ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

津田川ダム

2021-06-02 17:30:14 | 島根県
2021年5月23日 津田川ダム
 
津田川ダムは島根県益田市大草町の益田川水系益田川にある洪水調節目的の重力式コンクリートダムです。
津田川流域では豪雨のたびに農地の冠水や流出が絶えず津田川の治水は流域農家の悲願となっていました。
そこで島根県は1967年(昭和42年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業に着手し1974年(昭和49年)に竣工したのが津田川ダムです。
津田川ダムは大原川流域の農地防災を目的としており、運用開始後は益田市が受託管理を行っています。
 
ダムは県道309号東仙道津田停車場線沿いにあり、津田川沿いに県道を進むと右手にダムが見えてきます。
自由越流式洪水吐1門のシンプルな構造。
 
下流面。
 
天端は立ち入り禁止。
 
錆びた鉄骨の遺構
バルブの開閉用か?はたまたゴミの引き上げに使ったのか?
 
親柱に諸元が記されており、竣工は昭和48年11月竣工と記されています。
 
上流面
貯水池は見えませんが、防災ダムということで普段は貯留はされていないようです。
 
県道沿いに建つ竣工記念碑。
 
裏面はダム建設に尽力した当時の土地改良区理事長渡辺亀一氏の顕彰碑となっています。
 
ダム便覧では1975年竣工となっていますが、ここでは現地記念碑に従い1974年竣工とします。


1748 津田川ダム(1635)
島根県益田市大草町
津田川水系津田川
28.7メートル
83メートル
340千㎥/305千㎥
益田市
1974年

八戸ダム

2021-06-01 16:15:22 | 島根県
2021年5月22日 八戸ダム
 
八戸(やと)ダムは島根県江津市桜江町八戸の江の川水系八戸川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、八戸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、江津市・大田市への上水道用水の供給、岩見臨海地区の工場群への工業用水の供給、島根県企業局八戸川第1発電所(最大6000キロワット)及び第2発電所(最大2500キロワット)での水力発電を目的として1976年(昭和51年)に竣工しました。
また2000年(平成12年)には河川維持放流を利用して最大240キロワットの小水力発電を行う八戸川第3発電所が増設されました。
もともと当地には八戸川第1発電所の取水堰である旧八戸ダム(八戸堰堤)がありましたが、新ダムに取り込まれる形で貯水池に水没しており、ダム水位が最低水位(堆砂位)を下回る渇水になると旧ダムが水中から姿をあらわすことがあるそうです。
 
江津市桜江町中心部から県道桜江金城線を西進し、八戸ダムの標識に従って八戸川沿いの南に進むとダムに到着します。
残念ながらダムを下流から正対できる場所はありません。
ダム下第2発電所への管理道路から。
クレストに3門のラジアルゲートを装備、このほか写真では見えませんが常用洪水吐としてコンジットゲート2門があります。
 
右岸から
堤体下にコンジットゲートが見えます。
左手の赤いゲートは取水ゲート。
 
赤が目立つ取水ゲート
コースターゲートになっています。
 
コンジットゲートのデフレクター。
 
水没した峡谷名から桜井湖と命名されたダム湖。
総貯水容量は2680万立米で島根県営ダムでは最大です。
 
右岸の艇庫とインクライン。
 
天端は車両通行可能。
 
ダム下の発電所。
 
上がダムと同時に完成した島根県企業局八戸川第2発電所
下の建屋が2000年(平成12年)に増設された河川維持放流を利用した八戸川第3発電所。
第2発電所には放水池があり、放流水は導水路で八戸川第1発電所に送られます。第1発電所停止中は放水池脇の余水吐から減勢工に戻されます。
この放水池が旧八戸堰堤の堤高と同じ高さになるようです。
 
上流面。
 
(追記)
八戸ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1749 布部ダム(1634) 
島根県江津市桜江町八戸
江の川水系八戸川
FNWIP
72メートル
151メートル
26800千㎥/23200千㎥
島根県土木部
1976年
◎治水協定が締結されたダム

波積ダム

2021-06-01 15:55:14 | 島根県
2021年5月22日 波積ダム
 
波積ダムは島根県江津市波積町本郷の江の川水系都治川に島根県土木部の事業で建設中の治水目的の重力式コンクリートダムです。
島根県は1973年(昭和48年)より都治川へのダム建設実施計画調査に着手、1994年(平成6年)に波積ダム建設事業が着手されました。
しかし公共工事見直し機運が強まる中、2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなります。
2013年(平成25年)に改めて事業継続が決定し、2019年(令和元年)より本体工事が着手され現在はコンクリート打設が行われています。
波積ダムは国交省の補助を受けた補助治水ダムで、ダム完成の暁には都治川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給を目的として運用される予定です。
 
波積ダム完成予想図(島根県土木部HPより)
 
江津から県道太田井田江津線を西進し波積町本郷に入るとダム建設の工事案内板が現れます。
 
ダム建設現場右岸側に『波積ダム展望台』が設置されています。
 
ダム軸標識。
 
 
展望台から俯瞰。
 
打設現場。
手前にプレキャストの監査廊が見えます。
 
継ぎ目なしで広範囲を一度に打設する拡張レヤ工法で打設しています。
 
 
1753 波積ダム(1633)
島根県江津市波積町本郷
江の川水系都治川
FN
48.2メートル
126メートル
3720千㎥/3240千㎥
島根県土木部
1973年波積ダム実施計画調査着手
2019年波積ダム本体工事着工

志津見ダム

2021-06-01 09:54:53 | 島根県
2021 年5月22日 志津見ダム 
 
志津見(しつみ)ダムは島根県飯石郡飯南町角井の斐伊川水系神戸川中流部にある重力式コンクリートダムです。
斐伊川は「ヤマタノオロチ」の起源とされるなど古くから暴れ川として知られ斐伊川の治水は当地を治める為政者にとっては永続的な課題となっていました。
建設省中国地方建設局(現国交省中国地方整備局)は斐伊川の尾原ダム、神戸川の志津見ダム、斐伊川から神戸川への斐伊川放流路、宍道湖・中海間の大橋川の流水疎通能力向上を四本柱とする『斐伊川・神戸川総合開発事業』を採択、2010年(平成22年)の尾原ダムに続いて2011年(平成23男)に竣工したのが志津見ダムです。
事業着手当時の神戸川は二級河川でしたが、斐伊川・神戸川一帯開発のため国交省中国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムとして建設され、神戸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、島根県への工業用水の供給、島根県企業局志津見発電所での最大出力1700キロワットのダム式水力発電を目的としています。
尾原ダム、志津見ダムに続き2013年(平成25年)の斐伊川放水路が完成により斐伊川流域の治水能力は大きく改善しました。
また2006年(平成18年)に斐伊川放水路が河川指定されたことで、神戸川は一級河川斐伊川水系に編入されました。
 
志津見ダム最大の特徴はクレストに全頂長自由越流頂方式を採用したことです。中小規模の発電用ダムなどで同方式を採用するケースはままありますが、堤高80メートルを超える大規模ダムでの採用は日本初です
同方式の採用で従来方式で必要だった天端橋梁などが省略されたことで建設費や維持管理費の削減が実現しました。
さらに取水設備においても連続サイフォン方式が採用され維持管理の省力化によりコスト削減が可能となっています。
 
志津見ダムは国道184号線沿いにありアプローチは簡単です。
出雲から国道を南下し、飯南町に入ると左手に志津見ダムが姿を現します。
全頂長自由越流頂方式の採用で、のっぺりとしてダムとしては『異形』とも言えるスタイル。
 
国道184号線が絶好の展望台です。
 
訪問前々日までのまとまった雨で、オリフィスから越流しています。
ちなみに非常用洪水吐である堤頂を超える越流は試験湛水時のみだそうです。
 
ダム下流のトンネル
建設時の仮排水路です。
 
ゲート部分をズームアップ
通常の三角のデフレクターの上に空気穴?用のスペードのようなデフレクターが並びます。
堤体から流下する水の帯は漏水ではなく、天端側溝の水抜き穴からのものです。
 
全頂長自由越流頂方式採用により堤頂部下流側は美しいRを描いています。
 
志津見ダムの全頂長自由越流頂方式一番の特徴は越流頂である天端が道路になっている点です。
下流側に側溝が設置され2枚上の写真の水抜き穴から排水される仕組みです。
普段は立ち入り禁止ですが、訪問時は地元大学の社会見学が実施されていました。
もちろん部外者であるワタクシは、指をくわえて眺めるのみ。
 
上流面。
 
上流から。
志津見湖と命名された貯水池は総貯水容量5060万立米ですが、神戸川に沿って細長く広がるためダム付近ではその大きさを実感できません。
 
上流面の姿も異質。
連続サイフォン取水方式採用のため、大規模ダムにもかかわらず取水設備も非常にコンパクトにまとまっています。
 
ダム湖上流にある艇庫とインクライン。
 
国交省中国地方整備局管理のダムでは新しい技術が積極的に導入されているように思いますが、当ダムでも全頂長自由越流頂方式や連続サイフォン方式の取水設備など志津見ダムならではの技術が多く見られます。
 
(追記)
志津見ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1762 志津見ダム(1632)
島根県飯石郡雲南町角井
斐伊川水系神戸川
FNIP
81メートル
266メートル
50600千㎥/46600千㎥
国交省中国地方整備局
2011年
◎治水協定が締結されたダム