映画「敵」を観てきました。
妻に先立たれ、今は引退して独り暮らしをする老教授のアタマの中に敵が棲みつく・・・毎日の収入と支出を計算し、預貯金が底をつく「Xデー」を計算して毎日を過ごす老教授・・・最初はパソコンの迷惑メールに現れた「敵」のひと文字・・・パソコンがウイルスに乗っ取られ壊ていくのと並行して、老教授の妄想は膨らみ、ついには妄想が現実に取って代わり、悲劇的な結末を迎える・・・そんな映画です。
最初は老教授の日常が丁寧に描かれます。ご飯を炊いて、シャケの切り身を焼き、丁寧に盛り付けて食事をし、洗い物や洗濯までこなす。まことにマメな生活で独り暮らしのお手本のような生活です。
だんだん妄想が激しくなると、老教授の生活の質が極端に落ちてきます。ご飯がカップ麺になり、最後は菓子パンの袋を手に持って齧るようになってしまいます。
「ああ❗最初日常を丁寧に描いていたのはこれを示すためだったのね❗」と観ているわれわれに分かるようストーリーは実に緻密に組み上げられています。
しかし、そこは筒井康隆原作だけあって一筋縄ではいきません。妄想がエスカレートして、最初は「日常あるある」だった出来事が不穏な事態にまで、だんだんと変質していく過程が見ものです。思わず失笑してしまいます。
この映画を観ると「臨終に備えて身辺整理をキチンとしなくちゃイカンなー❗」としみじみ思いました。まさに「メメント・モリ(死を忘れるな)」です。必見の映画です。
「老いる」ことは様々なものを喪失していく過程ですから、失う前の今を大切に生きて行きましょう。
あ、老教授行きつけのバーでマスターの姪ごを演じている河合優実さん。テレビ「不適切にも程がある」でヤンキー役をこなしていた方ですね。これから伸びる女優さんだと確信しました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます