ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

江川ダム

2022-05-27 15:00:00 | 福岡県
2022年5月20日 江川ダム
 
江川ダムは福岡県朝倉市江川の筑後川水系小石原川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムで、いわゆる『あさくら3ダム』の一つです。
筑後川は九州最大の河川で古くから流域の水源となる一方『筑紫次郎』の異名を持ち日本屈指の暴れ川となっていました。
治水については筑後川上流部への松原ダム下筌ダムの建設や下流域の分水路建設などにより一定の成果が上がる一方、利水については農水・上水・工水と多岐にわたる上に福岡・佐賀・大分・熊本4県の利害調整が必要なことから、1964年(昭和39年)に『筑後川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、以降筑後川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりました。
そして農林省が進めてきた両筑平野用水事業を引き継ぎ、筑後川水系での同公団最初のダムとして1972年(昭和47年)に竣工したのが江川ダムです。
江川ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで、両筑平野土地改良区約4500ヘクタールへの灌漑用水の供給、福岡市・朝倉市・福岡地区水道企業団福岡県南広域水道企業団等への上水道用水の供給、朝倉市への工業用水の供給を目的としています。
また利水放流を利用した両筑江川発電所で最大1110キロワットの利水従属発電を行っています。
1978年(昭和53年)には江川ダムの南方3.5キロの佐田川に寺内ダムが竣工するとともに寺内ダムから小石原川へ通じる寺内導水路が開削され2ダムの連携運用が開始されました。
さらに2021年(令和3年)には江川ダム直上に小石原川ダムが完成し、併せて佐田川から江川ダムへの導水路トンネルが建設され、3ダム連携の効率的運用が可能となりました。

江川ダムは国道500号線沿いにあり、アプローチは簡単
ダム下への道路入り口にはフェンスがありますがこれは害獣防除用、立ち入りは規制されていません。


堤高79.2メートルのトップにはクレストラジアルゲートが3門
赤いゲートが際立ちます


右岸にホロージェットバルブがあり、径間が異なるバルブを2条備えています。
江川ダムは洪水調節機能がないため放流設備はラジアルゲートとバルブだけ。


国道からも何カ所かダムが望めますが、木が邪魔ですっきりとは見えません。


水利使用標識
もとは農林省(現農水省)の両筑平野農業水利事業がベースになったダムです。
かんがい面積は約4500ヘクタールにも及びます。


ダム湖は『上秋月湖』
ダム湖百選に選ばれています。


右岸から
提体は右岸側で『へ』の字に屈曲しています。
天端は車両通行可能。


洪水吐導流部と減勢工
エンドシル右手に両筑江川発電所があります。


ダム湖は『上秋月湖』
総貯水容量2532万5000立米でダム湖百選に選ばれています。


左岸から下流面
対岸に管理事務所があります。


左岸上流から
ダムが屈曲しているのがよくわかります。


ゲートと取水設備をズームアップ。


ダム湖上流にある佐田川からの導水路トンネル吐口。
佐田川は流域面積が大きい一方、寺内ダムの貯水能力が少ないため年間5200万立米の水が無駄になっていました。
導水路トンネルの完成により江川小石原川寺内3ダムが連携した効率的運用が可能となりました。


(追記)
江川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2424 江川ダム(1810)
福岡県朝倉市江川
筑後川水系小石原川
AWI
79.2メートル
297.9メートル
25326千㎥/24054千㎥
水資源機構
1972年
◎治水協定が締結されたダム


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