Ⅰ-6 電車通り

電車通りには人影もなく
仮想死体線路の上に寝る
光あれ！
まだ夜明けには遠い

Ⅰ-5 白鳥通り

白鳥通りには図書館があって
あなたはよくそこへかよった
図書館はワックスと
きんもくせいの匂いがする

Ⅰ-4 公園通り

公園通りには花売り
バラの花をくださいな
少女はつぼみを
その場で食べた

Ⅰ-2 少女

その街角さえ曲れば
少女が笑って
立っている
三日三晩

Ⅰ-1 鏡

幻想の街々よ
お前はどこに姿を隠したの
あそこ　ここ　お部屋の中
きのう鏡割ったの誰？

Ⅱ-12

笛吹きの奏でる笛の音が
聞こえぬようにと
少女の耳を
縫い閉じる

Ⅱ-11

ある日急に街の弁当屋が
増え始めた
あまりの増え方に
弁当を買う人よりも
売る人の方が多くなり
弁当屋たちはキャラバンを組んで
客を探しに旅に出た
キャラバンはまだ帰らない

Ⅱ-10

街中の階段の段数を全部数えてみようと
絵描きがある日思い立った
毎日毎日絵も描かずに
階段を数え続けた
見かねた女房は
ひょいと旦那をつまんで
絵の中に放りこんだ
今でも男は
数え続けている

訃報

5/17にチャコさんが亡くなった。

もう、われらの声は聞こえまいに
にこやかに手を振りて
漆黒の闇の中へ
きみを乗せた船は漕ぎ出しぬ

たしかに、遠くには
黎明が

Ⅱ-9

タンカーに火をつけたのは
僕の友だちだった
市の議事堂に火をつけたのも
僕の友だちだった
僕は何もせず
ただ汽車の通り過ぎるのを
見ているだけだった