ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

荒木根ダム

2017-02-07 14:35:00 | 千葉県
2016年2月21日 荒木根ダム
2017年2月 4日 
 
荒木根ダムは左岸が千葉県夷隅郡大多喜町石神、右岸がいすみ市大野の夷隅川水系大野川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
夷隅川は千葉県最大の流域面積を持つ二級河川で、古くから流域の貴重な灌漑用水源となってきましたが、夷隅川流域では地表近くに水溶性天然ガス層があり渇水期に河床や水田からガス成分や塩分を多量に含んだ『かん水』が湧出し、農業に多大な悪影響を与えていました。
そこで千葉県は1970年(昭和45年)に農林省(現農水省)の補助を受けた鉱毒対策事業『夷隅地区』に着手、その中核施設として1978年(昭和53年)に竣工したのが荒木根ダムです。
運用開始後は夷隅町が管理を受託、その後の合併で現在はいすみ市が管理業務を引き継いでいます。
荒木根ダムには通常の灌漑用水容量とは異なり鉱毒希釈用水容量が配分され、灌漑期に流域のガス成分や塩分濃度が上昇した際に希釈用水を放流し灌漑用水の中和を図っています。
農水省の補助を受けた鉱毒対策事業によって建設されたダムとしては千葉県の平沢ダム、宮城県の田ダム、山形県の生居川ダムがあります。
 
荒木根ダムには2016年(平成28年)2月に初訪、2017年(平成29年)2月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。

荒木根ダムには県道82号を南下すると荒木根ダムの標識があり、これに従って右折すると荒木根ダムが見えてきます。
堤高33.5メートル、堤頂長302メートルとアースフィルとしてはかなり大きな堤体です。
(2016年2月21日)
 
ダム下流から。
景観的に一本杉がなかなかいいアクセントになっています。(2017年2月4日)
 
天端は車両通行可。(2017年2月4日)
 
上流面はコンクリートで護岸。
(2016年2月21日)
 
右岸に管理事務所と取水設備があります。
(2016年2月21日)
 
総貯水容量205万2000立米と農業用アースフィルダムとしてはかなり大きな貯水池。
(2016年2月21日)
 
ダム周辺は房総らしい凝灰岩の特異な地形。
(2016年2月21日)
 
ダム下には防風目的の杉が並びます。
(2017年2月4日)
 
下流面。
(2017年2月4日)
 
左岸の横越流式洪水吐。
(2016年2月21日)
 
(2017年2月4日)
 
荒木根ダムはあくまでもかん水対策の農業用ダムですが、下流の大野川は旧夷隅町の上水道水源となっており、当ダムの運用開始により同水道事業も水質改善および取水の安定化という恩恵を受けています。
 
(追記)
荒木根ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。 
 
0671 荒木根ダム(0239)
左岸 千葉県夷隅郡大多喜町石神
右岸    いすみ市大野
夷隅川水系大野川
33.5メートル
302メートル
2052千㎥/1947千㎥
いすみ市
1978年
◎治水協定が締結されたダム


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