母に勧められて読んだ本が衝撃的で面白かったので、紹介します。
堤未果さんという方の本「沈みゆく大国アメリカ」
アメリカの皆医療保険制度、通称オバマケアについて、それによってもたらされた現状と制度の中身を説明し、警笛を鳴らしています。
沈みゆく大国アメリカ (集英社新書) | |
堤 未果 | |
集英社 |
わたしは、「皆医療保険」素晴らしいじゃないか、オバマさんはさすが! と捉えていたのですが、本に寄ると中身は全然異なっているようです。 皆医療保険と言っても、日本の制度のような国がサポートするものではなく、民間企業が運営をするもので、ウオール街と保険会社を始めとする企業が顧客を金づるとして収益をどんどんあげていく・・・ という怖い現状が記されていました。
もうね、本当に怖いですよ。
・保険に入っていても、保険会社は何かと理由を付けて保険金を支払わない
・医療保険が民間のため、医師は保険会社にこの治療をしても良いか、と聞いて承認を得ないと治療ができない(保険会社のコールセンターでは数件に1件は断るようノルマが課せられている)
・薬価が高く、薬を買えない。
・ある弁護士によると、自己破産のうち医療費による医療破産は半数以上(ある方がガンで亡くなった時の最終債務は9000万円!)
・訴訟大国なのでお医者さんの保険料はとても高く、年収が2000万円、保険料が1750万円、収入250万円・・・。ひどくない?
本によると、保険会社の元社員が政府に入り込み政策に関わったそう。
メディケイドという低所得者向けの保険制度が作られた時、保険会社から政府に入って政策に関わった人がいた。彼女は保険会社の利益が出るような政策作りに貢献。そして会社に戻り重要ポストにつく・・・。 その後オバマケア法案の骨子を作るとき、彼女はまた政府に入り、日本やカナダの様な国がサポートする保険制度(単一支払い医療制度)の可能性をとりはずし、そして保険会社や薬業界が稼げる政策を作る。 そして政府を退いて多額の報酬とともに薬会社の重役ポストに座る・・・
こわくないですか・・・? こんなことあるの!?怖い!!
わたし、その薬会社の日本法人で働いた事があるのですが、そういえば、羽振り良かったなぁ。ちょうどオバマケアが出来たころだったなぁ・・・。 ディズニーリゾートでやった大掛かりなお疲れ様会なんて、楽しかったけど、アメリカ人の血と涙を犠牲にして得た収益によるパーティだったのかなぁ(日本法人だけど) とか思ったら、気分がどーーん。
頭の良い人たちが、なぜ、社会を良くするために動こうとしないのでしょうか。
自分のした事で多くの人が苦しむ行動より、
自分のした事で多くの人が救われる行動のほうが、
人々も自分も満たされるのに。
まあ本は、ある一人の人の目線で切り取ったものの見方ではありますが、こういう事実があるという事を知らなかったので、とても勉強になりました。 オバマケア、日本のような制度だと思っていたよ。
作者が危機感を募らせているのは、アメリカ型医療が日本に輸入されようとしている事。政治家は興味を持っているらしく、実験的に企業型医療が成されている所もあるそうです。たとえばアメリカの小売企業が医療を提供している病院などでは、儲からない患者さんは病院から断られるとか・・・。
「日本のこの仕組みは必ずあるものではなく、失われるかもしれない物なんだ」 筆者はこう書いています。
他国がうらやむ日本の仕組みを守るべく、一人一人が意識を高めていくことが必要なんですね。「この仕組みは必ずあるものではなく、失われるかもしれない物なんだ」という事を、わたしたちが認識して、考えて行動をし、今後の日本という国を作っていきたいです。
アメリカを「愛してやまない国」と呼ぶ著者。 彼女にこの本を書かせる事になった原動力の裏には、アメリカへの愛があるようにも思います。続編も出ているそうなので、読もうかな。
沈みゆく大国アメリカ (集英社新書) | |
堤 未果 | |
集英社 |