2016年1月1日 大滝ダム
紀の川水系では、戦後『十津川・紀の川総合開発事業』が策定されましたが、この事業は利水が主目的であり紀の川水系の洪水調節については手つかずのままでした。
ところが1959年(昭和34年)の伊勢湾台風により、紀の川流域で壊滅的な被害が生じ紀の川の洪水調整が喫緊の課題となりました。
そこで1960年(昭和35年)に『紀の川修正総体計画』が新たに策定され、その中心となったのが大滝ダム建設です。
しかし、ダム建設に向けては『西の大滝、東の八ツ場』といわれる激しい反対運動がおこり、着工後も貴重の遺跡の発見や試験湛水中の地滑り発生などにより、結果として事業開始から完成まで50年の年月がかかり、2012年(平成24年)にようやく竣工、日本の長期化ダム事業の代表例となってしまいました。
大滝ダムは紀の川の洪水調節のほか、奈良県北部および和歌山県北部への上水道供給、和歌山市沿岸工業地域への工業用水の供給、さらに関西電力大滝発電所で最大10500キロワットの発電を行っています。
吉野から国道169号線を南下、五社トンネルを抜けると目の前に大滝ダムが現れます。
地域住民の意向を取り入れ、ダム上端はアーチ橋を模したデザイン、天端の上もすっきりしています。
右岸にはカスケード方式の減勢施設があります。
天端は2車線が確保できる幅ですが一般車両は通行禁止。
対岸のケーブルクレーンはクロヨンでも使用されたもので、現在は展望台になっています。
カスケード方式の減勢工。
下流部
副ダムの下流に大滝発電所があります。
右岸から
日本で初めて油圧式クレストゲートを採用するなど、景観に配慮し天端からの突起をできる限り抑制しています。
天端高欄やバルコニーのデザインにも気を配っています。
左岸上流から。
半世紀をかけてようやく完成した大滝ダム。
それゆえ、今後予想される100年に一度の大水害にもこのダムが敢然と立ち向かってくれることでしょう。
今回元旦の訪問ということで、ダム資料館である『学べる建設ステーション』は休館中、ダム内部の見学も叶いませんでしたが、ぜひ再訪してじっくりと見て回りたいダムです。
(追記)
大滝ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
1579 大滝ダム(0165)
奈良県吉野郡川上村大字大滝
紀の川水系紀の川
FNWIP
G
100メートル
315メートル
84000千㎥/76000千㎥
国交省近畿地方整備局
2012年
◎治水協定が締結されたダム
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