貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

「めぐらす」より「かほらす」

2021-03-21 15:15:48 | 日記

「めぐらす」より「かほらす」

令和3年3月21日(日)

 桜があっという間に満開に!

 ちょっと早いよ。

愛でるひとときを・・・・!

 先日、川柳に、

「手招きの桜に、

   今はあかんねん」。

 コロナの災禍で、桜の下で

新たな同僚と愉しんだ頃が懐かしい!

 さて、出羽三山。羽黒山。

有難や 

  雪をかほらす 

      南谷
 元禄二年作。

 前書き

「羽黒山神社本坊で歌仙興行の

行われた時の発句。」

 暑い夏の道を行くと、

雪の香りのように冷たい風が

吹いてきた。

 何と嬉しい天の恵みであろう。

暑さのさなかにあって、

涼しさの恵みを感じる。

 ありがたいお山の姿だ。

ここ南谷には残雪を薫らせて

心地よい風が吹き渡っている。

 初句は、

 有難や 

  雪をかほらす 

      風の音

   山の雪が香り高い、涼しい風を

送ってくれてありがたいと思った。

 しかし、芭蕉は推敲。

 雪の涼しさは自分ひとりだけに

恵まれるのではない。

 そこで、

「かほらす」を「めぐらす」に

替えてみる。

有難や 

  雪をめぐらす 

     風の音

  しかし、「めぐらす」より

「かほらす」のほうが、なおはっきり

とした山の恵みが表現されている

のではないか。

 涼しい風には、香りがあるもの

だから、この方が暑さを超える恵み

と見える。

 しかし、これでは、羽黒山の

イメージはない。

 そこで、できたのが最終句。

有難や 

  雪をかほらす 

      南谷


「つかむ」は荒っぽい!

2021-03-18 16:24:20 | 日記

「つかむ」は荒っぽい!

令和3年3月18日(木)

 最初の句は、

早乙女に 

 しかた望(のぞま)ん 

     しのぶ摺

  早乙女に力点があって、

はっきりしている割に風趣に乏しい

かな。

 乙女の姿に眼にいくのを

「乙女の手の動き」に絞る。

 そして、推敲次の句。

早苗つかむ 

  手もとやむかし 

     しのぶ摺

 しなやかな乙女の手の動きと

しのぶ摺とが響き合って、

なかなか面白い。

 ところで、早苗はつかむもの

なのか。

 つかむはどうも荒っぽい感じが

しないでもない。

 そこで、「つかむ」を「とる」に

替えてみる。

 結果、最終句となる。

早苗とる 

  手もとやむかし 

     しのぶ摺

お見事!!!


夏の句、忍ぶ摺は?

2021-03-15 17:25:16 | 日記

夏の句、忍ぶ摺は?

令和3年3月15日(月)

 羽村の小作の堰の桜が開花。

やはり早い!

 散歩の楽しみも倍加!

 気が早いか、芭蕉の夏のく句。

 早苗とる 

  手もとやむかし 

     しのぶ摺

  「しのぶずり」は、福島で産出

した染色の布。

 布を石の上に当てて、シノブグサ

の汁をすり込んで染めたそう。

 ここで、忍ぶ摺が行われたのも

昔のこと。

 せめて早苗とる早乙女の手つきに

その当時の所作を偲ぶとしようの意。

 元禄二年おくの細道での作。

 古今集の源 融の歌 

「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに

  乱れむと思ふ我ならなくて」

が芭蕉に影響。

 曽良が書きとどめた最初の一句は、

早乙女に 

 しかた望(のぞま)ん 

    しのぶ摺

 どのように推敲されていくか、

乞うご期待!


助詞ひと文字の差異

2021-03-14 17:00:57 | 日記

助詞ひと文字の差異

令和3年3月14日(日)

山も庭に 

 うごきいるゝや 

     夏ざしき

   夏座敷とは、庭に面して風通し

のよい夏向きの座敷のこと。

 前書きに、

「秋(しゆう)鴉(あ)主人の佳景に対す」

とある。

 秋(しゆう)鴉(あ)主人とは、

弟子翠桃の兄である。

 この座敷から眺めると、新緑の山が

動いて庭に入ってくるように感じられ、

とても心地よい、

という挨拶句。

 元禄二年の作である。

 伊勢物語77段の

「山も更に堂の前に動きいでたる

ように・・・」

の影響も考えられる。

 吃驚するような一句。

 庭の中に山が動いて入ってくる

という、ほんとに力強さを

感じさせる夏の一句。

 初句は、

  山も庭も 

 うごき入るゝや 

     夏座敷

   山と庭が並列され、

両方とも動き入るとは、

夏山の素晴らしさが十分に表現

されていない感じ。

 そこで、添削。

平仮名一文字で、すっかり違った

句となった。

 芭蕉の推敲のセンスは至上!!


滝の表裏

2021-03-13 14:21:20 | 日記

滝の表裏

令和3年3月13日(土)

 三月は「去る」。

 あっという間に中旬。

 今日は久しぶりのひがな一日雨。

 雷も遠くで微かに・・・・。

 春雷か。

 今日は日光裏見の滝。

 十数年の願いが叶ってから既に3年余?

 ひとり旅を満喫。

 

 工事をしていたなあ。

 これが裏見の滝。

 ここが滝の裏側、即ち内側

 芭蕉はここから眺めたのだ。

 残念、無念!至極だ!!!

 さて、芭蕉、初出の句は、

ほととぎす 

  へだつか 

    滝裏表

   この句は、杉風宛ての曽良の書簡

に記載されていた句。

 時鳥の声を、滝の裏表で違っている

というだけで、あまり面白味は感じない。

 「へだつ」と「裏表」の意味が

二重に濃くしていて、句の奥行きも・・・。

   そこで、仕上がりの句は、

ほととぎす 

  うらみの滝の 

   うらおもて

となる。

 流石である。

 うらみが、恨みの意味も・・・!