ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

笹倉ダム(再)

2021-06-03 21:43:15 | 島根県
2021年5月23日 笹倉ダム(再)
 
笹倉ダム(再)は島根県益田市美都町笹倉の益田川水系波田川にある不特定利水目的の重力式コンクリートダムです。
1967年(昭和32年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県の防災ダム事業により農地防災ダムとして建設されました。
1972年(昭和47年)7月豪雨による水害を受けて「益田川治水ダム建設事業」が着手されますが、1983年のいわゆる「昭和58年7月豪雨」により流域で死者39名被災家屋1700戸という甚大な被害が出たことから計画は大幅に修正されます。
具体的には益田川ダムを治水専用ダムとして洪水調節容量を従来計画の約3倍に上方修正する一方、不特定利水容量については既存の農地防災ダムであった笹倉ダムを再開発することで確保することになりました。
笹倉ダムの再開発工事は2004年(平成16年)に着手され、2005年(平成17年)の益田川ダム竣工についで翌2006年(平成18年)に再開発事業が竣工しました。
益田川ダムは益田川の洪水調節、笹倉ダム(再)は安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的として運用されるほか、益田川流域の農地防災ダムである大峠ダム、嵯峨谷ダムも県農林水産部から土木部に移管され益田川流域一体とした治水が実施されています。

バイパスが完成したばかりの県道益田澄川線からダムと正対できます。
クレストに自由越流式洪水吐4門
ダム下に利水放流設備が見えます。
 
右岸から。
 
 
再開発によって堤趾導流壁が新たに追加されました。
 
 
天端は立ち入り禁止。
 
ダム湖は笹波湖。
 
笹波湖は総貯水容量48万立米。
有効貯水容量すべてが益田川の不特定利水容量となります。
 
上流から
右岸浮桟橋に巡視艇が繋留されています。
 
取水設備をズームアップ。
 
益田川の洪水調節容量が3倍に上方修正されたことで同ダムでの不特定利水容量確保が困難となり不可能となり、代わりに既存の農地防災ダムであった笹倉ダムを再開発して同ダムに不特定利水を割り当てたという珍しいケースです。
 
(追記)
笹倉ダム(再)には洪水調節容量は配分されていませんが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1746 笹倉ダム(元)
島根県益田市美都町笹倉
益田川水系波田川
36.3メートル
82.8メートル
556千㎥/556千㎥
1967年農地防災ダムとして竣工
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3329 笹倉ダム(再)(1638)
島根県益田市美都町笹倉
益田川水系波田川
36.2メートル
96.5メートル
480千㎥/200千㎥
島根県土木部
2006年再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム

大峠ダム

2021-06-03 21:29:11 | 島根県
2021年5月23日 大峠ダム
 
大峠(おおたお)ダムは島根県益田市美都町笹倉の益田川水系馬谷川にある洪水調節目的の重力式コンクリートダムです。
1957年(昭和32年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県の益田川沿岸防災ダム事業により農地防災ダムとして建設されました。
1983年のいわゆる「昭和58年7月豪雨」により益田川流域で甚大な水害が発生したことから、島根県は『益田川治水ダム建設事業』を改訂、2005年(平成17年)に益田川本流に補助治水ダムとして益田川ダムが、翌2006年(平成18年)に笹倉ダム(再)の再開発事業がそれぞれ竣工しました。
それに先立つ2004年(平成16年)に大峠ダムは島根県農林水産部から土木部に移管されこれにより益田川流域一体となった治水運用が可能となりました。
 
益田市美都町笹倉の県道益田澄川線から馬谷川沿いに西に折れるとすぐに大峠ダムに到着します。
クレストに自由越流式洪水吐が2門。導流壁は直線です。
いわゆる「穴あきダム」で普段は水を貯留しないダムです。
 
堤体や天端のコケが時代感を醸し出しています。
 
 
天端は立ち入り禁止。
 
アングルを変えて
貯水池側は樹木に遮られ撮影できません。
 
ダムサイトに設置された水防警報装置。
 
農地防災ダムとして建設され、のちに農林水産部から土木部に移管された珍しいダムです。
防災に役所の縦割りは必要なく、流域一体としての治水、防災が叶うことが一番だと思います。
 
1738 大峠ダム(1637)
島根県益田市美都町笹倉
益田川水系馬谷川
23.2メートル
67.4メートル
239千㎥/239千㎥
島根県土木部
1959年農地防災ダムとして竣工
2004年県農林水産部から土木部に移管