ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

佐波川ダム

2017-07-28 12:43:24 | 山口県
2017年7月18日 佐波川ダム
 
佐波川ダムは山口県山口市徳地の佐波川本流にある山口県土木建築部が管理する多目的重力式コンクロートダムです。
山口・島根県境の仏峠付近に源を発し山口県中央部を南流して防府市街を経て周防灘に注ぐ佐波川は流路延長57キロの一級河川で、県下最大の防府平野をはじめとして流域は県下有数の穀倉地帯となっています。
一方で豪雨による洪水被害も多く、とりわけ1951年(昭和26年)7月の豪雨では流域で甚大な洪水被害をもたらしました。
そこで山口県は抜本的治水対策として現地点への治水ダムの建設を計画し1952年(昭和27年)から事業に着手しました。
しかしこの間、戦後の食糧増産対策による新規農地の拡大、沿岸部の休息の工業化進展に伴う都市用水や電力需要の増大などから総合的な河川開発を求める声が高まりました。
これを受け県は1953年(昭和28年)に『佐波川総合開発事業』を策定、佐波川のダム建設を治水ダムから補助多目的ダムに変更し、1955年(昭和30年)に竣工したのが佐波川ダムです。
 
佐波川ダムは佐波川の洪水調節、既得取水権として流域の灌漑用水への補給と適正な河川流量の保持、防府市・徳地町(現山口市徳地)地区の新規開墾農地への灌漑用水の供給、防府市の工業地域への工業用水の供給を目的としているほか、山口県企業局佐波川発電所で最大出力3500キロワットの発電を行っています。
 
中国道徳地インターから国道489号線を北上すると徳地野谷で佐波川ダムへの標識が現れます。これに従って市道を進むと佐波川ダムに到着します。
まずは下流から
クレストには2門のラジアルゲートが装備され、向かって左奥に管理事務所が見えます。
 
正面から
2門のラジアルゲートの左岸側(向かって右手)に自由越流式の細長い洪水吐が並ぶ珍しい形状。
ラジアルゲートの扶壁のコンクリートが新しくここは改修があったようです。
1955年(昭和30年)の竣工当時からこのゲート配置なのか?改修でこうなったのか?
 
アングルを変えて
洪水吐導流部の下の方や減勢工を見たいのですが、見える場所がありません。
 
ゲートをズームアップ
こうやってみるとゲートの扶壁のコンクリートだけ白く、明らかに改修があったことがよくわかります。
ゲート巻き上げ機は被覆されています。
 
上流面
対岸の取水塔は発電用。
 
管理事務所のすぐ下に巡視船用の浮き桟橋があります。
 
天端は車両通行可能です
1950年代のダムらしくゲート部分がクランクになっています。
 
減勢工
やっぱり利水放流設備などが見えません。
 
ダム湖(大原湖)は総貯水容量2460万立米。
 
天端左岸はトンネルになっており、ダム湖上流へと続きます。
 
佐波川ダムの完成により佐波川流域の治水利水は大きく改善しましたが、なお中下流部で計画を上回る出水が発生しました。さらに沿岸工業地帯の一段の発展に伴う人口増を受けて上水道および工業用水の新たな水源確保が必要となりました。
1966年(昭和41年)の新河川法制定により佐波川は一級河川に指定され、1981年に建設省(現国交省)により支流の島地川に島地川ダムが竣工し上記諸課題は大きく解決に向かいました。
現在は佐波川ダムと島地川ダムが連携して佐波川の洪水調節を行っています。 
 
 
追記
佐波川ダムには810万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに234万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2067 佐波川ダム(1085)
山口県山口市徳地
北緯34度16分37秒,東経131度39分19秒
佐波川水系佐波川
FNAIP
 
54メートル
156メートル
24600千㎥/21400千㎥
山口県土木建築部
1955年
◎治水協定が締結されたダム


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