吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

A・E・ヴァン・ヴォークト『非(ナル)Aの傀儡』創元SF文庫(新版)2016年3月25日初版発行

2017-09-15 18:28:48 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護

 以前感想を書いた『非(ナル)Aの世界』の続編です。



 『非(ナル)Aの世界』では偽の記憶を植え付けられた主人公ギルバート・ゴッセンが『自分はいったい何者なのか?』を探求するストーリーでした。
 その続編って!?『前作でギルバート・ゴッセンの主体が明らかになって一応の解決をみたのに、この後どうやって続けるんだ?』という疑問が湧くのは当然でしょう。

 今回はまったく趣を変えて自分に備わった『予備脳』の力を引き出せるようになった主人公が活躍する波乱万丈のストーリーになりました。何といっても『予備脳』の力を解放したゴッセンは瞬間移動できるようになってしまったので(人間の肉体という限界はあるものの)ほぼ無敵です。落下するエレベーターから瞬間移動で脱出()したり、毒が入っている(かもしれない)グラスを相手と入れ替えたり、できちゃうンです。

 しかし油断大敵火がボウボウ・・・『』の工作員の仕掛けた罠に陥ったゴッセンは別の惑星の牢獄へと転送されてしまうのですが、その途中で(なぜか)ゴッセンの意識だけが、敵の傀儡アシャージン殿下の肉体に移されてしまう。『』はゴッセンを捕らえたつもりだったが、牢に送られたのは意識のない抜殻の肉体だけだったという訳です。

 アシャージン殿下の躰を通して大帝国の内幕と戦争の背景を理解するゴッセンだが、時間の経過とともに、これが『何者かに仕組まれた出来事』だと確信する。『自分はクイーンのような強力な駒には違いないが、どこかにこれを操るチェスの指し手がいるはずだ』と。
 それで今回の題名は『非(ナル)Aの傀儡(かいらい)』となった訳です。

 だいたいの相関図を作ってみました。


 前作でも地獄巡りの案内役だったパトリシア・ハーディーとその夫エルドレッド・クラングが登場して重要なカギを握ってます。
 前作ではパトリシア・ハーディーは連盟大統領の娘だったはずですが・・・細かいことは気にしない(いいのか?)。
 前作とは一転して、肩の力を抜いて楽しく読める娯楽大作になっちゃいました。