吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

梅原猛『中世小説集』新潮社 / 1993年5月25日発行(今回は前半!)

2019-01-22 07:42:36 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 先日物故した哲学者梅原猛氏は既存の枠組に囚われずその活躍は多方面に亘った。
 これは小説家としての氏の一面を示す一冊。中世の怪異譚に多方面からの該博な知識と近代人の思考を加味して新しい物語に仕立てた一冊です。軽く読めるので『梅原文学の入門書として最適では』と思います。


※梅原猛『中世小説集』新潮社 / 1993年5月25日発行(→後半はこの文字列をクリック!)

その1.首
 怪談『舞首』をもとに二振りの刀をめぐる争いとその結末を描いたもの。
 古墳から出土した大量の鉄器を鋳直して作られた鉄の柱は地頭の妻と交わり、妻は鉄の玉を産みおとす。その玉から造られた刀は近づけただけで人の首を切り落とす力を持っていた・・・。

※舞首は神奈川県真鶴町に伝わる妖怪。互いに首を切り落とした三人が首だけになっても争い合う。

その2.長谷雄の恋
 鬼との双六勝負に勝った紀長谷雄(きのはせお)は、絶世の美女を譲り受ける。鬼の出した条件は『今日から百日の間はこの女を抱いてはならぬ』というものだった・・・。

※当時の双六は現代でいうバックギャモン、サイコロの運に加えて相手の進路を塞ぐ頭脳戦が勝敗の鍵を握る。

その3.おようの尼
 観想念仏の修行を極めた僧のもとに現れた物売りの尼の存在に僧の心は千々に乱れていく・・・。久米仙人を彷彿とさせる話。

※久米仙人は洗濯する女の脚を見て通力を失い、空から墜ちてその女を妻にする。

その4.福富物語
 道祖神に願掛けした夢占いのおかげで巨万の富を得る老夫婦。何とその方法は妙なる調べを聴かせるオナラ芸だった・・・。オナラ芸とはいっても世阿弥の理論に基づいて構築!?・・・音階を響かせていると最後に『』が出る!?いやいや・・・落語のようなオチが待っています。

※世阿弥は独自の理論で夢幻能を完成させ、集大成した。