ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

Peter Barakan's LIVE MAGIC!

2014-10-29 18:53:13 | フェス、イベント
10月25日、26日の2日間開催され、大盛況のうちに終わった『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』。私も2日目の26日だけではありますが、堪能してまいりました。大小3ステージに渡って色々なアーティストを観ることが出来ましたが、ここではその中でも私のお目当てだった3組の海外アーティストに絞って、ライヴ・レポをお届けしたいと思います。


BOUKOU GROOVE
この日のトップバッター、ブークー・グルーヴ。シンガー兼キーボディストのドニー・サンダルとギタリストのダーウィン “Big D” パーキンズからなる2人組。そこにジェリー・ビーンのドラムスが加わるという、つまり3人のうち2人はアブソリュート・モンスター・ジェントルメンのメンバー。ドニー・サンダルはフロリダの人らしいですが、ほとんどニューオーリンズのグループと見て良さそうですね。とは言え、彼らのデビュー作「A LIL BOUKOU IN YOUR CUP」は、よりアダルトでクールなソウル・フィーリングが強く、私にとっての“ニューオーリンズ”はあまり感じられなかったりしたんですけど…、はたしてライヴは如何に?

結論から申しますと、ライヴは凄かった!「Walkin Talkin」「Peace And Understanding」「Two To Tango」「Can't Take My Eyes Off Of You」「A Lil' Boukou In Your Cup」などデビュー作からの曲が次々に披露されましたが、やはりライヴで聴くとニューオーリンズ・ファンクでしたね~! それはアレンジの違いと言うより、生ならではのライヴ感が成せる技だと思いますし、ドラムスのジェリー・ビーンの存在も大きかったでしょうね。彼のふくよか且つタイトなリズムはトリオというコンパクトなグルーヴを見事に纏めていましたね。もちろんビッグDの巨体から繰り出されるメロウなブルース・フィーリングも素晴らしかったですし、ドニー・サンダルのファルセットを交えたソウルフル・ヴォイスにも痺れました。スロー・ナンバーの「Stay Broke」も良かったですね。そしてそう来たか!って感じのプリンス「I Wanna Be Your Lover」もハマってました。まだ日本で紹介されたばかりの新しいアーティストではありますが、観客達も大盛り上がりで、終わった後、しばらくアンコールの拍手が鳴り止まない程でした。今後の活躍が楽しみですね。



JON CLEARY
さて、前日にはアブソリュート・モンスター・ジェントルメンを率いた圧巻のステージを披露してくれたというジョン・クリアリーですが、この日はソロによるグランド・ピアノ弾き語り。まずは挨拶代わりにインストのブギウギでスタートし、会場を一気にニューオーリンズ・ピアノの世界に引き込むと、その後はトラディショナルな雰囲気たっぷりの弾き語りを、次から次へと小気味良く披露。これが“粋”な感じで最高でしたね!

ロイド・プライス「Just Because」、リトル・ウィリー・ジョン「Fever」、ビリー・ホリデイ「Farewell To Storyville」、ジェリー・ロール・モートン「The Crave」、スウィート・エマ・バレット「Whenever You're Lonesome」などなど、そんな古いカヴァーの数々には思わず笑みがこぼれてしまう。中でも印象的だったのは、ペレス・プラード(あの有名な「Mambo No. 5」を作ったキング・オブ・マンボ)の名を出し、キューバとニューオーリンズの関係を実演するかのようだった「Havana」。ラテンの美しくロマンティックなメロディーをニューオーリンズのリズムに変貌させる鮮やかな手腕は流石でしたね。

もちろんカヴァーばかりではなくオリジナル曲も沢山披露してくれました。例えば「Just Because」に続けて披露された「Cheatin On You」なんかはその流れでまるでニューオーリンズ・クラシックのような雰囲気でしたし、「Havana」の後にはキューバの香り高い「Oh No No No」が披露されたりと、カヴァーとオリジナル曲がまったく違和感無く並んでました。彼の代表曲とも言える「When You Get Back」も盛り上がりましたし、スロー・ブルース「Port Street Blues」での重厚な歌とブルージーなピアノ、素晴らしかったです。

グランドピアノは横向きに設置されていましたが、時折、客席の方を向いては愛嬌を浮かべるようなジョン・クリアリーの仕草はなんか可愛らしかったですね。そして白いハットが良く似合ってました。途中でジャケットを脱ぐ程の熱演に、観客達もほとんどの曲で手拍子を打ち、大きな拍手声援で応える。最後の「I Get The Blues When It Rains」では、オッオッオッオー!のコール&レスポンスで盛り上がったり。そんなアットホームな熱気溢れるステージ。ジョンのニューオーリンズ・フレイバーたっぷりのピアノと、ソウルフルな歌声を存分に堪能さて頂きました。



JERRY DOUGLAS BAND
この日のメイン・アクト、ジェリー・ダグラス・バンド。ピーター・バラカンさんに紹介され大声援の中登場したジェリー・ダグラスとバンド・メンバー達。ドブロを寝かせた状態で肩から下げたジェリーを中心に、ダグ・ベローテ(ドラムス)、ダニエル・キンブロ(ベース)、クリスチャン・セデルマイヤー(フィドル)という4人編成。ジェリーのつま弾くドブロの音色から導かれるように「From Ankara to Izmir」から始まったそのステージは、まさにドブロを中心にした未知なるオルタナ・カントリー。ブルーグラス、ジャズ、ロックなどあらゆるジャンルを飲み込みつつ、土っぽくも美しいドブロの音色が縦横無尽に駆け巡る。

いや~、ジェリーの弾くドブロ、そのスライドから奏でられるフレージングの見事なこと。滑らかでスピード感に溢れ、それでいて悠久の流れに飲み込まれるような大きさを感じさせられる。ただただ、ジェリーのドブロに耳を傾けていたくなる程の素晴らしさでしたが、もちろん凄いのはそのドブロだけではありません。

ブルーグラスという枠を遥かに超えたこのジェリー・ダグラス・バンド、そのハイライトはステージも中盤にさしかかった頃、早くも訪れました。曲は「Cave Bop」。02年のアルバム「Lookout for Hope」収録曲ですが、まさかライヴで聴けるとは思いませんでした。スリリングにジャズとブルーグラスが交わるプログレッシヴな鬼曲ですが、ライヴはまさに白熱のセッション。スピーディー且つフリーキーにうねるドブロ、それに拮抗するフィドル、ベースは超高速4ビートのようなラインを刻み、ドラムは加速するかの如く疾走する。ジェットコースターのような展開にクラクラしているうちにスパッと終わる。そして大歓声!!堪りませんね!!

そんな「Cave Bop」の大興奮冷めやらぬなか始まったスロー・ナンバー。ジェリーのドブロが感傷的なメロディーを紡ぐ。なんとジミヘンの「Little Wing」。これがまた素晴らしかった!しっとりとしたスライドの節々からエモーションが染み出るようでしたね。「Little Wing」ってこんなに良い曲だったんだ、とあらためて感じ入っちゃいました。しかもこれがアップテンポにアレンジされた「Hey Joe」へと傾れ込む展開ですから。盛り上がらない訳が無い!この「Hey Joe」ではなんとジェリーがリード・ヴォーカルをとりました。

ドブロから小さな薄いギターに持ち替えての「So Here We Are」~「Sunday Afternoon Man」も良かったですね。ドブロとは違う歪んだ音色にはロック的なカタルシスを感じさせられつつ、ジェリー・ダグラスというアーティストの懐の深さにやられたり。そんなジェリーのスライドが凄いのはもちろんですが、ここではフィドルのクリスチャン・セデルマイヤーが魅せてくれました。アヴァンギャルドなフレーズを交えながらどんどん高揚感を増していくソロは圧巻の一言。ソロが終わらないうちから会場も大興奮に包まれていく。あれは凄かった!

アンコールの「Emphysema Two Step」を含めおよそ1時20分程のステージ。ラストに軽やかなブルーグラスを持ってきて朗らかに終わったのも良かったですね。ホント、素晴らしいライヴでした!

まったくもって異次元のドブロ奏者、異次元のアメリカーナ。ジェリー・ダグラス、また来日して欲しいですね。



上記の3組の他には、TARO & JORDAN、濱口祐自さんも印象的でした。特にフィンガー・ピキングによる味わい深いブルースと、天然的なキャラで満員のラウンジを大いに沸かせた濱口祐自さんはこの日の裏ベスト・アクトと言って良いのではないでしょうか。中村まりさん、高橋幸宏さんもほんの少しですが観れましたし、トーキング・ヘッズの映画もチラッと覗きました。ガンボも美味しかった!ベニエは売り切れだった…。

ピーター・バラカンさん、お疲れさまでした。そしてありがとうございました!!

来年もよろしくお願いいたします。