ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

上原ひろみ@ブルーノート東京

2009-12-29 13:28:22 | ジャズ
上原ひろみ / PLACE TO BE

12月27日、ブルーノート東京へ上原ひろみを観に行ってきました! 私が観たのはこの日の2ndショー。「プレイス・トゥ・ビー」日本ツアーの最終公演であり、上原ひろみにとって今年最後のライヴ。最高でした! 生々しく躍動する彼女の動き、表情、音色。まるで彼女の身体の奥底から音楽が沸き上がるようで、その現場を間近で堪能してまいりました。


先日のサントリーホールは後方の席だったので、今回は出来るだけ近くで体感したいなと、気合いを入れて朝から並びに行ったんです。そのかいあって上原ひろみの表情や体の動き全てが目の前で見える最前列をゲット出来ました。見えないのは手元だけ…。肝心の鍵盤捌きだけはピアノ本体の陰になって見えないという席。でもピアノを弾けない私が彼女の指の動きを見ても仕方ないな、みたいな感じでそこは無理矢理納得することに…。って言うかこんな良い席で贅沢は言えません。

さて、上原ひろみが登場。フロア後方から客席の間をぬって、拍手喝采を受けながらステージへ向かってきます。ブルーノートはこの登場の雰囲気が良いですよね。そしてピアノの前に立つ上原ひろみ。近い!! ほとんど手を伸ばせば届くような距離です。こんな近くで上原さんのライヴを観るのは同じくブルーノートでのチック・コリアとのデュオ公演以来です。

狭いクラブ公演ということもあり、熱狂的なお客さん達が集まったようで、彼女を迎える拍手や歓声には、期待とか、感謝とか、愛とか、そんな熱い物がギューっと込められてるような盛り上がり。まさにホームグラウンドでサポーターに囲まれたライヴのよう。まだピアノに触る前から上原さんの瞳はうるうるしてる感じ。だいたい涙もろいと言うか、感激やさんなんですよね。でもその多感さが彼女の演奏スタイルに刺激を与えてるんだろうとも思います。

1曲目は「I’ve Got Rhythm」。先日のサントリーホール公演と同じ曲でスタート。サントリーホールの時は、いかにもホールに響いた音、って感じで、ピアノというよりホールが鳴っている音を聴いてるような印象でしたが、今回は目の前にピアノがあるわけですから、ダイレクトにピアノの鳴りが耳に入ってきます。あのサントリーホールのピアノの音は本当に素晴らしかったですし、その響きで上原さんの演奏を聴けたのは幸せの極致でした。ですが上原さんらしい切れ味のあるアタック感や左手が繰り出すファンキーなグルーヴ感はやはり今夜の方がビンビンに伝わってきました。この曲の後半も凄かった! 音の跳ね方が半端ありません。

次は「Green Tea Farm」だったかな? 実は今回はメモを取らずにライヴを観ていたので、曲目についてはよく覚えてないんです。すいません。記憶にあるのは「Green Tea Farm」、「Islands Azores」、「Berne Baby Berne」、「Desert On The Moon」、「Pachelbel's Canon」など。数曲では曲の頭に即興っぽい演奏を入れたりしていましたね。でやっぱりどの曲でもその集中力と言うか“入り方”が凄い。いや凄まじい。特に「Berne Baby Berne」のようなアップテンポの曲でのどんどんアヴァンギャルドに入っていく様が圧巻。まるで何かの限界を目指すかのようにアグレッシヴに入っていく。これでもか!と入っていく。そしていよいよ限界値に達したときの爆発力! その瞬間に観客がドワー!!っと沸く。それまで固唾を飲んで見守っていた観客達が一斉に「ヒュー!!」だの「ギャー!!」だの歓声を上げるんです。この一体感はクラブならではでしたね。

「Green Tea Farm」のような静かな曲も最高でした。特にスモーキーなトーンを絞り出すよう弾く時の彼女の感情移入はことのほかブルージーで惹き込まれました。まるで曲と一体化したような彼女のしっとりとした表現力に、会場全体が溶け込んで行くかのようでした。そして曲が終わり、最後の低音がスーっと消え行くまで待っての大喝采。騒ぐ時は騒ぐ、聴く時は聴く、という意識の高いお客さん達も素晴らしかったですね。

緊張感の高い曲が続くなか、「Pachelbel's Canon」は独特の“間”を活かした緩いグルーヴとじゃれ合うよな感じで弾いてたのが印象的でした。そんな上原さんに対し、客席からは自然と手拍子が。それとこの曲はピアノの弦に何か金属の棒のような物を乗せてミュートするのですが、ミュートというより金属的な共鳴を得ている感じで、ちょっとチェンバロのような響きがするんです。たぶんその棒の置き方によって毎日響き方が変わってくるのだと思われるのですが、その微妙なニュアンスを、上原さん自身も楽しんでいるような表情をしていました。

そして本編ラストは「Viva! Vegas」の3部作。左手が産み出すハネたリズムが最高な「Show Cuty, Show Girl」、続くメロウな「Daytime In Las Vegas」も素晴らしかったですが、やはり最後の「The Gambler」でしょう。冒頭のルーレット(スロット?)を表現したパートでは照明もぐるぐる回るといういきな演出。観客も手拍子やらかけ声やらで当たりを願う。2回はずれたあと3回目で大当たり。やんやの喝采の中ジェットコースターのようなスピーディーな曲へとなだれ込む。この瞬間が圧巻でした。さらにこの曲も左手のリズムが驚異的。バウンシーにうねりながらどんどん加速していく感じ。もう堪りません。終わったあとはスタンディングオベーション。

アンコールは異例の3回! 1回目は「Brain Training」。予定ではここで終わりだったのでは?と思えるのですが、その後も拍手が鳴り止まない。再び登場した上原さんはもう涙をこらえきれない様子。そのまま「Place To Be」へ。高揚したアンコールでもスローでは最後の一音の余韻まで堪能して大拍手。そしてそのまま拍手が鳴り止まない。流石に一部のお客さん達は帰り始めたようでしたが、熱狂的な方々は諦めない。もう仕方ない雰囲気を感じさせつつ上原さんが戻って来る。歓喜に包まれる会場。彼女はステージに足を一歩踏み入れた瞬間にピアノに駆け寄り、飛びつきざまに「The Tom and Jerry Show」。ロックでした!

終わったあと、時計を観たら22時55分。開演予定時刻が20時45分でしたから2時間越えですか? 2部制のブルーノートにしては長丁場でした。といっても開演時間は多少押してたようですし、2度目と3度目のアンコールの間には相当な時間が流れてましたけどね。10分ぐらいは拍手し続けてたのではないでしょうか?

上原さんの演奏はいつでも素晴らしい。即興主体ながらはずれはない。そしてピアノを弾く上原さんと、それを聴く観客達の間に、気持ちの上でのコール&レスポンスが確実にある。サントリーホールでの広い会場を巻き込んでいく高揚感も素晴らしかったですが、それとはまた違う、狭い空間ならではの親密な一体感がまた、素晴らしいライヴでした。

さて、今後の活躍がますます楽しみな上原さん。来年はどんなスタイルでの演奏を聴かせてくれるのか? 今回のピアノ・ソロでは、上原さんが根源的に持っているようなポリリズミックに跳ねるリズム感を実感したので、そんなリズムに重点を置いた作品を作って欲しいな~なんて思ったり。



~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 09.12.19 上原ひろみ@サントリーホール
 09.09.11 上原ひろみ@表参道ヒルズ
 08.12.28 @有楽町(上原ひろみ ジャパン・ツアー・ファイナル@東京国際フォーラム)
 08.09.02 東京JAZZ2008まとめ、その1
 08.08.25 @東京JAZZ2008(上原ひろみ at 丸ビル)
 08.08.21 東京JAZZ2008予習:上原ひろみ
 08.06.07 上原ひろみ(5月31日新宿タワーレコード&「BEYOND STANDARD」)
 08.04.29 上原ひろみ(CHICK COREA & HIROMI / DUET) 
 07.12.31 「ルーツな日記大賞07」第1位:上原ひろみ 
 07. 9.27 チック・コリア&上原ひろみ@ブルーノート東京 
 07.09.03 上原ひろみ結婚! 
 07. 8.06 フジロック07 第2位(HIROMI'S SONICBLOOM@オレンジコート)
 07. 7.26 フジ予習:上原ひろみ(「TIME CONTROL」) 
 05. 8.25 フジロック05 第4位)