムとなっています。
 
ダム下は『門入の郷花の広場』として整備されていますが、あいにくの逆光でこんな写真が精いっぱい
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲートが4門、常用洪水吐として洪水期、非洪水期用に高さの異なる自然調節式オリフィスゲートを2門備えています。
 
ダム左岸の展望広場
モニュメントのほか、ダムに沈んだ門入池の石碑が2基移築されています。
 
上流面。
 
天端。
 
天端からの眺め。
 
減勢工と利水放流設備。
 
門入湖は総貯水容量290万立米
湖畔各所が公園として整備され上流には日帰り温泉施設もあります。
 
ガラス張りの管理事務所
インクラインはなく浮桟橋が設置されています。
 
左岸から
堤体は石積風の化粧型枠が施されています。
またこちら側のフーチング階段が開放されています。
 
左岸から上流面。
 
香川県営ダムとしては珍しいゲートレスダムです。
ダム周辺の環境整備は素晴らしく、時間に余裕があればのんびり一日すごしていたい、居心地のいいダムです。
 
2190 門入ダム(1215
ため池コード 372061374 
香川県さぬき市寒川町石田西
津田川水系栴檀川
FNW
47.3メートル
202.5メートル
2900千㎥/2780千㎥
香川県土木部
1998年

弥勒池

2018-01-12 17:15:59 | 香川県
2017年12月22日 弥勒池
 
弥勒池は香川県さぬき市大川町富田中の津田川水系津田川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
もとは上中下3基の池を総称して弥勒池と呼ばれていましたが、現座下池は消滅しダムとしての弥勒池は上池を指しています。
池の袂に設置された『弥勒池の由来』という案内板では18世紀半ばの宝暦年間にはすでに池の存在が認められおり、『弥勒』という名称は池の掘削工事で仏像を彷彿とさせる多数の凝灰岩が掘り出されたことに由来するそうです。
幕末安政年間に貯水量増加のための隧道水路が完成、これは弥勒石穴として登録有形文化財に指定されています。
1975年(昭和50年)にかけて香川県の事業により大規模な改修工事が行われほぼ現在の姿になり、集水も大川ダムからの補給に変更されました。ダム便覧ではこの大規模改修の竣工年度である1975年を竣工としています。
池の管理は弥勒池水利組合が行い、56ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
池一帯は『みろく自然公園』として整備され、日帰り温泉施設やサッカー場、キャンプ場などが備わっています。
天端は車道で奥の建物が日帰り温泉施設の『ゆーとぴあ みろく』です
総貯水容量23万6000立米と香川県の溜池としては小規模な溜池です。
 
左岸の斜樋
斜樋の手前に小さな洪水吐があります。
 
弥勒池の由来を示す案内板。
 
天端から
すぐ下にあるのが中池。
 
下流面。
 
左岸の洪水吐。
 
洪水吐導流部。
 
斜樋と上流面
上流面はコンクリートで護岸されています。
 
斜樋のそばには石碑が2基
どちらも読み解くのが難しい。
   
 
堤体下は草が茂り底樋は確認できませんでした。
また貯水池上流部に隧道導水路である『弥勒石穴』があったんですが、予習不足のため見逃してしまいました。
 
2151 弥勒池(1214)
ため池コード 372060010 
香川県さぬき市大川町富田中
津田川水系津田川左支流
16.8メートル
96メートル
236千㎥/236千㎥
弥勒池水利組合
1975年

大川ダム

2018-01-12 17:15:16 | 香川県
2017年12月22日 大川ダム
 
大川ダムは香川県さぬき市大川町田面の津田川上流部にある香川県土木部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
香川県は昭和20年代後半から県内各河川へのダム建設に着手し、津田川では本流上流部への治水ダム建設が進められ1963年(昭和38年)に竣工したのが大川ダムです。
大川ダムは津田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給を目的としていますが、不特定利水容量が大きく主目的は既得取水権としての灌漑用水の安定した補給です。
その後1998年(平成10年)には最大支流の栴檀川に門入ダムが建設され、津田川水系の治水能力は大きく向上しました。
 
ダム下から
クレストにローラーゲート1門あり頭上に大きなゲート操作室が乗っています。
これは同じ香川県営の大内ダム前山ダムとそっくり。
 
ダム下には放流設備があり河川維持放流が行われています。
隣には常用洪水吐となる低水放流バブルを備えています。
 
堤高は36メートルと小ぶりな堤体。
 
上流面
インクラインはなく右岸に浮桟橋があり、巡視艇が繋留されています。
 
天端は徒歩のみ通行可能
ゲート部分が前面に張り出しクランクになっています。
そまたピア横には香川県営ダムではおなじみ、螺旋階段。
 
減勢工は左に大きく湾曲
左手は2枚目写真の放流設備。
 
ダム湖は総貯水容量76万立米と溜池サイズ。
 
右岸から
右手は管理事務所。
 
あまたでっかちなゲートピアと半円形の取水設備。
上流からの眺めも大内ダムにそっくり。
 
ダムの番猫として有名な猫ちゃん。
ダムカードにも載っています。
 
2176 大川ダム(1213
香川県さぬき市大川町田面
津田川水系津田川
FN
36メートル
124メートル
760千㎥/640千㎥
香川県土木部
1963年

五名ダム(元)

2018-01-12 17:14:04 | 香川県
2017年12月22日 五名ダム(元)
 
五名ダム(元)は香川県東かがわ市五名の湊川本流上流部にある香川県土木部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
香川県は昭和20年代後半から県内各河川へのダム建設に着手しま、湊川水系では本流上流部への治水ダム建設が進められ1961年(昭和36年)に竣工したのが大川ダムです。
五明ダム(元)は湊川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給を目的としています。
しかし五名ダム運用開始後も2年に一度の頻度で干ばつが発生、さらに旧白鳥町での水道需要増加が見込まれたことから、県は1995年(平成7年)に五名ダムの下流約700メートル地点への多目的ダム建設事業に着手します。
しかしバブルの崩壊による社会情勢の変化などから再開発事業は2010年(平成22年)に国交省の検証対象ダムとなり、2016年(平成28年)に事業継承が決定したものの、現在は地質調査や概略設計などに留まり用地取得や工事については全く手付かずの状態です。
 
五名ダム(元)は国道377号線沿いにありアプローチは簡単ですが、下流からの展望ポイントがほとんどなく国道から樹林越しゲートを垣間見るのがやっと。
クレストにローラーゲートが3門並びます。
 
右岸の管理事務所
管理事務所右手に斜樋があります。
重力式コンクリートダムの取水設備に斜樋が設置されるのは珍しいかも。
 
天端は歩行者のみ通行可
ゲート部分は前面に張り出しクランクになっています。
ゲートピアには予備ゲート運搬用のホイストクレーンがついています。
 
予備ゲート。
 
天端から下流の眺め
またこの下流700メートル地点に新ダム建設が計画されています。
 
ダム湖は総貯水容量61万1000立米。
 
左岸から下流面。
 
減勢工はジャンプ台式
ジャンプ台の下に常用洪水吐のホロージェットバルブを2条装備していますが、目にすることはできません。
 
堤体に取水設備はなく管理事務所右手に斜樋があります。
 
左手の予備ゲートは、ピアのグリーンのクレーンで移動する仕組み。
 
 
2175 五名ダム(元)(1212
香川県東かがわ市五名
湊川水系湊川 
FN
27.5メートル
106メートル
611千㎥/536千㎥
香川県土木部
1961年
--------------
3257 五名ダム(再)
香川県東かがわ市五名
湊川水系湊川 
FNW
52.8メートル
237.2メートル
5704千㎥/5254千㎥
香川県土木部
1995年~

鞍谷池

2018-01-12 02:27:08 | 香川県
2017年12月22日 鞍谷池
 
鞍谷池は香川県坂出市高屋町の国分台西斜面標高230メートルの青海川水系明神川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
改修記念碑によれば1917年(大正6年)に明神川下流の高屋町松山地区の灌漑用水源として築造されました。しかし、戦後池の東側の国分台に陸上自衛隊演習場ができたことで、土砂の流入が増加する一方集水に齟齬が生じてきました。
そこで防衛庁(現防衛省)の補助を受けた県の障害防止対策事業により大規模な改修工事が行われ、1986年(昭和61年)に竣工しました。
管理は坂出市松山土地改良区が行っています。
ダム便覧では竣工が1981年(昭和56年)となっていますが、根拠が不明のため改修記念碑に従って1917年竣工、1986年改修と記しておきます。
 
坂出市中心部から県道161号を東進、高屋交差点白峯寺の案内板に従って県道180号に入ります。
連続カーブを登った先、白峯寺の手前で右手に細い枝道に入ると鞍谷池右岸に到着します。
 
下流面はきれいに刈り払われています。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
アングルを変えて。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
総貯水容量11万立米の小さな溜池です。
この貯水池の上流に自衛隊の国分台演習場があります。
 
天端からは瀬戸大橋や瀬戸内海を挟んで遥か岡山方面まで遠望できます。
この日はあいにく霞んでいて視界が不明瞭だったのが残念。
 
堤体を下ってみました
堤体中ほどに底樋樋門があります。
 
堤体中央に斜樋があります。
 
左岸の改修記念碑。
自衛隊の障害防止対策事業で改修が行われたことが記されています。
 
山中の小さな溜池なので、もっと荒れた溜池をイメージしていましたが、よく手入れされいまだに貴重な水源として重宝されていることが伺えました。
 
2155 鞍谷池(1211)
ため池コード
香川県坂出市高屋町
青海川水系明神川
15メートル
100メートル
110千㎥/110千㎥
坂出市松山土地改良区
1917年竣工
1986年改修

府中ダム

2018-01-12 02:24:18 | 香川県
2017年12月21日 府中ダム 
 
府中ダムは香川県坂出市府中町の綾川水系綾川の河口から9キロ地点にある香川県広域水道企業団が管理する工業用水目的の重力式コンクリートダムです。
瀬戸内海沿岸部の臨海工業地帯の整備に合わせ、同地帯への工業用水の供給を目的として当時の通産省(現経産省)の補助を受けて1966年(昭和41年)に竣工し、隣接する綾川浄水場を経由して坂出及び宇多津地区の臨海工業地帯へ工業用水を供給しています。
またダム湖の府中湖はJOC公認の競技場となっており、中四国地区のボート競技のメッカとなっています。
 
県道18号で綾川を渡りすぐに右折すると府中ダム右岸ダムサイトに到着します。
 
下流面。
 
上流側
ゲート右横に取水設備があります。
 
天端は歩行者、軽車両、バイクは通行可。
ゲートピア横には香川のダムでよく見られるらせん階段。
 
減勢工
バッフルピアが横一列に並んでいます。
右手からは河川維持放流が行われています。
下流の右手の建物は綾川浄水場。
 
府中湖は総貯水容量は850万立米、綾川に沿った縦長のダム湖で、上流にはJOC公認のカヌーコースがあります。
 
左岸から
正面の建物は香川県広域水道企業団事務所、ダムカードはここでもらえます。
 
湖畔の府中湖の石碑
桜が多く植えられ春には花見客でにぎわうようです。
 
上流の北條池天端から
府中湖は北條池直下まで迫り地図では一体化した貯水池のように見えます。
 
追記
府中ダムは洪水調節機能を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合に事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。
  
2180 府中ダム(1210
香川県坂出市府中町
綾川水系綾川
27.5メートル
131メートル
8500千㎥/8000千㎥
香川県広域水道企業団
1966年
◎治水協定が締結されたダム

北條池

2018-01-12 02:23:17 | 香川県
2017年12月21日 北條池
 
北條池は左岸が香川県綾歌郡綾川町萱原、右岸が綾川町陶にある灌漑目的のアースフィル堰堤です。
改修記念碑によれば17世紀後半の延宝年間(1673~1681年)に築造され、江戸時代は香川県有数の穀倉地帯である綾北條(現在の坂出平野)を支える貴重なため池として『満濃太郎、北條次郎』と呼ばれてきました。
直近では1998年(平成10年)から2006年(平成18年)にかけて国営総合農地防災事業により大規模な改修が行われています。
管理は北條池土地改良区が行い、537ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
堤高は11.8メートルとダムの要件を満たさずダム便覧にも掲載されていませんが、四国堰堤ダム88箇所巡り第77番札所である府中ダムの奥の院となっていることからこのブログで取り上げることにしました。
また1966年(昭和41年)に綾川下流に香川県水道局による府中ダムが竣工しダム湖の府中湖が北條池直下まで拡大したことで、地図では府中湖と北條池は一体化した貯水池のように見えます。
写真の赤マルが北條池堰堤
 
県道183号が北条池の天端を通ります。
堤右岸に改修記念碑があり北條池の由来等が記されており、四国堰堤ダム88箇所巡りのハンコもこの碑のそばにあります。
 
 
上流面はコンクリートで護岸
右岸の横越流式洪水吐はV字に屈曲しています。
 
 
 
堤頂長は312メートルに及び天端を県道が走っています。
 
総貯水容量131万7000立米
他県だとトップクラスの貯水量ですが、香川県の溜池では12番目。
 
堰堤直下には府中湖が迫っています
ダム湖の小島群はプチ松島的光景。
 
堤高が15メートルに満たないため本来ならスルーする池ですが、四国堰堤ダム巡りに絡んで見学しました。
改修記念碑のおかげで満濃太郎、北條次郎という言葉を知ったのは収穫。
 
北條池
ため池コード
香川県綾歌郡綾川町萱原
綾川水系綾川
11.6メートル
312メートル
1321千㎥/1321千㎥
北條池土地改良区
17世紀後半築造
2006年大規模改修竣工