2017年9月18日 河内ダム
河内ダムは福岡県北九州市八幡東区の板櫃川水系板櫃川上流部にある日本製鉄(株)が管理する表面石張粗石モルタル工重力式コンクリートダムです。
日露戦争終結以降、国内産業の近代化、重工業化に伴い鉄鋼需要は増加の一途辿り、官営八幡製鉄所は1900年以降の20年間で3期にわたる拡張工事を実施します。
このうち1915年(大正4年)に始まった第一次世界大戦による鉄鋼需要増加に対処するための第3期拡張工事に合わせて建設されたのが河内ダムです。
拡張工事によって増加する製鉄用水源として1919年(大正8年)に建設が始まり8年の歳月を掛け1927年(昭和2年)に竣工しました。
堤高43.1メートルは戦前に完成した貯水池ダムとしては最高を誇り、貯水量700万立米は当時東洋一の規模でした。
また延べ60万人の人力を動員した大事業にもかかわらず殉職者が一人も出なかったとともいわれています。
河内ダム完成により潤沢な用水を確保した八幡製鉄所の拡張は太平洋戦争開戦まで続き、戦前の国内製鉄の大半を八幡製鉄所が担う規模まで膨れ上がりました。
現在は八幡製鉄所を継承した日本製鉄(株)が管理を行い現役のダムとして活躍しています。
河内ダムはその土木技術的価値を評価して土木学会選奨土木遺産及びAランクの近代土木遺産に、日本の近代化に貢献した点を評価して近代化産業遺産に選定されています。
またダム湖上流にある橋梁群も近代土木遺産に指定され、とりわけ南河内橋は日本に現存する唯一のレンズトラス(レンティキュラートラス)型式の橋梁として国の重要文化財に指定されています。
河内ダム一帯は貯水池を周回する遊歩道や自転車専用道路が整備されているほか、湖畔にはキャンプ場や日帰り温泉施設などもあり北九州を代表するレクリエーションエリアになっています。
ダム湖左岸を県道62号線が通っておりアプローチは簡単です。
天端わきに駐車場がありここに駐車してダムを見学します。
左岸展望台から
堤体にゲートがない非越流式ダムです。
そそり立つ岩の壁はまるで西洋の城壁のよう。
コンクリートダムに横越流式余水吐と言う珍しい組み合わせ。
余水吐に架かるアーチ橋。
天端高覧には割石がびっしりと張り付けられています。
洪水吐の護岸も石張になっています。
天端は貯水池を周回する遊歩道になっています
路面は石畳、高覧は割石の石張と鉄で装飾が施されています。
天端中央には戦前のダムらしい半円形の取水設備があります。
もちろんこれも全面石張。
取水設備の石の装飾。
竣工記念碑は英語表記
灯台の初点プレートなどもそうですが、戦前は英語表記のものが多く見られます。
右岸から
水不足で水位が非常に低くなっていますが、それが逆に石積みの美しさを引き立てています。
ダム下にも遊歩道があり堤体を見上げることができます。
ゲートのない石の壁は威圧感さえ漂います。
ダム下流にある建屋
こちらもびっしりと石。
ダム下の亜字池の噴水、これまた石張。
水面との落差を利用した自噴式噴水で、水質改善を目的に作られました。
石積の堤体が素晴らしいのはもとより、ダムの端から端まで至るところに石が張り付けられ恰も石のスワロフスキーの様相です。
天端高覧の割石の装飾。
堤体の管理用階段。
取水設備。
さらに河内貯水池には3基の橋梁がありそれぞれ近代化産業遺産及び近代土木遺産に選定されています。
これは中河内橋
石積のアーチ3連橋。
南河内橋
日本で唯一現存するレンズトラス(レンティキュラートラス)型式の橋梁でこちらは国の重要文化財。
ダムの見学に際しては当然ある程度予習はしてゆくのですが、実際に目の当たりにした河内ダムの石の装飾は想像をはるかに凌駕していました。
とにかく素晴らしいの一言!
これまで回ったダムの中から一つ選べと言われれば、ワタクシはここです。
3616 河内ダム(1103)
近代化産業遺産
福岡県北九州市八幡東区大蔵
板櫃川水系板櫃川
I
G
43.1メートル
189メートル
7000千㎥/7000千㎥
日本製鉄(株)
1927年
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