今はほとんど演劇にかかわっていないので、演劇について書くことがないので、本の感想ばかりが増えています。
4月20日で退職したので、暇だけは依然と比べてぐっと増えましたが、このコロナ禍で演劇活動はほぼ自粛状態。ボランティアすらできません。
そろそろコロナの規制も解けてきたので、お手伝いも可能なのですが、頭が演劇脳になっていないのも事実です。
あと、演劇に対するイメージが年々変化していて、自分の思考が古くなっているのではないかという危惧もあり、途中までできている脚本も完成できないでいます。
というわけで、当分本の感想が続くかもしれません。今までは、読んでも書くのが面倒だったので、たまにしか読んだ本のことを書いていませんでしたが、この社会状況ではできることも限られているので、自分自身の記録として残そうと思っています。
それから、秋亜綺羅さんのあきば詩書工房より月間「ココア共和国」が出版されています。
詩の投稿雑誌ですが、275円という格安の電子版もありますので、詩に興味のある方はリンクを覗いてみてください。
講談社ミステリーランド第1回配本の高田崇史の作品。
あらすじは講談社BOOK倶楽部より
京都の中学に転校してきて3ヶ月、天童純に友だちはいない。純の胸には生まれた時から赤紫色のふしぎな形をしたあざがあった。ある日、いじめっ子に追いかけられるうち、純は東山の麓ふかくに建つ古びた寺に迷い込み、密教僧・源雲によって時空を超え平安の都に飛ばされてしまう。胸に勾玉の形をしたあざがある純こそ封印された龍・オロチを解きはなち、鬼を退治するべく選ばれた者だという。桃太郎、一寸法師……。彼らはなぜ鬼を退治するのか。鬼とはいったい何者なのか!?
先に「神の巻」を読んでしまったので、大体の話は読めていたのだが、やはりこっちを最初に読めばよかった。歴史観は面白く、ギリシャ神話の古い神を新しい神が滅ぼす話と共通しているといえる。
アニメーションになっているということなので、そっちを見てみたい。描写が、あまり細かくない分、アニメの原作としては良い作品だったのではないだろうか。
ミステリーランドは、これで全巻読了。コロナで外出自粛の中、図書館が結構ぎりぎりまで開館してくれ、まら、警戒解除を受けてすぐに再開してくれたから読めたのだと思います。
全部読んだ感想では、「神様ゲーム」の結末が呪いのような、読後感で一番印象が強かったですが、子供向けとはとても思えませんでした。大人でも子供でもとなると、「虹果て村の秘密」と「黄金蝶ひとり」がお勧めです。
講談社ミステリーランド第15回配本の菊池秀行の作品。
あらすじは講談社BOOK倶楽部より
主人公「オレ」は喧嘩の達人の中学3年生。 今日の決闘の舞台は、東京都下SM市にあるSM城の十万石城址、相手は雇われたプロ喧嘩屋2人組ということで、少々分が悪い。てなわけで、「オレ」は退散し城跡の武器庫にうまく逃げ込む。 とそこには、なぜか見慣れた面々が…。
イケメン・丹野、文学少年・能登、そして美少女として名高い斉藤文。みな同じ中学の同級生だ。どうやら、おのおのわけありで、この城跡の武器庫に潜んでいる模様。そのうち丹野が口を開いた。
「ここにはSM一族が貯めこんだ時価数千億円の埋蔵金が隠されているんだ」
一攫千金を夢見て、オレ達の宝探しが始まった!
ミステリーではないですね。完全に冒険ものです。鈴木康士の表紙絵の少女が魅力的なのだが、中の挿絵は手抜きかなと思わせる感じだった。
設定と展開が阿保すぎて、笑えるのだが、子供時代に読むとこれぐらいが、いいのかもしれない。
講談社ミステリーランド第1回配本の殊能将之の作品。
あらすじは、講談社BOOK倶楽部より
団地に住む、少年ショウタと親友トモヤ。トモヤは学校に行かずに、部屋に籠もって本ばかり読んでいる。そんな彼がするのは、いつも奇妙なつくり話。団地に住む魔女の話や、子どもの国を支配する残酷な王様の話……。だが、ある日ショウタは、トモヤが言ったとおりの格好の男を目撃する。まさか、子どもの王様は実在した!?
評価が難しい作品です。子供が読むには難しいような気もするし、大人が読むと途中で結末が読めてくるような、中途半端な面がある作品かもしれません。
ショウタのお母さんのサオリさんが、なかなかいい味のキャラクターで、作品が暗くなるのを救っています。
小学生の感想を読みたい気がします。
講談社ミステリーランド第13回配本の加納朋子作品。
あらすじは、講談社BOOK倶楽部より
父の転勤で北九州の社宅へ引っ越して来た高見森(たかみしん)。同じ社宅に住む子どもたちと仲良くなるにつれ、彼らがある秘密を共有していることに気づく。そして「パック」と呼ばれる謎の少年には、ある役割があった――。理不尽な想いを抱える仲間を守り、仲間に守られながら生きる少年少女たちの、清々しく明るい物語。
いいあらすじを探しましたが、見つかりませんでした。自分で書くのもめんどくさいので、いつも引用でごまかしているのですが・・・。
謎のタイトルは途中で解明されます。基本は子供たちの友情物語ですが、マークトゥエインの『トム・ソーヤーの冒険』の、現代版かもしれません。続編があるとすれば、「ハックルベリー・フインの冒険」のような作品が期待されます。
講談社ミステリーランド第4回配本の西澤保彦作品。
あらすじは講談社BOOK倶楽部より
菅野智己は母が再婚した4年生の頃、突然、眠りに就くことで猫の身体に乗り移れるという不思議な能力を持った。身体を借りている猫にジェニイという名前をつけ、巨大なセントバーナード犬のピーターと友達になった智己が6年生のとき、クラスメイトを含め3人の女子児童が襲撃されるという事件が発生し、1人が重態に。昨年秋に、同じく町内で起きた女子児童誘拐未遂事件の犯人と同一人物の仕業のようだ。被害者の共通点は、智己の義理の姉久美子さんが家庭教師だということ! 智己はジェニイになって、ピーターとともに事件を調べることにした。
ポールギャリコの「ジェニイ」という小説へのオマージュ、と作者自身が書いている。ポールギャリコの小説は読んだような読まなかったような、記憶があいまいだ。
お話として読めば、楽しめる作品かもしれない。ただ、大人のコーナーに置くのではなくヤングアダルトか子供向けのコーナーに置いておいて欲しい作品だった。
麻耶 雄嵩の小説で、本格ミステリ大賞受賞作。前作「神様ゲーム」の続編ともいえる作品だが、単独で読んでも全く違和感がない。大体前作は講談社で、本作は文芸春秋だ。
殺人事件が連続して起きる話なのだが、推理は当たっているのか当たっていないのかよく分からない形で進行していく。
まあ、前作よりも後味は苦くないので、この作品だけが漫画化されたのもわかる気がする。
こういうのを、心理ホラーミステリーというのだろうか。さりげなく打たれた布石が、なるほどそうだったのかと、思わせるのだが、一つ疑問なのは、こういうのを本格的ミステリーというのだろうか?
お勧めはお勧めです。
東京創元社のミステリーシリーズの一冊で、ファンタジーミステリーと銘打っている。
昭和40年代の後半にSFブームがあり、小松左京の「日本沈没」がベストセラーになるなどしたため、中間小説雑誌がSF特集を組み、なんでもSFを付ければ売れる、と言われたことがあった。
今は逆で、SFは売れないから、ファンタジーなのだろう。
内容的にはパラレルワールドの世界がどうなっているのかを、男女の愛を絡めて描いたものであり、「活版印刷三日月堂」の雰囲気とはだいぶ異なっている。
ストーリー的には面白いのだが、ロジックが時々不明瞭になるのだが、それはファンタジーだから許されるのだろう。
出だしが少しスローで、途中まで来ると読みやすくなる。SFが好きな人にはお勧めです。
宮崎勤の事件を連想させるような、少女誘拐+性暴行+殺人事件の14年後という話ですが、面白いけど、こういう結末か、という感じで、「まあ仕方がない」と呟いて本を置きました。
ただ調べてみたら、2000年に逮捕された高山正樹事件というのがあり、こちらは殺人はしていないものの被害者が100人以上という、とんでもない事件で、おまけにほとんどの行為をビデオ撮影してして残していたようです。宮崎勤のビデオはほとんどが普通のTV番組だったようですから(死体を撮影したのはあったらしい)。
人は思いがけないいろいろな面を持っているようです。
ナボコフさんはどう思って、「ロリータ」を書いたんでしょう?スタンリーキューブリックの映画は駄作でしたけど。
西加奈子の織田作之助大賞受賞作。
読み始めてしばらくは、しんどかったので、読み終わるのに結構時間がかかりました。手先は器用だけれど生き方は不器用で、どうしようもない中年男と、ニューヨークへ行ってしまった男を待つだけの時間を過ごしている太めの女の話なのですが、ラストに行くにしたがって、盛り上がります。
でも、愛は難しいです。愛の話なんて、書けるのかな。