ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

西畑ダム(再)

2023-01-21 18:38:49 | 宮崎県
2022年11月20日 西畑ダム(再)
 
西畑ダム(再)は左岸が宮崎県延岡市北方町下鹿川、右岸が同県西臼杵郡日之影町七折の一級河川五ヶ瀬川水系網の瀬川にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編整令により新たに誕生した九州電力は朝鮮戦争特需を契機とした電力需要急拡大に対処するため管内各所で積極的な電源開発を進めます。
網の瀬川では大正期に三菱鉱業(現三菱マテリアル)が黒原および梁崎発電所を稼働させていましたが、九州電力は両発電所上流で新たに水利権を獲得、1958年(昭和33年)に西畑ダム(元)及び新菅原発電所を建設し最大7500キロワットのダム水路式発電が開始されました。
しかし2007年(平成19年)台風5号による記録的豪雨でダム施設が大きく損壊、これを受け九州電力は2012年(平成24年)より十分なダム放流能力を確保するための再開発事業に着手し2016年(平成28年)に西畑ダム(再)が竣工しました。
再開発事業では、3門あったローラーゲートを撤去して自由越流にしたほか天端の嵩上げや堤頂長の延伸が行われました。
 
五ヶ瀬川から網の瀬川沿いに県道214号を約10キロ北上すると西畑ダム(再)に到着します。
ダムの敷地は立ち入り禁止ですが県道からダムと正対できます。

再開発によって3門あったローラーゲートは撤去され、全面越流式になっています。
堤高23.7メートルですが見た目は10メートルもありません。
基礎岩盤がかなり深いんでしょう。
また総貯水容量24万7000立米の貯水池は堆砂が進み有効貯水容量はゼロ、つまり堆砂率100%となっています。
取水ができればOKと言うことなんでしょうが、堆砂の放置は次なる水害の元凶にもなりかねません。

 
右岸の山道を辿るとダムのそばまで接近できます。


左の縦長のスクリーンが発電用の取水口。


上流にも遠望ポイントがあるようですが、私有地の農地に入るので自重しました。
ダムとは関係ありませんが、ダムに向かう途中には比叡山と言う花崗岩の岩峰が聳えており、これがかなりの絶景です。


有名なクライミングスポットのようで、福岡や関西ナンバーの車も止まっていました。
一方、西南戦争の際にはこの辺りで大激戦があり、敗北した西郷軍は鹿児島への退却を余儀なくされたそうです。

(追記)
西畑ダム(再)は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2820 西畑ダム(元)
左岸 宮崎県延岡市北方町下鹿川
右岸  同県西臼杵郡日之影町七折
五ヶ瀬川水系網の瀬川
17.8メートル
45メートル
247千㎥/85千㎥
九州電力(株)
1958年
----------------
3673 西畑ダム(再)(1949)
左岸 宮崎県延岡市北方町下鹿川
右岸  同県西臼杵郡日之影町七折
五ヶ瀬川水系網の瀬川
23.7メートル
87.5メートル
247千㎥/0千㎥
九州電力(株)
2016年再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム


コメントを投稿