ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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グラミー・ノミネート:ロバート・プラント

2011-02-13 20:09:26 | ルーツ・ロック
ROBERT PLANT / BAND OF JOY

もうすぐグラミー賞!ってことで今回は『Best Solo Rock Vocal Performance』部門です。気になるノミネートは以下の通り。

Eric Clapton / Run Back To Your Side
John Mayer / Crossroads
Paul McCartney / Helter Skelter
Robert Plant / Silver Rider
Neil Young / Angry World

ロック・ヴォーカル・パフォーマンスと言うことで、ジョン・メイヤー以外はベテラン勢が並びましたね。グラミーらしいと言ってしまえばそれまでなんですが、素直にベテラン勢の活躍を喜びたいですね。しかもこのベテラン勢のなかに違和感無くジョン・メイヤーも収まってる感じで、もちろん良い意味で! ちなみにクラプトンの「Run Back To Your Side」は最新作「CLAPTON」からデルタっぽいギター・リフが印象的な曲。ジョン・メイヤーの「Crossroads」はもちろんロバート・ジョンソンというよりクリームのあれ。ポール・マッカートニーはビートルズ曲を多く含んだライヴ盤「GOOD EVENING NEW YORK CITY」から。ニール・ヤングについては先日書いたばかりなので興味のある方にはそちらを読んで頂くとして、今回は前回の予告通りロバート・プラントです!

実は私、ツェッペリンよりパープル派なんです。なのでプラントよりギラン派です。ま、どうでもいいですね…。で、ロバート・プラントについては、ツェッペリンの1枚目と2枚目ぐらいまではホント凄いシンガーだと思います。あの頃のプラントは大好きです。でもあの頃あまりに凄すぎたためか、その後急激に喉が衰えていった印象。それでもあの唯一無比の歌声だけで、最後までツェッペリンをツェッペリンたらしめていた存在だったとは思っています。

でも逆に、だからこそツェッペリンが解散した後、その存在感がかえって足枷になっていたとも思います。私もなんだかんだ言ってツェッペリンは全てのアルバムをかなりの頻度で聴いてきましたよ。でもロバート・プラントのソロ作はほとんど聴いてないんですよね。やはりあまりにもツェッペリンの影が大きいのと、どうしても全盛期の凄みと比べちゃうとっていうのがあって…。

そしてあのアリソン・クラウスと組んだ前作「RAISING SAND」ですよ。当初はなんでロバート・プラントがアリソン・クラウスと?って思いました。でも聴いてみたら、これが案外良かったんですよね。ですけど、やはりプラントの声はプラントそのものですし、そこにはツェッペリンの幻影と言うか船影が見え隠れする。でもそれを含めて、アリソン・クラウスの美声とT・ボーン・バーネットの幻想的なサウンドが独特の魅力を醸している。しかもこのアルバムはプラントにグラミー賞の2つの主要部門を含む5部門の受賞をもたらしました。これで一気に時の人となったプラント。ある意味、このグラミー受賞がプラントをツェッペリンという足枷から解き放ったとも言えるかもしれませんね。

そんなプラントが「RAISING SAND」の次にリリースしたのが「BAND OF JOY」。プロデュースにはプラント自身と共にバディ・ミラーが名を連ねる。古くはエミルー・ハリスのバック・バンドでならしたギタリストですが、現行アメリカーナ・シーンのキー・パーソンの一人といても良いでしょう。彼は「RAISING SAND」に伴うプラントのツアー・バンドに参加していましたから、その流れで今作への参加となったんでしょうね。

で、この「BAND OF JOY」、プラントの歌が良いんですよ! 「RAISING SAND」の成功からさらに一歩を踏み出した瑞々しさが感じられますし、現在のプラントならではの旨味と言うか、プラントだからこそ成せる味わいが、彼独自の世界観を描いている。また独特の“揺れ”と“広がり”を持つバディ・ミラーの歪んだギターがプラントの歌声によく絡む!さらにバック・ヴォーカルを務めるパティ・グリフィンのしっとりと溶け込むようなハーモニーも絶品。

ロス・ロボスの「Angel Dance」から始まり、リチャード・トンプソンの「House Of Cards」、そしてバーバラ・リンの「You Can't Buy My Love」やケリー・ブラザーズの「falling in love again」までカヴァーするセンスも秀逸。さらに「Cindy, I'll Marry You Someday」や「Satan Your Kingdom Must Come Down」といったトラッドを取り上げているあたりも相当深い。この2曲でのプラントの歌唱にも引き込まれますね。これはディープですよ! またこれらの選曲やアレンジが醸すルーツ解釈も見事。

そして今回『Best Solo Rock Vocal Performance』部門にノミネートされた「Silver Rider」。これはLOWという、近年米インディ周辺でスロウコアとかサッドコアなんて呼ばれているシーンの中核的なバンドの曲。このアルバムの中ではかなり異色な選曲だと思うのですが、その異色さも含めて今作の印象を決定付けている曲でもありますね。バディ・ミラーの幻想的なギター・プレイと、ロバート・プラントの低音&パティ・グリフィンの高音が溶け合いながら、ねっとりと空間を浸食しつつ独特の高揚感を帯びていく。歌自体は至って淡々としていますが、それが逆に何かを語ってくるんですよね。こういう歌唱をパフォーマンス部門にノミネートしてくるって、やっぱり流石はグラミー賞!

ちなみに、パティ・グリフィンはバディ・ミラーのプロデュースで昨年ゴスペル作「DOWNTOWN CHURCH」をリリース。こちらは今回『Best Traditional Gospel Album』部門にノミネートされています。

グラミー・ノミネート:ウィリー・ネルソン

2011-02-13 14:24:54 | カントリー
WILLIE NELSON / COUNTRY MUSIC

もうすぐグラミー賞、今回は「ルーツな日記」的に避けては通れない『Best Americana Album』部門です。気になるノミネート作品は以下の通り。

Rosanne Cash / The List
Los Lobos / in Can Trust
Willie Nelson / Country Music
Robert Plant / and Of Joy
Mavis Staples / You Are Not Alone

ジョニー・キャッシュを父に持つロザンヌ・キャッシュの最新作「THE LIST」は、ブルース・スプリングスティーン、エルヴィズ・コステロ、ジェフ・トゥイーディー、ルーファス・ウェインライト達をゲストに向かえたバック・トゥ・ルーツなカントリー作品。バックの暖かいサウンドもさることながら、ロザンヌの穏やかな中にもハリのある美声が良いですね。 特にスプリングスティーンとデュエットしたドン・ギブソンの「Sea Of Heartbreak」が素晴らしい!

ロス・ロボスの最新作「IN CAN TRUST」も流石のアルバムですね。スタジオ作としては通算14作目だそう。やっぱりこのゴツゴツとした感じのギターが良いですね。全体的にラティーノなやさぐれた哀愁を感じさせる作風の中、ガレージなラテン・ブルース・ロックとでも呼びたい「Do The Murray」が、彼等らしいスパイスが効いてて私は好きですね~。

メイヴィス・ステイプルズの「YOU ARE NOT ALONE」。先のロザンヌ・キャッシュの作品にも参加していたウィルコのジェフ・トゥイーディーがプロデュース。アラン・トゥーサンの「Last Train」なんかカヴァーしてます。あとCCRの「Wrote A Song For Everyone」とか。やはりゴスペルに根ざしたメイヴィスの歌声は素晴らしいですね。

そしてロバート・プラント。バディ・ミラーが全面参加した力作なんですが、実はこの部門でプラントとウィリー・ネルソンのどちらを取り上げようか迷ったんです。で、結局プラントは次回に回すことにしました。という訳で今回の注目はウィリー・ネルソンです。


ウィリー・ネルソン、カントリー界の大レジェンドですね。普通、これ程の人なら寡作になってもおかしくはないのですが、近年も充実した作品を次々にリリースしているから凄いです。盟友アスリープ・アット・ザ・ウィールと組んでウェスタン・スウィングを取り上げた前作「WILLIE AND THE WHEEL」も素晴らしかったですが、最新作「COUNTRY MUSIC」も流石の傑作。プロデューサーはT・ボーン・バーネットですからね。このアルバムが『Best Country Album』部門ではなく『Best Americana Album』部門にノミネートされている所以はその辺りにあるのかもしれません。

ウィリーのペンによるオリジナル「Man With The Blues」で始まり、トラディショナルを初め、マール・トラヴィスの「Dark As A Dungeon」や、レイ・プライス「You Done Me Wrong」、ハンク・ウィリアムスの「House Of Gold」などカントリーの名曲を取り上げているこのアルバム。バックはアコギ、ベース、バンジョー、マンドリン、フィドルなど、アコースティックな楽器が中心、そして肝はドラムレスであること。デニス・クロウチのベースを中心に土の温もりを感じるリズムが素晴らしい! バンジョーやマンドリンが奏でる朗らかなブルーグラス的音色に、バディー・ミラーのエレキ・ギターがアウトローな香りを注入する。この辺りのさじ加減は流石はT・ボーン・バーネットですね。

バック・メンバーは楽曲によって必ずしも一定ではないのですが、例えばフィドルでスチュアート・ダンカン、バンジョーにはライリー・ボーガス、ハーモニカにミッキー・ラファエル、マンドリンにはデル・マッコーリー・バンドのロニー・マッコーリーなど、名手が揃っていてる。バック・ボーカルにはジム・ローダーデイルも。彼等が奏でる土っぽくも麗しいカントリー・タッチが素晴らしいですね。名曲「Satisfied Mind」や「I Am A Pilgrim」の味わいなどは特に格別。またウィリーの渋みと甘みがブレンドされたような歌声がまた滲みるんですよ~。

一方で「Satan Your Kingdom Must Come Down」や「Nobody's Fault But Mine」などが与える、暗い陰影がこの作品を濃厚なものにしています。このブルージーな味わいは堪らないものがありますね。ウィリーの歌がまた深い! さらにアル・デクスターの「Pistol Packin' Mama」が微妙にリズム&ブルースっぽい味を醸していることも効いていますね。やはり一口にカントリー・ミュージックと言えど、それを一つの作品として立体的かつ奥行きのある作品に仕立て上げるT・ボーン・バーネットの手腕には恐れ入りますね。そしてそれを独自の語り口で自分の世界に昇華させるウィリー・ネルソンにも脱帽。