ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

南相木ダム

2017-05-22 14:07:08 | 長野県
2017年5月20日 南相木ダム
 
南相木ダムは長野県南佐久郡南相木村にある東京電力リニューアブルパワーの発電用ロックフィルダムで、揚水式発電の神流川発電所の上部調整池として2005年(平成17年)に建設されました。
南相木ダムの堤頂標高は1532メートルで、それまで日本一高かった群馬県の野反ダムの1517メートルを抜き日本一高所にあるダムとなっています。
 
1960年代半ばから発電の主力は火力へと移り、さらに原子力発電の台頭もあり水力発電のシェアは低下する一方でした。しかしオイルショックによる原油高騰をうけて電力各社は水力発電に再着目、特に火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効に利用できる上に電力消費のピークに合わせて大出力の発電が可能な揚水発電に注目が集まりました。
東京電力管内でも首都圏への人口集中や臨海部への工場集積を受けて電力需要のピークが上昇、これに対応するために東京電力は揚水式発電所建設を積極的に展開、同電力7番目の揚水式発電所として建設されたのが神流川発電所です。
神流川発電所では上部ダムの南相木ダムと下部ダムの上野ダムの有効落差653メートルを利用して現在は最大94万キロワットの揚水式発電を行っていまが、その設計最大出力は282万キロワットでこれは揚水式発電としては世界最大規模となります。
当初の計画では2020年(平成32年)以降発電機を6台に増強して282万キロワットの発電を行う予定でしたが、東日本大震災を受けた原発運転停止を受けて増強計画は凍結されています。
上部ダムの南相木ダムは日本海に注ぐ信濃川水系、下部ダムの上野ダムは太平洋に注ぐ利根川水系となっており、上部ダムと下部ダムで県境および水系を超える揚水式発電となっています。
現実には漁業権および、既得取水権の関係で南相木川の水は発電には利用できないこと、さらに水系の異なる水が混合することで環境への悪影響の恐れがあるため南相木川の水はダム湖には流入せずバイパストンネルを経由してダム下に流下しています。ダム湖である奥三川湖の水は揚水された神流川の水となっています。
設計出力世界最大の揚水発電の上部ダム、さらに日本一高所にあるダムなどを考慮して南相木ダムは日本のダム100に選定されています。
なお2020年(令和2年)の東京電力ホールディングスの組織改編により南相木ダム及び関連発電施設はすべて同社の100%子会社である東京電力リニューアブルパワー(株)に移管されました。
 
小海町馬流から県道2号に入り、滝見の湯で南相木ダムの標識に従って南相木川沿いの道をひたすら東進すると南相木ダムに到着します。
まずは下流から
堤高136メートルの高さから堤体左岸の地山を流下する洪水吐導流部はそれ自体が巨大な滝のようです。
 
 
リップラップには石灰岩が使用され独特の白い堤体が南相木ダム最大の特徴です。
 
車道で右岸ダムサイトまで上がります
天端の標高1532メートルと標高日本一で正面には八ヶ岳が望めます。
 
上流面のロック材も石灰岩が使われています。
 
下流面。
 
ダム下はウズマクヒロバとして整備され独特の渦巻き模様は2006年(平成18年)のグッドデザイン賞を受賞しました。
 
ダム周辺は西上州から佐久に続く尖峰が連なる独特の風景が広がっています。
 
天端は歩行者のみ立ち入り可能
ダム湖を周回する遊歩道の一部になっています。
 
ダム湖(上三川湖)
正面左に発電所の取水口があります。
 
左岸の地山を蛇のように伸びる洪水吐導流部。
 
左岸洪水吐。
 
建設の際に使用された90トンダンプのタイヤ。
 
今回の南相木ダムの訪問により通算1000ダム訪問を達成しました。
2015年10月の栃木県小網ダムからスタートして1年8カ月目での1000ダム到達で、ほとんどダムに付き合ってくれた嫁さんに深く感謝したいと思います。
また各ダム訪問の参考となった記録を残していただいたダム愛好家諸先輩方にもお礼申し上げます。
 
3280 南相木ダム(1000)
長野県南佐久郡南相木村
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
信濃川水系南相木川
136メートル
444メートル
㎥/㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
2005年
◎治水協定が締結されたダム

綱木川ダム

2017-05-21 06:00:00 | 山形県
2016年6月18日 綱木川ダム
2017年5月18日
 
綱木川ダムは山形県米沢市簗沢の最上川水系綱木川にある山形県県土整備部が管理する多目的ロックフィルダムです。
1967年(昭和42年)8月の羽越豪雨の際には鬼面川流域でも甚大な洪水被害が発生、これを機に抜本的な治水対策を求める声が高まります。
県は1984年(昭和59年)に鬼面川総合開発事業を採択し鬼面川右支流綱木川への多目的ダム建設に着手、2007年(平成19年)に竣工したのが綱木川ダムです。
綱木川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで綱木川および鬼面川の洪水調節、安定した流量の維持と既得取水権への用水補給、置賜地域への上水道用水の供給を目的としています。
また河川維持放流を利用して山形県企業局綱木川ダム管理用発電所(最大出力450キロワット)で小水力発電を行っています。
 
最近人気急上昇の小野川温泉から県道233号を南下すると真正面に綱木川ダムが見えてきます。
ダム下は駐車場の完備の公園です。

 
下流に架かる県道233号からダムと正対できます。
3段構成の洪水吐減勢工と堤体のバランスが素晴らしく「カッコいい」ロックダムです。

 
2度目の訪問時は融雪放流をしていました。(2017年5月18日)
 
洪水吐ををズームアップ。

 
右岸ダムサイトにも大きな駐車場があります。
バスタブ型洪水吐と堤体上流面。 

 
洪水吐と取水設備。
総貯水容量は955万立米。

 
天端から見た洪水吐(2017年5月18日)

 
洪水吐導流部。(2017年5月18日)
 
堤体直下は公園とし整備されています
正面の三角錐の山(金毘羅山)がいいアクセントに。

 
天端は歩行者のみ開放。

 

 
2007年竣工と比較的新しいダムで周辺も公園として整備され素晴らしい環境です。
にもかかわらず人影はまったくありません。
近くには人気の小野川温泉もあるので、もっと観光スポットとして活用する手があると思います。
 
(追記)
綱木川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0451 綱木川ダム(0467)
山形県米沢市簗沢
最上川水系綱木川
FNW
74メートル
367.5メートル
9550千㎥/833千㎥
山形県県土整備部
2007年
◎治水協定が締結されたダム

日中ダム

2017-05-20 20:00:00 | 福島県
2016年5月28日 日中ダム
2017年5月18日
 
日中ダムは福島県喜多方市熱塩加納町熱塩の阿賀野川水系押切川にある福島県土木部が管理する多目的ロックフィルダムでです。
農水省による国営会津北部農業水利事業と福島県土木部の押切川総合開発事業によるダム計画が一本化され、農水省施工により1991年(平成3年)に竣工しました。
押切川の洪水調節、会津北部土地改良区への灌漑用水の供給、喜多方市への上水道の供給、日中発電所(福島県企業局から東北自然エネルギー(株)に移管)での最大1700キロワットのダム式発電を目的としており、完成後は福島県土木部が管理を受託しています。
農水省施工ですが、建設省(現国交省)の補助を受けていることから補助多目的ダムと言う括りになります。
 
国道121号線を喜多方から北上すると右手に日中ダムが見えてきます。
 
堤体下流から
1年ぶりに訪問すると融雪放流していました。(2017年5月18日)
 
放流をズームアップ。(2017年5月18日)
 
融雪放流をしている洪水吐を見上げます。
減勢工脇に日中発電所があり河川維持放流と発電所からの放流で虹がかかっています。(2017年5月18日)
 
天端は時間制限で開放されており、対岸高台にある展望台まで車で行けます。
 
上流面。
 
左岸に取水口と洪水吐があります。
日中ダムと書かれた上の高台が展望台です。
 
ダムの直下にはダム建設で移転した日中温泉があり、手前に『うつくしまふくしま』の文字が見えます。
 
洪水吐。(2017年5月18日)
 
右岸のインクライン。
 
高台から俯瞰します。
洪水吐は自由越流式。右手に予備ゲートが見えます。
 
同じ場所から広角で撮ってみました。
 
追記
日中ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0528 日中ダム(0418)
福島県喜多方市熱塩加納町熱塩
阿賀野川水系押切川
FAWP
101メートル
423メートル
24600千㎥/23100千㎥
福島県土木部
1991年
◎治水協定が締結されたダム

樽床ダム

2017-05-19 13:21:01 | 広島県
2017年5月8日 樽床ダム
 
樽床ダムは広島県山県郡北広島町の太田川水系柴木川最上流域にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化によって誕生した中国電力は、戦後の電力不足解消を目指し新たな電源開発を進めます。
太田川水系ではすでに戦前に本流に立岩ダム、滝山川に王泊ダムが建設されていましたが、まだ開発の手が及んでいなかった柴木川に1957年(昭和32年)に建設されたのが樽床ダムです。
ここで取水された水は導水路で下流の柴木川第一発電所に送られ最大2万4000キロワットの発電を、さらに柴木川ダムを経て柴木川第二発電所で最大6600キロワットの発電を行っています。
樽床ダムは立岩ダム、王泊ダムとともに中国電力の『太田川3ダム』と総称されています。
ダムは観光名所である三段峡の最上流部にあたるほか、ダム湖の聖湖畔には大規模なキャンプ場が設置されており夏や紅葉シーズンには多くの観光客が訪れる観光スポットにもなっています。
 
国道191号線の道戦峠付近から樽床ダムの標識に従って分岐を南西に進むとダム左岸に到着します。
左岸から下流面
 
上流面
取水設備が見えます。
 
取水設備の機械室建屋
ガントリークレーンのような建屋は同じ時期に改修された王泊ダムのそれと似ています。
 
柴木川第一発電所への導水管が堤体から直接出ています。
 
天端は車両通行可能。
 
右岸上流から。
 
ゲートをズームアップ
関電と見紛うようなブラックゲートも王泊ダムと共通。
 
堤体直下への道は立ち入り禁止でしたが、たまたま作業中だった職員さんにお願いしたらOKが出ました。
1950年代のダムらしく打設面がくっきり出ています。
 
下流から
クレストはラジアルゲートが2門
下の穴が利水放流ゲートになるようで維持放流が行われています。
 
ゲートをズームアップ
さすがにこの辺りは雪が多いと思われゲートピアには被覆された管理橋があります。
 
訪問したのが午後4時過ぎ、ちょうど作業を終えかけた職員さんが駐在しておられ、だめもとでお願いしたら立ち入り禁止のダム下や監査廊の中まで見せていただけました。
 
追記
樽床ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに1081万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1958 樽床ダム (0999)
広島県山県郡北広島町東八幡原
太田川水系柴木川
42メートル
261.2メートル
中国電力
1957年
◎治水協定が締結されたダム

王泊ダム

2017-05-17 16:31:43 | 広島県
2017年5月8日 王泊ダム
 
王泊ダムは広島県山県郡安芸太田町と北広島町の境界をなす太田川水系滝山川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1921年(大正10年)に広島電燈と広島呉電気が合併して誕生した広島電気は中国地方最大の電気事業者となり、太田川水系を中心に電源開発を進める中1935年(昭和10年)に建設したのが王泊ダムです。
戦中戦後の日本発送電時代を経て、1951年(昭和26年)の電力分割民営化により中国電力が事業を継承しました。
戦後の電力不足解消を目指し中国電力は新たな電源開発を進め、王泊ダムも滝山川発電所の能力増強目的のために1958年(昭和33年)に嵩上げ再開発が行われました。
王泊ダムで取水された水は導水路で滝山川発電所に送られ最大出力5万1500キロワットの発電を行っています。
また太田川流域で発電に使われた水は最終的に広島市上水道となるため実質的には広島市の上水道水源となっているほか、2005年(平成17年)の台風14号襲来の際には温井ダムと連携して発電専用ダムとしては異例の洪水調節も行いました。
 
王泊ダムはダム右岸を国道186号を通っておりアプローチは簡単です。ただし現在土砂崩れにより王泊ダム以南が不通となっているためダムの見学は上流側からに限られています。
ダム湖上流から
黒いラジアルゲートが3門、その右手に取水設備があります。
 
取水設備の上にはガントリークレーンのようなものが乗っていますが詳細は分かりません。
 
左岸のインクライン。
 
ダムの手前には古い吊橋の遺構があります。
 
ダム湖をまたぐ吊橋の遺構
ダム湖は仙水湖と命名され総貯水容量3110万立米の規模です。
 
ダム右岸を結ぶ橋から国道が通行止めのため、ダム本体に渡ることはできず上流からの見学にとどまりました。復旧のめどは立っていないようですが、いつの日か再訪のチャンスがあれば訪れてみたいと思います。
 
追記
王泊ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに1272万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1960 王泊ダム (0998)
広島県山県郡安芸太田町平見谷
太田川水系滝山川
74メートル
155メートル
中国電力
1935年竣工
1958年嵩上げ再開発
◎治水協定が締結されたダム

温井ダム

2017-05-17 13:56:30 | 広島県
2017年5月8日 温井ダム 
 
太田川は廿日市市の冠山を水源として広島県西部を蛇行しながら貫流し、広島市で瀬戸内科に注ぐ一級河川で、古くから洪水が多発する暴れ川で広島藩の時代からその治水には手を焼いていました。
明治以降広島には陸軍第5師団、呉には海軍呉鎮台が置かれ広島は軍用都市として発展、太田川下流部の治水は重要視されました。1935年(昭和10年)から内務省の直轄事業として太田川放水路の建設が始まり、戦争による中断をはさんで1965年(昭和40年)に完成、広島市を中心とした太田川下流部の安全度は大きく向上しました。
しかし、中上流部の洪水対策は河川改修にとどまるのみで中国電力の王泊ダム・立岩ダム・樽床ダムのいわゆる『太田川3ダム』も発電目的のため抜本的な洪水対策とはなりませんでした。
一方、広島は原爆投下から奇跡的な復興を遂げ自動車、造船など重工業を中心に大きく発展、人口急増もとどまらず平成に入ると広島市の人口はついに100万人を突破しました。1975年(昭和50年)に完成した土師ダムにより江の川水系から太田川への導水が行われていましたが、その効果もかすむほどの急速な水需要増加を受けて新たな水源確保が求められました。
 
そこで建設省は『滝山川総合開発事業』を計画し太田川支流の滝山川に多目的ダムの建設を決定、補償交渉に手間取りつつも1991年(平成3年)に着工、2001年(平成13年)に竣工したのが温井ダムです。
当初重力式コンクリートダムで計画されましたが、地質調査の結果アーチダムでの着工となり、温井ダムの堤高156メートルはアーチダムとしては黒部ダムに次ぐ日本第2位、また新潟県の奥三面ダムとともに現状日本で建設された最後のアーチダムとなっています。
温井ダムは太田川の洪水調節、既得取水権としての農業用水への補給と河川流量の維持、広島水道用水供給事業の水源として離島の江田島市、大崎大島町を含む5市5町村への上水道用水の供給を目的とするほか、中国電力温井発電所で最大出力2300キロワットのダム式発電を行っています。
 
今回は毎年4月から5月にかけて行われる温井ダム水位低下放流に合わせてダムを訪問しました。
右岸の駐車場に車を止めて放流前のダムを見学します。
右岸から。
 
減勢工。
 
左岸から。
 
天端は車両通行可能。
 
上流面
ダム湖(龍姫湖)はダム湖100選に選ばれています
総貯水容量は8200万立米。
 
クレストにはローラーゲートが5門
こちらは一般的なローラーゲートと異なり日本初の越流式ローラーゲートになっています。
写真はオープン状態ですが、ゲートを占める際には下方からゲートが上昇します。
さらにオリフィス、コンジットの予備ゲートが並びます。
 
左岸管理所前に展示された放流管。
 
エレベーターが開放され堤体直下も見学できます
利水次郎君。
 
下流から
堤高日本第2位のアーチは迫力満点
クレストにはローラーゲート5門
常用洪水吐としてホロージェットバルブ2門 ローラーゲート4門を装備しています。
 
 
水位低下放流の様子です
2門のホロージェットバルブから放流されます。
 
ゲート直上から見ると見事な虹がかかります。
 
 
できるならダム下からも放流を見学したかったのですが、15分間の放流ということで今回は虹が見られる天端からのみとなりました。
 
温井ダムの完成により太田川の治水能力は大きく改善しましたが、万全というわけではありません。
それは太田川本流上流部に治水目的のダムがないからです。
本流には戦前に建設された中国電力の立岩ダムがありますが、発電用ダムのため現在の滝山川の温井ダムだけでは太田川の治水は片肺飛行状態と言わざるを得ません。
本線上流部への新規ダム建設や立岩ダムの改修などの観測気球は上がりますが実現するには大きな時間がかかりそうです。
 
追記
温井ダムには4100万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに3921万4000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1991 温井ダム(0997)
広島県山県郡安芸太田町加計
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
太田川水系滝山川
FNWP
156メートル
382メートル
千㎥/千㎥
国交省中国地方整備局
2001年
◎治水協定が締結されたダム

滝本ダム

2017-05-17 13:02:09 | 広島県
2017年5月8日 滝本ダム
 
滝本ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川水系滝山川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化で誕生した中国電力は、戦後の電力不足解消や広島の復興に伴う電力需要の高まりに対応するため積極的な電源開発に乗り出し、太田川流域で新たなダムや発電所の建設を推し進めました。
左支流の滝山川では戦前に建設された王泊ダムが嵩上げされたほか流域で多数のダムや取水堰や発電所が建設されました。
滝本ダムも滝山川に建設されたダムのひとつで、1959年(昭和34年)に竣工し滝本発電所で最大出力20000キロワットのダム式発電を行っています。
また2001年(平成13年)に直上に温井ダムが完成、温井ダムの放流の際の逆調整池としても機能しています。
滝本はダムは堤高14.7メートルのため河川法上のダムとはならず、ダム便覧にも掲載されていませんが、ラジアルゲート4門を装備したその姿は紛いなくダムといえる雄姿です。
 
加計中心街から国道186号を北上して温井ダムへ向かい、『ダム下』への標識に従って旧道に入るとすぐに右手に滝本ダムが見えてきます。
管理橋のないゲートピアは中国電力独特のスタイルです。
 
左岸の排砂ゲートから放流が行われています。
 
多くの中国電力のダム同様天端は立ち入りできます。
 
貯水池のすぐ直上に温井ダムがあります。
 
上流から。
 
滝本ダム
広島県山県郡安芸太田町加計
太田川水系滝山川
14.7メートル
156.4メートル
中国電力
1959年

柴木川ダム

2017-05-17 10:56:48 | 広島県
2017年5月8日 柴木川ダム
 
柴木川ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川水系柴木川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化で誕生した中国電力は、戦後の電力不足解消や広島の復興に伴う電力需要の高まりに対応するため積極的な電源開発に乗り出し、太田川流域で新たなダムや発電所の建設を推し進めました。
太田川左支流の柴木川では源流部に樽床ダムが、板ヶ谷川との合流地点に柴木川ダムがほぼ同時に着工され、樽床ダムに先んじて1954年(昭和29年)に竣工したのが柴木川ダムです。
柴木川第1発電所の逆調整池として機能するほか、ここで取水された水は導水路で柴木川第二発電所に送られ最大出力6600キロワットの発電を行っています。
 
国道191号線を北上すると三段峡橋手前で左手に柴木川ダムが見えてきます。
おなじみ、中国電力特有の管理橋のないゲートピアと前面に張り出したゲート操作室という構図。
 
 
天端は立ち入り可能です。
 
ゲート操作室は横から見ると城郭の鉄砲櫓のよう。
 
ダム湖は総貯水容量23万1000立米
この奥は広島を代表する景勝地三段峡になります。
 
天端から
とにかく水がきれいなんです・・・・ここは。
 
右岸から
対岸に柴木川第二発電所への取水口があります。
 
天端高覧のアーチ状の抜き。
 
左岸上流から すぐ手前が取水口。
 
さらに上流から。
 
追記
柴木川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに21万8000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
3342 柴木川ダム(0996)
広島県山県郡安芸太田町川手
太田川水系柴木川
15.5メートル
104.9メートル
中国電力
1954年
◎治水協定が締結されたダム

鱒溜ダム

2017-05-17 09:59:23 | 広島県
2017年5月8日 鱒溜ダム
 
鱒溜ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川本流、立岩ダムの下流約4キロ地点にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
戦前の中国地方最大の電気事業者だった広島電気によって立岩ダムとほぼ同時に着工され1938年(昭和13年)に竣工しました。
上流の立岩ダムおよび打梨発電所の逆調整池としての役割を持つほか、ここで取水された水は導水路で土居発電所に送られ最大8000キロワットの発電を行います。
一連の発電施設とともに1939年(昭和14年)に日本発送電に現物出資され、戦後1951年(昭和26年)の電力分割民営化により中国電力が事業を継承しています。
 
今回は上流の立岩ダムから県道286号線を北上して鱒溜ダムへと向かいます。
ダムのずいぶん上流に土居発電所への取水口があります。
 
左岸上流から
全面越流式のダムです。
 
 
 
なんだか巨大なクジラが横たわっているかのようです。
 
右岸に排砂ゲートがありここから河川維持放流が行われています。
 
500メートルほど下流に行かないとダムの姿は見えません。
 
ズームアップ、というかトリミング。
継ぎ接ぎのコンクリートがこの川の厳しさを表しているようです。
 
追記
鱒溜ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに21万5000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1395 鱒留ダム(0995)
広島県山県郡安芸太田町吉和郷
太田川水系太田川
19.2メートル
98メートル
中国電力
1938年
◎治水協定が締結されたダム

立岩ダム

2017-05-16 20:19:28 | 広島県
2017年5月8日 立岩ダム
 
立岩ダムは広島県山県郡安芸太田町の太田川本流最上流部にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
広島県では広島電燈と広島呉電気が激しい電源開発競争を繰り広げていましたが、1921年(大正10年)に両者が合併し広島電気が誕生、中国地方最大の電気事業者となりました。
広島電気は太田川水系を中心に電源開発を進め1935年(昭和10年)の王泊ダムに次いで1939年(昭和14年)に竣工したのが立岩ダムです。堤高67.4メートルは戦前では7番目の高さを誇る巨大ダムで、打梨発電所で2万3600キロワット、さらに逆調整池の鱒溜ダムを経由して土居発電所で8000キロワット、計3万キロワット強の電力を生み出しその大半は呉の海軍工廠へと送られました。
しかし竣工直後に日本発送電が誕生し、立岩ダムおよび関連の発電設備はすべて接収されました。
戦後1951年(昭和26年)の電力分割民営化により中国電力が事業を継承して現在に至りますが、立岩ダムは滝山川の王泊ダム、戦後建設された柴木川の樽床ダムとともに『太田川3ダム』と呼ばれ広島の復興の下支えとなりました。
立岩ダムは戦前の巨大ダムということでその技術的価値からBランクの近代土木遺産に選定されています。
 
今回は廿日市市吉和から県道286号線を北上して立岩ダムに至りました。
ダム左岸の県道から俯瞰。
 
同じく天端を俯瞰
右岸に打梨発電所への取水口があります。
 
下流面。
 
ゲートの塗装工事が行われていますが天端への立ち入りは問題ありません。
左岸の照明は竣工当時のものでしょうか?
 
ずらっと並ぶ巻き上げ機。
 
フェンスの隙間から見た導流面。
 
ダム湖(竜神湖)は総貯水容量1720万立米。
 
右岸の取水口。
 
下流面。
 
上流から何とかゲートを撮影。
ゲート扶壁の並びが高暮ダムに似てるような・・・・。
 
塗装工事中のため落ち着いて見学できなかったうえに、下流からダムを正対することができません。
戦前を代表するダムのひとつでありながら、正面を見れないのが全国的な知名度が今一つ低い理由かもしれません。
 
追記
立岩ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに858万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1936 立岩ダム (0994)
広島県山県郡安芸太田町打梨
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
太田川水系太田川
67.4メートル
179メートル
㎥/㎥
中国電力(株)
1939年
◎治水協定が締結されたダム

飯ノ山ダム

2017-05-16 18:27:27 | 広島県
2017年5月8日 飯ノ山ダム
 
飯ノ山ダムは広島県廿日市市飯山の小瀬川源流部にある発電用アースダムです。
1932年(昭和7年)に広島に本拠を置いた広島電気によって建設され、日本発送電を経て1951年(昭和26年)の電力分割民営化の結果中国電力が事業継承しました。
飯ノ山ダムで水量調整された水は下流の栗栖川発電所取水堰で取水され導水路で栗栖川発電所に送られ最大出力2500キロワットの発電を行っています。
飯ノ山ダムは珍しい中央鉄筋コンクリート遮水壁式、つまりコンクリートコアのアースダムとなっています。
飯ノ山ダム以外では栃木県の東京電力の逆川ダムがコンクリートコアのアースダムとして知られています。
 
今回は国道186号線を北上し飯ノ山ダムに至りました。
MRC乗馬クラブの入口に入り、そのまま乗馬クラブの脇を抜けてダートの道を進むと飯ノ山ダム右岸に到着します。
洪水吐と上流面、左岸に斜樋が見えます。
 
洪水吐と飯ノ山貯水池
ずいぶん水位が低下しています。
 
右岸から上流面。
 
天端は立ち入り禁止。
 
洪水吐導流部。
 
 
下流面。
 
下流から。
 
堤体基礎部分は石積みになっています。
堤体直下に放流設備があり放流が行われています。
飯ノ山ダムから導水路で直接発電所に送水するわけではなく、水量調節して小瀬川に流下させ、下流の取水堰から発電所に導水路で水が送られます。
 
ダムの説明板
 
小瀬川の源流にある貯水池ということで高原感たっぷりですが、立ち入り禁止のため観光開発などの気配はありません。
 
追記
飯ノ山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに39万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1932 飯ノ山ダム (0993)
広島県廿日市市飯山
小瀬川水系小瀬川
18.5メートル
78.5メートル
中国電力
1932年
◎治水協定が締結されたダム

小瀬川ダム

2017-05-16 16:24:39 | 広島県
2017年5月8日 小瀬川ダム 
 
小瀬川ダムは広島・山口県境を形成する小瀬川中流域にある広島県と山口県が共同管理する多目的重力式コンクリートダムです。
江戸時代の広島藩・長州藩の時代から小瀬川の水をめぐる両者の争いは絶えず、それは維新後、広島県と山口県になってからも変わりはありませんでした。
しかし終戦直後に立て続けに襲来した台風による甚大な被害や、戦後急速に工業化が進んだ沿岸部の水需要の増大を受けて両県は1957年(昭和32年)にようやく『小瀬川総合開発事業』を策定、対立するダム建設地点や利水配分を建設省に一任する形で1964年(昭和39年)に完成したのが小瀬川ダムです。
 
小瀬川ダムは小瀬川の洪水調節、安定した河川流量と既得取水権への補給、広島・山口両県への工業用水の供給を目的とするほか、1989年(平成元年)には山口県企業局小瀬川発電所が増設され河川維持放流を利用して最大630キロワットの小水力発電を行っています。
小瀬川ダムは複数の都道府県が共同で管理を行う唯一のダムとなっており、広島県側にある管理事務所に両県の職員が駐在しています。
 
小瀬川ダムの完成後も小瀬川の洪水調整は万全ではなく、さらに水需要も一段と増加したため、1989年(平成元年)に小瀬川下流に建設省直轄の弥栄ダムが完成し、小瀬川の治水・利水は盤石のものとなりました。
 
国道186号線を北上すると小瀬川ダム左岸に到着します。
管理事務所でカードをもらった後ダムを見学します。
左岸から上流面 対岸にインクラインが見えます。
 
下流面。
 
左岸のこの建物は?
 
右岸のハウエルバンガーバルブ。
 
減勢工
右手は小水力発電の小瀬川発電所。
 
ダム湖は真珠湖 総貯水容量1140万立米。
 
天端は車両通行可能
対岸に見えるのが管理事務所 広島側にありますが広島・山口両県の職員が管理を行います。
 
下流からの展望スポットを探しましたが見当たりません。
ゲートの扶壁前面に階段が見えます。
 
何とかゲートが見える場所を見つけましたがこれが精いっぱい
青いラジアルゲートがさわやか。
 
弥栄ダムのように天端に県境を示す標識はありませんが、親柱に両県を示す銘板が埋め込まれています。
左岸は広島県。
 
右岸は山口県。
 
追記
小瀬川ダムには840万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに57万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2071 小瀬川ダム(0992)
左岸 広島県廿日市市浅原
右岸 山口県岩国市美和町釜ヶ原
小瀬川水系小瀬川
FIP
49メートル
158メートル
広島県・山口県
1964年
◎治水協定が締結されたダム

渡之瀬ダム

2017-05-16 15:02:36 | 広島県
2017年5月8日 渡之瀬ダム
 
渡之瀬ダムは広島県廿日市市大野の小瀬川水系玖島川にある中国電力の発電用重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化で誕生した電力各社は戦後の電力不足を解消するために積極的に電源開発を推し進めます。
中国電力も例外ではなく太田川や高梁川水系を中心に新たなダムや発電所の建設を推し進めました。
1956年(昭和31年)に完成した渡之瀬ダムもそんなダムのひとつで、ここで取水された水は約6キロの導水路で大竹市にある玖波発電所に送られ最大出力2万キロワットの発電を行っています。
 
今回は大竹インターから県道42号を北上、渡之瀬貯水池湖岸で国道289号に入り上流から渡之瀬ダムに至りました。
ダムサイトの駐車スペースに車を止めてダムを見学します。
まずは下流から
目につくのは中国電力独特の管理橋のないゲートピアと前面に張り出したゲート操作室。
二級ダムではじめてこのタイプを見たときは『なんじゃこりゃ?』と思いましたが、さすがにもう慣れてきました。
 
クレストには2門のローラーゲート
3本のゲートピアはカブトムシのようです。
 
右岸から上流面
ゲート手前の建屋の向こう側に取水口があるようです。
 
 
 
インクラインはなく、右岸に浮き桟橋に降りる階段が見えます・・・
??桟橋が見当たりません 笑
 
ダム湖は渡之瀬貯水池と呼ばれているようです。
浮き島が点在する貯水池は見た目さほど大きくなさそうですが、実は1042万4000立米もあります。
 
ダムの案内板。
 
追記
渡之瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに950万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1957 渡之瀬ダム(0991)
広島県廿日市市大野
小瀬川水系玖島川
34.5メートル
125.6メートル
中国電力
1956年
◎治水協定が締結されたダム

沓ヶ原ダム

2017-05-16 12:31:11 | 広島県
2017年5月7日 沓ヶ原ダム
 
沓ヶ原ダムは広島県三次市君田町の江の川水系神野瀬川にある発電用重力式コンクリートダムで、日本発送電により1941年(昭和16年)に建設されました。
1951年(昭和26年)の電力分割民営化により上流の高暮ダムともども中国電力が継承して現在に至っています。
高暮ダムや神野瀬発電所の逆調整池となっているほか、ここで取水された水は導水路で下流の君田発電所に送られ最大出力9620キロワットの発電を行っています。
 
松江自動車道口和インターから県道39号を西進、『道の駅フォレスト君田』で分岐を右折して神野瀬川沿いに県道457号を北上すると沓ヶ原ダムに到着します。
まるで表札のようなダムの銘板。
 
天端は立ち入り制限がありません。対岸で山道につながっていることから地元住民が山に立ち入る際の入口になっているようです。
 
ゲートピアを挟んで管理橋の左右両岸はトラス橋になっています。
 
ゲートピアとゲート操作室。
 
左岸の君田発電所への取水口。
 
ダム湖 総貯水容量は75万立米。
 
下流面
左岸から河川維持放流が行われています。
 
堤体直下から
中国電力ではおなじみのゲートピアの上に管理橋がなく、扶壁前面にゲート操作室が乗っかった構造
4門のローラーゲートを挟んで左右両岸は自由越流面になっています。
 
河川維持放流
もともとは排砂ゲートだったところを河川維持用に使っているようです。
 
ダムの案内図
どこの発電ダムでもこういうの置いてくれるわかりやすいんだけど・・・。
 
追記
沓ヶ原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに38万6000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1940 沓ヶ原ダム (0990)
広島県三次市君田町櫃田
江の川水系神野瀬川
19.5メートル
106.2メートル
中国電力
1941年
◎治水協定が締結されたダム

扇谷池

2017-05-16 09:38:00 | 広島県
2017年5月7日 扇谷池
 
扇谷池は広島県庄原市川北町にある灌漑用アースダムで、国兼池などとともに1953年(昭和28年)に農林省の事業で整備されました。
 
庄原市街から国道432号線を北上し、川北小学校前を右折、さらに突当たりを左折すると小さな橋の手前に分岐が現れます。
ここに車を置いて害獣防止柵を抜けると扇谷池の堤体直下に到着します。
 
扇谷池最大の特徴は堤体と洪水吐が離れている点です。
地図の赤線が堤体、黒丸が洪水吐となります。
 
一番上の写真の位置から先に進むと墓地に出ます。
墓地を回り込むと堤体の右岸側(北側)に洪水吐が現れます。
 
コンクリート製の立派な洪水吐は、これだけみると独立したコンクリートダムのようです。
 
越流面と減勢工。
 
洪水吐から堤体のほうに(南向きに)進むと斜樋があります。
ちょうど田植え時期ということでバルブが開かれています。
 
斜樋の先に堤体があります。
ここだけ見たら普通の溜池の堤です。
 
上流面はコンクリートで補強されています。
 
総貯水容量は29万5000立米と普通の溜池サイズ。
 
天端から
一番上の写真は下のカーブした道路から撮影しました。
 
当初池への入口が分からず地元の農家の方に道を尋ねると、案の定訝しがられましたが、溜池の調査をしていますというと親切に教えていただけました。
溜池の調査というフレーズはどこでも効果覿面です。
 
1952 扇谷池(0988)
広島県庄原市川北町
江の川水系川北川
17.5メートル
85メートル
管理者未確認
1953年