徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

田舎というハードボイルド

2007-01-16 22:03:36 | LB中洲通信2004~2010
山下敦弘監督の最新作『松ヶ根乱射事件』
これはかなりの傑作。名作『どんてん生活』『リアリズムの宿』等で見せた山下テイストを失わないまま、バブル崩壊後の地方の町を舞台に(しかし所謂“バブル”とは無縁に見える静かな田舎町)、ドメスティックでドロドロな人間関係を描き、ラストの「事件」までぐいぐい引っ張っていく。静かに壊れていくその様は、まさにハードボイルド。“松ヶ根”の人々に静かな波紋を巻き起こす木村祐一、川越美和のコンビはもちろん、主役の新井浩文、山中崇をはじめ、登場人物のキャラ立ち過ぎ。立ち過ぎと言ってもそれがまったく不自然ではなく、絶妙で濃厚な空間を作っていく。
映画の舞台だから、というわけではないが、田舎というのは淡々と(どんよりと)した時間の中で、実にドラマチックで、濃厚な「関係」が渦巻く場所だが、例えば渋谷で起きたバラバラ殺人事件というのは、東京のド真ん中にも「田舎」があったということでもある。東京は、スピード感で「関係」を麻痺させているけれども、そんな「関係」について改めて考えさせられる一本。

ということで、渋谷のビターズエンドで山下監督取材。『リンダリンダリンダ』以来のインタビュー。3月号でレポート予定。久しぶりの山下監督は実にすっきりとした男前になっていた。さすが売れっ子。

斎藤貴男『報道されない重大事』(ちくま文庫)、「マガジン9条」編集部編『みんなの9条』(集英社新書)、橋本治『このストレスな社会! ああでもなくこうでもなく5』(マドラ出版)購入。

凝視する男

2007-01-16 01:50:49 | LB中洲通信2004~2010
新宿でKOKAMI@network vol.9「僕たちの好きだった革命」の制作発表記者会見。出席者は演出の鴻上尚史、中村雅俊、片瀬那奈、塩谷瞬、森田彩華、GAKU-MCの6名。
内容は、<1969年、高校2年の時に機動隊の催涙弾で意識を失い、30年後に目を覚まし主人公・山崎が47歳で高校に再入学する>という、ちとタイムスリップな、「レナードの朝」風味の設定。
高校生相手に水平撃ちはありなのか、山崎という役名はもしかして羽田闘争で亡くなった「山崎君」から採用したのかなど等、鴻上さんに訊きたいことはいろいろあったけれども、記者会見で面倒な質問をするのも何なので、ひとつだけ。実際あの時代の学園紛争の主人公は大学生だったのに、なぜ高校生の設定にしたのか? <「世代を超えた青春学園ドラマ。笑いあり、ラップあり、アクションありの舞台に」>(asahi.com 2006年11月6日)という鴻上さんのスタイルから言って、まあ真正面からヘヴィな大学生の設定にしてしまうと遊べなくなるという思いがあったのかも。
まだ頭ん中で整理できていないけれども、3月号の予測レポートで。

それにしても塩谷瞬君は男前だった。他の役者がコメントしてる間も、発言者をひたすら、じーっと凝視している姿も好感が持てた。あそこまで記者会見で凝視できる男はなかなかいないよ。
日本自転車振興会は惜しい男を逃したと思う。