1965年のF1メキシコグランプリの初勝利から51年目の今年。
ホンダF1のエンジン開発責任者、浅木泰昭さんは次のように語る。
「レースはホンダのDNAです。このまま撤退したら、若手エンジニアがダメになってしまう。何としても彼らに成功体験を積ませて、次につなげたいと思ったんです」。
1980年代後半から90年代前半にかけてはパワーのあるエンジンを武器にライバルを圧倒。1988年には年間16戦中15勝の快挙を成し遂げる。「絶対王者ホンダ」の活躍に、日本中が熱狂した。
ホンダが苦しんだ要因。それはリーマンショックによる業績悪化でF1から撤退している間に、レギュレーション(ルール)が大きく変化したことだ。
F1のレギュレーションは、「とにかく速く」から、ハイブリッドシステムが義務化され、「限られた燃料で、いかに速く走るか」に変わっていた。ホンダの技術は、この変化に追いついていなかった。
今シーズンのF1。ホンダはなぜ勝てるようになったのか。浅木さんは、組織の垣根を越え、いわば“オールホンダ”で取り組んだ成果だと打ち明ける。
ホンダが直面していた問題は、エンジンの主要部品の破損。1分間に最大で12万5000回回転する「シャフト」が、エンジンを動かすたびにめちゃくちゃに壊れていた。浅木さんたちだけでは、これをどうしても解決できなかった。
そこで浅木さんが相談したのは、ホンダジェットの開発チーム。何度試しても解決できなかったこの問題を、彼らは「1発で解決した」という。より耐久性が求められるジェットの技術が生かされたのだ。
縦割りの組織の壁を取り払い、ほかの部署からも協力を得たことで、完成度の高いエンジンを作り上げた。
出典 NHK ビジネス特集 「復活!“猛獣使い”が率いるホンダF1チーム」より抜粋