ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

上組溜池

2017-08-07 19:03:43 | 長野県
2017年8月5日 上組溜池
 
上組溜池は長野県飯山市蓮の信濃川支流皿川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
竣工記念碑によれば1924年(大正13年)に飯山鉄道(現JR飯山線)の鉄道敷設により既存の溜池を現在地に移設して上組溜池としました。
ダム便覧では竣工が1918年(大正7年)となっていますが、ここでは竣工記念碑に記された1924年を採用します。
(上組溜池は地図の赤マル)。
 
飯山市を貫流する千曲川沿岸は河岸段丘が続き、灌漑用水源は小河川を堰き止めた溜池や天水に頼らざるを得ず農業も畑作が中心となっていました。
17世紀に飯山藩の川除普請奉行となった野田喜左衛門は領内各所に灌漑用水路を開削『用水の神様』と評されました。
蓮堰も彼が開削した用水路の一つで千曲川の支流である斑尾川から千曲川左岸河岸段丘上に約13キロの用水を建設し、これにより蓮地区の段丘上で大規模な新田開発が可能となりました。
上組溜池は蓮堰からの補給を受けており、調整池の役割を果たす溜池と思われます。
(緑マルは蓮堰の開削により開発された上組の新田)
 
上組溜池の天端と上流面。
 
左岸上流から。
 
左岸の取水設備
木栓を差し込むタイプの池栓です。
 
下流面
右岸に沿って小さな溝のような余水吐導流部があります。
 
堤体下流面真ん中の底樋樋門。
 
総貯水容量は9000立米と非常に小さな溜池です。
それでも周辺の農地にとっては貴重な水源となっています。
 
右岸から天端と下流面。
 
溜池左岸を流れる蓮堰
斑尾川から千曲川左岸に沿って灌漑用水を運んでいます。
 
堰から溜池への小さな水門。
上組溜池も蓮堰からの用水補給を受けています。
 
蓮堰から見た千曲川
揚水技術のない時代、人々は目の前の大河の水をただ指を咥えて見るのみでした。
 
上組溜池の竣工記念碑。
 
上組溜池の訪問により蓮堰を知り、さらに野田喜左衛門という地方巧者の功績や江戸時代の土木技術の成果を知ることができました。
これだから溜池は侮れません。
 
0980 上組溜池(1097)
ため池コード
長野県飯山市蓮
信濃川水系皿川
15メートル
61メートル
9千㎥/9千㎥
蓮地区
1918年(便覧)
1924年(記念碑)



コメントを投稿