ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

平鍋ダム

2021-11-25 22:00:00 | 高知県
2021年11月19日 平鍋ダム
 
平鍋ダムは高知県安芸郡北川村平鍋の二級河川奈半利川本流にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編により四国電力が誕生しますが、包蔵水力豊富な四国の電源開発を同社のみで手掛けるのは財務的、物理的にも困難で、公営発電や電源開発(株)による電力開発が併せて進められました。
上流域の年間降水量3000ミリと日本屈指の多雨地帯を流れる奈半利川では昭和30年代より電源開発(株)が発電事業が進め1960年(昭和35年)年に同社四国初のダムとして完成したのが平鍋ダムです。
ここで取水された水は約8キロの導水路で長山発電所に送られ最大3万700キロワットのダム水路式発電を行います。
その後1963年(昭和38年)には久木ダム・二又発電所が、1965年(昭和40年)には魚梁瀬ダム・魚梁瀬発電所が稼働し、同社の奈半利川での発電能力は計14万5000キロワットに達しています。
 
国道493号線に平鍋ダムの大きな看板があり、ここから右手の管理道路に入ると平鍋ダムに到着します。
 
ダム手前に建設工事の殉職者を弔う慰霊碑があります。
訪問時はこの先で法面工事が行われていたため、ここから歩いてダムに向かいました。
 
200メートルほど進むと右手に平鍋ダムが姿を見せます。
深い谷が刻まれる四国山地南東部は同じ四万層群に含まれる紀伊半島の景色とよく似ています。
 
クレストにはラジアルゲート4門装備
右岸(向かって左側)に排砂用のローラーゲートがあります。
 
ゲートをズームアップ。
奈半利川の電源開発のダムはライトブルーのゲートで統一されています。
 
さらにアップ
ラジアルゲートのうち、右岸1門はフラッシュボードがついています。
写真でもフラップのついたフラッシュボードがはっきり見えます。
 
ダムが見れるのは下流側のみ、取水口などは窺うことができません。
 
(追記)
平鍋ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2313 平鍋ダム(1739) 
高知県安芸郡北川村平鍋 
奈半利川水系奈半利川 
 
 
38メートル 
124メートル 
4240千㎥/984千㎥ 
電源開発(株) 
1960年 
◎治水協定が締結されたダム 

奥出ダム

2021-11-25 17:00:00 | 高知県
2021年11月19日 奥出ダム
 
奥出(おくだし)ダムは高知県安芸郡芸西村馬ノ上の和食川水系奥出川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
芸西村一帯は少雨に加え大河がなく古くから灌漑用水源は溜池に依存してきました。
加えて昭和30年代からの減反政策により園芸農業に転換する農家が続出したことで、用水不足が顕著となります。
そこで既存溜池の再開発が行われる一方、園芸農業向け新規水源として農水省の補助を受けた県営事業で1991年(平成2年)に建設されたのが奥出ダムです。
芸西村は施設農業発祥の地と言われ、平野部にはピーマン、ナス、花卉等のハウスが立ち並ぶ全国屈指の園芸農業地帯となっています。
 
ダム下から
農業用コンクリートダムらしく洪水吐はクレスト自由越流頂2門だけ、放流設備もあるはずですが草が繁茂して確認できません。
クレストから薄く越流しています。
 
左岸から下流面。
 
天端は車両通行可能。
 
親柱には『奥出池』の表記
既設ため池を改修してコンクリートダム化したと思われます。
 
減勢工
副ダムにはスリットが入っています。
どこかに放流設備があるはずですが目視では確認できません。
 
総貯水容量は12万立米。
 
右岸から下流面。
 
奥出ダム右岸には直角の『カド』があります。
 
 
上流面
クレストゲートの隣に取水設備。

2981 奥出ダム(1738)
高知県安芸郡芸西村馬ノ上 
和食川水系奥出川
18.7メートル
62メートル
120千㎥/81千㎥
芸西村
1991年

和食ダム

2021-11-25 12:00:00 | 高知県
2020年11月19日 和食ダム
 
和食(わじき)ダムは高知県安芸郡芸西村馬ノ上の和食川本流に高知県土木部が建設中の多目的重力式コンクリートダムです。
1992年(平成4年)に和食川へのダム建設事業が着手されますが、公共工事見直し機運が強まる中2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなりました。
翌2011年(平成23年)に事業継続が決定し、2018年(平成30年)竣工をめどに2013年(平成25年)より本体工事が着工されました。
ところが左岸側面の地質に重大な問題点があったことから再掘削を余儀なくされ6年の工期延長と32億円の事業費増加が不可避となりました。
現在は2024年(令和6年)竣工をめどに建設工事が進行中です。
和食ダムは国交省の補助を受けた補助多目的ダムで、完成の暁には和食川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、芸西村への上水道用水の供給を目的として運用される予定です。
 
和食ダム完成予想図(高知県土木部HPより)
 
右岸ダムサイトに展望所があります。
ダム直下には巨大なクレーンが鎮座
右岸のコンクリート打設は終了している一方、左岸の地質に問題点があり再掘削を余儀なくされました。
 
 
右岸はコンクリート打設がほぼ終わっているものの、左岸は全く手つかず。
これはこれでレアな眺め。
 
対岸の山留工事
こういう作業を見ると命がけの仕事だと痛感させられます。

3178 和食ダム(1737) 
高知県安芸郡芸西村馬ノ上 
和食川水系和食川 
FNW 
 
51メートル 
131.5メートル 
730千㎥/680千㎥ 
高知県土木部 
2024年竣工予定 

鎌井谷ダム

2021-11-25 08:00:00 | 高知県
2021年11月19日 鎌井谷ダム
 
鎌井谷ダムは高知県香南市香我美町山北の香宗川水系鎌井谷川にある高知県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の小規模ダム事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、鎌井谷川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、山北地区の新規樹園地17.8ヘクタールへの灌漑及び防除用水の供給を目的として1997年(平成9年)に竣工しました。
生活貯水池ダムの多くはFNW(洪水調節・不特定利水・上水)を目的としていますが、山北地区は温暖な気候を生かし『山北みかん』のブランドや『土佐文旦』を中心に活発な果樹栽培がおこなわれており、鎌井谷ダムはミカン生産を支える貴重な水源となっています。
新規果樹園地への灌漑用水の補給を目的とする生活貯水池ダムとしては二十世紀梨果樹園向けの鳥取県の東郷ダムがあります。
 
ダム下流にある『鎌井谷ダム』の名が入ったモニュメント。
道路沿いに桜が植えられており、春にはもっと艶やかな景色になるんでしょう。

 
洪水吐はクレスト自由越流頂1門と自然調節式オリフィス1門という小規模ゲートレスダムの典型的スタイル。


堤体よりも減\勢工の作りに目が向かいます。 
減勢工の副ダム下流の落差工のような構造物、実はこれ量水計。

 
左岸から下流面。
ここだけ見るといわゆる大量生産型ダムの一つとも思えますが。


天端は車両も通れます。
取水設備と水位計建屋の屋根は円形で統一。
建屋の壁の一部には石垣風の化粧型枠が施されてます。
着工時期はまだバブルの余韻が残る時代、わずかながらも設計者の我が垣間見えます。


上流面
左から水位計、取水設備、洪水吐。

 
左岸管理事務所と東屋
職員の常駐はありません。

洪水吐導流部と減勢工
左手は放流設備。

左手の建屋は灌漑用水の調圧水槽。

 
ダムに至る道路が九十九折れになっています。
個人的に好きな『ダム下のヘアピン』の絵柄。

 
ちょっと見づらい写真ですが天端や東屋からは太平洋が遠望できます。


総貯水容量はわずか13万6000立米。
生活貯水池ダムの中でも極小サイズの貯水池です。

 
(追記)
鎌井谷ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

3019 鎌井谷ダム(1736) 
高知県香南市香我美町山北 
香宗川水系鎌井谷川 
FNA 
 
27.3メートル 
131メートル 
136千㎥/128千㎥ 
高知県土木部 
1997年 
◎治水協定が締結されたダム