貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

名古屋市笠寺観音②芭蕉存命中に唯一建立の遺跡!

2024-07-03 09:30:01 | 日記
令和6年7月3日(水)
名古屋市笠寺観音②

 この碑は、
貞享4年(1687)11月、
寺島安信宅での歌仙
「星崎の
  闇を見よやと
    啼く千鳥」
の巻が、満尾(まんび)した記念に
建てたもの。
 文字は芭蕉の筆、
裏面には連(れん)衆(しゆう)の名、
側面に興行の年月が刻んである。     
 これは、芭蕉存命中に建てられた
唯一の翁(おきな)塚(づか)であり、
俳文学史上希有の遺跡といってよい。
 碑の表には
「千鳥塚 武城江藤散人 芭蕉桃青」
と記載。

 桃青は芭蕉の別号。
他に坐興庵、栩々斎(くくさい)、
花桃園などがある。
 高さ43センチ、幅27センチ、
厚さ12センチの
緑がかった自然石。

 さて、「笠寺千鳥塚」建立の秘話。
「尾張の医師、丹羽以之は、
ここ笠寺観音の宿坊に宿泊。
 寝床に就くが、先程、
師匠の各務支考先生に言われた言葉が、
頭の中を去来して、眠れない。」
「日常の平易な言葉で
おつくりなさいと申したのに、
感情を露わに表現してどうしますか」
「自然の花をよく愛しなさいと
申したのに、
『美しきかな』と、
抽象化して読むとは、
何ごとですか」
 師匠が、
何を言おうとしているのか。
 師匠について三年になるというのに、
丹羽以之には、
未だに、俳諧が理解できない。
 丹羽以之は、
寝床をそっと抜け出て、
障子を開く。
 静かに縁側に立ち、
空を見上げたのだが、
満月の夜だというのに、
月は雲に隠れ、
星も一つとなく、
浜風だけが、
以之の衣の裾を抜けていく。
 「この句を、じっと考えてみなさい」
との師匠の言葉だが、
じっと考える以之の頭の中を、
ふと、師匠の宗匠である芭蕉
の句がよぎる。
~つづく。