ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

一の沢ダム

2018-09-26 13:44:57 | 北海道
2018年9月20日 一の沢ダム
 
一の沢ダムは北海道札幌市南区の石狩川水系豊平川と小樽内川の合流地点にある北海道電力の発電用重力式コンクリートダム(厳密にいえばかつて発電目的であった重力式コンクリートダム)です。
明治以降、豊平川では札幌水力電気による電源開発が進められ、1926年(大正15年)に定山渓、簾舞漁発電所に次ぐ豊平川3番目の発電所として一の沢発電所が完成しました。
一の沢発電所の取水堰として同時に建設されたのが一の沢ダムで、日本発送電の接収ののち、戦後北海道電力が事業を継承しました。
しかし、1972年(昭和47年)の豊平峡ダム完成に合わせて、豊平川沿いの水力発電施設の統廃合が行われ、一の沢発電所は廃止となりました。
一の沢ダムの完成により豊平川と白井川の合流地点には『鶴舞の瀞』と呼ばれる大きな淀みができ、錦橋からの眺めは定山渓温泉を代表する紅葉スポットとなっています。
 
残念ながら一の沢ダムへの入口は門扉が閉ざされダムの姿を伺うことはできません。
 
門扉の先の管理道路。
 
グーグルマップの空撮写真を見ると全面越流式堰堤です。
 
一の沢発電所が廃止になっていることから、一の沢ダムは本来の役目を終えています。しかし、当ダムによって鶴舞の瀞という景勝地が形成されていることからダムは撤去は行われていないのでしょう。
 
0022 一の沢ダム
北海道札幌市南区定山渓
石狩川水系豊平川
20.3メートル
83.9メートル
---千㎥/---千㎥
北海道電力
1926年

砥山ダム

2018-09-26 12:19:25 | 北海道
2018年9月20日 砥山ダム
 
砥山ダムは北海道札幌市南区小金湯の石狩川水系豊平川にある北海道電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1972年(昭和47年)に豊平川上流部に豊平峡ダムが竣工し同時に北海道電力豊平峡発電所の運用が始まりました。
砥山ダムは豊平峡発電所とほぼ同時に竣工し、同発電所の放流水を調整するための逆調整池としての機能を持つほか、ここで取水された水は砥山発電所に送られ最大1万200キロワットのダム水路式発電が行われます。
 
ダムは堤体直下まで入ることができます。
洪水吐沿いのフェンスに沿って下流に下ると、フェンスの切れ目からダムを見ることができます。
クレストにはラジアルゲートが4門ありますが、一番左岸(向かって右手)のゲートだけ越流面が低くなっており、ゲートのサイズも小ぶりです。
 
減勢工のエンドシル。
 
砥山ダム一番のポイントは堤体右岸が屈曲し『カド』になっている点です。
『カド』で有名な下久保ダムのスケールには及びませんが、非常に美しい『カド』を愛でることができます。
 
カドの右手には取水設備がありダム下流の農耕地への灌漑用水補給用の設備と思われます。
現在ダムの下流にはわずかな農耕地が残るのみですが、ダムが竣工した1972年(昭和47年)当時はもっと広大な田畑が広がっていたと思われ、この設備はダム建設に合わせて豊平川からの慣行取水権を有していた灌漑用水への補給を行うためのものかと思います。
 
砥山ダムの『カド』は直接手で触れることができます。
 
見上げると日本城郭の石垣のよう。
 
カドの奥にはさらに堤体が続きます。
 
一方堤体への道は北海道電力の門扉が閉ざされ立ち入り禁止。
 
『カド』を望遠で切り取ってみます。
カドの左手に取水設備が見えます。
 
左岸には砥山発電所向けの取水口があります。
 
(追記)
砥山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。

0086 砥山ダム(1360)
北海道札幌市南区小金湯
石狩川水系豊平川
30メートル
217メートル
1370千㎥/530千㎥
北海道電力
1972年
◎治水協定が締結されたダム

漁川ダム

2018-09-26 01:55:28 | 北海道
2018年9月20日 漁川ダム 
 
漁川ダムは北海道恵庭市漁平の石狩川水系千歳川右支流漁川上流部にあるロックフィルダムです。
国交省北海道開発局建設部が直轄管理する特定多目的ダムで、漁川および千歳川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、江別・北広島・恵庭・千歳4市への上水道用水の供給を目的として1980年(昭和55年)に竣工しました。
また1986年(昭和61年)には利水放流を利用した漁川ダム管理用発電所が完成し最大出力720キロワットの発電を行い商用発電及び管理用電力として利用されています。
 
漁川ダムは道道117号線沿いにあります。
ダム下は桜公園になっており、周辺随一の桜の名所として多くの人々でにぎわうそうです。
ロックフィルダムですが、下流面は芝が張られ一見アースダムと見紛うばかり。
北海道ではロックフィルに芝が張られるケースが多々あります。
 
右岸の洪水吐
ローラーゲートが3門装備され、両端が非常用洪水吐、中央が常用洪水吐となっています。
 
左岸にある監査廊入口。
 
堤体の階段。
 
天端は徒歩のみ通行可能。
 
上流面は丸石が敷かれています。
 
ダム湖の『えにわ湖』は総貯水容量1530万立米。
湖面は穏やかで空と取水塔がきれいに映りこんでいます。
 
洪水吐導流部と減勢工。
 
左から管理事務所、ゲート操作室。
 
竣工記念石碑。
 
漁川ダム竣工翌年の1981年(昭和56年)に石狩川流域では昭和56年8月洪水が発生、未曾有の大水害となり、支流の漁川へのダム建設による治水の限界が露呈、千歳川本流における抜本的な治水整備が不可欠になりました。
そこで千歳川からウトナイ湖経由で太平洋に注ぐ放水路が計画されますが、環境意識の高まりから反対運動が激化して白紙化、現在は堤防建設や河道の拡幅、浚渫などの河川改修に加えて流域各所への遊水地建設による治水が進められています。
 
(追記)
漁川ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。

0100 漁川ダム(1359)
北海道恵庭市漁平
石狩川水系漁川
FNW
45.5メートル
270メートル
15300千㎥/14100千㎥
国交省北海道開発局
1980年竣工
◎治水協定が締結されたダム