ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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プリシラ・アーン@ビルボードライヴ東京

2012-07-22 10:09:14 | SSW
PRISCILLA AHN / NATURAL COLORS

7月18日、ビルボードライヴ東京にてプリシラ・アーンの来日公演を観てまいりました。15日のミッドタウン東京、16日の渋谷タワレコに続いて今回3回目のライヴ。とは言え前2回はアコギ弾き語りのミニ・ライヴでしたから、もちろんこのビルボード公演がメイン・イベントな訳です。

私が観たのはこの日の2ndショー。整理番号1番だったので、最前列ど真ん中にて、まさにかぶりつき。実はビルボードの最前列って、ステージに近すぎてアーティストを見上げる感じになってしまうので私はあまり好きではないのですが、この日ばかりは迷わず最前列に座りました。だってプリシラ・アーンですから!!

さて、そのプリシラ・アーン、観客の拍手に包まれながらステージに登場。オーガニックな白いワンピースを着た姿はまるで天使。マイクの前に立ち「デイドリーム・ビリーバー」を歌い始める。バックはピアノだけ。静まり返る会場に波紋のように響くプリシラの声は神秘的。そして間近に見る彼女の表情はあまりにも美しく、遠くを見つめるような視線にただただ吸い込まれていく。これぞプリシラ・アーン! この1曲目だけで今夜は素晴らしいライヴになるに違いないと確信しました。

バンド・メンバーが加わっての2曲目「やさしさに包まれたなら」。前半の少し低い歌声が何処かアンニュイな表情を浮かばせる。清涼感と憂いの狭間を揺れながら風のように吹き抜けていくプリシラの歌声。彼女の歌う日本語ってホント美しい。最新CD「NATURAL COLORS」で聴かせてくれるサウンドを見事に生バンドとして再現したバックの演奏も素晴らしかったですね。ミッドタウン東京でのイベントではアコギ弾き語りで聴かせてくれたこの曲ですが、やはりバンド・ヴァージョンも良いですね~。

続いて「サヨナラCOLOR」、「風の谷のナウシカ」、「帰れない二人」、「ばらの花」と、新作「NATURAL COLORS」収録曲を立て続けに披露。前2回のミニライヴでは両日ともラストに演奏された「サヨナラCOLOR」が早くも序盤で登場したのには驚きました。「風の谷のナウシカ」では途中ちょっと歌詞を間違えてしまったのか、一瞬躓きかけて残念そうな笑みを浮かべる。そんな姿もただただ可愛い。ウクレレを持って歌った「帰れない二人」も良かったですね~。そして曲が終わる度に「ありがとうございます」と照れ笑いを浮かべるプリシラ。ライヴでこれだけ多くの日本語詩を歌うというのは彼女にとってはチャレンジだったでしょうね。しかも曲間のMCもほぼ全て日本語ですから。「ばらの花」の前には「次の曲はギターを持たずに歌うのでとても不安です」みたいなことを喋り、さらに「手を隠すポケットもありません」「私の不安な歌を楽しんでください」とジョークも飛ばす。

そして始まった「ばらの花」。ご存知くるりの人気曲。プリシラには珍しいロック調に観客から手拍子が聞こえてくる。それにプリシラも嬉しそうに反応し、間奏に入ると自身も手を叩きながらリズムに揺れる。こういうプリシラも新鮮!! そして曲が終わるや否や感嘆した表情で「すっご~い!」と囁いたり。なんだかんだでその仕草や表情がいちいち可愛いプリシラ・アーン。バンド・メンバーのジョークにもその度にカラカラと楽しそうに笑う。その笑い声がまた可愛い!!

そして可愛い以上にアーティストとしての類い稀な魅力を放つプリシラ・アーンですが、今回のプリシラは特に良い!! 昨年の来日公演は、当時の新作「WHEN YOU GROW UP」のようなパステル色のポップ感を感じさせるステージでしたが、今回のプリシラは一言で言えば“フォーキー”。それはプリシラがアコギを弾くからとかそう言うことではなくて、サウンド全体のムードの話。ドラムのビートを含めたバック・バンドの柔らかいグルーヴ、それに包み込まれるようなプリシラの歌声は、いつも通りのナチュラル・ピュア・ヴォイスでありながら、いつになく物憂い表情も見せる。このバンドとプリシラの歌声、両者の醸すケミストリーが“フォーキー”なんです。「やさしさに包まれたなら」や「ばらの花」ですら“フォーキー”。いや、そういったリズムが顕著な曲の方が返って“フォーキー”だったかもしれません。おそらくプリシラの歌う日本語が“フォーキー”な雰囲気にプラスしていたんだと思います。日本語詩特有のメロディーやリズムに対して素直な譜割が、プリシラのナチュラル・ヴォイスによって本来の日本語以上の情緒を感じさせてくれるようで何とも不思議でした。その情緒こそ“フォーキー”。やはりプリシラの歌声は魔法です。もちろん素朴な白い衣装に黒髪のロングヘアーというプリシラの可憐な姿も“フォーキー”そのものでしたけどね。

さて、ステージは一度バンドがはけて、プリシラ一人による名曲「Dream」。「NATURAL COLORS」には日本語詩を含む新ヴァージョンが収録されていますが、ここでは英語ヴァージョンを歌っていました。そしてフットスイッチによる一人多重コーラスはやはり幻想的な雰囲気を醸します。プリシラの透明な声が重なる美しさは言わずもがな。さらに自分のコーラスをバックにプリシラがハーモニカを吹く不思議なトリップ感。あの間奏が堪らなく好きです。もちろんこのフットスイッチによる一人コーラスは、この曲に限らずプリシラの音楽性にとってなくてはならない要素。デビュー時からこの技で話題になっていましたが、そのサウンド的効果が普遍的に美しい故に、今もってまったく色褪せません。そして「In A Tree」。ここで初めて「NATURAL COLORS」には収録されていない曲。ですが数々の人気曲がある中、アコギのフィンガー・ピッキングが美しいこの曲が選ばれているあたり、やはりムードは“フォーキー”。もちろん私も大好きな曲。

続いてオルガンの音色と弾むベース・ライン、そしてちょっぴり気怠気なフィーリングを感じさせるプリシラの歌声が印象的だった「風をあつめて」、そしてプリシラが「初めてギターで弾いた曲」と紹介したビートルズの「ノルウェーの森」。さらにフランス語で歌われる「哀しみのアダージョ」。この曲でまたしてもプリシラはギターを持たずに歌ったのですが、手持ち無沙汰の手をどうすんだろうと思いきや、長い黒髪を片方に集め、それを両手でいじりながら歌う。しかもフランス語! これは反則でしょ。そのアンニュイさにメロメロでしたね。別に本人は狙ってやってる訳じゃないと思います。ましてや何かを演じている訳でもない。たぶん天然なんでしょう。そんなプリシラにうっとりでした。

そしてステージは終盤、デビュー時からの人気曲「I Don't Think So」の朗らかなカントリー・タッチが会場を和ませる。さらに「上を向いて歩こう」。本編ラストは「Song Of Hope」。最後2曲は「日本が大好き」と語るプリシラの気持ちが感じられて、聴いてて「ありがとう」という気持ちで一杯になってしまいましたね。特に「Song Of Hope」は東日本大震災の直後に日本を思ってネットで発表してくれた曲。良い曲ですよね~。プリシラらしい、ふわりとした優しいメロディーが素晴らしい。もちろん生で聴く歌声も最高。ありがとう、プリシラ!!

アンコールで歌ってくれた「Find My Way Back Home」、「カントリー・ロード」も素敵でした!!



バンド・メンバー
プリシラ・ア-ン / Priscilla Ahn(Vocals, Guitar)
ウェンディ・ウォン / Wendy Wang(Guitar, Bass, Background Vocals)
ジェイク・シンクレア / Jake Sinclair (Guitar, Bass, Background Vocals)
サーシャ・スミス / Sasha Smith(Keyboards)
ルーク・アダムス / Luke Adams(Drums)

前回より、お馴染みのウェンディ・ウォン以外は一新されたバック・バンドでしたが、プリシラを含めて穏やかな一体感を感じさせてくれる素晴らしい演奏でしたね。ウェンディ・ウォンとジェイク・シンクレアは、曲によってギターとベースを取り替えながら演奏していました。また2人は小さな鉄琴のような楽器を弾いてたのも印象的でした。



*上の写真は16日に渋谷タワレコでサインを頂いた「NATURAL COLORS」。このアルバムからの曲を沢山披露してくれたこの日のライヴでしたが、やはり生のプリシラは最高です。もちろんCDで聴くプリシラも素敵なんですが、ライヴではさらに一味も二味も違いますよ!





そしてこちらはこのビルボード公演の終演後、サイン会でサインを頂いた前作「WHEN YOU GROW UP」。サインを求めてタワレコ同様に長蛇の列が出来ていました。しかも男性率高し。もちろん私も並んだ訳ですけどね~。並んでる間中、前の方からプリシラの笑い声がカラカラと聴こえてきて、なんかそれだけでふにゃふにゃになっちゃいましたね。で、肝心の私の番ですが、相変わらずまったく会話なしで、無駄に緊張しただけであっという間に終わってしないました…。でも私が渡した「RYOJI」というメモを見て、小声で「リョウジ」と呟いてくれただけで満足でした。あ、今回はちゃんと握手もしてもらいましたよ!