2023年5月21日 花取溜池
花取溜池は佐賀県鹿島市音成にある鹿島市多良岳土地改良区が管理する灌漑・防除目的のアースフィルダムです。
佐賀県の有明海沿岸では温暖な気候を活かし昭和30年代より丘陵地でのミカン樹園地開発が進められます。
鹿島市から太良町にかけての多良岳北東山麓では1964年(昭和39年)に約630ヘクタールの樹園地開発・収穫量9000トンを目的とした『国営多良岳農地開発事業』が着手されその灌漑・防除用調整池として1969年(昭和44年)に竣工したのが花取溜池です。
しかし1991年(平成2年)のオレンジ輸入自由化により、ジュース向け原液がほぼ輸入品にとって代わったことで汎用ミカン価格が急落し全国のミカン農家は大打撃を受けます。
当地域でも離農や耕作放棄などが相次ぎましたが、現在は最高級品質の『祐徳ミカン』のブランド化に成功したほかレモン等への品種転換などにより生き残りを図っています。
なお、名称に『溜池』がついていますが国営事業で建設された農業用調整池ということで『農業ダム』の扱いとなりため池データベースにも記載がありません。
ダム下から
堤高22.6メートル、堤頂長176メートルのアース堤体
見た目と名前は『溜池』ですが、分類は農業ダムとなります。
下流面。
天端は車道
堤体は緩やかな逆アーチ状に湾曲。
総貯水容量24万4000立米。
当溜池は農業調整池で西葉川上流で取水された水がいったんここに貯留されたのち配分水路で受益地に補給されます。
奥から取水設備の斜樋、花取水槽からの流入管、越流式洪水吐。
天端から
ガスが掛かり視界不良ですが、わずかに有明海が視認できます。
『海が見えるダム』認定。
平地の少ない当地域では谷筋に水田、丘陵地にミカン樹園地が展開します。
果樹栽培が導入される以前は零細な稲作営農が大半でした。
上流面はコンクリートブロックで護岸。
花取水系の配分水路図。
右岸ダムサイトにある調圧水槽
現地では減圧水槽と表記されていますが同じ意味。
ここから専用の配分水路で受益農地に用水補給するほか、防火用水の役割も担っています。
右岸の越流式洪水吐。
右岸沿いに洪水吐導流部が流下します。
受益農地へは専用の配分水路が使われるため、いわゆる底樋管的な施設はありません。
2530 花取溜池(1995)
西葉川水系西葉川
A
E
22.5メートル
176メートル
244千㎥/242千㎥
鹿島市多良岳土地改良区
1969年
「祐徳みかん」と聞いて「祐徳稲荷」を思い出した私
そう言えば、参道のお土産屋さんに「祐徳みかん」の看板が幾つも立てかけられていたな・・って。
いつもいつも関係のない話で ごめんなさいm(_ _"m)
ところが瀬戸内海沿岸や長崎辺りに行けばどこもかしこも海が見えるダムだらけ…
長崎の離島に行けば海を埋め立てた防波堤のようなダムさえあります。
「鷹島ダム」で検索していただければ出てきます。
わたしは祐徳稲荷の存在は知らなくて「祐徳」と聞いて、湿布薬や絆創膏を作っている「祐徳製薬」の名前をまず思い出してしまいました。
若いころから椎間板ヘルニアとお友達で薬局で調剤する経皮鎮痛消炎剤がだいたい祐徳薬品のパスタイムか久光のモーラステープのどちらか。
そういえばどちらも佐賀の会社です。
絆創膏と言えば私の故郷、高取も生産シェアが高くそのブランド名から奈良や和歌山、三重、大阪の一部では「リバテープ」が普通名詞になっています。
一括りにダムって呼んでますが、こうして色々見せて頂くと、本当に奥が深いです。
入江を締め切って、海面よりダム湖面を高くして・・なんて、すらっと説明していますが、想像が追い付きません。(もともと無知なのもありますが)
バカっぽい言い方でお恥ずかしいですが「ダムって凄い!」
海岸線は切り立ち台形上になっているため、開墾できる平坦部は丘陵上しかありません。
さほど大きな島ではないので、貯水池を作れる河川もなく農業で使える水は天水しかなかった島です。
取られた手段が入江をダムで締め切り淡水化するというものでした。
まだまだ水を巡る旅は続きます。
これからもお付き合いいただければ幸いです。